異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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という訳でアルーの戦いはここで一区切りです。
さて、原作とはかなり違う流れになったので次はどうするか…


286.アルー、鉄の嵐!【終】

──中央歴1642年11月30日正午、ムー・レイフォル国境──

 

──ドォォンッ!

 

「うおっ!?」

 

ボーグが搭乗する指揮車のすぐ側に敵弾が着弾し、轟音と共に車体が大きく揺さぶられる。

 

「クソッ!ムーにあんな戦車が居るなんて聞いてないぞ!」

 

そう悪態をつくボーグであるが、ムーを侮ってロクに情報を集めていなかった彼の落ち度だ。

 

──ドゴォォォォォォンッ!

 

「っ!だ、誰がやられた!?」

 

空気を震わせる轟音は砲撃や着弾の音とは違う。

それは幾度となく聞いた、敵戦車の砲撃が直撃した味方戦車が爆散する音に近い。

しかし、ボーグの懸念は良い意味で裏切られる事となった。

 

「ち、違います!23号車が敵戦車を撃破した模様!」

 

指揮車にだけ追加で搭乗している通信手が喜色を滲ませてボーグに報告する。

 

「何だと!?」

 

「23号車より報告!《敵戦車は側面及び背面は柔らかく、砲塔の天蓋が無い模様》との事です!」

 

通信手からの追加報告を聞きつつ、ボーグは砲塔から顔の上半分だけを出して素早く周囲を見渡す。

するとハウンドIともシェイファーIIとも違う戦車が炎上し、その近くには3人の火達磨になった人間がのたうち回り…そして動かなくなった。

 

「なるほど…強力な砲と必要な速力を得る為に装甲を削った訳か。ならば此方にも勝機はある!全車に通達、敵戦車の正面は絶対に避けろ!そして攻撃の際は側面か背面を徹底だ!」

 

「はっ!全車へ、師団長より通達…」

 

通信手がボーグの命令を伝達している中、彼は再び砲塔から顔を出して辺りを見渡す。

師団長たるもの状況把握は密に行わねばならないという考えによるものだが、そんな時ボーグの耳が航空機のエンジン音を捉えた。

 

──ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!

 

「航空支援が来たぞ!我々の勝利だ!」

 

音がする方に目を向けると、やや離れた位置ながらも突き出た固定脚が特徴的なミザール爆撃機が20機ほどこちらに飛んでくるのが見えた。

如何に強力な砲と優秀な速力を持つ戦車でも飛行機に主砲を当てる事は出来ず、何百km/hの速度からは逃れられない。

それに加え小型の航空爆弾であっても戦車にとっては致命傷となる。

そんな心強い味方が来てなおかつ敵戦車への対処法も分かっているのだから、この戦闘の勝利は決まったようなものだ。

そう確信したボーグが拳を天に突き上げると…

 

──ドドドドドドッ!ドドドドドドッ!

 

──ボンッ!ボンッ!ゴォォォォォォォ…ドゴンッ!

 

「んなぁっ!?」

 

敵戦車に狙いを付けたらしい急降下に入ったミザールが、地上から放たれた光弾によって貫かれ、炎上しながら墜落、爆発した。

 

「なっ…!?まさか対空戦車!?」

 

ボーグが注目したのは、戦車戦の渦中から離れた位置で待機していた妙な敵戦車…トーパ王国陸軍のシルカだった。

ボーグ達はシルカの姿を奇妙に思いながらも攻撃に参加して来ない事と、砲塔上の皿のような部品を見てサーチライトを装備した工兵車両だと思っていた。

しかし、それは大外れ。

その奇妙な戦車は対空機関砲とレーダーを装備した対空戦車だったのだ。

 

「クソォッ!我々でも持っていないような兵器を何故ムーごときが!」

 

グ帝でも一時期、対空戦車を配備するという計画が持ち上がった事がある。

しかしそれはそもそもグ帝が圧倒的な航空戦力を持つため制空権が無い状況での陸戦は発生しにくい事、そして何よりも陸軍嫌いを拗らせている近衛兵団の横槍といった理由からお流れになったのだ。

 

「だ、だが所詮は機関砲を取り付けただけの急造品!さっきのはこちらの油断かもしれないが、注意していればそうは当たらん!」

 

ボーグの言葉はあながち間違いでもない。

三次元的に動く航空機はただでさえ狙い難い上に、現在ミザールは低い位置を300km/h程度で飛行している。

低い位置なら狙い易いのではないか?と思われるかもしれないが、日常的に見かける旅客機を想像してみると理解出来るだろう。

現代の旅客機は900km/h以上という速度で移動しているにも関わらず、巡航中を見上げるととてもゆっくりに見える。

これは速度による移動量が視野角の広さと比べて小さい事が原因である。

そして低空を飛ぶという事はその逆であり、視野角の狭さに対して速度が十分にあれば、人の目で追う事は難しく、人力銃座で追尾する事も難しい。

余りにも飛行速度が遅ければ別だが、300km/hも出ていれば十分だ。

 

──ドドドドドドッ!ドンッ!

 

「バカな!?」

 

しかし、ボーグの予想は裏切られた。

というのも先述した通りシルカはレーダーを搭載している。

このレーダーは捜索用かつ射撃管制用を兼ねているため1機しか対処出来ないという欠点こそあるものの、一度目標を捉えれば砲塔をリンクさせて敵機を追尾出来るのだ。

しかも砲塔は補助動力装置によるアシストが効いた動力旋回式であるため、ミザール程度の速度ならば易々と追尾出来てしまう。

 

「れ、劣等種如きに…栄光ある帝国陸軍が…!」

 

次々と撃墜されていくミザール。

どうにか生き残った者もいるが、高度を上げる為に爆弾を捨てているため最早攻撃能力は無いに等しい。

 

──ドンッ!…ドゴォォンッ!

 

「うっ…!」

 

また1両、味方が被弾して撃破された。

キャンプ地を出発した当初は40両ほどあった戦車も今では10両に満たない…いや、もう5両程度だろう。

こうなってはアルーへの侵攻はおろか、この場を切り抜ける事すら出来ない。

 

「……撤退だ。残存兵力に撤退を通達!レイフォル領内に引き返し、バルクルス基地まで撤退するんだ!」

 

「りょ、了解」

 

何処かホッとした様子の通信手には何も言わず、ボーグは車長席に浅く座ったまま頭を抱えた。

師団が壊滅状態となり、機甲戦力は敵戦車によって多数撃破され、頼みの綱の航空支援も敵対空戦車によって打ち砕かれた。

正に惨敗…グ帝陸軍の歴史上、こんな惨敗は初と言っても過言ではない。

このまま帰れば間違いなく首が飛ぶ…しかし、ここで全滅すれば死ななくてもよい兵士を死なせてしまう。

そんな葛藤の中、ボーグは西へと全力で撤退する車内で揺られるのだった。

 

こうして後に『アルーの戦い』と名付けられた世界初の戦車戦を含む戦いは終わりを告げた。

これによりグラ・バルカス帝国側は第4師団の壊滅、航空機11という大損害を受けた。

対してムー側は戦車3両撃破、戦死者11名、負傷者7名という損害に終わり、誰の目から見てもムー側の圧勝となったのである。




今日から計画艦7期が始まりますが、みなさんは誰から作るとか決めてますか?
私はナポリからですね
前衛の経験値集めは大変ですが、頑張ります!

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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