異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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naosi様より評価8を頂きました!

待ちに待った大陸版5周年イベントの情報が発表されましたね!

やはり予想通りUR戦艦ヴァンガードに、イラストリアス級インドミダブル…初期からお世話になってきたあの娘の改造に、着せ替えも大量!
これは…財布が軽くなりますねぇ…


229.第二文明圏の雄

──中央歴1642年9月4日午前10、ムー国ジャナム軍港──

 

──ボォォォォォ…

 

ムー最大の軍港であるジャナム軍港より黒鉄の軍艦が汽笛と共に出港してゆく。

1隻だけではない。

大小合わせて20隻もの艦隊であり、その大多数が従来のムー軍艦より近代的な姿をしていた。

もうご察しかもしれないが、この艦隊は以前にアズールレーンからムー国王への誕生日プレゼントという名目で贈られた"スクラップ"を再生して編成された艦隊なのだ。

その内訳だが…

 

戦艦

ラ・カガ

ラ・エルド改

 

空母

ラ・ヨークタウン

ラ・エンタープライズ

ラ・ホーネット

ラ・プリンストン

 

対潜空母

ラ・ヴァニア(改装により対潜空母に変更)

ラ・トウエン(同上)

 

大型巡洋艦

ラ・レナウン(ムー独自の分類により巡洋戦艦ではなく、大型巡洋艦に変更)

ラ・ノーザンプトン(同上)

 

巡洋艦

ラ・ヘレナ

ラ・アトランタ

ラ・ジュノー

 

駆逐艦

ラ・ピカイア

ラ・エンセウル

ラ・トークン

ラ・ハルハール

ラ・クルーマー

ラ・ファルイス

ラ・トカマクル

 

と、従来のムー艦隊どころか少し前までのミリシアル艦隊すら圧倒出来るであろう陣容である。

しかも変わったのはガワだけではない。

確かに配備兵器というハード面の更新は重要だが、それを運用する為の戦術…つまりソフト面での更新が無ければ最新鋭軍艦もただの海に浮かぶ鉄屑である。

しかし、ムー海軍は幸運な事に様々な戦術に精通するアズールレーンと友好関係を築けた為、彼らの下で先進的な海戦技術を磨く事が出来た。

その最たるモノが"スペシャリスト・フリート"と呼ばれる艦隊運用方法だろう。

これはアズールレーン…というよりはサモア基地に留学したムー軍人に手っ取り早くより高度な戦術を伝授する為に考案された思想であり、言ってしまえば"それぞれの任務に特化した小艦隊を複数纏めて大艦隊とする"というものだ。

例えば今回出撃したムー艦隊は5個の小艦隊で1つの大艦隊を成している。

 

先ずはラ・カガを旗艦としラ・エルド改、ラ・レナウン、ラ・ノーザンプトンで構成された砲撃による敵艦撃破を意図した『水上打撃艦隊』

次にラ・ヨークタウンを旗艦としラ・アトランタ、ラ・ジュノー、ラ・ピカイアで構成される艦隊全体の防空を担う『対空戦闘艦隊』

続いてはラ・ホーネットを旗艦としラ・プリンストン、ラ・エンセウル、ラ・トークンで構成される敵艦隊に対して航空戦力による爆撃・雷撃を敢行する『航空打撃艦隊』

そしてラ・ヴァニアを旗艦としラ・トウエン、ラ・ハルハール、ラ・クルーマーで構成された潜水艦を警戒・攻撃する為の『対潜艦隊』

最後にラ・エンタープライズを旗艦とし、ラ・ヘレナ、ラ・ファルイス、ラ・トカマクルで構成される大艦隊の中枢であり、戦況に合わせて柔軟に遊撃を行う『統括艦隊』

これら5つの艦隊で構成された大艦隊こそ、グラ・バルカス帝国を叩く為にレイフォルへ向かうムー艦隊である。

正にムー最強最新鋭の艦隊であるが、そんな艦隊の総旗艦であるラ・エンタープライズの飛行甲板では、一人のパイロットが不安な面持ちで潮風を浴びていた。

 

「……此度の戦、果たして勝てるか…」

 

飛行甲板に駐機した何機もの『F4U コルセア』の内の1機、その右翼に腰掛けて不安げに呟いたのは統括艦隊の航空隊長に任命されたヤンマイ・エーカーである。

確かに彼は同胞を理不尽に殺害したグラ・バルカス帝国へ報復の鉄槌を下す事は望むところであるが、いざ実戦間近となると『フォーク海峡海戦』にて不覚を取った記憶が喚び起こされてしまう。

機体の性能では勝っていた筈なのに、危うく撃墜されかけた経験はヤンマイを戒めると同時に、極端に恐れを抱かせてしまったようだ。

 

「アックタ大佐…貴方がいらっしゃれば、どんなに心強い事か…」

 

首に掛けた御守りを悲しげな表情で見つめ、亡き恩師を思う。

しかし、彼はもう居ない。

ムーの英雄は正に英雄的行為により、異国の空に散った。

故に彼の一番弟子である自分がしっかりしないといけないというのに…現実はこのザマだ。

 

「私は…」

 

再び弱音を吐きそうになるヤンマイ。

しかし、そんな弱音を掻き消すように艦隊上空で轟音が響き渡った。

 

──ゴォォォォォォォッ!

