──中央歴1642年10月12日午前9時、マイカル郊外『赤レンガ通り』──
私、キャノーラ・バルニエはこの日、アズールレーンの総司令官への取材のためにマイカルに来ていた。
私が働くオタハイト・タイムズのマイカル支社で社用車を借りてアズールレーンの司令部が置かれている赤レンガに続く大通り、通称『赤レンガ通り』を走っているのだけど…この車、すごい。
アズールレーンの技術協力で作られたこの超小型自動車『レディバグ360』は一足先に製造されていた『スカラベ』を一回りも二回りも小さくしたような姿だが、なんとエンジンは360ccしかない。
私は今の国際問題部門に配属される前、まだ新人だった頃にはガラッゾ・オートモービルの新製品情報を追いかける経済部門に居た事があるから、自動車やバイクにはちょっと詳しい。
だから分かるのだが、たった360ccのエンジンで大人4人が乗れて、80km/hを越す速度…そしてクラッチが無いから簡単に運転出来るし、何よりムーでは排気量400cc以下の乗り物はバイク扱いとなるから、税金や保険が安い。
これは間違いなくヒットする、私の記者としての勘がそう言っているんだから間違いない!
というか、これ欲しい。
この取材が終わったらガラッゾのディーラーに行って契約して来ようかな…なんて思っていると、赤レンガが見えてきた。
赤いレンガと白いモルタルで作られた格式と実用性を両立した建物は、国王陛下の別荘に相応しい。
「止まれ!」
そのまま進んでいると、新しく設置されたらしいゲートの前でライフルを持った守衛に止められた。
よく見ると赤レンガの周囲には元々あった石造の塀に加えて、二重三重のフェンスが張り巡らされている。
軍事施設になったのだから当然だけど、やっぱり物々しい。
「お、おはようございます〜…オタハイト・タイムズのキャノーラ・バルニエです〜…」
精一杯の愛想笑いをしながら守衛に挨拶する。
私が取材に来る事は連絡済みな筈だから、いきなり撃たれるなんて事は無いだろうけど…
「あぁ、取材の…こちらデルタ。オタハイト・タイムズの記者だ」
《こちらコマンドポスト。了解した。守衛所に向かうように言ってくれ》
「デルタ、了解。あそこに新しい建物がありますよね?事前に準備してもらった書類をあそこに提出して下さい。車は建物の横に白線があるので、そこに停めて下さい」
「は、はい」
ゲートが開き、先ほどとは打って変わってにこやかな表情になった守衛に会釈しながら車を走らせる。
言われた通り新しい建物の横に駐車すると、取材カバンを持って守衛所と呼ばれた建物に入る。
「あら…キャノーラ?」
「えっ、カーナ!?」
守衛所のカウンターの向こう側に居たのは、大学時代の友人であるカーナ・チェルコートだった。
大学を卒業してからは疎遠になっていたがまさかこんな所で再会するなんて…
「久しぶりね。まさか貴女が取材に来る記者だったなんて…」
「私はちょっと安心しちゃったわ。顔見知りが居ると少しは気が楽だわ…」
私はほっとしながらも、用意してきた書類をカウンターに並べる。
個人の身分証明書に、会社の在籍証明書、機密情報取り扱いに関する誓約書等々…10枚以上の書類だけど、あとは不備が無いか心配だ。
「これは確認しておくから、その間に身体検査をしましょう。あの部屋に入って」
「分かったわ」
カーナに案内され、部屋に入る。
窓の無い、出入り口の扉があるだけの部屋…片隅にはカゴと椅子が置かれている。
「それじゃあ…ごめんなさい、全部脱いで」
「……はい?」
「一応、相手はアズールレーンの総司令官だし、ロデニウス連邦の上級大将なの。キャノーラは大丈夫かもしれないけど、規則で暗殺防止のためにこうしないと…私は一旦出るわ。服を脱いだらそのカゴの服を着て、椅子に座って待ってて。脱いだ服とそのカバンはカゴに入れて、扉の下にある小さい扉から外に出して」
そう言われては仕方ない。
カーナが退出したのを見届けると、服を脱いで代わりに用意されていた運動着を着て、カゴとカバンを言われた通りに小さな扉から出す。
……むぅ、胸元がキツい…まあ、仕方ないわよね♪
何せ私の胸はロデニウス連邦から伝わった測定方法で言えばHカップ。
ここまでのサイズは稀だって話だから、仕方ない話ね♪
いざとなったら噂の『指揮官』を誘惑しちゃおうかしら?
話によれば若い男みたいだし…目の前で揺らしてやればイチコロよ♪
「あー…ごめんなさい。キャノーラ…下着もよ」
そう言って突き返されたカゴに、私は気まずさを覚えながら運動着を脱いで下着まで脱ぐのだった…
──同日、赤レンガ内廊下──
「つ…疲れた…」
「お疲れ様、大変だったみたいね」
ため息混じりにボヤく私へ、カーナが労いの言葉をかけてくれる。
カバンや服を調べられて30分、その後に返された服を着たら次は憲兵による面談で30分…時間にして1時間程度だったけど、こんな物々しい環境って本当に疲れるわ…
「ありがとう……ところでカーナ、一ついいかしら?」
「機密に触れない事ならいいわよ」
「カーナ…もしかして、太った?」
「はぁっ!?」
目を見開き、大声を出したカーナに他の兵士がビクッと肩を跳ねさせて何事かと此方を見るが、突撃取材が得意な私にとっては慣れっこだ。
「いや、だって胸もお尻もパツパツじゃない。大学の時はあんなに細っそりしてたのに…」
「だって仕方ないじゃない…アズールレーンのご飯が美味しくて…」
本人は私の言葉にダメージを受けたみたいだが、別に肥満という訳ではないから大丈夫だろう。
そんな事をしていると、第三応接室と書かれたプレートが掛かった部屋の前に到着した。
「はぁ…ここにフレッツァ閣下がいらっしゃるから、入って。私はここで待機してるから…」
「という事は二人きり?」
「フレッツァ閣下の部下も同席するって話よ。一応言っとくけど、取材は手短かにね」
「はーい」
カーナの念押しを聞き流しながら、私は扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼しまー…むぎゅっ!?」
低い男の声で入室を許可された私は扉を開けて入室しようとするが…
「あら、ごめんなさい。私が開けようとしたタイミングと重なったみたいね」
とんでもない色香を含んだ声が頭上から聴こえるし、顔は何か柔らかくて温かくていい匂いがする物に埋まっている。
「ぷはっ…ぁ…い、いえ…大丈夫です…」
「私の部下が失礼しました。私はクリストファー・フレッツァ。ロデニウス連邦軍上級大将とアズールレーン総指揮官、そして今回編成された第二文明圏派遣軍の総司令官を兼任しています。こちらは私の部下のインプラカブルです」
「よろしくお願いしますね。記者さん♪」
「お、オタハイト・タイムズのキャノーラ・バルニエです…」
私が先程まで顔を埋めていたのは、やはりインプラカブルと名乗った女性の胸だったらしい。
というか…大きくない?
背丈はこの国の平均的な男より頭一つ分は大きいだろうし、胸なんて私のより遥かに大きい…何というか完全敗北、といった気分だ。
「どうぞ座って下さい。ただあまり時間が無いので、質問は簡潔に」
「ありがとうございます。では今回のグラ・バルカス帝国艦隊襲撃について詳しい戦闘の推移と使われた兵器についてを……」
気を取り直して取材を始める。
色仕掛けで情報を引き出すなんて事は、もう頭には無かった。
次回からはシリアスな雰囲気になると思います
あとアンケートがありますのでよろしければ回答お願いします
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい