異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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切削では初めてとなる戦車対戦車の戦闘シーンです!
上手く書けたかは…読者の皆様の判断に委ねます


285.アルー、鉄の嵐!【4】

──中央歴1642年11月30日午前11時、ムー・レイフォル国境──

 

「敵戦車部隊、距離2000!」

 

もうもうと土煙を上げてムー領内へ向けて進撃する敵戦車部隊…その数は40か50程だろうか。

数では負けている。

しかし、質ならこちらが上だ。

指揮車の証である黄色のラインを砲塔に施したラ・リオットの車内で、フーマが照準器を覗き込む砲手の肩を爪先で小突きなから問いかける。

 

「当たるか?」

 

「確実に当てるなら1500以内です」

 

「当てろ。第50騎兵中隊、目標敵戦車部隊!撃てぇっ!」

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

第50騎兵中隊のラ・リオット、全13両が横並びに停車し、砲塔から長く伸びた『76mm50口径カノン砲』が火を吹き、砲弾を放った。

このカノン砲はアズールレーンの戦車『M4中戦車』に追い付くべく開発された物であり、その貫徹力は同クラスの戦車砲の中では5本の指に入る程の代物だ。

 

「……当たったか?」

 

──ギィンッ…

 

砲塔の縁に顎を乗せ、頭だけ出したような体勢で双眼鏡を覗くフーマは敵戦車の1両に大きな火花が散ったのを目にした。

それから一拍置いて聴こえる金属音と、その場に停まった敵戦車…よく見ると、敵戦車の砲塔からは2人程の人影が飛び出したのが見えた。

 

「敵戦車1両撃破!」

 

フーマは喜びを隠せぬ様子で無線に向かって報告した。

ラ・リオットの主砲はタングステン弾芯を備えた対戦車徹甲弾を発射した場合、2000mの距離で80mmの装甲を貫徹する事が出来る。

それに対し敵戦車ことグ帝のハウンドIは正面装甲25mm、最も厚い主砲防楯でも50mmしかないのだ。

ハウンドIは設計当時はライフルや機関銃、対歩兵を想定した榴弾、40mm級の対装甲車砲に撃たれる事を想定していた為これで十分だったが、76mmという大口径かつ50口径という長砲身、そして大量の装薬のエネルギーを受けて高速で飛来する鋼より硬くて重いタングステン弾を受け止める事は全く想定されていない。

故にラ・リオットからの攻撃を受けたハウンドIは車体前面装甲を貫通され、前面装甲の真裏に居た操縦手と彼の後ろに居た装填手を撃ち抜いたのである。

 

「敵戦車部隊、散開!ここからは敵味方入り乱れた近接戦になるぞ!敵に側面と後方を晒す事、そして同士討ちには気を付けろ!」

 

ラ・リオットは戦車とは銘打っているがオープントップ砲塔からも分かる通り、現実世界では『戦車駆逐車』或いは『対戦車自走砲』とでも言うべき代物だ。

正面装甲こそアズールレーンから提供されたグ帝の主力戦車と思しき戦車に酷似している『九七式中戦車』の主砲に300mの距離で耐えられるように40mmの厚さがあるが、側面は20mm、背面は15mm程度しかない。

故にラ・リオットは本来ならば敵戦車との近接戦は避けるべきなのだ。

しかし、ここを突破されれば敵戦車がアルー市街地に突入してしまう。

このような平原とは違い、遮蔽物や路地が多い市街地はラ・リオットの鬼門なのであるため、多少の無理をしてでもこの地で敵戦車部隊を屠らねばならない。

 

──ドンッ!ドンッ!……ドゴォォンッ!

 

《フーマ、この距離なら徹甲榴弾がいい。対戦車徹甲弾じゃ過貫通を起こす》

 

「了解、トーマ。よし、徹甲榴弾装填!…あの一回り小さい戦車だ。当たるか?」

 

「この距離なら…」

 

既に彼我の距離は1000mまで縮んでいる。

その証拠に敵戦車からも砲撃が来るが、榴弾威力と取り回しを重視した短砲身から放たれる砲弾は弾速が遅く、ここまで離れていると目に見えて分かる程に緩い弾道を描いているのが分かった。

そんな敵味方の砲弾が飛び交う中、フーマ車の装填手が弾薬庫から1mに迫る長さのライフル弾の化け物のような装薬一体砲弾を引き抜くと、主砲の砲尾に叩き込み、尾栓を閉じる。

 

「装填完了!」

 

「砲手、そちらのタイミングで撃て!」

 

「了解……ここっ!」

 

──ドンッ!

