幸いにも私の方は少しの倒木に留まってますが…
──中央歴1642年10月1日、サモア基地──
第二文明圏にて空前絶後の大海戦が行われている頃、遠く離れた第四文明圏にあるサモア基地では、その海戦の推移を多くの人々が見守っていた。
「最新の戦況画像、受信完了。モニターに表示するよ」
大講堂に詰め掛けたムー・ミリシアル両国の留学生を前に、艤装を展開したノーザンプトンが艤装と接続された端末を操作して巨大なモニターに画像を映し出した。
「「「おおっ!」」」
留学生達が一様に感嘆の声を上げ、喜色の笑みを浮かべる。
彼らを歓喜させたその画像は多数の艦船が航行する海上を写し出したものであるが、その中には黒煙に包まれた艦船や今まさに海中に没し行く艦船が不鮮明ながらもハッキリと描写されていた。
そう、これはサモア基地より遠く離れたバルチスタ海で勃発した世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊との戦闘を撮影した画像なのである。
「現状、グ帝艦隊は空母1・戦艦1・巡洋艦2が大破もしくは撃沈間近。駆逐艦3〜4が撃沈確実…航空機の損害は不明だけど、大破した空母が戦線を離脱し始めているから実質40〜50機の航空戦力を撃墜したも同然だね」
モニターに釘付けとなっている留学生達へレーザーポインターで黒煙に包まれる艦船を指しながら、戦況解析班から上げられた情報を伝えてゆくノーザンプトン。
それを聞いた留学生達は、再び感嘆したようにざわめきながら、近くに座る新しい友人達と喜びを分かち合う。
「スゴイ…短時間でこんな戦果を…」
「流石はムーだ!あの愚かな国の吠え面が見えるようだな!」
「しかし、あんな遠い場所の写真をこんなに早く見れるなんて…」
喜びの声が多数であるが、中には心底感心したような声もチラホラ見られる。
というのも今回の戦闘においてアズールレーンは直接的な戦力の派遣を見送る代わりに偵察機による情報で世界連合艦隊の支援を行っていたのだが、それは戦闘が始まってからも続いていた。
グラ・バルカス帝国艦隊を発見したムー艦隊からの通信を受けて飛来したアズールレーンのU-2R偵察機は高度25000m付近を巡航しながらグ帝艦隊を監視し、搭載されたデジタルカメラと衛星通信装置を用いて遠く離れたサモア基地へリアルタイムで戦況を伝えているのだ。
「現状、世界連合艦隊は航空戦にて先手を打ち、有利に戦いを進めているけど…やはり有効な戦力であるムー航空隊は数に不安がある。ミリシアル艦隊の後詰が早く着てくれれば制空権は確固としたものになるのだけど…」
ノーザンプトンの言葉に、ミリシアルの留学生達が嘆息する。
せっかく有力な戦力があるというのにこの重大な局面で遅刻している自国に情けなさを感じているのだろう。
「…まあ、大艦隊ともなれば必然的に動きは遅くなるし、それなりに距離が離れているから遅れるのは仕方ない話だね」
そうノーザンプトンがフォローするもののミリシアル人達は天を仰ぎ続ける。
それを見てムー人が彼らを慰める姿は、中々に奇妙なものであった。
「ん?…戦況画像の更新が来たみたいだね。映し出すよ」
二大国の民が奇妙な交流をしている様をやや困ったように見ていたノーザンプトンだが、彼女が持つ端末に新たな空撮画像を受信したという通知が届いた。
「これは…?」
「私が説明してもいいかね?」
モニターに映し出された画像に写り込んだ見慣れない物体に眉を潜めるノーザンプトン。
すると留学生達の中の一人が挙手をした。
「確か貴方は…」
「神聖ミリシアル帝国魔帝対策省古代兵器戦術運用対策部運用課のメテオス・ローグライダーという。それに写っているのは、我が国が発掘した魔帝の兵器…その名も『空中戦艦パル・キマイラ』」
手短に自己紹介をしたメテオスは、もったいぶる様子もなくアッサリと写り込んだ異物の正体を明かした。
「く、空中戦艦だって!?」
「馬鹿な…おとぎ話の存在じゃなかったのか!」
「あんな物が空を飛ぶのか?これが魔法の力か…」
鉄血の高級車メーカーのロゴマークのように円の中に放射状に広がる3本の渡り廊下のような構造物を持つそれは、やや不鮮明な画像でも空中に浮遊している事が分かる。
一見するとどのような物体か理解が及ばないが、メテオスの言葉を信じるなら戦艦…つまりは何かしらの攻撃手段を持った大型飛行物体なのだろう。
「噂に聞く魔帝の兵器…か。でも、良かったのかい?周りの反応からして秘密兵器なんじゃ…」
「それは問題ないよ。皇帝陛下から存在と名称ぐらいは明かしても構わないと許可されているからね」
心配そうなノーザンプトンの言葉に頷きながら応えるメテオス。
しかし、彼の表情には若干の焦燥が見てとれる。
「スゴイ…魔帝の兵器があればこの戦い…いや、この戦争は間違いなく圧勝だ!」
「素晴らしい!やはり帝国は最強の国だ!バンザイ!ミリシアル8世陛下バンザーイ!」
「むむっ…我が国もうかうかしていられないな…」
大講堂は伝説に語られる超兵器が投入された事に沸き立っているが、メテオスには一つの懸念があった。
(ワールマン…。決して…決して無理はしてくれるな…)
モニターを射抜くようなメテオスの視線には、遥か彼方で戦地へと向かう友人への祈りが込められていた。
──同日、サモア基地ウポル島特殊ドック──
──ウィィィィンッ…ゴウン…ゴウン…ギュィィィッ!
