異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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そう言えば本作を書き始めた頃とはアズールレーンも様変わりしてきましたよね
連載当初は影も形も無かった勢力や設定が出てきたり…
今から書くならロウリア戦&パ皇戦ではテンペスタを活躍させたりして、面白く出来そうですが…今更リメイクもなぁ…


289.曇天の空に

──中央歴1642年12月14日正午、トーパ王国首都ベルンゲン──

 

《続いて空軍の広域偵察戦闘飛行隊の展示飛行となります。皆様、東の空をご覧ください》

 

──ブゥゥゥゥゥゥゥゥン……

 

民衆がアナウンスと東側の空から空気を震わせる重低音が響いてくる。

冬のトーパ王国ではお馴染みな、今にも雪が降ってきそうな低く垂れ込めた曇り空の下を飛んできたのは、巨大な航空機であった。

全長、全幅どちらも50m程もある件の航空機は細長い胴体にこれまた細長い後退翼を持ち、その主翼には巨大な二重反転プロペラを備えたエンジンを4基搭載している。

そんな機体が12機、3機ずつのV字編隊で大きなダイヤモンド編隊を組んで低空を飛んでいるのは正に"圧巻"の一言だ。

 

《先ず登場致しましたのは、王国空軍の切り札『空中艦隊』の主力である『Tu-95』戦略爆撃機であります》

 

アナウンスからの紹介に民衆は拍手をする。

そう、飛来した機体は我々日本人、特に軍事に興味がある人間ならばある意味お馴染みなTu-95であった。

しかし、読者諸兄はこう思っただろう。

「トーパ王国のような国に戦略爆撃機は不要、あるいは過剰戦力ではないか?」と。

確かにトーパ王国の領土や周辺諸国との関係等を鑑みればTu-95のような大型戦略爆撃機の存在は無用の長物であり、仮想敵国であるリーム王国と交戦する事になったとて、より小さな戦術爆撃機、あるいは戦闘爆撃機で十分なはすだ。

だが、それにはトーパ王国特有の3つの事情がある。

まず1つ目がトーパ王国には有力な海軍が無いのだ。

これはトーパ王国海軍近代化の際、戦艦や空母といった主力艦隊とその随伴艦からなる艦隊を揃えた際の導入・維持コストの高価さに尻込みした海軍首脳は、敵艦隊を空から攻撃し、討ち漏らした艦は近海及び沿岸に展開した小型潜水艦や魚雷・ミサイル艇、沿岸砲によって撃退するというドクトリンを選択したからだ。

 

次に2つ目は、フィルアデス大陸内の地域大国として存在感を示すためだ。

これは今までフィルアデス大陸の覇者であったパーパルディア皇国が崩壊し、後継国たる自由フィシャヌス帝国は必要以上の軍事力は持たない主義であるため、大陸内外からの侵略者への抑止力、或いは対抗出来る戦力が必要とされ、その役目をアズールレーンからの要請でトーパ王国が引き受ける事となったのである。

 

最後に3つ目だが、これが最大の理由…それこそがグラメウス大陸の監視と攻撃だ。

というのもトーパ王国は今まで手つかずだったグラメウス大陸の調査と開拓、そして再び魔王侵攻のような事態が発生した場合の最前線とされており、普段から調査の為に航空偵察を行う為と有事の際には地を埋め尽くす程の魔物を撃滅する為に長い航続距離を持ちなおかつ大量の爆弾を搭載可能な爆撃機が必要と結論づけられた為、Tu-95を配備する事となったのだ。

 

因みにトーパ王国空軍ではTu-95を長距離偵察機や爆撃機としてだけではなく、空中給油機や旅客機としても活用しており、ここ最近はフィルアデス大陸北側の空で見ない日は無いとまで言われている。

 

《続きまして登場致しますのは空軍の主力戦闘攻撃機『Ye-9』であります》

 

──ゴォォォォォォォォ…!