 

一網打尽にされない為に散開した敵戦車部隊であったが、そんな小手先の技では逃れられない。

小さい戦車ことシェイファーIIに目標を定めた砲手はしっかりと偏差を取り、発砲した。

 

──ドカァァンッ!

 

ハウンドIよりも小さく、装甲も薄いシェイファーIIは徹甲榴弾が防楯を貫通し内部で炸裂した事で弾薬が誘爆、内部からリベットや溶接部が破断して爆発と同時にバラバラになってしまった。

 

《対空レーダーに反応!敵航空機接近!》

 

一方的な戦車戦だが、敵は地上だけではない。

トーパ王国陸軍のシルカ自走対空砲がレーダーで西方から飛来する航空機を捉えた。

 

《敵航空機はこちらで対処する。貴官らは敵戦車に集中してくれ》

 

「感謝する。心強いよ」

 

一瞬だけ空に目を向けると、遠くの空にキラキラと光る物が見えた。

おそらくは敵機のプロペラが光を反射しているのだろう。

それだけ確認するとフーマは再び目を地上に向けた。

どのみちラ・リオットで本格的な対空戦闘は出来ないのだから、自分達は友軍が上手くやってくれる事を祈るしかない。

 

「敵戦車、左側面に回り込もうとしているぞ!」   

 

「はいよ!」

 

ハウンドⅠが主砲を向けながら自車の左側に回り込もうとしているのに気づいたフーマが脚を伸ばし、操縦手の左肩を爪先で小突く。

すると意図を理解した操縦手は左側の履帯を低速で、右側の履帯を高速で動かして信地旋回をすると、最も分厚い装甲を持つ前方を敵戦車の主砲と相対させ続ける。

 

「徹甲榴弾!」

 

「そらっ!」

 

「中隊長!こんな動いてちゃ狙いがつけられません!」

 

主砲に砲弾を装填し後は発射するだけだが、側面や背面を取られないように旋回しているため砲手が狙いをつけられないでいる。

 

「主砲12時、仰俯角0で固定しろ!合図したら撃て!」

 

「了解!」

 

遠距離砲撃ならば細かい調整と精密な照準が必要だ。

しかし、敵戦車は300mより近い位置まで肉薄している。

こうなれば照準器を覗き込まなくても、主砲の延長線上に目標が来た瞬間に撃てば当たる。

 

──ドンッ!ドゴンッ!

 

「ぷはっ!ぺっ!ぺっ!チッ…やっぱり屋根は要るな」

 

敵戦車の砲撃が5m程離れた位置に着弾し、巻き上げられた土塊が降り注いでフーマ達を汚す。

しかし、彼らはそれでも敵戦車から目を離す事はない。

 

「まだ…まだ…まだ…」

 

円を描くように走る敵戦車と左旋回を続ける自車。

敵戦車はフェイントをかけるように微妙な増減速を繰り返しているため中々捉えられなかったが…

 

「……今!」

 

──ドンッ!ズゴォォォンッ!

 

発砲し一瞬の後に敵戦車の砲塔に砲弾が直撃。

最も分厚いはずの防楯をぶち抜いた徹甲榴弾は砲塔内部で炸裂し、敵戦車は大爆発を起こした。

 

「よし、次!」

 

しかし、まだ気を緩める訳にはいかない。

少なくなってきたとはいえ、敵はまだ居る。

フーマは次なる獲物を仕留めるべく、操縦手の背中を小突いて自車を前進させた。




ラ・リオットの主砲、シャーマン・ファイアフライとかに搭載されている17ポンド砲と同じスペックにしようかと考えていたんですが、やっぱりやり過ぎだと思ってM10の主砲と同じぐらいにしてます

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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