皆さんも熱中症に気をつけて下さい
──中央歴1642年10月19日午後4時、戦時外交局──
「わ、私は夢でも見ているのか…?」
眩い光と共にレイフォリア近海に現れた艦隊、それを見てゲスタはガタガタと震えながら自らの頬を何度も叩く。
それを見て指揮官は窓辺に歩み寄り、大掛かりな手品を成功させた奇術師のような大仰な手振りで艦隊を強調する。
「どうでしょう。我が艦隊のほんの一部…されど選りすぐりの艦隊は。これらの艦が一同に介する事なんて滅多にありませんよ」
そう言って窓を開け放つ指揮官。
外からも人々の悲鳴や怒号、走る足音が聴こえており、レイフォリアに住む人々は唐突に現れた未知の艦隊にパニックになっているようだ。
それもそのはず、今回指揮官が連れてきたKAN-SEN艦隊は以下の通りである。
駆逐艦
・ラフィーⅡ
・島風
・夕立改
・モガドール
軽巡洋艦
・サンディエゴ改
・プリマス
重巡洋艦及び大型巡洋艦
・グアム
・雲仙
・吾妻
・ドレイク
・エーギル
・ヒンデンブルク
・ブレスト
・クロンシュタット
戦艦及び航空戦艦
・ニュージャージー
・キアサージ
・武蔵
・ヴァンガード
・ウォースパイト改
・ビスマルクZwei
・フリードリヒ・デア・グローセ
・ウルリッヒ・フォン・フッテン
・アルザス
・ソビエツキー・ソユーズ
航空母艦
・エンタープライズⅡ
・ヨークタウンⅡ
・信濃
・白龍
・インプラカブル
現在動かせる特級戦力─ゲーム的に言えばレア度UR・DR─を総動員してきたのだ。
これだけの特級戦力が勢揃いする事は転移後初である。
「あ、ありえない!こんな艦隊が一瞬で姿を現すなんてありえない!これは幻だ!どうせ魔法とやらで幻を見せているだけ…」
「幻…ねぇ。そう思うのは勝手だが、それはそれで脅威だろ。実体の無い艦隊を囮に出来るんだから」
「うぐっ…」
ヒステリックに怒鳴りながら必死に現実を否定するシエリアだが、指揮官からの言葉を受けて言葉に詰まってしまう。
確かに百歩譲って出現した艦隊が魔法を使った幻だったとしても、戦略的にはかなり厄介だと言わざるを得ない。
「指揮官、もう帰りましょう。汚物を顔に浴びちゃったからシャワーを浴びたくて仕方ないの。このハンカチももう使う気になれないわ」
呆然とするゲスタを一瞥し、ツバを拭ったハンカチを指先で摘んでそんな事を述べるヴァンガード。
しかしゲスタは彼女の言葉が聴こえていないのか、あるいは反応する余裕も無いのか呆然と座っているだけだ。
「そうだな。ならキアサージにヘリを飛ばしてもらおう。艦載艇は消せるだろ?」
「えぇ…消したわ。キアサージ、ヘリをお願い。それと…」
ヴァンガードがチラッと指揮官に目配せすると、彼は小さく頷いた。
「空母全員に護衛を飛ばすように伝えてちょうだい」
「よし、じゃあ言う事言ったし帰るか」
どこかスッキリしたような表情を浮かべ、ゲスタとシエリアに背を向ける指揮官とヴァンガード。
数歩歩き、ドアノブに手をかけた瞬間、指揮官は思い出したように振り向いた。
「そうそう、シエリア…と言ったか。お前には大量殺人の容疑がかけられている。今はどうこうするつもりはないが…お前達との戦争が終わったら、お前を裁判所に引き摺り出してやる。そしてゲスタ、お前もだ。部下の非道な行いを止められなかった監督不届か…あるいは示唆したかは分からんがお前も裁判所に送ってやる」
「良かったわね、裁判を受ける権利があって。まっ、せいぜい腕のいい弁護士を探しなさいな」
その言葉で更に青くなったゲスタとシエリアを見て今度こそ満足したのか、指揮官とヴァンガードは応接室を後にした。
「あの艦隊はどこのものだ!?」
「軍艦旗を確認、アズールレーンです!」
「まさか奇襲か!?」
応接室を後にした指揮官とヴァンガードが見たのは、右往左往するグ帝外務省の職員達だった。
「近衛兵団治安維持中隊だ!ここにアズールレーンの代表者が訪問していると聞いた!身柄を拘束させてもらう!」
「……指揮官、あの黒服って」
そんな混乱の渦中に乱入してきたのは、重厚な黒い制服を着用した高圧的な男達…近衛兵団であった。
彼らはグ帝による捕虜虐殺放送にも映っており、指揮官もヴァンガードもその黒服には見覚えがある。
「あぁ、アレに映っていた連中だな。近衛兵団…軍とは違うのかもな。名前からして…皇帝の親衛隊ってところか?」
「アズールレーンの代表者!今すぐ出頭し、我々の指示に従え!さもなくば…」
「落ち着け!!」
高圧的かつ一方的に捲し立てる近衛兵団の言葉を遮るように、指揮官は腹の底から大きな声を発する。
「落ち着けよ。今はまだこの街をどうこうするつもりはない。アレはただのパフォーマンスだよ。ガタガタと騒ぐんじゃない」
ヴァンガード以外のその場に居た全員の視線が指揮官へ集中する。
それまでは良いのだが…
「へ、陛下…?」
「バカな…グラ・ルーメン陛下は崩御なされたはず…」
「そんなまさか…」
近衛兵団が指揮官を見る目…それは正に幽霊を見たかのように、信じられないモノを見たかのような目つきであった。
「陛下…?誰かと勘違い…」
「指揮官、あれ」
首を傾げる指揮官へ、ヴァンガードが出入り口を指差す。
入って来た時には気付かなかったが、外務省の建物の出入り口の上には二つの肖像写真が飾られており、立ち入った者の背を射すくめ、見下ろす事で威圧している。
そしてその肖像写真の一つ、白黒とカラーの内の白黒の方を見て指揮官は納得した。
「この国には白黒で映る鏡があるのか。驚いたな」
「変な冗談を言ってる場合じゃないでしょ。えっと…『第七代皇帝グラ・ルーメン』『第八代皇帝グラ・ルークス』…七代目と指揮官、そっくりね。まるで双子だわ」
「なるほどな。どうりでグ帝の連中が俺を見る訳だ。先代皇帝に似ているなんてな」
肖像写真の下端に書かれていた文字を読み取ったヴァンガードが指揮官を肘で小突くが、当の指揮官は肩を竦めて呆れた様子だ。
──ヒュイィィィィィィィィィィ…ゴォォォォォォォ!
