異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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タイトル通り、今回でオタハイト防衛戦は決着です!


265.オタハイト防衛戦【終】

──中央歴1642年10月9日午後2時、オタハイト北東沖──

 

「艦長!火災が消し止められません!第二砲塔の弾薬庫に注水します!よろしいですね!?」

 

「あ…ぁ…」

 

「チッ…役に立たん…弾薬庫注水!」

 

砲術長の問い掛けにオスニエルは呻く事しか出来ない。

彼らイシュタム艦隊は格下ばかりを相手にしており、ダメージコントロールの訓練を省略してきた事がここにきて響いていた。

一気に多数の消火栓を使って放水をしたせいでポンプの能力が足りず、しかもどうせ使わないからとポンプのメンテナンスをろくにしていなかったせいで、マトモな消火活動が出来なかったのだ。

 

「た、対空レーダーに反応!数は16、距離…は、速すぎる!速度900km/hは出ています!」

 

「対空攻撃だ!何が来ているか知らんが撃ち落とせ!」

 

レーダー手からの報告を受け、使い物にならなくなったオスニエルに代わって砲術長が命令する。

その命令はすぐに各高角砲・対空機銃に伝達され、一斉に無数の砲弾が打ち出された。

 

「ダメです!飛翔体、対空砲火を突破!こ、こちらに突っ込んできます!」

 

「総員、衝撃に備え…」

 

──ズゴガァァァァァァァァンッ!

 

先程とは比べ物にならない轟音と衝撃。

至る所で上がった悲鳴すら掻き消すそれは、メイサを文字通り"滅茶苦茶"にした。

 

「うぐぁぁぁぁ!腕が…腕がぁぁぁぁぁ!!」

「……!……!……」

「ひゅー…かひゅー…」

 

先程まで命令をしていた砲術長は着弾の衝撃で天井と床の間をバウンドして腕がおかしな方向に何度も曲がり、画面に釘付けだったレーダー手は顔面を画面にめり込ませて魚のようにビクビクと痙攣し、操舵手は操舵輪のグリップが喉に刺さって笛のような音と共に呼気を漏らしている。

他の艦橋要員も似たようなものであり、最早マトモに命令を下せる者は存在しない。

 

「う〜…あ〜…夢だ…これは夢…」

 

ただ唯一五体満足なのは、オスニエルだけだった。

彼は脱力していたからなのか、はたまた悪運が強かったのかは分からないが打撲こそあるものの、骨折等は無かった。

 

「は…はは…ひぃ…ひっひっひっ…!」

 

地獄絵図の艦橋、燃え盛る甲板。

主砲塔はひしゃげ、副砲は砕け散り、高角砲や機銃は存在した事すら忘れてしまう有様だが、流石は戦艦といったところかメイサの航行能力はまだ生きていた。

それを知ってか知らずか、オスニエルは振り子のように揺れる艦内電話を手に取り、機関室へ繋げた。

 

「機関室!機関出力最大!ムーの戦艦に突っ込むぞ!」

 

《はぁ!?正気ですか!?》

 

「いひひ!もう終わりだ!終わりなんだ!主砲も副砲も使えない!ならムーの戦艦を道連れにしてやるぅ!!あひゃひゃひゃ!」

 

《か、艦ち…》

 

──ガチャン!

 

オスニエルは糸が絡まった操り人形のように不規則でぎこちない動きで艦内電話を壁に叩きつけると、まるで踊るように艦長席に座って手足を駄々っ子のようにバタつかせ始めた。

 

「すっすめー♪すっすめー♪だいせんかーん♪敵を潰して勝利をつかめー♪」

 

彼は狂ってしまった。

ムーに大きな被害を与えるどころか、自分達の方が致命的な被害を受け、さらには自身の命も風前の灯だ。

 

「いひっいひっいひっ。死ね死ね死ねぇ!」

 

最早機関室も自棄っぱちなのか、命令通りにメイサが増速する。

それを確認したオスニエルは既に事切れた操舵手を押し退けると、自ら操舵輪を握った。

 


 

──同日、オタハイト北東沖──

 

《敵戦艦増速…?もう艦上構造物は破壊され尽くされて戦う手段は残っていないのに!》

 

自身の"感覚器"であるレーダーで敵戦艦が増速したのを感知したラ・カサミは悲鳴のような声を上げる。

突入する対艦ミサイルと自身の感覚をリンクさせていた彼女は、敵戦艦が既に戦闘力を喪失した事を理解しており、敵は撤退するか退艦したのちに降伏するものと考えていた為だ。

予想外かつ合理的とは思えぬ行いに混乱してしまうが、その傍でミニラルが落ち着いた様子で述べた。

 

「なるほど。満身創痍となってもなお一花咲かせるつもりか、敵ながら天晴れ。ならば我々もそれに応えねば無礼だろう。ラ・カサミ」

 

《は、はいっ》

 

「主砲、用意。最後まで戦意を失わぬ彼らに相応しい引導を渡してやろう」

 

《……はっ。承知しました!》

 

ミニラルの言葉に覚悟を決めたのか、ラ・カサミは唇を真一文字に結んで目を細めた。

 

《ラ・ツマサ、聴こえる?》

 

《はい、姉上》

 

《私と貴女、そしてミニラル艦長とで敵戦艦を沈めるわよ!》

 

《えぇ、光栄です!》

 

吶喊して前に出ていたラ・カサミに追いついたラ・ツマサへ呼びかけると、彼女は心底嬉しそうに応えた。

 

《艦長、主砲用意完了!いつでもどうぞ!》

 

「うむ、砲術長!」

 

「お任せを!」

 

ユニオン製のレーダーと鉄血製の光学機器で観測された敵戦艦との距離・相対速度がコンピューターに入力され、射撃に必要な諸元が瞬く間に出力される。

その諸元を砲術長が射撃盤に入力すると、各砲塔へ諸元が伝達され、各砲塔はその通りに砲の向きと仰角を合わせる。

 

「撃てっ!」

 

「イエッサー!」

 

──ドドドドンッ!

 

砲術長が射撃盤に取り付けられたトリガーを引くと、50口径長31cm連装砲2基が火を噴き、500kg超の砲弾が発射された。

 

《……夾叉。4発中2発が至近弾です!この諸元をラ・ツマサにも伝達します》

 

「頼む。我々も装填が完了次第、射撃するぞ!」

 

ラ・カサミとラ・ツマサは準姉妹艦であり、改修によって同種の主砲を装備しているため2艦の間で射撃諸元の共有が可能だ。

 

──ドドドドンッ!

 

ラ・カサミから射撃諸元を受け取ったラ・ツマサが主砲を発射する。

それは緩い放物線を描き…

 

──ゴォォォォォン…

 

「ラ・ツマサの主砲、命中しました!敵戦艦の速度低下…火災が激しくなっています!」

 

艦橋上部に残った見張り員からの報告を艦内電話で受け取った通信士が歓喜の声を上げる。

 

「まだだ!奴がもし市街地に突っ込めばどうなるか分からん!ここで確実に沈めるんだ!主砲、第二射!」

 

「いつでもどうぞ!」

 

《私の方で若干の修正を加えました。艦長!》

 

砲術長とラ・カサミの後押しを受け、ミニラルは力強く頷いた。

 

「この勝利を、祖国と国王陛下に捧げる。撃てぇぇぇい!」

 

──ドドドドンッ!

 

再び放たれる主砲。

 

──ドドドドンッ!

 

それに僅かに遅れ、ラ・ツマサの主砲も放たれた。

虚空を切り裂く8発の砲弾…それはただの砲弾ではない。

人々の祖国を想う心が形となった、侵略者を討ち払う剣である。

 

──ゴォォォォォン…!!

 

剣は悪しき侵略者へと突き立てられた。

8発中5発が敵戦艦に直撃し、砲弾は火災によって強度が落ちていた甲板装甲を貫き、艦内部で炸裂した。

 

──ドンッ……!!

 

海上に響く落雷のような轟音…敵戦艦は弾薬庫の誘爆と、機関部への浸水による水蒸気爆発を起こして爆沈した。

 

この戦いにおいてムー側の被害は0、グラ・バルカス帝国側は僅かに20名程度が捕虜としてムーに捕えられた以外は艦も人員も全てが海へ没したのである。




さて、次はマイカル防衛戦ですね
すごく久しぶりに指揮官が前線に出ますよ!

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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