 

「っ!?」

 

轟音の主を確かめるべく、素早く空を見上げた先に"ソレ"はあった。

 

「あれは…」

 

鏃を思わせる三角形のシルエット。

ムーで一般的な飛行機にあるはずのプロペラは無く、機体の後端からバーナーのような炎を噴き出しながらとんでもない速度で艦隊上空を飛び去り、旋回して再び艦隊上空へと向かってくる飛行機…

 

「『アクアホーク』…そうだな。我々がしくじったとしても、彼らがムーを守ってくれる。我々は恐れず、全力を尽くせば良い」

 

自分達がもし敗北すれば、野蛮な殺戮者によって祖国は蹂躙されるかもしれない…そんな考えは、力強く空を舞う"小さな巨人"を前に雲散霧消したのだった。

 

 

──同日、ジャナム軍港南方沖上空──

 

「戦果を楽しみにしているぞ、同胞達よ」

 

出港してゆく艦船達の甲板上で帽子を振っている水兵達へ敬礼を捧げるパイロット。

彼の名はスードリ・ムー。

ラ・カガ艦長であるアウドムラ・ムーの息子であり、現国王ラ・ムーの甥にあたる人物であり、王位継承権8位のれっきとしたムー王族だ。

そんな彼だが他の王族の例に漏れず国民の模範となるべく働いており、彼はムー統括軍直轄の試験飛行隊の隊長として新型航空機開発に携わっている。

そんな事もあってスードリは国民から"飛行王子"の名で親しまれていたりする。

 

《殿下、参加出来ずに残念ですね。せっかくの新鋭機なのに…》

 

「殿下はよせ、と言った筈だぞ?…まあ、今回は仕方ない。この機体でも交戦予想海域には行けるが、現状は長距離攻撃のリスクを無視出来ない。空母があれば話は別だが、この機体を搭載出来る『ラ・ヴォルト』は改修中だ」

 

勇壮な艦隊を後目に、本来の目的である試験飛行の為に演習海域へ向かうスードリ機の下へ、部下が操る機体が接近して通信を寄越してきた。

 

《このアクアホークは性能は素晴らしいのですが、それだけに敵に鹵獲されれば厄介この上無いですしね》

 

「あぁ、そしてそれは我々を信用して技術支援をしてくれたロデニウスに対する裏切りとなる。口惜しいが、今は本土近くの空域での活動に留めるしかない」

 

彼らが操る機体…その名を『アクアホーク』という。

このアクアホークは、以前にロデニウス連邦・アズールレーンより持ち掛けられた艦載ジェット攻撃機『A-4 スカイホーク』の共同開発プロジェクトに於いて開発された、言わばムー版スカイホークである。

基本的にはスカイホークの初期型である『A-4B』に酷似しているが、エンジンはロデニウス版と共通の『J52』系列とし、それに合わせてエアインテークは境界層を吸い込まない為にスプリッターベーンが設置されている。

また主翼も若干大型化されており、主翼前縁部の付け根は装備した20mm機関砲の装弾数を増量する為に『J35 ドラケン』を思わせるダブルデルタ翼じみた翼型となっており、翼端には燃料配管付きのハードポイントが設置された。

そんな機体をムーは制空戦闘機、高速雷撃・爆撃機として運用するとしており、本機は固定武装として装弾数250発の20mm機関砲を2門、追加兵装として各種ガンポッドや爆弾類は勿論、最大で2発の航空魚雷や、先日実戦配備が始まったテレビ誘導滑空爆弾『AGM-62 ウォールアイ』等の対地誘導兵器まで搭載出来るのだ。

 

《そうですねぇ…確か、アズールレーンが配備し始めてるぶ…ぶいとーる機?とか言う奴なら最低限の改修でイケるみたいですが…》

 

「VTOL機だな。確かにあれも凄い航空機だが…空戦能力ならアクアホークの方が上だ。以前のロデニウス機との模擬空戦では、此方が有利だった」

 

アクアホークは制空戦闘も行う関係上、不要な電子機器は省いて最低限のレーダーやFCSの搭載に留めている。

一方でロデニウス連邦・アズールレーンのスカイホークは『A-4F』と呼ばれる現状最新鋭の機体であり、対地・対艦攻撃に重きを置いているため様々な電子機器を搭載しており、その分重量が重いのだ。

そのため空戦においてはアクアホークが有利である。

 

《ですけど、ロデニウスは超音速機を配備しているのでしょう?いいなー…俺も超音速機に乗りてぇ…》

 

「あまり欲を出し過ぎるな。…何、我々もいつかは超音速機を乗り回せる日が来るさ」

 

《なら、その日まで現役でいないとですね。お、あれが標的か…飛行王子、どうぞお先に》

 

「そう呼ぶな、帰ったら説教だぞ。…まったく」

 

部下と軽口を叩きあったスードリは自機の高度を下げ、主翼下に抱えた2発の魚雷を標的となるハリボテへと放った。

 




現状のムー艦隊は中々に歪な感じですが、あれもこれもと教えるより、いっそ1つの事に集中させた方がいいのでは?となった結果です

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