異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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せっかくのハロウィンですし、はっちゃけてみました


247.■■ペ■タの影

──中央歴1642年10月3日午前2時、ニグラート連合・レイフォル海上国境付近──  

 

「なっ、なんだアレは!?」

「幽霊船…!?バカな…今までレーダーには映ってなかったぞ!」

「ガイコツが…動いてる…!?」

 

グ帝艦隊は突如として現れた"幽霊船"を前に蜂の巣を突付いたような騒ぎとなっていた。

ある者は腰を抜かし、ある者は瞼が擦り切れそうな程に目を擦り、またある者は蹲ってガタガタと震えている。

海の男は信心深い…もっと言えば迷信を信じやすい傾向にある。

それを示すようにグ帝の艦艇にも艦内に彼らが信じる『帝国正教』の簡易礼拝所が置かれており、作戦前には艦長を始めとした各兵科長が礼拝する程だ。

そんな海の男達が不可解な事象…それこそレーダーにも映る事無く突如として艦隊の真っ只中に現れた幽霊船を前にしては、パニックに陥るのも無理は無い。

そして、これまで起きた事も彼らの不安を増大させる。

 

「おい、臨時司令は?」

「…居ない!艦長室にも、艦橋にも居ないぞ!司令!臨時司令ー!!」

「ま、まさか…臨時司令はもう…」

 

臨時司令であるラジールを始めとした数名の人員が忽然と姿を消した事で彼らはより深刻なパニックへと陥る。

 

──カエセ…カゾク…カエセ…クニ…カエセ…

 

幽霊船の舷側から顔を覗かせるガイコツ達が骨をガタガタと震わせながら恨みがましい、地の底から響くような悍ましい怨嗟を彼らに投げ掛ける。

それを以ていよいよ彼らの恐怖は頂点へと達し、恐慌状態へ…

 

《狼狽えるな!それでも帝国軍人か!》

 

となる前に広域無線によって鋭い叱咤が全艦に鳴り響く。

それは甲板から艦底まで爆弾で貫かれ、大破状態で曳航されるペガスス級空母『マタル』の艦長『ワイナ・アイルマン』から発せられたものだ。

 

《幽霊船がなんだ!我々が操るのは帝国科学の結晶たる軍艦なのだぞ!如何に幽霊船と言えど、カビの生えた木造帆船!鋼鉄の軍艦に勝てる訳がない!》

 

ワイナの言葉を聴いた各乗組員は徐々に正気を取り戻してゆく。

言われてみれば確かにそうだ。

超常の存在といえど相手は単艦…しかもボロボロの木造帆船だ。

駆逐艦どころか、植民地警備用の警備船…いや、河川戦闘艇ですら容易く勝てる相手なのだから恐れる必要はない。

 

《幽霊船なぞ恐れるに足りず!攻撃して海の藻屑にしてしまえ!ただし、位置が悪いから主砲や副砲、高角砲は使うな。機銃で穴だらけにするんだ》

 

ワイナの言う通り、気を付けるべきは過貫通による味方への被弾や誤射であろう。

徐々に冷静さを取り戻した彼らは機銃を用意すると照準を幽霊船に合わせトリガーを…

 

《ん…?な、なんだ?》

 

不安げなワイナの声…おそらくは広域無線のマイクのスイッチを切っていなかったのだろう。

 

《おい、どうした。艦の傾斜が…》

 

《──ギィィィィィ…》

 

《傾く…!艦が…マタルが転覆する!?何が起きている!?おい、誰か見に行って…なっ!?なんだ!?うわっ!ば…化けも…》

 

《──ゴガァァァァァァン!…ザーッ……》

 

ワイナの断末魔の叫びの後に轟音が鳴り響き、ホワイトノイズしか聴こえなくなる。

おそらくは何かが起きてマタルが転覆し、通信機器が壊れたのだろう。

それは誰でも分かるのだが…その"何か"が全く分からない。

全長257m、全幅29m、満載排水量3万2千トンにもなる大型空母を、大破しているとは言え瞬く間に転覆或いは轟沈させてしまう存在なぞ何があるというのだ。

 

──あぁぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁ…

 

幽霊船から響く女の悲鳴…いや、これは"呼んでいる"のだ。

海の底から…人智の及ばぬ深淵から…"何か"を…。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

──ダダダダダダダダダダ!!

 

恐慌状態に陥った乗組員が機銃を幽霊船目掛けて発砲する。

しかし、空を裂いて飛翔する25mm弾は幽霊船を構成する木材を打ち砕く事もなく、まるで霧に向かって撃ったかのようりすり抜けてしまった。

 

「攻撃が当たらない!やっぱり幽霊船だ!」

「た…助けてぇぇぇ!」

「お、俺はまだ配属されたばかりで何もしてない!信じてくれ!」

 

半狂乱になり銃身が赤熱しても撃ち続ける者、ひたすら命乞いする者、自身の潔白を訴える者…しかし、水底より現れた"何か"は慈悲なぞ持ち合わせてはいない。

 

──ゴゴゴゴゴゴ…

 

地震…いや、こんな海のど真ん中で起きる筈は無い。

海面が小さく波打ち、あらゆる所で小さな気泡が発生し、それらは徐々に大きくなる。

 

「な…何が…」

 

──ズザァァァァァァァァァッ!!

 

まるで滝の近くに居るかのような轟音。

微かな星明かりと月明かりすらも覆い隠す巨大な"何か"…それはタコやイカのような頭足類の触腕を何千倍にも拡大したかのような姿を持つ、巨大な触手であった。

 

「あ…ぁ…」

 

一様にその姿を目にし、青褪めたグ帝艦隊の乗組員達。

海面から突き出し、夜空に揺らめく10本近い触手は、呆然と立ち尽くす機銃手が居る駆逐艦へと振り下ろされ…

 

──ゴガァァァァァァァァァンッ!!

 

直径10mはありそうな肉厚の触手が勢いよく打ち付けられた駆逐艦は真っ二つに圧し折れ、そのまま触手によってグルグル巻きにされると、あっという間に海中へ引きずり込まれてしまった。

その光景を目の当たりにした乗組員達は皆がこう思った。

 

──マタルはアレによって海に引きずり込まれたのだ

 

──次に狙われるのは自分達だ

 

「撃てぇぇぇぇぇっ!」

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

誰かが絞り出した悲鳴のような号令と共に巡洋艦の主砲が発砲される。

15.2cm徹甲榴弾は、場合によっては格上である重巡洋艦相手でも痛打を与える事が出来る威力を持つ。

如何に相手が巨大生物と言えど、鋼の装甲を持たないのであれば容易く撃ち抜ける筈だ。

 

──ズゴォォォォォンッ!

 

その予想は的中した。

巨大な触手に直撃した砲弾は中程まで食込むと、炸裂して触手を半分ほど千切り飛ばした。

砲が通用するなら勝てる…ならば恐れる事は無い。

誰もが一縷の望みを見出した瞬間であった。

 

──ズリュンッ!

 

千切れた断面から新たな触手が生え、何事も無かったかのように蠢きだした。

 

「神様…助けて下さい…」

 

誰かが絶望のあまり全てを投げ出し、艦内礼拝所のある方向へ祈りを捧げた。

しかし、絶望とは"望みが絶たれた"という意味である。

それに…彼らが味わう絶望はこれからが本番なのだから。

 

 




そう言えば古の超兵器の下りが始まって一年以上になるんですね
早いとこバルチスタ沖海戦を纏めないと…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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