異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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259話で次次回はドンパチだと言いましたが、やっぱり次回になりますね

あと前話でイシュタムの内訳に軽空母1を入れ忘れてたので追加しました


261.変革と保守

──中央歴1642年10月9日午前9時、オタハイト北東沖──

 

グラ・バルカス帝国艦隊襲来に備えてムーの首都オタハイトの沖合に展開したムー艦隊。

とは言っても彼らはたった2隻…サモアで改修を受けたラ・カサミとラ・ツマサだけであった。

と言うのも首都であるオタハイトだけは何があっても死守せねばならないという事から、残りの艦は敵別働隊を想定してオタハイト近海に留まっているのだ。

一見すると沖合に突出した2隻は捨て石に見えてしまうが、それは違う。

寧ろ改修を受けた2隻は現状ムー最強の戦艦と言っても過言ではなく、2隻だけでも敵艦隊迎撃は容易だと太鼓判を押されているため、乗組員やラ・カサミとラ・ツマサ自身たっての希望で突出しているのである。

 

《国民の皆様、おはようございます。内閣主席宰相のタンドラ・ハイラーです》

 

いつ敵艦隊の姿が見えてもおかしくないが、ラ・カサミの乗組員達の意識はテレビに、或いはラジオに向けられていた。

何もサボっている訳ではない。

これからムーの歴史が変わろうとしているのだから、無関心でいられる訳がない。

 

《さて、グラ・バルカス帝国による全世界に対する宣戦布告より約半年、彼の国による件の蛮行から3ヶ月と少し…我々内閣は様々議論を繰り広げてきました。果たして彼の国に我々は戦えるのか、戦ったとして勝機はあるのかを》

 

テレビ画面に映るハーフドワーフであるタンドラ首相の姿にラ・カサミの乗組員だけではなく、ムー全国民…いや、全世界の人々が釘付けとなっている。

 

《幾度か彼の国の軍門に降るべき…そう言った意見も語られました。確かに国民の皆様の命を守るにはそうすべきかもしれません。しかし、全世界に対し他国民を殺害する様子を放映する人々が果たして約束を守るでしょうか?

私はそうは思いません。あらゆる財産は没収され、人々は彼の国の世界征服という野望の為の尖兵に、或いは人々を殺す為の兵器を作らされるかもしれません。いや…かもしれない、のではないのです。

彼の国は確実に、ムー民族を絶滅させんとあらゆる手を尽くすでしょう!》

 

タンドラが演台に掌を叩き付ける。

その身振りは、グラ・バルカス帝国の残虐さを今一度人々に伝えているかのようだ。

 

《故に我々は決意しました!我が国は、ムーは決して屈さない!暴虐なるグラ・バルカス帝国に対し徹底抗戦し、必ずや国家の主権と国民の命を守り、平和を取り戻すのです!》

 

確かな決意に満ちた言葉に、詰め掛けたメディアから拍手が沸き起こる。

対グ帝戦の最前線であるムーが徹底抗戦の意思を表明した事は、他国にも希望を与える事になったのだろう。

 

《しかし、彼の国と我が国…その技術格差は如何し難いものがあります。具体的には30年程の技術格差があり、全面戦争ともなれば敗北は間違いないでしょう。ですが、我々には心強い友の存在があります!遥か東方の新興国ロデニウス連邦、そして悠久の時を経て再会した同胞サモアのアズールレーンです!》

 

力強いタンドラの言葉と共に背後の緞帳が下され、巨大な世界地図が姿を現した。

 

《遥か遠く離れていながら彼らは我が国に多大なる支援を約束し、滞り無く実現してくれました!高性能戦闘機に、先進的戦車、グラ・バルカス帝国の物に十分対抗出来るような戦艦や空母をはじめとした艦船を輸出し、それらの整備や製造を自国で行う為の指導まで行ってくれたのです!

更に彼らはそれだけに留まらず、より進んだ兵器の輸出や我が国との共同開発を持ち掛けてくれた…これにより、我が国の技術水準は50年は進んだ事でしょう!》

 

人々に訴えかける為に声を張り上げていたタンドラだが、流石に喉に負担がかかり過ぎたのか、グラスの水を一気に飲み干すと声のトーンを落として話を続けた。

 

《ですが、我々は彼らの善意に報いられていない。確かに対価を払ってはいますが、世界秩序の為に奔走する彼らの理念に我々はぶら下がっているだけです。

このままではいけない。我々は第二列強国としての責務を果たさねばなりません!