ラ・カサミが改装を受けている特殊ドック。
その天井に取り付けられた自動クレーンのバックアップ用手動操縦席に座った指揮官が、青く輝く立方体を手に忙しなく動くアーム類を見下ろしていた。
「改装の進捗は95%、乗組員の訓練にも大きな問題は無しか。慣熟訓練はムーへ向かいながらになるが、仕方ない」
独り言に聞こえるが、厳密に言えば彼は一人な訳ではない。
「…あぁ、そうだな。何せ時間が無い。今この瞬間だって、ムーの近くでは派手にドンパチやっているんだ。何時、グ帝がムー本土にやって来ても可笑しくはない。ぶっつけ本番になるかもしれんが…まあ、大丈夫だよ」
指揮官の手に乗った立方体…メンタルキューブが星のように瞬き、指揮官はそれに対して苦笑しながら応える。
一見するととうとう激務でメンタルが崩壊したように見えるが、勿論そんな訳はない。
「ともあれ、コイツに搭載した誘導弾を有効に使えるかはお前次第だ。シミュレーションでもいいから、しっかりと練習しておけよ?」
メンタルキューブはその言葉を了解したように何度か明滅すると、フワッと浮かび上がってスーッと空中を滑るように何処かへ飛んでいってしまった。
「…さて、俺達もムーへ向かう準備をしないとな。メンバーは…」
ラ・カサミ及びラ・ツマサの改装が完了すればムーへ確実に送り届ける必要がたる。
それ故それなりの護衛を派遣し、そのままムー救援の為の派遣戦力として活用するつもりであるが、そのメンバーが悩みどころだ。
「エンタープライズは必須だな。あとはグローセに、ドレイクに…」
「妾も同行してよいか?」
とりあえず主力艦を選び、その僚艦は彼女達自身に選ばせようと考えた指揮官だが、意外な所から自薦の声が聴こえてきた。
「…目が覚めたのか、武蔵」
「妾だけではない。ロイヤルの『ヴァンガード』、鉄血の『ウルリッヒ・フォン・フッテン』、ユニオンの『ニュージャージー』…"あの戦い"で眠りについた強者達が目覚め、汝の力にならんとしているわ」
長く艷やかな黒髪にピンッと立った狐耳。
高い背丈にスラリとした手足、女らし過ぎるスタイル…前世界における人類とセイレーンの最終決戦において大破し、長らく昏睡状態となっていた重桜最強の戦艦、大和型戦艦二番艦『武蔵』がクレーンの先端に立っていた。
「悪いが快気祝いは出来そうにない、戦時下だからな」
「この世界については記憶共有で理解しているわ。…大変だったわね。でも、妾が汝を害する全てを滅してしまおう。それが、汝を護る最善なら妾は躊躇いなくそれを実行しようではないか」
「ならお言葉に甘えようか。武蔵、ムーへ行くぞ」
「汝が征くなら何処へでも」
早速、武蔵を出してみました
今年はあと1隻URが出るらしいのですが…今回のストーリー的にアラスカ級ですかね?
今後、お色気シーンは…
-
今より増やせ
-
このぐらいでいい
-
もう少し減らしていい
-
もっと減らして
-
無くていい