異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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執筆中にスマホに静岡で気温40℃という速報が来ました
もう人間が生きていける環境じゃねぇ…


284.アルー、鉄の嵐!【3】

──中央歴1642年11月30日午前9時、第4師団キャンプ地──

 

「……残ったのはこれだけか」

 

破壊しつくされたキャンプ地で立ち尽くすボーグ。

彼の前にはハウンドⅠ中戦車が30両程度と『シェイファーⅡ』軽戦車が10両に満たない程度、そして兵員が1000名程…あとは運良く生き残ったトラックが10台程度が悲壮な面持ちで佇んでいた。

しかも1000名程の兵員にしても半数近くは戦えないような重傷者であり、それらを基地に帰す為の兵員を引けば400名が使える兵員だろう。

バルクルス基地から出撃した当初は、兵員1万2千人、重カノン砲30門、戦車合計120両、トラック・弾薬運搬車等補助車両800台という大所帯だった筈だが、今となっては見窄らしい小部隊となってしまった。

特にアルー攻撃の要であった重カノン砲は使用不能なものはもちろん、無事なものも牽引車や弾薬を積み込んだトラックが破壊されている為、移動も出来ないし人力で移動したとて殆ど砲弾も無い。

もっとも、そもそも砲兵も居ないため使い物にはならないだろう。

 

「スグシ准等兵…」

 

ボーグの傍らを全身に金属片が刺さった遺体を乗せた担架が通り抜けて行く。

その遺体は先ほどまでボーグと話していたスグシ准等兵であった。

 

「クソッ!人の命を何だと思っているんだ!未来ある若者が…あんな酷い死に方を…!」

 

他所の国に攻め込もうとしている立場で何を言っているのかと問い詰めたくなるが、グラ・バルカス帝国ではバルカス人だけが尊い命であり、多民族の生命には価値が無いという教育が行われている為である。

 

「師団長、これを見て下さい!おそらくはあの攻撃の正体です!」

 

生き残った下士官の一人が地面に転がっている細長い物体を指差しながらボーグを呼んだ。

 

「これは…ロケット弾か?不発弾か…それにしてもデカいな。こんな大きなロケット弾は初めて見た」

 

ユグドにおいてはロケット弾はあまり用いられておらず、使われたとしても国力に劣る小国やゲリラが苦し紛れに使うものであり、その殆どは水道管のような手近な金属パイプに推進剤を詰め、弾頭に砲弾や航空爆弾を取り付けたような急造兵器が主である。

故にグ帝の将兵が知るロケット弾は全長1m程度、直径5cm前後の物であり、ボーグの前に転がる全長3m弱、直径12cmものロケット弾は正に規格外のサイズなのだ。

 

「かなり大きいですね…おそらく敵はこれを大量に発射して攻撃したのでしょう」

 

「だろうな。ロケット弾は弾道が不安定で命中精度が悪い。精度の悪さを数で補った訳か」

 

下士官の言葉にボーグも同意する。

 

「我が方の重カノン砲並みの直径があります。こんなに大きな弾頭なら威力もそれなりでしょう」

 

「あぁ、だがロケット弾は通常の火砲と比べて装填に時間がかかるという。こんなにも巨大なロケット弾なら尚の事だろう。おそらくは装填にはかなりの時間がかかる筈…現に第二波が来ていない」

 

ボーグの推測は当たりだ。

彼らに破壊の雨を降らせたBM-21は40発ものロケット弾を20秒程で撃ち尽くすが、再装填には専用車両を使っても10から30分程かかる。

それが40台分なのだから、短時間の内に第二波第三波と攻撃をする事は出来ないのだ。

 

「ならば今のうちに退却しましょう。一度基地に戻って戦力を…」

 

「駄目だ!このロケット弾攻撃は地平線の向こうから来た…つまり10kmか20kmの射程があるという事になる。基地に戻っても基地自体がロケット弾攻撃に曝される可能性がある!」

 

「ならばどうすれば…」

 

「簡単だ!」

 

そう言うとボーグは手近なハウンドⅠへと乗り込み、拳銃を抜いて東へと向けた。

 

「連中の街、アルーへと進撃する!」

 

「なっ…ま、街を攻めるのですか!?この兵力では不可能です!」

 

「考えてみろ!何故ムーが火砲ではなくロケット弾の大量投入を行ったか…それは火砲が不足しているからだ!連中のロケット弾の準備が完了する前に市街地へ突入すれば、インフラを破壊する事を恐れてロケット弾攻撃は出来なくなる!そして何より、帝国の戦車を破壊出来るような兵器をムーは持っていない!」

 

「なるほど!承知しました!」

 

納得した様子の下士官は部下を集めると、生き残ったトラックに乗るように命令した。

市街地戦ともなれば戦車が盾となり、歩兵が路地や建物を制圧するのがセオリーだ。

アルー市街地突入の際には彼らにも頑張ってもらわねばならないだろう。

その為には空にも気を配る必要がある。

 

「こちら第4師団。屈辱だが、ムーからの大規模な大型ロケット弾攻撃を受け、戦力の多くを失った。だが、戦車はまだ生き残っている。我々はアルー市街地へ突入し、敵防衛線を突破する!その為に航空援護を頼みたい!」

 

《こちらバルクルス基地航空隊。貴官の要請に従い、航空隊を発進させる。幸運を》 

 

何とも頼もしい返答にボーグは笑みを浮かべると各車の準備が整ったのを確認し、拳銃を振り上げた。

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

軍旗を掲げた指揮車を先頭に戦車とトラックからなる残存部隊がアルーへの進撃を開始した。

 


 

──同日、アルー西部──

 

──キュラキュラキュラ…

 

アルー西部、国境を越える街道沿いに響く履帯の音。

アルー防衛部隊の軍旗を掲げたムー国産戦車『ラ・リオット』、2個中隊26両が中隊事にV字型の隊列を組んで西へ進撃していた。

彼らはロケット弾攻撃から生き残ったグ帝部隊にとどめを刺すべく国境を越えようとしているのだ。

 

「なあ、トーマ」

 

《なんだ、フーマ》

 

「敵、どれぐらい残ってるかな?」

 

《さあ?でも戦車はそこそこ残っているんじゃないか?》

 

ラ・リオットの特徴である露天砲塔から上半身を出し、周囲を警戒しながら通信するのはそれぞれ『第49騎兵中隊』と『第50騎兵中隊』の中隊である『フーマ・ビレッジ』大尉と『トーマ・ビレッジ』大尉だ。

彼らは双子の兄弟であり、どちらが兄でどちらが弟かは本人達も分からないらしいが、いつも二人で行動している。

 

「だけど敵基地からの航空支援が来るかも。こっちの航空隊は数が少ないしな」

 

《大丈夫だよ。その為にトーパ王国の援軍があるんじゃないか》

 

彼らが指揮する戦車中隊の両側面と背後にはトーパ王国陸軍の自走対空砲『ZSU-23-4 シルカ』が1個小隊ずつ配備されており、皿型の対空レーダーと4連装23mm機関砲を空に向けて敵航空機を警戒している。

 

「そうだな。心強いし、万が一はこれで敵機を撃ち落としてやろう」

 

そう言ってフーマが砲塔上に取り付けられたM2重機関銃をペチペチと叩く。

オープントップである本車はその広大な頭上視界活かし、そして上方からの攻撃に備える為にM2を対空銃架で据え付けている。

万が一の際は急降下爆撃を目論む敵機を追い払い、場合によっては撃墜する事も出来るだろう。

 

《だけど心配だな。オレは対空射撃があんまり得意じゃないんだ》

 

「確かにな。だけどトーマは対地射撃が上手かったじゃないか。M2なら軽戦車の背面ぐらいなら貫通出来る……12時の方向!土煙が見える!」

 

話しながらも周囲を警戒していたフーマだったが、真正面にもうもうとした土煙が上がっているのが見えた。

人や馬が歩いたり走ったりするだけではこれだけの土煙は発生しないだろう。

間違いなく力強く地面を蹴るタイヤなり履帯なりを持った車両…つまりはトラックや装甲車、戦車であろう。

 

《総員、戦闘準備!対戦車徹甲弾装填!》

 

「全車散開!いいか、同士討ちには気を付けろ!」

 

素早く指示を出すフーマとトーマ。

ムー大陸にて世界初の戦車対戦車の戦いが始まろうとしていた。

 




皆さん、まじで今年はヤバいみたいですね…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
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  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
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