よって我が国は永きに渡り堅持してきた中立政策を破棄し、アズールレーンへの加盟とロデニウス連邦との軍事同盟締結をここに宣言します!》

 

その言葉にメディア席から機関銃のような速度で次々とフラッシュが焚かれる。

数百年にも渡って保たれてきたムーの中立、それがこの瞬間に終わったのだから今日の夕刊の一面はこの件で持ち切りだろう。

 

《ミニラル艦長、我が国のアズールレーン加盟により誘導兵器と機関のロックが解除されました。いつでも使用可能です。あの子…ラ・ツマサの誘導兵器と艦載機のロックも解除されたようですね》

 

「ありがとう。これで全力を出せるな」

 

艦橋の艦長席でテレビを見ていたミニラルは、傍に投影されているラ・カサミからの言葉を聞いてニヤリと笑みを浮かべる。

彼女達はサモアで様々な改修を受けはしたが、ミサイル兵器や一部エンジンは使用出来ないようになっていた。

これは友好国とは言え、アズールレーンに加盟もロデニウス連邦との同盟もしていないムーに、限られた国にしか輸出していない兵器を輸出したとあっては不公平であるため、搭載して訓練を施した上でアズールレーン加盟が公表されるまでロックしていたのだ。

 

「さて、こうなれば首相は…」

 

中立の破棄だけでも大ニュースだが、まだ続きがある事はムーの人々皆が察している。

 

《加えて我が国はこれより戦時体制に移行、国家存亡に関わる事態と判断し、ラ・ムー国王陛下への権限返上をここに宣言すると同時に、戦争回避に失敗した責任を取るために内閣を解散いたします》

 

これに関してはある意味伝統だ。

国王への権限返上を行った内閣は、それだけの事態を回避出来なかった事と、国王に責任を負わせる事への謝罪の意味を込めて解散するのだ。

そうすると有事にも関わらず政治的混乱が発生しそうに思えるが、その心配は別の伝統によって解消される。

 

《国民の皆様、国王のラ・ムーです》

 

タンドラに代わり登壇したラ・ムーが軽く会釈する。

 

《本日より、我が国における全ては私が責任を負います。つきましては、私を補佐する閣僚を指名致しますので、名前を呼ばれた方は前に…宰相、タンドラ・ハイラー君》

 

《はっ!》

 

ラ・ムーに名を呼ばれたタンドラが一歩前に出る。

そう、国王への権限返上によって解散した内閣の閣僚は、基本的に能力や人格に問題が無ければそのまま補佐閣僚として登用されるのだ。

幸い、タンドラ内閣の閣僚に問題は無い為、全員が補佐閣僚となった。

 

《……っ!?ミニラル艦長!》

 

「来たか…総員、戦闘体制!艦橋要員はCICへ!」

 

次々と指名される閣僚を見ていたミニラル達だったが、ラ・カサミからの鋭い呼びかけに反応すると澱みない動きで戦闘準備を整える。

 

「数と種別は?」

 

《戦艦級が1、巡洋艦級が3、駆逐艦級が4…計8です》

 

「彼我の戦力差は4:1か…」

 

《待って下さい。巡洋艦級の反応から航空機の反応が…おそらく巡洋艦級の内1隻は小型の空母かと…》

 

「空母か…少々厄介ではあるが好都合。対空ミサイルの力、見極めさせてもらおう。ラ・カサミ、新型機関を駆動させるんだ」

 

《はい。…ガスタービン、始動!》

 

──ヒュイィィィィィィィィィィ…

 

ラ・カサミの声と共に、これまで動かしていたディーゼルエンジンとは違う甲高い駆動音が鳴り響く。

ラ・カサミとラ・ツマサは改修の際に機関も載せ替えられているのだが、元々の艦体には低燃費かつムーでも馴染み深いディーゼルエンジンを巡航用機関として搭載し、延長艦体には戦闘航行用として18000馬力のガスタービンを8基搭載し、4軸のスクリュープロペラを駆動させるのだ。

その大出力と流体力学的に洗練された艦体のおかげでラ・カサミは35ノット、左右に張り出した飛行甲板の空気抵抗があるラ・ツマサでさえも32ノットもの速度を発揮出来るのである。

 

《船速30ノット、機関制御を機関室に移管します》

 

「よし、ラ・カサミは兵装制御の補佐に集中してくれ。さて…こんなスゴイ船なんだ、勝たねばムー軍人としても男としても恥だぞ!」

 

CICの艦長席に座ったミニラルは、艦内放送で檄を飛ばすと、レーダーに映る光点を戦意に満ちた双眸で睨みつけた。




本当にこの設計で35ノット出るかは知りません

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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