「おや、来たか。迎えが来たので帰らせて頂くよ。そこを退け」
指揮官が睨みを効かせると、近衛兵団達は戸惑ったようにおずおずと道を開ける。
指揮官はそこを堂々とヴァンガードを伴って歩き、出入り口の扉を引いて開け…
「ま、待て!」
「ん?」
背後からの声に振り向くと、一人の男がこちらにライフルを向けていた。
近衛兵団の潜水艦艦長エルザンだ。
彼はレイフォリアに滞在しているのだが、この事態を受けて想い人であるシエリアの身を案じ、治安維持中隊と共に外務省へ駆け付けたのだ。
「貴様っ!なんだその顔は!?」
「生まれつきだが。というかお前…見た事あるな。確かあの放送に映ってた…」
「ええい、黙れ!恐れ多くも先帝陛下の御姿を真似るとは何たる不敬!蛮族如きが優等民族の象徴たるお方を騙るな!」
エルザンの言葉を聞いて気を取り直したのか、近衛兵団達は一転して指揮官へ各々の得物を向ける。
「はぁー…別に真似た訳じゃねぇって言ってんのに…」
「構う事はありません!総員、撃て!」
「指揮官っ!」
エルザンの鋭い指示と共にトリガーに指がかけられ、ヴァンガードが指揮官を庇うように前に飛び出す。
──バンッ!バンッ!パパパパパパッ!
セミオートライフルやサブマシンガン、拳銃が一斉に発砲される。
人一人に向けるには余りにも過剰な火力であるが、帝国を世界最強の国家に育て上げた先帝の顔を真似るというのは彼らにとってはそれだけ許し難い行為なのである。
「……なっ!?」
女が一人、肉壁になったが関係はない。
直ぐに倒れて肉壁の意味は成さなくなるし、そうでなくてもライフル弾ならば貫通して後の男まで届く。
そう思っていたエルザン達近衛兵団だったが、目の前の光景に愕然とした。
「貴方達、正気なの!?ただ似ているからというだけで第三国の人間を一方的に殺そうとするなんて…人を散々、蛮族ってレッテル貼りしてるけど、貴方達の方がよっぽど蛮族じゃない!」
「な…何故…生きている…?」
100発ほどの弾丸が直撃したというのに、ヴァンガードは制服に穴が開いてしまっただけで無傷だった。
一滴の血も流していなければ、白い肌に傷の一つも無い。
「大丈夫か、ヴァンガード」
「もちろん、私は戦艦なのよ。それより指揮官は大丈夫かしら?跳弾が当たったりは…」
「してない。それより…」
──バババババババ!
「迎えが来た。こんな所じゃいつ狙撃されるか分からん。さっさと帰ろう」
開け放した扉の向こうには広場があるのだが、そこにはUH-1汎用ヘリコプターが着陸するギリギリの所でホバリングしていた。
「キアサージ現着。指揮官、早期の帰還を推奨する」
「すまんな、今戻る」
キャビンのドアを開け、指揮官に呼びかけるのはダウンウォッシュに真珠色の長髪を靡かせた、何処となく無機質な雰囲気があるKAN-SEN…ユニオン所属の航空戦艦『キアサージ』であった。
「さあ指揮官。早く」
「まあまあ、そう急かすな」
ヴァンガードに促されながらも差し出されたキアサージの手を取りUH-1に乗り込む指揮官。
それに続いてヴァンガードも彼の盾となる位置に座ると、呆然とする近衛兵団を睨み付ける。
「もういい。これで世論はグ帝打倒から揺らぐ事はなくなった」
「まったく…アイツらは絶対に許せないわ。指揮官、アイツらを攻撃する時は私を呼びなさいっ!」
「私もそれを希望する。ヴァンガードからの視界共有で見たが、彼らの行いは異常…このまま放置すれば間違いなく世界の害になる」
上昇し、艦隊に向けて飛行するUH-1。
その両脇は『F8F ベアキャット』が並走し、それより離れた位置では様子を窺うアンタレスを威嚇するように、F-8やF-4が高速で飛び回っている。
「そうだな。だが…連中は使えそうだ。何かに縋り付くような連中は御しやすい。上手く扱って踊ってもらおうじゃないか」
飛行するヘリの中、指揮官は不敵な笑みを浮かべるのであった。
因みにこの後、ヴァンガードはちゃんとシャワーを浴びました
指揮官と一緒にな!
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい