ちょっと閲覧注意かも?
──中央歴1642年10月9日午後4時、マイカル東方沖──
「こちら第52地方隊。繰り返す、こちら第52地方隊。敵高速爆撃機による空襲を受け、現在漂流中。座標は……」
ムーとアズールレーンによる空襲を受け、壊滅したイシュタム艦隊。
辛くも退艦に成功したのはメイナードやシェアトの艦長や通信士など、そして他艦の乗組員を含めて200名程度だろうか。
彼らはボートに分乗し漂流しながら、運良く積み込んでいた無線機を使って救援要請を出していた。
「しかし、来ますかね。ここは支配海域じゃありませんぜ」
心配そうな口調でシェアトの艦長がメイナードに問い掛ける。
この海域はムーに近く、付近に味方は居ない。
救助を要請しても来る可能性は低いように思える。
「それに関しては大丈夫ですよ。中央艦隊は事故に備えて潜水艦をこの海域にも展開しています。直ぐにとはいかないでしょうが、夜には来れるでしょう」
グラ・バルカス帝国海軍は敵艦隊の偵察や各地の秘密基地への連絡・補給、そして万が一の航空機や艦艇の事故に備えて各海域に一定数の潜水艦を待機させている。
救助要請をすれば多少時間はかかっても助けに来てくれるはずだ。
「そいつはありがたい事ですな。それに運良く磁気嵐も過ぎ去ったようで、不幸中の幸いとはこの事ですぜ」
「そうですね、もし磁気嵐の真っ最中ならこんな小さな無線機では…」
「アレはなんだ!?」
艦長とメイナードが自分達の悪運の強さに感謝していると、誰かが北の方を指差しながら叫んだ。
もしや飛び去った敵機がまた戻ってきたのか!?と思い、全員が顔を青くしながら北の空に目を向ける。
確かに日が傾いてきた青空に小さな黒点がいくつか見える。
しかし、それはあっという間にこちらに接近するというより、ゆっくりゆっくりと右往左往しながら向かってきているように見えた。
「ムーの爆撃機は東から来ていた…ならあれは味方かもしれません。潜水艦の艦載機は鈍足ですし、ゆっくり飛びながらこちらを探しているのでしょう」
「ありがてぇ!よーし、全員何か振れ!帽子でも上着でも手でもいい!さっさと見つけてもらうぞ!」
ほっとした様子のメイナードと、歓喜しながら帽子を大きく振る艦長。
それに気付いたのか、黒点は彼ら目掛けて真っ直ぐに飛んできた。
──同日、マイカル東方沖──
「……指揮官、敵艦隊の救難信号を傍受した。記録しておく」
「頼んだ」
エンタープライズIIの艦橋内、コンソールに向かって画面に表示された波形と睨めっこするエンタープライズの言葉に、指揮官は短く応えた。
「それにしても指揮官、本当にいいのか?」
「アイツらを逃す事だろ?もちろん考え無しにやってる訳じゃないさ」
イシュタム艦隊の艦船を沈めた後、指揮官は攻撃隊の全機撤収と電波妨害の中止を指示したのだ。
攻撃隊の撤収自体は漂流者を攻撃する事は人道上の問題があるため当然だが、電波妨害まで止めるというのは少々疑問だ。
電波妨害を止めればこうして救助を呼ばれてしまい、そのまま救助されれば敵に情報が渡ってしまうかもしれない。
「連中はまだまだムーを舐めている。時代遅れの兵器しか持たない雑魚…だからこうやって大都市に向かって艦隊で奇襲を仕掛けようとした。だが、あの連中がムーの強さを宣伝してくれたら…艦隊全滅の噂がグ帝の内部に広がれば…」
「なるほど。厭戦気分を煽る事が出来るという訳か」
「まあ、そんなに上手く行かないかもしれん。ムーがそんな兵器を作れる訳がないと思い込んだままになるか、あるいは徹底した情報操作で士気を保つかもしれない。だが、こういう心理戦は積み重ねだ。少しずつ相手の心を揺さぶっていけば、そのうち派手に崩れる。そうなった時に国ってのは負けるんだ」
「分かった。私の指揮官はあなただけだ。あなたを信じるよ。……?」
「どうした?」
帽子を被り直し、再びコンソールに向かうエンタープライズが首を傾げた。
「指揮官、この辺りの海域に竜母は居るか?」
「竜母って…ワイバーン空母の事か?いや…この辺りはムーの支配海域だ。立ち入るなら事前にムーへ通告がある筈だぞ」
「そうか。…指揮官、警戒中のF-4がレーダーでワイバーンらしき反応を捉えた。漂流者の上空を低高度で旋回している」
「ワイバーン?」
エンタープライズが表示したF-4のレーダー画面を見ると、確かに10前後の反応がグルグルと旋回していた。
速度的にワイバーンの可能性が高いだろう。
「野良ワイバーンじゃないか?」
「いや、違うと思う。ワイバーンの飛行可能距離からして近くの生息地からこの海域までは飛んで来れないし、野良ワイバーンならレーダー波を嫌って直ぐに逃げるはず…だから、人に訓練されて竜母から飛び立ったワイバーンだと思ったんだ」
「だが竜母が居ればムーの早期警戒機から何かしらの報告がある筈だ。エンタープライズ、そのワイバーンを視認出来る距離まで接近出来るか?」
「もうやってる。そろそろ見え…なっ!?」
レーダーでは得られる情報に限りがある。
そう考えたエンタープライズは指揮官の指示を先読みし、F-4を音速一歩手前まで加速させて、ワイバーンを視認出来る距離まで接近させたのだが…
「コイツは…!」
指揮官もエンタープライズも言葉を失った。
F-4から送られた映像、そこにはワイバーンが漂流者を襲っている様が映し出されていたのだ。
ボートに乗っている人間にワイバーンが噛みつき、海面を漂っている者はワイバーンの鋭い爪で切り裂かれる。
必死にオールを漕いで逃げようとするが、航空戦力としては遅いとは言ってもワイバーンから逃げられる筈もない。
船縁を足で掴まれ、横倒しにされてしまい、投げ出された者は上空から突っ込んでくるワイバーンの餌食となってしまった。
「指揮官!ワイバーンを追い払って彼らを助ける必要がある!攻撃命令を…」
「ダメだ」
人道に基づき漂流者を助けようとするエンタープライズだが、それに対し指揮官はNOを突き付けた。
「何故だ!?敵とはいえ、このままでは見殺しに…」
「ワイバーンの飛行高度を見ろ。ミサイルでも機銃でも当てたら漂流者に破片なり流れ弾なりが当たる。助けるつもりが要救助者の虐殺になりかねんぞ」
「しかし…!」
食い下がろうとしたが、確かに指揮官の言う通りだ。
一番破壊力が小さな20mm機銃ですら当たれば人間なぞ文字通り霧散してしまうし、破片でも致命的だ。
どうする事も出来ず、エンタープライズは唇を噛み締める。
「……責任は全て俺にある。深く考えるな」
指揮官の慰めを聞きながらも、エンタープライズはこの悲劇から目を逸らす事はなかった。
──同日、マイカル東方沖──
「た、助け……」
「離せ!離せよ!はな……うわぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
青灰色の鱗を持つワイバーンが漂流者達へ襲い掛かる。
背中の肉を爪でごっそりと削り、掴んだ者を空高く飛んだ後にそのまま落とし、火炎放射で焼く。
「このトカゲがぁぁぁぁぁ!」
──バキッ!
シェアトの艦長が襲いかかってきたワイバーンを迎え撃つ為にオールを振りかぶるが、それは鞭のようにしなる尻尾によって艦長の首の骨ごと叩き折られてしまった。
「ひ…ひぃぃぃぃ!」
正に阿鼻叫喚の地獄絵図。
そんな中、メイナードはボートの底に張り付くようにして伏せたまま、ガタガタ震えていた。
メイナード達を襲っているのは海ワイバーン…そう、イシュタム艦隊が戯れに攻撃した島に住まうワイバーンの生き残り達であった。
彼らは自身の番や子を殺された憎悪に燃えており、飛行可能距離を大きく突破し、復讐に来たのである。
「グォォォォォォンッ!」
「う…うわぁぁぁぁ!!」
メイナードの体が宙に浮く。
ワイバーンの一頭が彼の背に噛みつき、船底から引き剥がしたのだ。
「は、離せ!このトカゲがぁ!」
腰の拳銃を抜こうともがくメイナードだが、上手く取れない。
そうしている間にワイバーンの咬合力は徐々に強まり…
──ミシッ…ミシッ…
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!」
軋む肉と骨。
激しい痛み、全身を焼く様な血の熱さ。
──ブチュッ!
「ぁ"………」
果実が潰れる様な音と共にメイナードの意識は消え失せ、肉体は二つに分かれてしまった。
その後、飛行可能距離を超えて飛行した海ワイバーンは次々と墜落し、海中に没した。
これにより海ワイバーンは絶滅、彼らが住んでいた島には数年後、ムーの手によって彼らを弔う慰霊碑が建立されたのであった。
グ帝の世論を揺さぶる以前の問題で指揮官の目論見が外れました
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい