異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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どうにか書き上がりました…最近、ガツガツ書いてるせいなのか、ちょっと手がダルいんですよね…


280.世界の意志

──中央歴1642年11月1日午前9時、アズールレーン第二文明圏派遣軍総司令部──

 

総司令部の指揮官執務室。

そこでは指揮官が端末を前にしてオンライン会議を行なっていた。

 

《いやはや…ご無事で何よりです、指揮官殿。しかし彼らがあれほどまでに理性を欠いているとは予想外でした》

 

画面に映るのはロデニウス連邦大統領のカナタだ。

列強国の国家元首となった彼だが背景に映る執務室は何とも簡素なものであり、彼の親しみやすい気質を表しているようだ。

 

《それにしても本当に似ているね。指揮官が着替えただけと言っても通じるよ》

 

画面をマジマジと見るのは、アルタラス王国に駐在しているノーザンプトンだ。

彼女は現在、ロデニウス連邦とアズールレーンによる対ムー支援航路の安全確保の為にフィルアデス大陸とミリシエント大陸の間にある大洋『フィルマ洋』に展開している艦隊の指揮を任されているのだ。

 

《ホントなの〜。ここまで似てると何か繋がりがあると思っちゃうね〜》

 

そんなノーザンプトンに同意するのは、カルトアルパスに駐在しているロング・アイランドだ。

彼女はノーザンプトンと同じくムー支援の為にミリシエント大陸とムー大陸の間にある『新西洋』に展開した艦隊の指揮を任されている。

 

「まったく…自分のとこのお偉いさんに似ているだけってのにいい迷惑だよ。しかしまあ、沸点の低い連中だ」

 

苦笑しながら指揮官が画面の一角に目を向ける。

そこにはヴァンガードの視覚データからコピーした、グラ・バルカス帝国の第七代皇帝グラ・ルーメンの肖像写真が表示されていた。

 

《かつてのパーパルディア皇国も横暴でしたが…まさかこんな国が再び現れるだなんて悪い夢を見ている気分ですよ》

 

「大統領、残念ながらこれは悪夢ではなく現実です。しかし現実だからこそ、我々の努力次第でどうとでもなります。対ムー支援の現状は?」

 

《はい。国防省、産業省、財務省が中心となって対ムー支援の為の戦力確保、軍需品増産、支援予算の確保を行なっているほか、民間人も自主的に支援を行おうとする動きが活発になっています》

 

「民間人が?」

 

指揮官からの問いかけに、カナタは頷いて応える。

 

《例えば旧クワ・トイネでは農村部の住人が自宅の庭を農園にして収穫した野菜を糧食工場に寄付したり、旧ロウリアでは工場労働者が自主的に2時間ほど残業をしてその残業手当をムー大使館に寄付したり…旧クイラなんかはすごいですよ。何せオイルマネーに物言わせて艦隊を作れるぐらいの寄付金をムー大使館に送金してました》

 

「それはまあ…」

 

これには流石の指揮官も驚愕である。

しかし、ロデニウス連邦の列強入りを最初に支持したのがムーだという事を踏まえれば、この献身的な支援も大恩を返すためだと考えれば納得だ。

 

《こっちの方も中々スゴいよ》

 

カナタの話に便乗するようにノーザンプトンも口を開く。

 

《アルタラス王国やトーパ王国、フェン王国といった国々が次々と派兵要請数を優に超える兵員を準備しているよ。それに自由フィシャヌス帝国もだね。戦後処理や旧パーパルディア勢力の取り締まりがひと段落して多少は余裕が出て来たみたいだ。カイオス首相がムーに恩返しするぞ、って張り切ってるよ》

 

アズールレーン加盟国は一定数の兵員をアズールレーンに派遣する義務があるが、グ帝の振る舞いを見て火が点いたのか、ほとんどの加盟国が規定の兵員数の1.5〜2倍の兵員を派遣している。

とは言っても一度に全員戦場に投入するという事はないため、兵員が増えた分は前線勤務の日数を減らして交代をより細やかにする事で兵士一人当たりの負担を減らしたり訓練時間を増やしたりする事で、兵士の体力や練度向上に役立てる事が出来るだろう。

また、自由フィシャヌス帝国は列強留任を支持したムーへの恩返しとして建国以来初の国外派兵を決定したのである。

彼らは最前線での戦闘経験こそ乏しいものの、旧パ皇残党との戦いでゲリラ戦を熟知しており、ムー大陸派兵においては解放地のゲリラ掃討に役立ってくれるであろう。

 

《こっちも似たような状況なの〜》

 

続いて口を開いたのは、ロング・アイランドだ。

 

《ミリシアルの結構な数の軍人さんがムーに義勇兵として向かったんだけど〜、やっぱり人員流出に慌てたみたいで私達のムー支援に積極的な協力をするってなったみたいだね〜。正式な外交手続きをする前に、幽霊さんの所にミリシアル軍の偉い人が来て相談されたよ〜》

 

そんな第三・第四文明圏の動きを見てミリシアルも黙っている訳ではない。

自国民を虐殺された怒りから単独でグ帝への攻撃も視野に入れていたが、潜水艦という未知の兵器に太刀打ちするべく、対潜戦闘のノウハウを得る為にロング・アイランドへの指導と、対ムー支援輸送船団の護衛への参加を要請したのである。

 

「これで凡そ全世界とグ帝の戦いになった訳だ。こりゃあ、負ける方が難しいな。だが…懸念事項が二つばかりある」

 

《懸念事項…ですか?》

 

人差し指と中指を立てた指揮官に、カナタが問いかける。

 

「まず一つは、"この戦争の終わらせ方"。シナリオとしては三つあります」

 

続いて指揮官は薬指も立てた。

 

「まず一つ目はグ帝をムー大陸周辺から追い出す事。これが最も早くて犠牲も少ないシナリオですが、グ帝が本国で戦訓に基づいて戦力を再編・増強すれば今度は一筋縄ではいかない敵となるでしょう」

 

薬指を折り、言葉を続ける。

 

「二つ目はグ帝をムー大陸周辺から追い出した上で、グ帝本土への戦略爆撃を行って生産能力を破壊する。グ帝本土周辺での海戦や空戦が予想されるので、こちらの被害も相当でしょう。しかし、今後を考えればこれが一番良いかもしれません」

 

中指を折り、言葉を続けるが、その言葉はどこか重いものであった。

 

「三つ目はグ帝本土決戦…先程話した二つのシナリオを実行した上で陸上戦力を上陸させ、グ帝を占領するものですが…」

 

《それはオススメ出来ないね。何せ遥かに技術力が劣る旧パ皇との戦争での上陸作戦では少なくない戦死者が出た。グ帝程の軍事技術を持ち、民族主義で結束しているとなれば…》

 

《絶対にやめておいた方がいいの〜…》

 

指揮官の言葉に続けてノーザンプトンとロング・アイランドが発言し、それを受けてカナタは深く頷く。

 

《私もそう思います。本土決戦は被害に対して得る物は殆ど無い…であれば二つ目が良いかもしれません》

 

「ならば私の方からムーに根回ししておきましょう。ムーはその辺りの割り切りは存外出来ていますし、問題は無いでしょう。しかし…」

 

《メンツを潰されたミリシアルは三つ目を推すでしょうね。そこは私がどうにかしましょう。グ帝本土に上陸するとして、消耗される兵士や物資、予算を各省庁とシュミレートして算出します。具体的な数字を出されればミリシアルも尻込みするかもしれません》

 

「お願いします。そしてもう一つの懸念事項ですが…」

 

そう言って指揮官は立てたままだった人差し指で端末のキーボードのキーを押す。

すると先程まで表示されていたグラ・ルーメンの画像が切り替わり、別の画像が表示された。

 

「これはヴァンガードの視覚データに偶然映り込んだものです。これを拡大すると…」

 

表示されたのは、ヴァンガードがイシュタム軍旗入りのジュラルミンケースをゲスタのデスクに叩きつけた瞬間を切り取ったものだ。

ゲスタのデスクには様々な書類が置かれているが、その一枚を拡大してゆくと…

 

《これは…リーム王国の国章!?》

 

カナタの驚愕の声の通り、拡大された書類に描かれていたのはリーム王国の国章だ。

 

《リーム王国…おかしい。第二文明圏周辺の中小国ならともかく、第三文明圏の大国と言ってもいいリームがグ帝に下るなんて…》

 

ノーザンプトンが頭を捻るのも無理はない。

というのも現在確認されているグ帝の軍門に下った国は全てが第二文明圏及びその周辺…中央世界以東では確認されていない中、リーム王国だけがグ帝と接触しているのだ。

 

《なんか〜…陰謀が透けて見えるの〜》

 

「俺も同感だ。リームはアズールレーンには加盟していないから、おそらくはグ帝に尻尾を振って技術支援をしてもらおうと企んでいるんだろう。あるいは…フィルアデス大陸で事を起こして、俺達の背後を脅かす事でグ帝に連帯するつもりなのか…」

 

リーム王国はこれまでの行いから周辺諸国に嫌われており、アズールレーンへの加盟申請を行った際も反対国多数によって否決されてしまった。

その為、アズールレーンによる技術支援プログラムに参加出来なくなり、周辺諸国が産業革命や経済成長を成し遂げている中で取り残されてしまっているのだ。

そんな経緯を踏まえれば、アズールレーンや周辺諸国への恨みを募らせてグ帝側に付いたとしても不思議ではない。

 

《そうなれば厄介ですね…もしリームが行動を起こした場合、対応出来る戦力は如何ほどですか?》

 

「問題はありません。近くには北方航路と運河を防衛する為に北方連邦艦隊が駐留してますし、北方連合系の企業が進出しているおかげで、北方連合型の陸海空軍を擁するトーパ王国があります。トーパ王国を攻めれば返り討ち、南下して自由フィシャヌス帝国等を攻めようとすれば足止めされている間にトーパ王国軍がリーム本土に逆侵攻を行うでしょう」

 

《ならば安心ですね。しかし、万が一という事があります。我が国の諜報部隊を送り込みましょう》

 

「リームならいい練習相手になりますね。そちらは任せます。北方連合艦隊には独自の指揮権を与えているので、命令を下せばその通りに動きますので好きに使って下さい」

 

《はい。ありがとうございます。……では私はこれよりミリシアルへの説得材料作りを指示しましょう》

 

《それじゃあ私は艦隊指揮を続行するよ。輸送船団は絶対無事に送り出すからね》

 

《幽霊さんも頑張るの〜》

 

「お互い、全力を尽くそう」

 

四人は力強く頷くと通信を切り、自分の責務を果たす為に動き始めた。




ロデニウス連邦の諜報戦の練習相手にされるリームぇ…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
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  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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