異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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今回からマイカル防衛戦です!
久々にKAN-SEN達の大暴れを描く予定ですのでお楽しみに!


266.マイカル防衛戦【1】

──中央歴1642年10月9日午前8時、マイカル東方沖──

 

時を少し戻し、ムーの経済都市マイカルの東方沖。

白波を蹴立てて突き進むイシュタム艦隊の姿があった。

オタハイト襲撃の為に戦艦メイサを始めとする艦を分けていてもその陣容は艦隊旗艦である空母シェアトを始め、重巡洋艦3隻、巡洋艦1隻、駆逐艦8隻、そしてマイカルを確実に火の海にすべく弾薬や航空燃料を大量に積み込んだ補給艦3隻を随伴させている。

 

「司令、まだ近付くんですかい?」

 

「無論です。駆逐艦の主砲の射程まで近付くのはもちろん、艦載機にも過積載の爆装をするのですから可能な限り近付かなければ」

 

シェアトの艦長の問い掛けに酷薄な笑みを浮かべたメイナードがそう答える。

艦載機には各機種毎に搭載可能兵装量が設定されている。

しかし、それはあくまでも燃料を満載して戦術上必要な航続距離を得られる搭載量であり、それを無視して燃料を減らせばその分余計に兵装を搭載出来る。

メイナードはそうして燃料を減らすのと引き換えに兵装を積み込み、それで短くなった航続距離は母艦の前進で補うつもりなのだ。

こんな運用は相手を舐め腐っているとしか思えないが、格下ばかり相手をし、なおかつムーの情報が古いままな彼らは未だに敵は世代遅れのポンコツだと思い込んでしまっているのだから仕方のない話だ。

 

「ではこのまま前進を?」

 

「その通り。そうですねぇ…とりあえず本艦と補給艦は海岸線から100km程の海域まで前進させましょう。敵は所詮ノロマな複葉機、アンタレス1小隊で撃滅出来ますし、艦船も我が方の重巡には勝てない。問題はありません」

 

「はっ!ではそのように…」

 

メイナードと同じく酷薄な笑みを浮かべた艦長は増速を命じ、他の艦もそれに続く。

彼らは自身の勝利を信じ、疑いはしなかった。

しかし、そんな彼らの動きは遥か彼方から、見下ろされている事に誰も気付く事はなかった…

 


 

──同日、マイカル東方沖上空、高度6500m──

 

イシュタム艦隊から300km以上西に離れ、ムーの海岸線から100km程離れた空域を2機の航空機が飛行していた。

空力的に洗練された流線型の細長い葉巻型の胴体に、そこから伸びる主翼は左右2基ずつの巨大なレシプロエンジンを搭載した、細長い台形を思わせるテーパー翼であり、翼端には涙滴型の固定増槽が取り付けられており、尾翼は水平尾翼から3枚の垂直尾翼が生えた特徴的な物だ。

中々に先進的な姿をしているが、何よりも特徴的なのは胴体の背面と腹面に付けられた1つずつある"コブ"だ。

コップのふちが胴体に張り付いているような小さなコブと、縦半分に切ったナスのような大きなコブの2種類…一方は背面に小さなコブ、腹面に大きなコブを持ち、もう一方はその逆だ。

そしてその2機にはもう一つの特徴がある。

それは機体に施されたマーキングであり、主翼と胴体後方にはムーの国籍識別章が、垂直尾翼にはコミック調の画風で鋭い目付きをした雷雲が描かれている。

この機体はそれぞれ対空レーダー搭載型の『EC-121MA』と対水上レーダー搭載型の『EC-121MS』と呼ばれるムー国産の早期警戒機である。

 

「隊長…それ、本当に美味いんですか?」

 

「中々いけるぞ。食うか?」

 

EC-121MSの機内では、乗組員の半分が遅めの朝食を摂っていた。

メニューはトーストが2枚に、乾燥野菜とベーコンのコンソメスープ、濃く淹れたコーヒーにリンゴ半分だ。

EC-121は元々は『コンステレーション』と呼ばれる旅客機であるため、機内は全て与圧されている上に電熱調理器を装備している為、作戦中も温かい食事を乗組員に提供出来るようになっている。

 

「いいえ、結構です」

 

「そうか…」

 

自身が食べていたピーナッツバターといちごジャムのトーストサンドを部下に拒否され若干しょげたのは、此度新設されたムー空軍の『第77電波戦闘部隊』の隊長を務める『ホーザン・パナック』だ。

 

「しかし、まあこの機体は快適ですね。私もラ・カオスに何度か乗った事はありますが、こんな風に温かい飯を食いながら薄着で乗れるなんて今でも信じられませんよ」

 

しょげたホーザンの気を紛らわせる為なのか、別の部下が話題を切り替える。

 

「うむ、こんなにも高性能な航空機を国産出来るのも我が国の技術者、そしてロデニウスとサモアのお陰だ。感謝してもしきれん」

 

残りのサンドを口に押し込み、コーヒーで流し込むホーザン。

彼の言う通り本機はムー技術者の努力とロデニウス連邦・サモアの技術協力があってこその代物だ。

旅客機であるコンステレーションの機体とエンジン、電子機器はもちろん、EC-121に必要なレーダーの開発にまで技術協力をしてくれた事でムーは本機の100%を国産化しており、現在急ピッチで増産されているところだ。

ただし、本来なら対空・対水上レーダーを1機に纏めるつもりだったのだが、ムーの技術では難しいとされ2機に分けて同時運用する事となったなど問題が無い訳ではない。

しかし、最大で500km先の対空目標と400km先の水上目標を探知し、味方航空機・艦船を誘導する事が出来る管制能力を持つ本機は、間違いなくムーの防衛能力を大きく高める事だろう。

 

「……ん!?隊長!レーダーに反応が!」

 

「来たか。距離と数、速度、針路は」

 

レーダー手が画面に映った未確認目標を報告すると、機内は先程までの和気藹々といった雰囲気をガラリと変えた。

 

「数は16、大型艦が4、中型艦4、小型艦8、周辺に航空機4。距離は300、速度は20ノット、針路は西…グラ・バルカス帝国の艦隊と思われます!」

 

「航空機があるなら大型艦の1隻は空母だな。計16隻という事は…」

 

レーダー手からの報告を聞いたホーザンは、アズールレーンの偵察機が以前に撮影したグ帝艦隊の空撮写真を取り出す。

 

「おそらく8隻はオタハイトに向かったな。オタハイトは比較的小さな都市だから、戦艦による艦砲射撃が有効だ。おそらく戦艦と巡洋艦と駆逐艦、そしてこのやや小さな空母が制空権確保の為にオタハイトに向かっているだろう」

 

「オタハイトに向かった艦隊に補給艦が付いている可能性は?」

 

「その可能性もあり得る。しかし私はサモアでグラ・バルカス帝国の戦艦と似通った性能と推測される長門型の砲撃訓練を見学した事があるが、あの火力なら1隻でオタハイトを廃墟にしてしまうだろう。それに空母や巡洋艦が加われば尚のこと…私の推測になるが、敵は広大なマイカルを満遍なく攻撃するためにこの艦隊に補給艦全てを随伴させ、補給しながら砲爆撃をするつもりだろう」

 

ホーザンが自身は推測を展開するが、それは的中していた。

しかし、残念ながらレーダーでは敵艦の大まかなサイズや距離、速度、針路は分かるが、艦種までは分からない。

 

「目視で確認しますか?」

 

「いや、やめておこう。この機体は下手な巡洋艦より高価な代物だ。撃墜されれば我が国の戦略に関わるぞ。ただでさえ敵艦載機より遅いのだからな…」

 

部下からの提案にホーザンは首を横に振る。

彼の言う通りEC-121の最高速度は500km/hに満たない。

原型機であるコンステレーションは550km/hを超える程の速度を出せるのだが、レーダーを納めたレドームの空気抵抗と電子機器の重量、長い滞空時間を得るための燃料増加によって本機はグ帝の主力艦載機であるアンタレスを振り切れないのだ。

しかもEC-121は最新鋭の電子機器と3000馬力を超すエンジンを搭載している為、ムーの従来型装甲巡洋艦より少し安いぐらいのコストなのだから、下手な真似は出来ない。

 

「だが敵を先んじて発見出来たのは大きいぞ。……9時21分か。なら我が国の"重大発表"はもう公表しているか?」

 

「はい。首相の発表は9時ピッタリからなので、今頃は国王陛下による補佐官指名が行われていると思います」

 

「よし、ではこの情報を空港に待機している戦闘攻撃隊と…港で待機しているアズールレーン艦隊に伝達するんだ。後は彼らが上手くやってくれる」

 

「我々はどうしましょうか?」

 

部下からの問いかけに、ホーザンは温くなったコーヒーで唇を湿らせて答えた。

 

「訓練通り、敵航空機と艦船の動きを味方に伝える…それが我々の戦いだよ」




ムーのレーダー、性能良すぎない?と思いましたよね
ムー人がめちゃくちゃ頑張ったって事で

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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