異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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長々と続いたバルチスタ海戦ですがこれで一区切りですね


254.古の超兵器【11】

──中央歴1642年10月3日午前10時、バルチスタ海──

 

「空中戦艦、進路変更!……こちらに向かって来ます!」

 

見張り員からの報告を悲鳴のように伝える砲術長。

叫びたいのは全員同じだ。

海を割るかのような轟音と共に立ち上るキノコ雲、そしてスクラップのように成り果てたラス・アルゲティの姿を見れば、恐れ知らずの帝国軍人であっても怖気づくというものだ。

 

「とんでもない威力だ。あんな物が地上で…都市部で使われたらどんな被害が出るか分からない!なんとしても空中戦艦を撃破しなければ今後の戦略に支障が出るぞ!」

 

まだ遠くに見えるパル・キマイラを睨みつけながらカイザルは自身に言い聞かせるように告げる。

戦艦を麾下の艦隊ごと葬り去る威力の爆弾、しかもおそらくはそれが複数発あるのだろう。

パル・キマイラへの対抗手段を見い出せなければ、帝国の植民地はもちろん、本土にまであの大型爆弾を投下されかねない。

 

「司令、こうなれば本艦の主砲を直撃させるほかありません!相手がいかに強固であろうとも46cm砲弾の前には無傷ではいられないでしょう!」

 

「しかし、どう当てる!?戦艦の主砲は空中目標に直撃させられるような物ではないぞ!」

 

帝国の艦艇は防空能力に力を入れている為、戦艦の主砲であっても対空攻撃用の時限・近接信管や多数の子弾を詰め込んだいわゆるクラスター弾も用意されている。

しかし、少々の被弾ではびくともしない空中戦艦には弾片や子弾が効くかどうか怪しいものだ。

故に対艦用の徹甲弾を直撃させたいのだが、あいにく対空対艦攻撃(・・・・・・)なんて訓練をした事なぞない。

 

「艦長!第一砲塔からです!」

 

「なんだ!?」

 

通信士から艦内電話を受け取った艦長が少しばかり電話先の者と話す。

 

「なんだと!?何を考えているんだ!」

 

「どうした?」

 

「失礼しました、司令。第一砲塔の砲長がおかしな事を…」

 

「私が話してみよう」

 

苦虫を噛み潰したかのような表情の艦長であったが、それに何故か妙に興味を引かれたカイザルは受話器を半ば引ったくるように艦長から受け取った。

 

「艦隊司令のカイザルだ。何かいい考えがあるのか?」

 

《し、司令!?私は第一砲塔の砲長を務めておりますメイルと申します!》

 

電話口の相手はグレードアトラスターの砲術長を務めていたメイルであった。

彼はフォーク海峡海戦にて損傷したグレードアトラスターの修理が完了するまでの間、不慮の事故で負傷したパルサーの第一砲塔砲長の代理を務めているのだ。

 

「挨拶はいい。何か妙案があるようだが…」

 

《はっ。荒唐無稽と思われるかもしれませんが、艦尾に注水していただきたいのです。そうすれば艦首が上がって主砲の仰角が稼げる筈です》

 

「なっ…」

 

メイルの策には流石のカイザルも面食らった。

確かに理論上は可能であろうが、実行に移せるかどうかは別問題だ。

 

《今なら艦を傾斜させればどうにか照準出来ます!これ以上接近されると主砲では狙えません!》

 

「……私が責任を取る。艦長、艦尾注水!この手しかない!」

 

「司令、正気ですか!?」

 

「あんな物を落とすには正気なぞ邪魔なだけだ!どのみちこのままではラス・アルゲティの二の舞いだぞ!」

 

「えぇい!承知しました、付き合いましょう!艦尾注水!動ける者は可能な限り艦尾方向に集合!」

 

カイザルの言葉に艦長も半ば自棄になりながら命令を下す。

すると徐々に後方へと艦が傾き始め、第一砲塔が近づいてくるパル・キマイラへと向けられた。

 

「頼むぞ…」

 

傾斜した床に足を取られないように踏ん張りながら祈りの言葉を呟くカイザル。

それとほぼ同時に、艦内電話からメイルの声が鳴り響いた。

 

《照準よーし!発砲許可を!》

 

「艦長!」

 

「知りませんからね!もう好きにしろ!」

 

「だそうだ!」

 

《はっ!第一砲塔、弾種対艦徹甲弾!発射!!》

 

──ドゴォォォォォォォンッ!!

 

もはや指揮もへったくれもないカオスな状況であったが、パルサーはグレードアトラスター級の象徴である46cm三連装砲の威力を遺憾なく発揮した。

巨大な爆炎と轟音が空を揺らし、飛び出した3発の砲弾は空気を切り裂き…

 

──ズゴガァァァァァァァァァァン!!

 

なんとそのうちの1発がパル・キマイラの中心部、ジビル投下の為に開いていたハッチに飛び込んで炸裂した。

 

「……は、ははは」

 

その光景を目の当たりにしたカイザルの口から自然と溢れ出す笑い。

その間にもパル・キマイラは中心部から外側へ向かって各部が爆発してゆき、ついには駆逐艦や巡洋艦を沈めていた砲塔が爆発して脱落した。

 

「当たった…当たったぞぉぉぉぉぉ!!」

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!」

「やりやがった!あの野郎やりやがった!」

「すげぇ!メイルすげぇ!」

 

カイザルの歓声をきっかけに、堰を切ったかのように湧き上がる歓声。

カイザルの決断、メイルの腕前、グレードアトラスター級の性能…そして幸運。

何を欠いても実現しなかったであろう、正に奇跡であった。

 


 

──中央歴1642年10月3日午前10時、バルチスタ海──

 

「馬鹿な…」

 

非常灯で真っ赤に染まった管制室で、ワールマンは呆然と立ち尽くしていた。

 

「反重力システム制御不能!降下出来ません!」

「魔力炉心制御不能!出力が…出力が上がり続けて…!」

「ジビル活性化作業停止!……停止出来ないだと!?」

 

ディスプレイが明滅し、あらゆるブザーが鳴り響き、爆発で艦全体が揺れる。

本来なら艦長であるワールマンが指揮をしてダメージコントロールなり退艦命令を下すべきなのだが、完全に慢心しきってそれを打ち砕かれた彼は頭が真っ白になって何も出来ずにいた。

 

「艦長、命令を!艦長!……クソっ。総員退艦!パラシュートを背負って飛び降り……」

 

主任技士がワールマンへ指示を仰ぐが、使い物にならないと判断して自身の判断で退艦命令を出すが、一足遅かった。

 

──ドゴォォォォォォォォォォンッ!!

 

パル・キマイラの動力である魔力炉心が爆発し、投下間近だったジビルに誘爆、戦艦を一瞬でスクラップにしてしまう程のエネルギーが内部で炸裂した結果、パル・キマイラは乗組員ごとバルチスタ海の上空で特大の花火となってしまった。




2〜3話ほどエピローグを書いてから次に行きます

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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