ここから先は概ね原作と変わらないので、ちょっと駆け足になると思います
──中央歴1642年10月3日午前3時、バルチスタ海──
「第39水雷戦隊通信途絶!全滅したと思われます!」
「駆逐艦『ラッティ』より入電!敵戦艦と思われる大型艦への魚雷命中を確認!敵艦撤退!」
「敵戦艦発砲!狙いは本艦と思われます!」
「取り舵いっぱい!総員、衝撃に備えろ!」
飛び交う報告の中、パルサーの艦長が鋭く命令を下す。
──ゴォォォォォォォンッ!
「うぉっ!!」
次の瞬間には腹の底を震わせるような轟音と嵐の中へ放り出されたような揺れ、そして大量の水飛沫が艦体に叩き付けられる音が響いた。
「敵弾、夾叉!」
「バカな…この闇夜でここまで正確な照準を!?」
「レーダーだな」
驚愕に顔を歪ませる艦長だが、対照的にカイザルは冷静を保ったままそう述べた。
「異世界国家は技術的には帝国より遥かに劣っている…それは間違いだったのだ。如何に照明弾を打ち上げているとはいえ、夜間にこれだけの精度を発揮するとなればレーダー照準以外にはあり得んだろう」
「えぇ、カイザル司令。もは疑いの余地はありません」
カイザルの言葉に艦長も同意する。
これは少々…いや、かなり厳しい状況だ。
この海戦こそ数に物言わせた力押しで勝利をもぎ取れるだろうが、今後はどうだろうか?
帝国と同等の技術を持ったムー、ミリシアル、そしてロデニウス…それら三カ国を一度に相手にして果たして帝国は世界征服を行えるだろうか?
「今は責務を果たすまで…」
しかし、今を生き残らねば話にならない。
そうカイザルはポツリと呟くと、気を引き締めるように軍帽を被り直して、手近に居たレーダー手に声をかけた。
「君、対空レーダーはどうなっている?」
「はっ!対空レーダー…ですか?」
怪訝そうな顔のレーダー手だが、それも無理は無い。
対空レーダーは航空機を探知する為のものであり、夜戦という敵航空機が飛来する事が無い環境では作動させる意味は無いからだ。
しかし、カイザルはそれでも対空捜索を行わせる。
「私の勘が正しければ、敵艦隊は上空にレーダーを搭載した艦載機を飛ばして戦場を俯瞰しているはずだ」
「そ、そんな事が…?」
信じられないと言うように目を丸くする艦長であったが、カイザルの勘はレーダー手の言葉によって肯定される事となった。
「…っ!じょ、高度3000m、距離10000m付近に反応が!」
「やはりか…」
「なっ…夜間に艦載機を飛ばすだと!?自殺行為だ!」
双発機以上ともなれば航法士や電波航法装置を使う事によって夜間飛行も可能であろうが、艦載機ともなれば人員も機材も限られている上に、ただでさえ危険な離着艦を悪視界の中で行わなければならない。
現に帝国海軍でも夜間偵察機は旧式の単発飛行艇を用いているほどだ。
「艦載機に搭載出来るレーダーを実用化している程だ。おそらくは夜間でも離着艦出来るような技術があるのだろう。だが…どうやら攻撃までは出来ないらしい。もし夜間空襲が出来るのなら、我々は今頃海の藻屑だ」
「司令、対空射撃を行いますか?」
「……いや、やめておこう。如何に敵機がレーダーを搭載していようとこの乱戦では大して役には立たんだろう。それに、レーダー波と砲弾が飛び交うこの状況では近接信管の作動不良が起きる可能性もある。今後の為にも近接信管は節約したい」
「はっ。敵機は無視だ!敵艦隊への攻撃に集中しろ!」
「敵戦艦、再び発砲!」
「機関全速!突っ走れ!」
闇夜に浮かび上がる一際大きなシルエットが爆炎を放った。
グレードアトラスター級戦艦は46cm砲を防げるだけの装甲を持つが、それでも艦橋や主砲塔に被弾すれば戦闘能力を削がれかねない。
加えて敵戦艦の主砲威力が不明な以上、慢心して被弾に甘んじる訳にもいかないのだ。
「こちらも反撃だ!主砲、敵戦艦に斉射!」
「はっ!主砲斉射ぁぁぁぁ!」
艦長の命令を受け、砲術長が射撃盤に取り付けられたトリガーを引く。
──ドドドォォォォォンッ!!
まるで太陽が現れたかのような特大の爆炎と鼓膜が破れそうな轟音。
敵が如何なる戦艦であろうとも痛打を与えられる事に違いは無いだろう一撃が夜空を飛翔する。
──ゴォォォォォォォンッ…
「敵弾、本艦の後方に着弾しました!」
「よし、上手く偏差から逃れたな。こちらの攻撃はどうなった?」
「……ダメです。敵戦艦に直撃した様子はありません」
「期待はしていなかったが…やはり残念だな。だが牽制するには十分だ。砲撃を続けろ!敵戦艦を野放しにすれば、水雷戦隊は全滅だ!」
戦艦の本懐である砲撃戦、それも同格と思われる相手とあれば状況がどうであれ燃え上がるのが戦艦乗りと言うものだ。
再びの斉射と同時に、敵戦艦も斉射する。
互いの砲弾が海を穿ち、漆黒の水柱を突き立てる。
それを何度となく、入り乱れる両軍の水雷戦隊なぞ気にも留めぬかのように繰り返される。
──ゴガァァァァァァァンッ!!
「うわぁぁぁぁっ!?」
「被害報告!」
「左舷に至近弾!浸水発生!現在、応急処置中です!」
パルサーの左舷を掠めるように敵弾が着弾し、炸裂した。
水中で砲弾が炸裂した事によって発生した水中衝撃波によりリベットが破断し、浸水が発生してしまったらしい。
「我が方の砲弾、敵戦艦に命中!火災が発生している模様!」
艦橋上部の見張り所と交信していた砲術長が歓声混じりにそう報告した。
現状は五分五分…しかし、このままダメージレースともなれば、火力と装甲に秀でるであろうパルサーに分がある筈だ。
「……朝日が…明るくなってきたな。君、今は何時だ?」
「はっ、現在時刻はマルゴサンサン…?なんだ…?」
空が白み、相対する敵戦艦の姿が薄らと見えてきた事に気付いたカイザルが対空レーダーを監視していたレーダー手に問いかける。
帰ってきた言葉は夜明けが近い事を告げるものであったが、その後に不穏な言葉が続いた。
「どうかしたのか?」
「は、はい。敵機の反応は無くなったのですが…なんでしょう…レーダースコープに大きなノイズが…」
「司令、艦長!」
首を傾げるレーダー手であったが、それを遮るように砲術長が呼びかけた。
「見張り所より報告!何か巨大な物体が低空を飛行してこちらに接近しているとの事です!」
「巨大な物体?爆撃機ではないのか?」
砲術長の言葉に艦長までも首を傾げてしまう。
それと同時に通信士からも報告が来た。
「各艦より入電。敵艦隊、北方へ撤退しているようです」
「……確かに」
夜戦艦橋の細い窓から双眼鏡で外の様子を伺うカイザルは、相対していた敵戦艦がこちらに艦尾を向けて撤退している事を確認し…
「……んん?」
"巨大な物体"が低空を滑るようにしてこちらへ向かって来るのを目にした。
「な、なんだあれは…?」
様々な不測の事態を目にしてきたカイザルであったが、流石に自分の目を疑った。
詳しい形状は不明だが、少なくとも飛行出来そうにないものが空を飛んでいる。
「司令、艦長。通信が…おそらくは…」
「"アレ"からか…よし、繋げ」
戸惑いを隠せない様子の通信士からの問いかけに、カイザルは一瞬だけ考えた後に通信を繋げるように命令した。
《あー、あー、聴こえるかね?野蛮人諸君》
「随分な挨拶だな。私は東征艦隊司令のカイザル・ローランドだ。名と所属ぐらいは名乗ってほしいものだが?」
無礼どころかケンカを売っているとしか思えない通信相手の態度にムッとするが、あくまでも理性的に名乗るカイザル。
それに対し通信相手は、芝居がかった大袈裟な口ぶりで返答した。
《おぉ〜っと、これは失礼。私の名はワールマン。神聖ミリシアル帝国魔帝対策省の者だ。では早速本題だが…君たち、今すぐ降伏したまえ》
スピーカーを通じて伝えられた降伏勧告にその場に居た者は怒声を発しかけるが、カイザルがそれを身振りで制止した。
「ほう…それは出来ない話だ。私とて誉れある帝国軍人、敵を前にして抵抗もせずに降伏なぞ御免被る」
《哀れだねぇ…自分達がどれほど絶望的な状況にあるか理解していないらしい。よろしい、ではこのパル・キマイラを以て懲罰を与える!》
「ふん、そのオモチャで何が出来るか見せてもらおうか」
そう吐き捨てると、カイザルは通信を切断させた。
「ミリシアルの秘密兵器、というところか。何をしてくるか分からん、全力で迎え撃て!」
「「「「「はっ!」」」」」
なんだかこんなに更新するのも久々ですね
今後、お色気シーンは…
-
今より増やせ
-
このぐらいでいい
-
もう少し減らしていい
-
もっと減らして
-
無くていい