異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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サブタイトルの割に航空戦しかしていないので、今回は駆け足でお送りします


241.古の超兵器【4】

──中央歴1642年10月2日正午、バルチスタ海──

 

──ブゥゥゥゥゥンッ!ドドドドッ!ドドドドッ!

 

「くっ…また避けられた!」

 

グラ・バルカス帝国所属のラムレスは愛機を操り、敵機をレティクルに捉えた瞬間に主翼内の20mm機関砲を発砲するが、濃紺の敵機はまるで後ろにも目があるかのように鋭く機動して射線から逃れてしまう。

もうこれで三度目…ここまで来ると偶然とは思えない。

 

「っ!?」

 

残弾を気にしながら歯噛みするも束の間、ラムレスの攻撃を回避した敵機は回避運動と同じように鋭く身を翻し、右手側から全速力で突っ込んでくるではないか。

 

──ドドドドドドッ!

 

「ぬぉぉっ!」

 

敵機の主翼に装備された4本の太く長い銃身─おそらくは20mm機関砲─が火を吹いた瞬間、ラムレスは素早くスロットルを絞りつつ機首を上げ、自機を急減速させた。

 

──ブゥゥゥゥゥンッ!

 

敵機はラムレス機がそのままの速度、あるいは増速すると踏んで未来位置へ射撃したが、急減速によりそれは空振りとなってしまった。

虚空を切り裂いた弾丸は空の彼方へと消え、敵機もそれを追うようにラムレス機を置いてそのまま飛び去ってしまう。

 

「…フラップ旋回だと?馬鹿な…まさか精鋭のエース部隊でも連れてきたのか!?」

 

油断なく周囲を警戒しながらもラムレスは敵機が見せた旋回時の挙動に驚愕する。

敵機は旋回時にフラップを展開する…所謂フラップ旋回をしていたのだ。

このフラップ旋回、確かに通常の旋回よりも半径の小さい急激な旋回が可能となるのだが、周囲の警戒やエンジン出力調整等々、様々な事をしなくてはならない空戦においてフラップを操作するなぞそこらのパイロットでは不可能に近い。

更には急旋回をすれば重量加速度によって、上半身の血液が下半身に流れてしまう事によって視野の暗転や失神してしまう危険性が非常に高くなってしまう。

 

「あの速度であの旋回半径…えぇい!ムーのパイロットは鉄の心臓を持っているのか!?」

 

気付けばラムレスは乱戦の只中から外れ、戦域の端まで来ていた。

それ故に戦場を俯瞰する事が出来、濃紺のムー戦闘機の殆どが高速で鋭い運動を行っている事がよく観測出来たが、彼が置かれた現状は非常に不味い状況でもある。

 

「早く…早く戦域に飛び込まなくては!」

 

四方から突っ込んできた敵編隊によって引き起こされた敵味方入り乱れる乱戦は、確かにいつ何処から弾丸が飛んでくるか分からない恐怖こそあるが、戦域の外れにポツンと飛んでいる方が遥かに危険だ。

何せ、性能は明らかに敵機の方が上…そんな相手に一対一の空戦なぞ分が悪いにも程がある。

ラムレス自身も前世界ユグドにおいてケイン神王国の戦闘機を10機撃墜したエースであるが、ケイン神王国の主力戦闘機は双発複座の重戦闘機であった為だ。

重戦闘機相手なら軽量軽快なアンタレスで翻弄出来るが、今回の相手は速度・運動性共に今までの比では無い。

 

「くっ…早く…!早く!早…っ!?」

 

乱戦の中へ一刻も早く戻ろうとするが、先程の急減速によってエネルギーを失った機体は遅々として加速しない。

いや、正確には軽量な機体のお陰でそれなり以上の加速はしているのだが、周囲が速過ぎる為に遅く思えてしまうのだ。

 

──ヒュィィィィィィィッ!

 

そんな時、ラムレスの耳が嵐に吹かれた風車のような甲高い音を捉えた。

それは後方斜め上…ラムレスの背中から聞こえて来るようだ。

 

「ふっ…!」

 

──ドドドドッ!

 

操縦桿を左へ倒し、機体を左へロールさせた瞬間であった。

先程までラムレス機があった空間にカラフルな火線が通過し、同時に恐怖を覚えるには十分過ぎる砲声が聴こえた。

 

「新手か!」

 

降下しながらラムレス機の右方を通り過ぎた敵機は見慣れない姿をしていた。

葉巻型の胴体に単純なテーパー翼自体はオーソドックスなスタイルであるが、主翼付け根の後端から勢いよく陽炎が吹き出している。

そして、主翼と垂直尾翼に描かれた内側に放射状の黄色ラインを施した青丸の国籍標識は、神聖ミリシアル帝国のものだ。

 

「速い!ムーの戦闘機より遥かに…200km/hは速いぞ!」

 

青みがかった銀色の機体を煌めかせる敵機は低空で機首を上げると、再上昇してラムレス機へと機首を向けてきた。

 

「真正面からか…面白い!」

 

ラムレスは外見で敵機の武装をある程度予想していた。

機首にプロペラが無いという事は、間違いなく機首に多数の機銃、或いは機関砲を装備している筈だ。

そして、グ帝パイロット達は機首に機銃を装備したケイン神王国の重戦闘機への対処法を頭に叩き込まれている。

 

「敵機が射撃寸前に急上昇し、宙返りして背面から射撃…よし!」

 

重戦闘機への対処法を今一度口にする事で確認し、照準器のハーフミラーに投影されたレティクルと敵機の大きさを見比べる事で彼我の大まかな距離を算出する。

 

「ケインの戦闘機より小さく見えたな…という事は、まだ遠い…まだ…まだ…」

 

もし、距離算出を間違えたら高精度の射撃が飛んできて、こちらが逆に撃墜されてしまうだろう。

並みのパイロットならこの時点でそんな考えが頭を過り、早すぎる回避や射撃をしてしまいかねない。

しかし、ラムレスはベテランである。

敵機を注視しながらも周囲を警戒し、冷静に回避のタイミングを待つ。

 

「まだ……ここっ!」

 

渾身の力で操縦桿を引き機首を上げて上昇、そのまま背面飛行へと移る。

 

──ドドドドッ!

 

頭上を─背面飛行中であるため正確には下方だが─を通り過ぎるカラフルな火線に一瞬目を奪われそうになるが、視線を引き剥がして敵機の姿を確認する。

火線の後を追うようにラムレス機を追い抜く敵機…それを見たラムレスは、口角を上げてほくそ笑んだ。

 

「速さだけでは勝てんよぉ!」

 

視界に敵機の姿を捉えたまま機体をロールさせ、僅かに機首を下げて速度を稼ぎつつトリガーに指を掛ける。

距離は300mも無いだろう。

正に必中の距離、ラムレスの脳裏には20mm機関砲弾によってズタズタに切り裂かれ、炎上しながら墜落する敵機の姿が既に浮かんでいた。

 

──ドドドドッ!

 

「……は?」

 

しかし、そうはならなかった。

ラムレス機から放たれた機関砲弾は虚空に緩い弾道を描き、眼下に広がる波立つ海へと吸い込まれただけだ。

そして次の瞬間、ラムレスはあり得ないものを見ていた。

 

「なっ…なっ…」

 

機首を真上に向け、機体の腹を進行方向に向けたまま静止する敵機…まるで遥か上空から糸で吊られているかのようだ。

無論、ピタッと完全に静止している訳ではなく極低速で前進しているが、緩降下によって速度を稼いでいたラムレス機から見れば止まっているも同然である。

そうすれば当然、ラムレス機は敵機を追い抜いてしまった。

 

「不味い…!」

 

──ドドドドッ!

 

猛烈な嫌な予感を覚え、直ぐ様急降下しようとするが、後方確認用ミラーに映る敵機はまるで衝立を倒すように機体を水平に戻すと、直ぐ様射撃を開始した。

 

「がっ!!」

 

後頭部をハンマーで殴られたような衝撃と、計器盤から散る火花。

機体がグラグラと揺れ、ビュオゥだかヒュウッだかどう表現すればいいか分からない嫌な風切り音がコックピット内に響く。

 

「やられた!?クソっ!」

 

機体の挙動から致命的な打撃を受けた事を悟ったラムレスは、自身の体を確認しながらキャノピー強制開放用のレバーに手を掛ける。

幸い、負傷はしていないらしい。

20mm級と思われる銃撃を食らっても無事なのは、座席に仕込まれた防弾板とその後方に置かれた無線機が破片を防いでくれたからであろう。

アンタレスの設計に携わった名も知らぬ技術者に内心で感謝すると、彼はパラシュートを掴んでコックピットから飛び出す。

 

「脱出は三度目だな…。次は勝つ!」

 

以前、二回被弾によって脱出した経験があるラムレスは自身を撃墜した敵にリベンジを誓いながら右翼へ這って行くと、そのまま両足に力を込めて飛び出した。

 

──ブォンッ!

 

「ん?」

 

その瞬間、妙な音が聴こえ…

 

──ドンッ!

 

「……?ぁ…?ぁ……?」

 

次の瞬間、ラムレスが見たのは自身の腹から突きだす捻れた金属板であった。

というのもラムレス機は被弾によって尾翼がズタズタになっていたのだが、それによって機体がブレてラムレスが飛び出した瞬間に、鋭利な刃となった尾翼が彼を串刺しにしてしまったのだ。

 

「が…ぁ……」

 

しかし、ラムレス自身は衝撃と出血によって意識を失い、最期の瞬間まで自らの身に何が起こったか理解出来なかった。

 

 

その後、グラ・バルカス帝国航空隊はムー・ミリシアル連合航空隊によって壊滅。

140機以上の損害と引き換えに、20機程度のムー機を撃墜する事しか出来ないまま世界連合艦隊に制空権を奪われてしまったのだった。




ライザイベ、周回しまくりですね
やはりアズレンの基本は周回…!

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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