──中央歴1642年12月17日正午、アルタラス王国セコイア港──
──ボォォォォォォォォ…
「LSD型、5隻入港!」
「さっき同じ型の奴が同じだけ出ていった!そこに入れろ!」
「あー…積荷は…」
アルタラス王国の北岸に置かれたセコイア港。
アルタラス王国と北側の対岸であるフィルアデス大陸南岸との間の海域を望むこの港は、同海域の治安維持を任されたアルタラス王国海軍の根拠地の一つであり、また海上貿易のハブ港でもある。
そんなセコイア港は今、ロデニウス連邦からムーへ向かう物資を満載した輸送船で溢れかえっていた。
そのほとんどは第四文明圏やその周辺で急速に広まりつつある『LSD型標準輸送船』と呼ばれる輸送船だ。
このLSD型、言ってしまえば現実世界のアメリカが第二次世界大戦時に運用していた戦時標準船の一つである『リバティ船』の機関をディーゼルエンジンに置き換えただけの物だ。
故に性能的には何の特徴も無いのだが、本船の特筆すべき点はなんと言っても生産性である。
徹底した部品の規格化に、船体をいくつもの部位に分けて作った後に最終的に組み上げるブロック工法、リベットよりも素早く接合出来る電気溶接といった造船技術の粋を結集した本船は驚異的な生産効率を誇り、ロデニウス連邦では1日に5隻が進水しているとまで言われているのだ。
「おーい、出港予定の船でエンジントラブルだ!誰か修理の手伝いに行ってくれ!」
セコイア港はハブ港だけあってかなりの数の船を受け入れる事が出来るが、それでもひっきりなしに来航する船を受け入れるには出港準備が出来た船をさっさと送り出す必要がある。
しかし、1日に何十隻と船の往来があるとなれば当然トラブルが発生する確率は高くなる。
今回発生したのは最もありふれたトラブル…エンジントラブルだ。
「私が行きます。我が社の製品ですから、トラブルの対処は概ね熟知しています」
港湾管制室に転がり込んできた水先案内人の言葉に応えたのは、油まみれの作業服を着た若い男性だった。
彼は周囲のアルタラス人とは顔立ちが違い、作業服の胸元には『リグリエラ・ビサンズ』の社名が刺繍されている。
そう、彼はムーの造船会社であるリグリエラ・ビサンズ社の社員なのだ。
何故ムーの造船会社の社員が遠く離れたアルタラス王国に居るのか?その理由は、LSD型のエンジンがリグリエラ・ビサンズ社の製品だからだ。
というのもリグリエラ・ビサンズ社はムー海軍向けの次世代補助艦艇用ディーゼルエンジンを開発し製造を始めていたのだが、アズールレーンからの技術協力によって、より高出力な蒸気タービンの国産化に成功し新造する戦闘艦艇は全て蒸気タービンを搭載する事となったのだ。
しかし、ここで困った事になったのがリグリエラ・ビサンズ社である。
というのも新型ディーゼルエンジンは数が多い補助艦艇に搭載する事を見越していたため、大量生産の為の設備を作っており、当初の想定の数を納入出来なければ採算が合わない事態となっていたのだ。
そんな時に救いの手を差し伸べたのがロデニウス連邦国営造船所であった。
当時の連邦国営造船所では各国の海運近代化を支援すべく後のLSD型となる輸送船の建造に着手していたのだが、船体の建造速度に対してエンジンの製造速度が追い付かないという可能性が浮上したのである。
そこでダメ元で同じ科学文明国であるムーに打診したところ、なんと件の新型ディーゼルエンジンの性能が丁度要求数値に近かったのだ。
そこからは早かった。
ロデニウス連邦はムーに対して武器弾薬や車両を、ムーはそれらを積んできた輸送船にエンジンを積み込んで送り返すといった形で交易が行われた結果、リグリエラ・ビサンズ社は想定以上の売上を得、ロデニウス連邦は必要数の輸送船を建造する事が出来たのである。
そういった事もあり、リグリエラ・ビサンズ社は第三・第四文明国の主要国に支社を設け、アフターサービス要員を派遣しているのだった。
「おう、ムーのあんちゃん!助かるぜ!」
「いえいえ…ところで燃料系のエア抜きとフィルターは確認しましたか?それとグローの発熱量は…」
水先案内人の案内に従って歩きつつ、リグリエラ・ビサンズの社員が状況を確認する中、港から離れた場所ではまた別の者達が船の往来を守る為に働いていた。
──同日、セコイア港北西──
セコイア港北西の海上。
第三文明圏と中央世界を繋ぐこの海域は第四文明圏に属するロデニウス連邦とアズールレーンによる世界戦略の要であり、この海域の安全によって同国及び同勢力の世界に対する影響力が変わると言っても過言では無い。
そして海域の安全を脅かす者と言えば現在進行形で世界を騒がせているグラ・バルカス帝国…とくに同国の潜水艦だ。
伊400型に酷似したシータス級潜水艦はアズールレーンによって鹵獲され徹底的に分析された結果、防音に関する処理が未熟で潜水艦としては二流と言っても良いだろう。
しかし、その長大な航続力と雷撃能力、航空機運用能力は何だかんだ言っても脅威だ。
遠方から一息に、潜水航行を織り交ぜながら迫られれば哨戒網をすり抜けられる可能性は高まり、欠点である防音性能の不足も機関停止した待ち伏せ攻撃ならばある程度はカバー出来るし、何より艦載水上機によって神出鬼没の空爆を行える事は輸送船団や港湾から見ればとんでもない強敵である。
故にこの海域には、アルタラス王国海軍がアズールレーンと共同で対潜哨戒任務にあたっている。
──ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ…
そんなアルタラス王国海軍の対潜哨戒機『P-2J』が高度1000m付近をゆっくりと飛行し、海中に潜んでいるかもしれないグ帝潜水艦を警戒していた。
「ソノブイ投下」
《ソノブイ投下ー!》
P-2Jの機長であるアルタラス王国海軍航空隊所属の『フィリッジ・バリュート』が指定空域に到達した事を確認し、ヘッドセットのマイクへソノブイ投下を呼びかける。
するとそれに応えた機体後部で待機していたソノブイ投下員が、同じく機体後部に備えられたランチャーにソノブイを装填し、投下する。
投下されたソノブイは小さなパラシュートによって減速しつつ海面に対して垂直になると、そのまま着水、海上にアンテナと浮きを残すと内蔵されたワイヤーを繰り出して海中にハイドロフォンを展開した。
それを8回繰り返し、1辺が2kmにも及ぶ八角形を描くようにしてソノブイによる探知領域を作り出す。
「ソノブイ、定数投下。さあ、ここからが本番だぞ」
フィリッジはそう言うと自機の高度を2000mまで上げると、投下したソノブイを外側から見回るような飛行経路で飛行し始めた。
《こちらソナー観測。現在、海中に異常はありません。平和そのものです》
《こちら目視観測。波が高く、海流が西から東に流れています。ソノブイの位置確認をより密に行う事を推奨します》
投下されたソノブイはそれぞれ固有の電波周波数を使い、ハイドロフォンで捉えた水中雑音を母機に発信している。
それを利用して受信電波を変えながら各ソノブイが捉えた水中雑音の強弱を判断し、三角測量の要領で敵潜水艦の位置を探るのが対潜哨戒機の基本戦術だ。
しかし、ソノブイはあくまでも浮いているだけであり、海流や風で位置が変わってしまう。
それを確認し、ソノブイの位置関係を把握するのも哨戒機乗りの重要な任務だ。
「全員気を引き締めろ。今のセコイア港には火薬をたんまり積み込んだ輸送船が犇めいている。そんな所に魚雷を撃ち込まれたら、港が丸ごと月までぶっ飛ぶぞ」
《了解。魚のしゃっくりも聞き逃さな…っ…北西、2番ソノブイに反応》
ソナー手からの報告で機内に緊張の糸が張り詰めた。
「落ち着け。音紋照合は?」
《まだ微かにしか聴こえません。しかし、かなり大きな音です。おそらくは…》
「分かった。そちらに集中してくれ。総員、戦闘態勢。我々の初戦果としよう」
もうそろそろ武蔵復刻ですね!
持ってない方は是非!
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい