あの雑なモザイクから滲み出るアズレン運営の怒りよ…
──中央歴1642年10月3日午前11時、バルチスタ海──
「ふぅ…どうにかなったか…しかし本当に空中戦艦へ主砲を直撃させるとはな。メイル砲長は勲章ものだ」
昼戦艦橋へと移動し、興奮冷めやらぬ様子でそう述べるカイザル。
絶望的状況を打破出来たのだから当然ではあるが、彼にはまだまだ仕事が残っていた。
「しかし、まだムー艦隊とミリシアル艦隊が健在だ。駆逐艦や巡洋艦を多数失った今となっては空襲を耐え切れる保証はどこにもない」
そう、一時撤退したムー艦隊とまだその姿を見せないミリシアル艦隊の存在だ。
特にムー艦隊は有力な航空戦力とそれなりに強力な戦艦を保有している為、艦隊が半壊状態となっている現状では打ち負かされる可能性が高い。
そこにミリシアル艦隊まで加わるとなれば、空中戦艦撃沈の戦果を手土産に撤退するのが賢明だろう。
しかし、このまま撤退する訳にはいかない。
何故なら、海上には漂流する戦友達が居たからだ。
「司令、漂流者の救助ですが…遅々として進みません。やはり駆逐艦や軽巡洋艦の多くを失ったので…」
気不味そうに艦長が報告する。
軽巡洋艦と駆逐艦は小回りが効き乾舷が低い為、漂流者の救助にもってこいなのだが、パル・キマイラの攻撃によってそれらの艦船は8割程が撃沈されてしまっている。
その為、救助に回せる艦は少なく、更には敵襲を警戒しており救助に集中出来ない為、救助活動が効率よく進まないのだ。
「だが戦友を見殺しには出来ない。我々が撤退して漂流者が溺れ死ねば兵の士気は下がるし、運良く溺れなかったとしても異世界軍に拾われれば死すら生ぬるい運命が待っているのだぞ」
軍人が戦場に赴き命懸けで戦うのは、万が一の事があっても助けてくれるという確信があるからだ。
その期待を裏切ってしまえば、兵は保身に走り統率が取れなくなってしまうだろう。
更にカイザルが懸念するのは、異世界国家による報復だ。
というのも全世界に放送された捕虜虐殺…外務省と近衛兵団主導で行われた凶行に軍は関わっていないが、異世界国家側からしてみればそんな内情なぞ知った事ではないだろう。
もし、漂流者が異世界国家に救助されれば虐殺の報復として拷問の果てに処刑されてしまう事は火を見るより明らかだ。
故に生存者は全員、可能ならば遺体も全て引き揚げたいのだが、敵は果たしてそれを許してくれるだろうか?
救助作業中に空襲でもあればひとたまりもないし、爆撃機や雷撃機でなくとも戦闘機による機銃掃射でも漂流者や駆逐艦にとっては致命傷になってしまう。
「分かっています。しかし、敵が待ってくれるか…」
「今は祈るしかない。だがもし敵が来るのなら…」
「て、敵艦接近!」
迎撃するしかない、と続けようとしたカイザルだが、それは見張り員からの恐れていた報告によって途切れてしまった。
「戦闘配置!救助活動を邪魔させるな!」
「待て、艦長!何かおかしい…」
近付いてくる敵艦、それは確かに普通ではなかった。
先ず数が少なすぎる。
軽巡洋艦らしき艦と駆逐艦らしき艦が1隻ずつの2隻だけ…追い討ちをかけるにしても数が少なすぎる。
しかも両艦共に主砲を始めとしたあらゆる火砲を最大仰角にしたまま、20ノット程度の戦闘速度とは言えない速度で近付いてくる。
「敵艦より通信が」
「まさかな…繋いでくれ」
通信士からの報告に、カイザルは半ば察しつつも最後まで分からないとばかりに通信を繋げるように指示する。
《ごきげんよう、グラ・バルカス帝国の皆さん。私はムー海軍所属の巡洋艦ラ・ヘレナのアリシア・トワネロと申します。今は戦うつもりはありません。願わくば、この時ばかりは理性的な対応を求めます》
「女…?」
「女の船乗りはムーにも居るのか」
「…ちょっと可愛い声だな。タイプかも」
色めき立つ乗組員を手で制し、カイザルが返答する。
「こちらグラ・バルカス帝国海軍東征艦隊司令のカイザル・ローランドだ。こちらは戦友を救助している最中だ。出来れば貴女にはそのまま踵を返して帰ってほしいものなんだがね」
《あら、それは私達もです。私達も戦友の救助を行いたいので…ここは一つ休戦と致しませんか?
「休戦?」
《はい。お互いの兵を救助し、お互いに撤退致しましょう。救助と撤退が完了するまで、お互いに戦闘行為を一切行わない…いかがでしょうか?》
「……それはありがたい申し出だが、そちらに何の利がある。そちらからすれば空襲すれば我々を容易く殺せるだろう」
アリシアからの提案は確かに魅力的だが、狙いが分からない。
相手はあくまでも"敵"なのだ。
用心はすべきだろう。
《私達は憎悪で戦っているのではありません。国を護る為に戦っているのです。殺さずに済むのであればそれに越した事はありませんし…なにより、もし私が漂流する立場となったら無事に助けてほしい。それだけでは不満でしょうか?》
アリシアの言葉を聞いたカイザルはハッとした。
帝国が全世界に宣戦布告した動機…それはもとを辿れば皇族ハイラスが理不尽に処刑されたためだ。
その報復としてパガンダ王国を滅亡させた事はまだ同情出来るだろうが、レイフォルを滅ぼし、捕虜を虐殺した挙げ句に全世界への宣戦布告なぞ憎悪によって動いているといっても過言ではない。
それを突きつけられたカイザルは、己と世論に踊らされる軍を恥た。
「……分かった。"貴官"の提案を受け入れよう。ただし、二つほど条件がある」
《何でしょう?》
「先ず一つ、偶発的な戦闘を避ける為に救助活動を行う艦以外は撤退する事とする。こちらもそちらに合わせて駆逐艦と巡洋艦を1隻ずつとしよう」
《ご配慮ありがとうございます。二つ目は?》
「互いに救助活動中は所属に関わらず救助し、終了後はその場で捕虜交換を行う。これでどうか?」
《はい、異論はありません。では始めましょう。時間をかければ生存者は少なくなります》
「分かった。ではこれで」
通信を終えたカイザルはすぐさま救助活動を行わせる巡洋艦と駆逐艦を指名すると、全艦隊へ撤退を命令するのであった。
──中央歴1642年10月3日正午、バルチスタ海──
「ふぅ…どうにかなったわね。話が通じる人で助かったわ」
カイザルとの交渉を終えたアリシアは深いため息をつきながら深々と椅子に座った。
この交渉はムー艦隊提督であるレイダーからの指示によるものであったのだが、ムー艦隊のこの方針は何も人道的な理由だけではない。
というのもバルチスタ海へ向かっていたミリシアル艦隊、エモール風龍部隊、多国籍連合艦隊はパル・キマイラ撃沈の報を受けると士気が崩壊して戦わずして撤退してしまったのだ。
そんな状況でグラ・バルカス帝国艦隊と戦うのは少々厳しいと判断され、一時休戦と協同救助活動を提案したのであった。
「さて…最後の大仕事なんだから気合い入れないとね」
自らの頬を叩き気合いを入れ直したアリシアは、双眼鏡を持ち出すと自らも捜索活動に参加するのであった。
次回を終わらせたらグ帝に宣戦布告を叩き付けに行きますよ
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい