異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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この話、本当は少しだけにしようと思ったんですがね…


26.Meals,Ready to Eat

──中央暦1638年11月30日正午、サモア基地・サバイイ島西側演習場──

 

OD色の天幕の下、簡素なテーブルの上に雑に段ボールが置かれている。

その段ボールの側面には、『ロデニウス連邦戦闘糧食・重桜メニュー3』と書かれている。

 

「いい時間なので、昼食にしましょう。」

 

そう言って、指揮官が段ボールを開ける。

マイラスとラッサンは嫌な予感がした。ムーにも戦闘糧食…つまり、レーションは存在する。だがそれは、硬く焼き固めたビスケット…つまり乾パンであり、食物というよりも建材の類いではないのか?というものである。一応は缶詰めもあるが、塩辛くて食べていると喉が渇いて仕方ない…という代物だ。

そんな物が出るのか…と、不安になった二人の心中なぞお構い無しに指揮官が段ボールから天幕と同じ色をした厚手のビニール袋を取り出して、一つずつ二人の前に置いた。

 

「これが、我が国の制式採用戦闘糧食…レーションやMREとも言いますね。とりあえず開けて下さい。」

 

そう言うと、指揮官は袋の接着面を左右に引っ張って開けた。

それに習い、二人も開ける。

中には、幾つかのビニール袋やベージュ色の袋が入っていた。

 

「これは…重桜メニューの3だから…」

 

「山菜おこわと、鶏肉と野菜の煮物でございます。」

 

指揮官が思い出そうとしていると、カーリューが助け船を出す。

 

「おお、そうだったな。……ではマイラス殿、ラッサン殿。ベージュ色の袋を取り出して下さい。」

 

「これと…これですか?」

 

マイラスが指揮官の言葉に従い、二つあるベージュの袋を取り出す。

 

「次に、曇っている無色の袋…少しざらざらしている袋です。それを取り出して、ベージュ色の袋をその中に入れて下さい。」

 

ざらついた袋…磨りガラスのような見た目の袋を取り出して先ほど取り出したベージュ色の袋を入れる。

 

「この…袋には何が入っているのですか?」

 

ラッサンがざらついた袋に元から入っている白い板状の物を指差す。

 

「それは、発熱材です。水を入れると化学反応で熱くなります。……カーリュー、水を。」

 

「こちらに。」

 

「次はこの水を、袋に描かれている線まで注ぎます。注いだら、袋の縁を2回程折ってから、付属のテープで軽く留めて袋を寝かせます。」

 

カーリューが用意したペットボトルの水を、ざらついた袋に注ぐ。

次に、袋の開け口を2回程折って塞ぐとテープで留めてテーブルに寝かせるように置いた。

二人もそれに習い、同じ手順を行う。

 

「お?……おぉお!?」

 

「蒸気か?…熱っ!凄い、本当に熱くなった!」

 

化学反応により直ぐに熱が発生し、水が蒸気と成って袋の開け口から漏れだしてくる。

 

「温まるまで時間があるので、付属品も紹介しましょう。この銀色の袋は…ビタミン補給用のアセロラジュースですね。水に溶かして飲みます。」

 

銀色の袋を開けて、解説中にカーリューが用意したコップに袋の中身である粉末を入れる。次に、水を注ぐとピンク色っぽい液体が出来た。

それをマイラスの前に差し出す。

 

「……頂きます。」

 

その割りとキツイ色に躊躇いながらも、意を決して一口飲む。

甘酸っぱい、若干喉が渇いていたからかもしれないが…美味い、まるで水分が体に染み込んで行くようだ。

 

「…美味い。粉末を溶かしただけなのに…まるで、果汁を絞って作ったかのようだ…」

 

「ほ…本当か?」

 

ラッサンが訝しげにマイラスに問いかけていると、ラッサンの前にコップが置かれた。

 

「これも同じ物です。他にも、コーヒーにヘーゼルナッツココア…各種お茶もありますよ。」

 

「そんなに……美味っ!」

 

戦闘糧食らしからぬ豊富さに驚きながらアセロラジュースを一口飲む。あまりの美味しさに驚いていると、指揮官が直方体の銀色の物体を取り出した。大きさは掌に乗る程度だろうか。

 

「これは羊羮…豆を砂糖で煮詰めて固めたものです。重桜…ヤムートの伝統的な菓子です。」

 

「菓子まであるのですか…」

 

正に至れり尽くせりだ。指揮官が包装を開けて、マイラスに差し出す。

黒くツヤのある物体を食べるのは中々に勇気が必要だが、受け取り一口齧る。

甘い、歯が痛くなりそうな程甘い。だが、ほのかに豆の風味がある。

 

「羊羮は運動に必要なエネルギーを手軽に取れます。しかも、片手で手軽に食べる事が出来ます。」

 

指揮官が説明していると、袋から吹き出していた蒸気が止まった。

それを見計らったように、カーリューがアルミ製の皿とスプーンとフォークを用意する。

 

「熱いので気を付けて下さい。この切り口から開けて…」

 

山菜おこわの袋を皿の上で開ける。

ヌルン、と袋の形そのままに出てきた白い塊は所々に緑色や茶色の植物の茎が入っている。

次に、鶏肉と野菜の煮物を皿に開ける。

ゴロゴロとした鶏肉やニンジン、レンコンにタケノコとシイタケがとろみのある煮汁と共に溢れ落ちる。

山菜おこわも煮物もホカホカと湯気が立ち、辺りに食欲をそそる良い香りがただよう。

 

「これが戦闘糧食だって!?まるで厨房で作った料理みたいじゃないか!」

 

ラッサンが驚愕と共に様々な角度から煮物を観察する。と同時にマイラスが質問する。

 

「この糧食の保存期間はどれ程でしょうか?」

 

戦闘糧食…それに必要な要素の一つである保存性についてだった。

確かに栄養バランスが良く、温かく、美味い…そんな糧食があろうとも数日しか保存出来ないとなれば軍用としては不合格だ。だが、指揮官からの答えは予想を上回った。

 

「2年から3年ですね。先ほどの羊羮は物によっては5年保存出来ます。」

 

マイラス、再びの驚愕である。

そうしていると、指揮官から糧食を食べるように勧められた為、スプーンを持つ。

最初は山菜おこわだ。一見すると白い塊だが、よく見ると白い粒の集合体というのが分かる。

スプーンで切るようにして一口分取ると、口に入れる。

モチモチとした食感にほんのり塩味、だが混ぜ込んである植物の茎…山菜の食感がアクセントになり、シンプルな味付けも相まって飽きの来ない味わいだ。

次に、フォークで煮物の鶏肉を取って食べる。ホロッ、と身がほぐれ甘辛い味付けがよく染みている。野菜もぐずぐずに崩れているなんて事は無く、形も食感もちゃんとしている。

 

「…我が国の兵士が木片のような乾パンを食べている間に、ロデニウス連邦の兵士はこんな物を食べていたのか……」

 

ラッサンが頭を抱えて落胆している。

それも無理は無い。これと比べれば、ムーの糧食なんて兵士への虐待に等しい…としか言い様の無い。

 

(糧食関連の担当は誰だったか…早急な改善を求めよう。)

 

ラッサンの様子に哀れみを覚えながら、帰国後の予定を組むマイラスであった。

 




一番人気はサディアのメニュー

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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