 

Tu-95の編隊が飛び去って間もなく飛来したのは、4機ずつのダイヤモンド編隊4つで大きなダイヤモンド編隊を組んだ戦闘機の部隊であった。

しかもその戦闘機はただの戦闘機ではない。

飛行時のエンジン音からも分かる通りジェット機である事はもちろん、翼端を切り落としたクリップドデルタ翼に機首の左右に備えたカナード翼、胴体下面にはスプリッターベーン付きの矩形インテークを備えている。

その姿は『F-16』と『ユーロファイター』を混ぜたようであるが、詳しい読者諸兄は本機の特徴と型式を見て察する事が出来るだろう。

そう、本機は名機『Mig-21』のバリエーション試作機である『Ye-8』の制式採用型なのである。

もともとYe-8は機体構成の関係上、強力なレーダーを搭載出来なかったMig-21の問題を是正する為に胴体を大胆に改設計したものであるが、新型エンジンの不調による不具合や墜落事故の影響で有望視されながらも計画破棄となった機体であった。

 

だがそれはあくまでも現実世界での話。

この世界での本機はエンジンを信頼性・推力が高いユニオン製『J79』とし、固定武装としてロイヤル製『ADEN 30mmリヴォルヴァーカノン』を右翼付け根に本体、左翼付け根に弾倉という形で装備した事でマッハ2級多用途戦闘機としてトーパ王国空軍の主力となるに至ったのである。

兵装に関してもユニオン製の空対空ミサイルである『AIM-9 サイドワインダー』や『AIM-7 スパロー』、空対地ミサイル『AGM-62 ウォールアイ』といった各種誘導兵器の装備が可能となっており、その性能はF-8以上F-4未満といった具合だ。

 

「ワイバーンが無かった我が国初の空軍がこんな立派だなんて…」

「ばんざーい!王国ばんざーい!国王陛下ばんざーい!」

「お父さん!ぼく、大きくなったらあれに乗る仕事をするよ!」

 

気候の影響でワイバーンの運用が出来ず、飛行能力を持つ魔物に怯えてきた祖国の変わりように人々は冬の凍てつく寒さにも関わらず額に汗が浮かぶ程の熱気で、祖国と国王を讃える。

そんな中、一人だけ高揚ではない汗を浮かべている者が居た。

 

(ば、バカな!?トーパ王国は文明圏外の蛮族国家ではなかったのか!?)

 

厚手のコートを着用し、フードを目深に被ったその男の名は『アルド・ピスカス』…グラ・バルカス帝国情報局の諜報員である。

彼はロデニウス大陸とフィルアデス大陸以西を結ぶ運河とそれを管理するトーパ王国の情報を集める為、密かに潜入していたのだ。

 

(あのTu-95とか言う爆撃機…大きさもだが、最高速度900km/h以上!?あんなデカブツがアンタレス以上の速度だと!?しかも爆弾搭載量は15トン!我が国の主力爆撃機『ベガ双発爆撃機』が15機分だと!?)

 

アルドが冷や汗を浮かべながら食い入るように読み込んでいるのは、トーパ王国軍の広報官が配っていた観兵式に登場する各種兵器の簡単な解説が掲載されたパンフレットだ。

その内容は彼の常識からは考えられないような物であり、彼自身も自分の目で実物を見なければ存在を疑っていたであろう。

 

(それにYe-9とかいう戦闘機…最高速度2400km/hに固定武装は30mm機関砲!各種誘導兵器の装備も可能…誘導兵器がどのような物かはまだ分からないが、誘導兵器抜きでもとんでもない戦闘機だぞ。アンタレスの3倍以上の速度で一撃必殺の砲弾を叩き込んでくるとは…これでは我々の戦略が台無しだ!)

 

現在、情報局は帝国内での立場の無さに焦っており、乾坤一擲の作戦を実行していた。

それこそが、第三文明圏にて孤立気味なリーム王国を利用するというものだ。

具体的にはリーム王国に各種旧式兵器を与えた上で訓練し、第四文明圏の主要航路である運河とそれを管理するトーパ王国を占領させ、その上フィルアデス大陸東岸の各都市を攻撃させる事でロデニウス連邦とアズールレーンを第三文明圏より西に出させないという戦略である。

しかし、それはあくまでもトーパ王国の技術力をムー以下と見込んでいたからの話…100mm以上の主砲を持つ戦車や、超音速戦闘機があっては話は別だ。

 

(マズイ…マズイ…!これではリームに恵んだ旧式機なぞ相手にならない!ここは正面衝突ではなく、特殊部隊による破壊工作に切り替えねば…!しかし、浮かれたリームのバカ共や本国の軍部と近衛兵団が信じてくれるだろうか…)

 

しかし、自身が集めた情報を秘めたままにしておく訳にはいかない。

職務への忠誠と組織への疑念の中、手汗で湿ったパンフレットを懐に入れたアルドは、足早に民衆の中から路地裏へ駆け込むのであった。




トーパ王国の戦力が過剰気味なのは運河防衛とグラメウス大陸調査の為なんですよね
あとトーパ王国自体が古参の参加国なのでかなり優遇されている面もあります

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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