異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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バルチスタ沖海戦が長くなって中弛み感があるので、箸休め的にバルチスタ沖海戦で損傷してレイフォルへ撤退中のグ帝艦隊の話を何話か挟みたいと思います

あと個人的に出したいKAN-SEN達が居ますので…


245.■■■■■の影

──中央歴1642年10月2日午後7時、ニグラート連合西方海域北側──

 

暗い海を行く艦隊。

その殆どが傷つき、焼け焦げ、中には甲板が海面とほぼ同じ高さになった艦も存在するその艦隊は、後に『バルチスタ沖海戦』と呼ばれる海戦にて損傷し撤退中のグラ・バルカス帝国海軍艦隊であった。

 

「臨時司令。まもなくレイフォル海…すなわち我々の支配領域に入ります。追撃がなく一安心です」

 

「最後まで気を抜くな。レイフォル海に入ったとて、まだ敵の航空機が飛来する可能性がある。ニグラート連合にムーの航空隊が展開していないとも限らないのだからな」

 

安心した様子の部下を嗜めるのは、損傷艦隊の護衛を務める護衛艦隊の旗艦であるタウルス級重巡洋艦『タイゲタ』の艦長であり、臨時艦隊司令に任命された『ラジール・ディンクス』だ。

 

「しかし、ムーもバルチスタ海に戦力を集中している事でしょうし、そこまで恐れる必要は無いのでは?」

 

「油断するな。現在の我々が今まで通りに戦えると思ったら大間違いだ。今となってはワイバーンはともかく、ムーの複葉機ですら脅威になり得るのだからな」

 

苦虫を噛み潰したような表情で述べるラジール。

というのも損傷艦と護衛艦は防空戦闘に必要不可欠な戦闘機、そして近接信管の殆どをバルチスタ海に残った艦隊に引き渡した為、この艦隊には少しのアンタレス戦闘機、多少は格闘戦が出来るシリウス爆撃機、旧式の時限信管を装着した砲弾しか空の守りが無い。

この状況では、例えムーのマリン戦闘機でも苦戦しかねないであろう。

 

「だが、こんな時間に空襲には来ないだろう。敵艦隊が来るにしてもニグラート連合の帆走艦ぐらいだろうから、灯火管制を敷いたのちに最低限の見張りを配置して他の者は休息を摂らせよう。今まで気を張っていたのだからな」

 

「とは言いますが、一番気を張っていたのは臨時司令でしょう。随分とお疲れのようですが…」

 

「はっはっはっ、バレたか。いきなり臨時とは言え艦隊司令に任命されたからな。確かに負担を感じていたのかもしれない」

 

「ではしっかり休まれて下さい。帰還したら事情聴取や戦闘詳報の記載等があるでしょうし」

 

「あぁ、そうしよう」

 

部下と言葉を交わし、ラジールは艦長室へと向かい、直ぐ様ベッドに横になって泥のように眠るのであった。

 

 

──同日午後10時、ニグラート連合・レイフォル海上国境付近──

 

艦隊の最後尾にて曳航されている一隻の『エクレウス級駆逐艦』。

バルチスタ沖海戦にて艦尾に被弾したこの艦は、艦尾の殆どが水没してしまっており、今では補助動力で排水ポンプを動かしながらどうにか沈まないように足掻いているといった状況であった。

 

「ふぅ…どうにか帰れそうだな」

 

「あぁ、まったくひどい目に会ったぜ」

 

石油ランプだけが灯るガランとした艦橋内では、曳航中のトラブルに対処する為の乗組員が二人、誰も居ないのをいい事に規則違反である筈の飲酒と喫煙を楽しんでいた。

 

「それにしたってムーがあんな化け物みたいな戦闘機を持ってるなんて考えらんねぇよ…。お前、見たか?馬鹿デカいロケット弾がたった2発で巡洋艦を大破させてたぞ」

 

「見たよ。その後、小さいロケット弾を何発も撃って、その後は普通に対空戦闘してたもんな。多分あのパイロットは相当な凄腕だぜ」

 

干し肉をナイフで削りながら安物のウイスキーをチビチビと飲む彼らは、ふと割れて使い物にならなくなったレーダースクリーンに置かれた懐中時計に目を向けた。

 

「げっ、見回りの交代時間だ。冷えるから出たくねぇなぁ…」

 

「本当だ。…ん?だけどあいつ等、呼びに来ないな」

 

彼らの他に数名が対処要員として乗り込んでいるが、交代時間になっても呼びに来ない事はどうも不自然だ。

 

「えっと…ポンプ室は…」

 

一人が艦内電話で排水ポンプ室で待機している者を呼び出す。

しかし、呼び出しベルが鳴るだけで一向に出る気配は無い。

 

「もしかしたらポンプがうるさくて聴こえないんじゃないか?」

 

「かもな…。もしかしたら見回りに出てる奴ら、海に落ちたのかもしれない。探してみよう」

 

「はぁ〜…仕方ねぇ」

 

そうして二人は艦橋を後にし、甲板上を石油ランプを頼りに探索し始めた。

 

「おーい!誰か返事をしろー!」

 

「うーん…海にも落ちてないみたいだな…」

 

見回りに出た者は救命胴衣を着用しており、その救命胴衣も防水ライトが取り付けられているため、夜の海に落ちてもよほど遠くに流されるか沈まない限りは見つかる筈である。

 

「もしかしてどっかでサボって、そのまま寝たんじゃないのか?」

 

海面を覗き込んでいた一人がため息混じりに推測を口にするが、もう一人からの反応が無い。

 

「おい、どう…し…た…」

 

返事が無い事を不審に思い、もう一人が居た方に目を向けると…

 

──ふふっ…ふふっ…

 

「女…?誰だ…?」

 

長い紫がかった黒髪に、紫水晶のような瞳。

石油ランプの揺らめく明かりを反射する病的に白い肌と、男なら目が釘付けになってしまうであろう豊満なバスト…

 

──ねぇ、あなた…私の夫を知らない?

 

「お、夫…?」

 

ゆらゆらと純白のドレスを揺らしながら歩み寄る謎の女を前に、彼は目を逸らす事が出来なかった。

 

──レイフォリアに住んでたの…来週、結婚するんだけど…夫になる人が帰って来ないの…

 

女が一歩、歩み寄る。

 

──あの人は…船乗りで…あの日も…大きな戦列艦に乗って…帰って来なかった…

 

また一歩、歩み寄る。

 

──私は波止場で待ってた…待ってたのに…黒い鉄船がやって来て…どこの船…?

 

彼は一歩下がる。

 

──赤い丸に…白い十字…あぁ…あの旗…

 

女はマストではためくグラ・バルカス帝国旗を見上げ、指差した。

 

──この船じゃない…でも…

 

女の冷たく、滑った手が彼の肩を掴む。

その時、彼はようやく気付いた。

女の手には古びて錆び付いた、刃こぼれだらけの斧があった事に…

 

──お前の…仲間かぁぁぁ…!

 

地の底から響くような怨嗟の慟哭。

振り上げられる斧。

 

──返せ!あの人を!夫を返せ!

 

「はっ…あっ…あっ…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

いつの間にか血みどろになった女が斧を振り下ろした瞬間、彼は意識を失って甲板に倒れ伏した。




私事ですが、11/21、私の誕生日に入籍する事が決定いたしました

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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