異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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ラ・ツマサ無双!
と言いたいところですが、実質ハリアー無双ですね…


263.オタハイト防衛戦【2】

──中央歴1642年10月9日午前11時、オタハイト北東沖──

 

──ゴォォォォォォォ…

 

イシュタム艦隊の艦載機を叩き落し、ムー艦隊の制空権を確固たるものとしたハリアー部隊が母艦であるラ・ツマサへと帰還した。

胴体側面に取り付けられた左右2基の排気ノズルを真下に向け、飛行甲板へ垂直に着艦する様は主翼の下反角が付いた姿も相まってまるで天使が空から降り立つような印象がある。

 

「発艦には滑走が必要だけど着艦は垂直に出来るとなれば色々と戦術の幅が広がるな…ラ・コスタ級や改装中の護衛空母でも運用出来るようになれば、小型空母に艦載機を分散配置して万が一空母が撃沈されても航空戦力の被害を減らすとかできそうだな」

 

着艦し、エレベーターに乗せられて格納庫に収められるハリアーの姿を見ながらラ・ツマサに乗艦していたマイラスがそう感心したように述べる。

ムーの主力空母であるラ・コスタ級はカタパルトの装備によってマリンより遥かに高性能なコルセア等の艦載機を運用出来るようになったが、残念ながらそれ以上の高性能機…つまりジェット戦闘機の運用は不可能だと考えられている。

しかし、ラ・ツマサの飛行甲板でも運用可能であるならばより長い飛行甲板を持つラ・コスタ級でも運用出来、これから訪れるであろうジェット機時代でも同級の運用を継続出来るであろう。 

あるいは艦隊に複数のハリアー搭載小型空母を配備すれば、万が一空母が撃沈されたとしても艦載機の喪失は最低限となる為、戦略上有利となるだろう。

そんな未来の空母運用を考えていたマイラスだが、それはラ・ツマサの不穏な言葉によって途切れてしまった。

 

「主、対艦攻撃に移ります。連中は生かしておけません。手始めにハリアー全機は30mm機関砲を外して、500kg爆弾を2発と19連装70mmロケット弾ポッドを2基、増槽を1つ装備して手始めに敵駆逐艦を殲滅します」

 

「い、生かしてはおけないって…」

 

「主」

 

戦意満々…というよりは殺意満々なラ・ツマサに若干引くマイラスだが、それに対して彼女はゾッとするような冷たい声色で続けた。

 

「連中の艦載機をハリアー越しですが近距離で見ました。垂直尾翼に描かれた部隊章…あれはイシュタムと呼ばれるグ帝の地方艦隊です」

 

「地方艦隊?」

 

「地方艦隊と言っても連中の任務は植民地の警備…現地人の反乱を抑制、鎮圧するために残虐非道な行いを躊躇いなく行ってきた連中です。"私が建造された世界"でも、連中は市街地への無差別砲爆撃はもちろん、時には上陸して口にするのも悍ましい乱暴狼藉を働いていたのです。連中を生かしておいても何の価値もありません。全力で叩き潰し、一刻も早く海の藻屑にしてやりませんと」

 

「わ、分かったよ…でも、漂流者に機銃掃射したりしたらダメだからね!?そんな事をしたらこっちまで虐殺者と同じになっちゃうよ!」

 

「分かっていますとも、主♡……装備換装と燃料補給完了!さぁて、吶喊する姉上の露払いといきましょう!」

 

爆装による重量増加のせいで重々しく飛び上がるハリアー部隊を笑顔で見送るラ・ツマサ。

 

「大丈夫かなぁ…あれ?なんだか前にもこんな気分になった気が…」

 

一方のマイラスは敵とは言え、ラ・ツマサの殺意に晒される事となるイシュタム艦隊へほんの少しだけ同情するのだった。

 


 

──中央歴1642年10月9日正午、オタハイト北東沖── 

 

海上を疾走する1隻の巡洋艦と4隻の駆逐艦、それはイシュタムのオタハイト襲撃艦隊に所属する艦であり、彼らはメイサがレーダーで捉えた敵航空機が飛び去った方向へ向かっていた。

 

「レーダー手、敵空母はまだ見つからないのか!」 

 

「まだ見つかりませんよぉ!コイツのレーダーは旧式なんですから、中央艦隊やら近衛兵団みたいにはいかないんですよぉ!」

 

駆逐艦を先導しながら30ノットで航行する巡洋艦『フルド』の艦長『レムニ・スケール』が鳴り響く機関の轟音に掻き消されないように大声でレーダー手に問いかけるが、残念ながら彼が望んだ答えは帰って来なかった。

 

「くそっ…貧乏くじを引いたな。オスニエルの野郎…上官じゃなけりゃぶん殴ってやったってのに」

 

彼らが艦隊を離れ、敵空母を探しているのは簡単に言えばオスニエルのせいだった。

というのもオタハイト襲撃作戦の第一弾として彼が考えた"オタハイトに接続する主要道路へ燃焼弾を投下して火災を起こし、ムー人がオタハイトから逃げられない様にする"という人道に反する作戦が艦載機の全滅という結果に終わり、それに憤ったオスニエルは近くに敵空母が潜んでいると判断し、レムニへ水雷戦隊を率いて空母を撃沈するように命じたのだ。

無論、これにはレムニも反対した。

敵が有力な艦載機を持っている以上、メイサも危険であり、護衛となる駆逐艦や巡洋艦を外せば各個撃破されるだけだと。

しかし、オスニエルは「ムーの艦載機はあれで全てのはずだ!」だの「再出撃には時間がかかるだろうから、その隙をついて魚雷を撃ち込め!」だの散々根拠に乏しい持論を展開して、反対意見を封殺したのである。

 

「艦長!対空レーダーに反応!数は8…凄い速さでこちらへ向かってきます!」

 

「何ぃ!?」

 

レーダー手からの言葉にレムニは驚愕した。

確かにオスニエルの持論は根拠に乏しいが、理解は出来る。

もしムーがより多くの艦載機を持っているならば、こちらの艦載機を撃滅して直ぐに攻撃隊を差し向ける筈だが、暫くしてもそれは無かった。

となれば、オスニエルの言う通りムーが現在動かせる航空戦力はあの8機だけであり、制空戦闘装備から対艦攻撃装備に換装して給油や整備の為にそれなりの時間がかかるだろう。

オスニエルと同じ考えになったのは癪だが、レムニ自身もそう考えていた。

確かにオスニエルとレムニの考えは正しい。

ムーの航空戦力は現状ラ・カサミのハリアー8機だけであるし、ハリアーは制空戦闘の為に装備した30mm機関砲パックを外し、代わりに爆弾やロケット弾ポッドを装備して給油して更に場合によっては整備した上で出撃しなければならない。

これが普通の空母なら、レムニ達は魚雷の射程圏内まで肉薄出来ただろう。

しかし、相手はラ・ツマサ…つまりKAN-SENだ。

KAN-SENの艦載機の装備換装・給油・整備は人の手を必要とせず、一旦格納庫に収納すれば機体は素粒子に分解され、KAN-SENの意志で必要な装備に換装された完璧な状態に再構築されるのだ。

故に装備換装等にかかる時間は極めて短く、短いスパンで異なる目標を攻撃出来るというわけだ。

 

「チィッ!オスニエルの野郎、やっぱり違ったじゃねぇか!全艦、対空戦闘用意!いいか、撃ち落とす必要はない!奴らが攻撃出来ないようにしながら敵空母に近付くんだ!母艦が無くなれば奴らは燃料切れで勝手に落ちる!」

 

無論、そんな事を知らないレムニは悪態をつきながら命令を下す。

 

「艦長ぉ!敵機、レーダーから消えました!」

 

「消えたぁ!?何を…」

 

「あっ、また現れた!敵機、距離…また消えた!?」

 

「レーダーの故障か!?」

 

「いえ、さっき一瞬ですが敵機の高度を把握出来ました!50m程度の低空を飛んでいるせいで上手く探知出来ないんです!」

 

「ポンコツがぁ!」

 

現行型より性能が低い旧式対空レーダーは低空目標が上手く探知出来ないという弱点があるが、ムーはそれを知ってか知らずか利用してきたようだ。

そんな旧式レーダーにレムニは罵声を浴びせると、顔を歪めながら新たな命令を下した。

 

「低空を飛んでいるって事は魚雷だ!全艦、可能な限り間隔を空けて個別に回避運動!」

 

「魚雷!?異世界国家に魚雷は…」

 

「馬鹿野郎!あんなとんでもねぇ艦載機があるんだぞ!魚雷があっても不思議じゃねぇ!」

 

驚く通信士を怒鳴りつけて命令を各艦に伝達させたレムニは、双眼鏡を覗いてレーダー反応があった方に目を向けた。

 

「……あれか!」

 

低空を猛スピードで飛び、こちらに向かってくる8つの機影…その姿は徐々に明らかとなる。

その帝国の航空機とは違う異形さに目を奪われかけるが、レムニは真っ先に敵機の胴体下や翼下を確認した。

 

「……魚雷じゃない?」

 

一斉に旋回する敵機は胴体下と翼下に細長い大小の円柱状の物体を吊り下げているが、魚雷には見えない。

どうやら敵機は艦隊の側面に回り込むつもりらしいが、その途中で胴体下の物体を海に投下した。

 

「胴体下は増槽か?なら翼下は…?」

 

翼下の内側の物は魚雷というより細長くした爆弾に見えるし、翼下外側の物は円柱状というしかない形状で魚雷にも爆弾にも見えない。

 

「まさか…この高度で水平爆撃をするつもりか?当たる訳がない!」

 

対艦攻撃の爆撃と言えば急降下爆撃が思い浮かぶが、水平爆撃も対艦攻撃手段として選択される場合もある。

とは言っても基本的に対艦水平爆撃は命中率が低いため、爆弾を多く搭載出来る大型爆撃機を多く動員するか、もしくは停泊中を狙うかだ。

そしてどちらにしても位置エネルギーを爆弾に与える為に、投下は高高度から行うのが基本である。

しかし、ムーの艦載機は少数の小型機が低空を飛んでいる。

このような状況で魚雷ではなく爆弾を抱えて突っ込んできたのはどのような意図があるのだろうか?

そうレムニが頭に疑問符を浮かべていると、さらに彼を困惑させる事態が起きた。

 

「なっ…ば、爆弾を捨てた!?」

 

旋回が終わり、艦隊の側面に回り込んだ敵機は何故か爆弾を捨て、増速してそのままこちらの頭上を飛び去ってしまった。

もちろん、対空攻撃は行ったが、敵機は凄まじいスピードであったため掠りもしない。

 

「攻撃を中止…な…」

 

──ドゴォォォンッ!

 

何故?そう述べようとしたレムニだが、それは轟音によって掻き消されてしまった。

 

──ビュゥゥゥンッ!

 

「うぉっ!?」

 

何事かと窓に近付いて辺りを見回そうとするが、艦橋の真正面を何かが高速で横切り、その何かは海面を2度3度と跳ね…

 

──ドンッ!

 

海上に巨大な水柱を作って炸裂した。

 

「か、艦長!駆逐艦が3隻一気に轟沈しました!いったい何が…」

 

「まさか…」

 

レムニは何が起きたか朧げながら理解出来た。

 

「奴ら…爆弾を海面で跳ねさせたのか…?」

 

そう、ムー艦載機ことハリアーが行ったのは、低空を高速飛行しながら爆弾を投下し爆弾を水切りの要領で水面を跳ねさせて敵艦の舷側を攻撃する、所謂『反跳爆撃』であった。

800km/h程の速度で飛行するハリアーから投下された500kg爆弾は水の抵抗で若干速度が落ちたとは言え、少なく見積もっても700km/hもの速度で駆逐艦の薄っぺらな舷側を襲い、炸裂したのだ。

直撃すれば重巡洋艦クラスでもひとたまりもない威力だ、駆逐艦は文字通り轟沈してしまった。

 

「奴ら、なんて真似を…曲芸か!?」

 

グラ・バルカス帝国にこのような戦術は無い。

何せグ帝の航空爆弾は所詮消耗品だからと大した弾体強度は無く、対艦・対要塞爆弾でも弾体先端部が補強されているだけであるため、もし反跳爆撃しようものなら弾体が破損してしまうだろう。

 

「艦長!敵機、引き返して来ます!」

 

「だが奴らは爆弾を使い切った筈だ!何が出来る!」

 

レムニは自身の目で8機の敵機から2発ずつの爆弾が投下されるのを見ていた。

故に敵機は丸腰だと思っているのだが…残念な事に彼は初めて見た反跳爆撃の衝撃で敵機の武装はまだ1種類残っている事を失念していたのだ。

 

「敵機、後方!」

 

「対空砲…」

 

──ドドドドドドンッ!!

 

迎撃を命令するレムニだが、それは届く事はなかった。

ハリアーが抱えていた70mmハイドラロケット弾を19発装填したポッド、それが2基火を噴いた。

一発一発は艦船にとっては致命傷と成り得ないが、それが38発ともなれば軽巡クラスではひとたまりもない。

その一斉射でフルドの上部構造物は後甲板から煙突、艦橋までが滅茶苦茶に破壊された燃えるスクラップとなり、その後に続いた5機の斉射によって完全に破壊されて程なくして弾薬庫に誘爆、生き残ったが2機のハリアーから攻撃された駆逐艦と共に海中に没した。

 

 

 




500kg爆弾2発+19連ロケットポッド2基+増槽で発艦出来るのか、という事は気にしないで下さい

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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