異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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思ったよりラ・カサミ関連が長くなりそうです


258.全力で不完全

──中央歴1642年10月6日午前9時、サモア基地──

 

新たな姿へと変貌したラ・カサミの外見を一通り見た指揮官とミニラルとマイラスは、続いて艦内へと足を踏み入れた。

外回りと違い艦内はそこまでの違いは無い…と思いきや、見る者が見ればいい意味で変わり果てていた。

 

「おや…これは…」

 

「ミニラル艦長、どうされましたか?」

 

「いや、この通路の天井だが多くの配管が這わせてあるだろう?この配管には電気配線や消火用の水が通してあるんだが、全てに名称が刻印されていてどこへ繋がっているかが一目で分かる。改修以前にも似たような事はされていたが、刻印が見やすいフォントと色になっているから、戦闘中の混乱でも見間違う事はないだろう」

 

「なるほど…これが人間工学に基づいた設計というわけですか。確かにこういった気配りも大切ですね。しかし、この照明もすごいですね。殆どが樹脂で出来ていてガラスの電球の様に割れる事無く、それでいて長寿命かつ省電力なのに明るいだなんて…」

 

艦内の通路を歩きながらミニラルとマイラスは辺りをキョロキョロと見回しながら語り合う。

彼らが言う通りラ・カサミの内部は配管類を全て敷設し直した上に、白熱電球だった照明を防水・対衝撃LED照明に変更した事で以前よりスッキリとした明るい空間となっている。

もちろん軍艦であるため水密区画により細かく区切られている上に、装甲の合間に作られたような狭い通路だが、整理すればこんなにも広く見えるのだ。

更には各所にはダメージコントロール用の木材や工具、消火ホースが専用の箱に収められて設置されており、これなら万が一の際にも手間取る事はないだろう。

 

「色々と見るべき場所はありますが…一番に見て頂きたいのはここです。あまり待たせても悪いですしね」

 

「待たせて…?もしかして誰かいらっしゃるのですか?」

 

艦橋の根元にある一際分厚い装甲に覆われた戦闘指揮所に続く水密扉を前にして指揮官が告げた言葉にマイラスは問いかけるが、指揮官は楽しげな笑みを浮かべて扉を開けた。

 

「それは見てのお楽しみ!」

 

「おぉっ!」

 

水密扉の先に広がっていたのは、戦闘艦という概念を覆すような光景だった。

壁面には多くのモニターが並び、それらの前には様々なスイッチやダイヤルが取り付けられたコンソールがあり、その前に椅子が置かれている。

そして最も目立つのは、中央部に置かれた巨大なガラス板である。

そのガラス板の中心には船を真上から見たイラストと、それから同心円状に何重にも円が描かれていた。

 

「ここは戦闘指揮所…ですがただの指揮所ではありません。レーダー、光学機器、目視、航空機からの情報、僚艦からの情報…全てをここに集約し、処理するための言わば戦場情報集積処理所、コンバット・インフォメーション・センター…略して『CIC』です」

 

「この艦だけではなく、航空機や僚艦からの情報も!?」

 

「なるほど…あのモニターやコンソールはそれらを処理する為にあるのですか。しかし、そんなにも膨大な情報をこのCICとやらの人員だけで処理出来るのでしょうか?」

 

驚愕するミニラルに対し、マイラスは懸念を口にする。

アズールレーンとの交流によりムー海軍はレーダーや高性能航空機を手にした事によって、一海戦において入手する情報が飛躍的に向上していた。

それ自体は喜ばしい事なのだが、それらを処理する人員の負担が増加しており、今でもギリギリなのだ。

だと言うのにこれ以上人員の負担が増えれば情報処理が追いつかないどころか、間違った情報を伝達してしまいかねない。

だが、そんなマイラスの懸念への解決策を指揮官はしっかりと用意していた。

 

「大丈夫ですよ、マイラス殿。その為の助っ人が居ます」

 

「そう言えば待たせている、と仰っていましたね。その助っ人とやらはどちらに?」

 

ミニラルがCICをキョロキョロと見回すが、人影は無い。

何処かに隠れている訳でもなければ、別室からコチラにやってくる気配もない。

 

「居ますよ、ここに」

 

「?」

 

「まさかこの台座に…?」

 

指揮官が指差したのは、中央部にあるガラス板だった。

彼の発言の意味が分からずにミニラルとマイラスがガラス板を固定している台座を上から覗き込むと…

 

「これは…キューブ?」

 

マイラスがサモアに訪れた際、忘れられぬ出来事を引き起こした青く光る立方体…キューブが埋め込まれていた。

KAN-SENの存在を作り出す物であり、彼女達の心臓部とも言えるそれが何故ここにあるのか?

その疑問はすぐに氷解する事となった。

 

《ミニラル艦長…》

 

「ん?」

 

ミニラルの耳に届いたやや低い女性の声…この場には指揮官とマイラスと自身しか居ない為、何かの聞き間違いだと思ったのだが…

 

「まさか…コレって…!?」

 

マイラスにも届いた"声"は何が起きているのかを彼に悟らせるには十分な証拠であった。

 

《ミニラル艦長、マイラス技官。こうしてお会いするのは初めてですね》

 

「うおわぁっ!?」

 

ガラス板に浮かび上がる人の姿。

うなじの辺りで結んだ明るい茶色の髪はくるぶしまで届く程長く、切れ長ながらも穏やかな印象のある目には深緑色の瞳が煌めいており、スラリとした手足と体付きは肉感的という訳ではないが、磨き抜かれた刃のようだ。

誰が見ても美女と評するであろう女が、まるでテレビ番組のようにガラス板に投影されたのだ。

 

「なるほど…彼女はまさか…」

 

「えぇ、マイラス殿のお察しの通りです。ラ・カサミは正直言って正規の手段では改修してもオリジナルに毛が生えたような性能にしかなりません。いっそスクラップにして新しい戦艦を仕立て上げた方が良い…しかし、キューブを使えば別です」

 

ガラス板の台座をコンコンと叩き、言葉を続ける指揮官。

 

「キューブにはあらゆる可能性があります。物理法則を無視し、莫大なエネルギーを生み出し、時には"魂"の原型となる…私はその可能性に賭けました。一度バラバラにしたラ・カサミの各部にキューブを埋め込み、キューブ建造に使われる光波を照射しながらの再組立て。その結果、賭けに勝ちました」

 

《はい、指揮官殿の仰る通りです。元々私は意思を持たぬただの兵器でした…しかし、奇跡と称しても差し支えないような偶然が重なり、不完全ながらもKAN-SENとして生まれ変わったのです》

 

「そういう事です。普通のKAN-SENとは違って人間としての姿は持ちませんが、それ以外はKAN-SENと変わりません。我々人類では到底及ばないような演算能力でCICでの情報処理から一部兵装の操作まで、皆さんの手助けをしてくれますよ」

 

「なんと心強い…!改めてよろしく頼みます、ラ・カサミさん」

 

《おやめください、ミニラル艦長。貴方は私の艦長なのですから、そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ》

 

「むっ、それもそうか。では再び改めて…よろしく頼む」

 

《はい。貴方の下でムーの為に死力を以て戦い抜きます》

 

同じ次元にこそ無いが、志を同じくする二人は敬礼を交わし合い、祖国の為に戦う事を改めて誓うのであった。

 




ラ・カサミの声はFDGに近い感じです

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
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  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
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