異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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時間があったので連続投稿です


あと、誤字報告ありがとうございます


23.2×2+2×2

──中央暦1638年11月23日午後2時、ムー海軍基地──

 

──ミャウミャウミャウ

 

海猫が鳴きながら空を飛ぶ。

青い空に、やや濁った海、そこに浮かぶ黒鉄の船…ムーが誇る最新鋭戦艦、『ラ・カサミ』の姿があった。

 

「あれが、我が国の最新鋭戦艦ラ・カサミです。……どうですか?」

 

どーせ、より優れた戦艦があるんだろ?

的な、ふて腐れたような心中を悟られぬように努めてにこやかにラ・カサミを紹介する。

 

「……」

 

「…うそ…なんで…」

 

だが、指揮官とダンケルクの反応は違った。指揮官はあまり変わらない表情を崩してポカンとしているし、ダンケルクは手で口許を隠して目を見開いている。

 

(まさか…戦艦はあまり発達していないのか?巡洋艦クラスの艦艇しか存在しない…とか?)

 

意外な反応に驚きつつ、マイラスは推測する。

だが、指揮官が発した言葉はマイラスの推測を裏切るものだった。

 

「大先輩!なぜ大先輩がここに……やって来たのか?独断で出港を?大先輩!」

 

「あれは、三笠さんではないわ。」

 

腹パンこそしなかったものの、ダンケルクが指揮官の肩に手を置き宥める。

 

「あの…ダイセンパイとミカサとは…?」

 

珍しく驚愕した指揮官の迫力に気圧されながらも、マイラスが問いかける。

すると、指揮官はマイラスの方に向き直る。

 

「あぁ、失礼。先程、説明したセイレーンに対抗する為のKAN-SEN…その初期型の一人に『三笠』という戦艦が居るんですよ。KAN-SENの中では最古参の一人なので、尊敬を込めて大先輩とよんでるんです。」

 

「では、呼び方が違うだけの同一艦なんですね?」

 

「その通りです。…しかし、よく似ている。瓜二つだ…」

 

とりあえず、ロデニウス連邦の力を探る為にマイラスは問いかけた。

 

「失礼ですが、ロデニウス連邦にはどれ程の戦艦があるのですか?」

 

「そうですね…50隻ぐらいですね。」

 

「……は?」

 

「正確には内10隻程度は巡洋戦艦という大型巡洋艦で、戦艦の内1隻は先程紹介した三笠です。三笠はかなりの古株なので、半分引退してるようなものですが。」

 

それでも40隻近く…しかも、ラ・カサミと似ているという三笠なる戦艦が引退寸前という状況である。

最早、マイラスにはロデニウス連邦が魔境にしか思えなくなった。

 

「あら指揮官、空母があるみたいよ?ムーにも空母があるのね。」

 

ダンケルクが沖合いを航行する空母…ラ・コスタ級空母を指差す。

 

「あ……あぁ、あれは我が国のラ・コスタ級空母ですよ。……因みに、ロデニウス連邦にも空母ってありますか?」

 

衝撃でフリーズしていたが、ダンケルクの言葉により復帰したマイラスが恐る恐る問いかける。

 

「40隻ぐらいですね、内半分程度は軽空母と呼ばれる小型空母です。」

 

指揮官がそう言った瞬間、マイラスの動きがまた止まった。

空母まである…しかも、圧倒的数だ。

マイラスがフリーズしている間に、ダンケルクが埠頭の端から海を覗き込んでいた。

 

「水深は大丈夫そうよ、ここなら問題は無いわ。」

 

「よし、それじゃあ……マイラス殿?マーイーラースーどーのー?」

 

フリーズしているマイラスの眼前で指揮官が手を振る。

すると、虚ろだったマイラスの目に光が戻った。

 

「はっ!……あぁ、申し訳ありません!驚き過ぎてボーッとしてました…」

 

「大丈夫ですか?今からダンケルクが真の姿を見せますよ?」

 

「は…はい、大丈夫です。」

 

深呼吸し、心を落ち着けるマイラス。

よし、もう何が来ても驚かないぞ!と覚悟したが…

 

「それじゃ、指揮官。行くわよ。」

 

ダンケルクが腰に帯びた細剣を抜いて、切っ先を水平線に向ける。

 

「いつも通りで……!」

 

──ブゥゥゥン……

 

ノイズのような微かな音が響き、ダンケルクの周囲に光が踊る。

その光は複雑な線を描き、軌跡を舞う光の粒子が光を失い金属へと変わる。

 

「これはっ……!」

 

光の乱舞が終わった時、そこには細身の体に似つかわしくない巨大な機械を背負ったダンケルクの姿があった。

 

「ダンケルク。」

 

「分かっているわ。」

 

指揮官が一言で指示すると、ダンケルクは海に向かってジャンプした。

海に…落ちない。

人間離れした跳躍力で、ラ・カサミのマストより高く飛び上がった彼女が背負っていた機械…艤装がバラバラになった。

 

「一体…何が!?」

 

マイラスがダンケルクを見上げて驚愕を口にする。

バラバラになった艤装は、青く輝く立方体…キューブとなり海上に積み重なって行き…

 

「ヴィシア聖座・第一戦線総隊に所属、ダンケルクよ。」

 

最後に強い光に包まれたかと思うと、巨大戦艦が姿を現した。

全長131mのラ・カサミを遥かに…100m程大きな船体には城のような高い艦橋が聳え立ち、その頂上にダンケルクが立っている。

四本の砲身が生えた砲塔二基は前方にまとめられており、後方には小型砲…副砲が搭載されている。この副砲は連装と4連装の組み合わせだった。

 

「よっ……よよよよよよ4連装ぉぉぉぉぉ!?」

 

その戦艦…『高速戦艦ダンケルク』の姿に腰を抜かしたマイラス。それも無理は無い。

ラ・カサミの主砲は40口径30cm連装砲を前後に1基ずつ装備している。

しかし、ダンケルクは52口径33cm4連装砲を前方に集中配置している。

 

(明らかにラ・カサミの主砲より大口径で長砲身だ!しかも、4連装!単純に考えて、ラ・カサミの主砲斉射の二倍の火力じゃないか!)

 

腰を抜かして、へたりこむマイラスの傍らにしゃがむ指揮官が口を開く。

 

「基準排水量26,000tぐらい、全長は約215m、速力は…25ノットって事にしておいて下さい。」

 

マイラスの口から魂が抜けた気がした。

 

──カシャッ

 

シャッター音が響く。

その音で気を取り直したマイラスが音のした方を見ると、従軍記者がカメラでダンケルクの写真を撮っていた。

 

「むっ…」

 

指揮官もそれに気付いたらしく、立ち上がると従軍記者の方へ歩いて行く。

 

(不味い…撮影禁止だったか?外交問題になったら…戦争になったら…!)

 

マイラスの思考はどんどん悪い方に向かっている。

こんな戦艦を持つ国家と戦争になったら…と考え、顔色を悪くしてると指揮官が従軍記者を連れて戻ってきた。

 

「マイラス殿、一緒に写真を撮りましょう。」

 

「は…はい?」

 

「乗せたり、内部見学は流石に無理ですが…まあ、記念に写真ぐらいなら大丈夫ですよ。そこのムー軍の方も如何ですか?」

 

指揮官の言葉に、遠巻きに見ていた兵士が我先にと集まりだす。

ダンケルクの左舷の前に並び、従軍記者の掛け声と共にシャッターが切られた。

 

マイラスは、両脇を指揮官とダンケルクに抱えられた状態で写真に写っていた。

 

 




今日からホロライブのコラボですね

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