──中央歴1642年12月17日午後1時、アルタラス王国北西沖海中──
「うーむ…しまったな…」
「艦長、どうされました?」
航空機からの捜索を避け、海中に退避したアバンデスの艦内で艦長ロッズは悔やむような言葉を漏らした。
「いや、潜降するよりも浮上して対空機銃なり艦載機で敵機を撃墜すべきだったかと思ってな」
「あぁ…なるほど。確かに劣等人種の航空機程度、撃墜してしまえば良かったですね」
シータス級には艦載機格納筒上部に25mm3連装機銃を2基装備しており、攻撃を意図して接近する敵哨戒機を返り討ちにする事が可能だ。
更には海軍のシータス級はアンタレス艦上戦闘機を改造したアクルックスを搭載しているが、それはあくまでも間に合わせ…本命は近衛兵団向けの物に搭載されている『レゴリス特務攻撃機』だ。
本機はグ帝軍用機には珍しく水冷エンジンを搭載しており、大きな空気抵抗となるフロート装備しかつ重量面で不利な複座機にも関わらずアクルックスよりも優速な470km/hもの速度を発揮出来、航空魚雷や800kg爆弾と言った空母艦載機並みの武装も可能な、潜水艦搭載機としては最高クラスの代物と言っても過言ではないだろう。
「用心をし過ぎたな…まあ、次は気を付けよう。それより敵機はどうなったか…もう諦めたか?」
「そもそも劣等人種共が潜水艦を理解出来るとは思えませんがね。海魔とか言う原生生物だと思ったのでは?」
「そうかもしれんな。魔法などという非科学的な力に頼る劣等人種らしい……」
「艦長!本艦後方に着水音!」
「なにぃっ!?」
副長と共にこの世界の人々を嘲笑していたロッズだったが、ソナー手からの報告に思わず狼狽した。
「ま、まさか…そんなはずは…」
──ゴォォォォォォォォンッ!!
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
異世界人が潜水艦の存在を知る筈もなく、故に対潜攻撃をしてくる訳がない。
そう考えていた彼らは艦尾方向からの凄まじい轟音と衝撃によって転げ回る事となった。
「状況は!?」
「……」
「機関室、応答せよ!機関室!機関室!」
投下された爆雷はアバンデスの艦尾近くで炸裂したのだが、それによる被害は同艦に致命的な損害を与えていた。
爆圧によって艦尾は完全にへしゃげ、スクリュープロペラや舵はもちろん、機関室まで潰れてしまっており、艦尾付近の乗組員は痛みを感じる間もなく死亡した。
しかし、運良く潰れた艦体が開口部を塞ぐ形になっていたため、被害の割には浸水が少なく、直ちに沈没するという事にはならなそうだ。
だからと言って事態が好転する訳ではない。
しかもソナー手はヘッドフォンをミュートにするのが間に合わなかったのか爆雷炸裂の轟音を敏感な耳で捉えてしまったらしく、耳から血を流し白目を剥いて失神してしまっている。
謂わばアバンデスはこの時点で足と耳を失ったわけだ。
「くっ…緊急浮上!砲手とパイロットは準備を!」
「艦長、浮上するのですか!?」
「状況を見るに本艦はどうやら推進力を失ったらしい。このままでは海中で動けず、一方的に攻撃されるだけだ!ならば敵機を撃墜し、救援を呼ぶべきだ!」
「はっ、承知しました!メインバラストタンク、排水!緊急浮上!」
どうにかバラストタンクは生きていたようだ。
バラストタンクに圧縮空気を送り込み、浮上する艦内で指示を受けた乗組員が慌ただしく動いた。
──同日、同海域上空──
「敵潜水艦、浮上!やりましたね、機長!」
一方、爆雷を投下したP-2Jの機内は喜びに満ち溢れていた。
初の実戦任務ながらも敵潜水艦を浮上させるという目的を果たせたのだから、それも無理は無いだろう。
「待て、喜ぶのはまだ早い。敵潜水艦は対空火器を装備している。降伏の意思を確認するまでは気を抜くな」
浮上した敵潜水艦ことアバンデスを油断なく監視しつつもフィリッジは機長席に備え付けられたマイクを手に取った。
「こちらはアルタラス王国海軍である。貴艦はグラ・バルカス帝国所属の潜水艦と見受ける。速やかに武装解除し、降伏せよ。繰り返す…」
様々な周波数に切り替えつつ降伏を呼びかける通信を発する。
浮上したアバンデスは艦尾が20m近くに渡ってひしゃげており、明らかに航行は不可能に見える。
しかし、甲板上に装備された艦載砲や対空機関砲、艦載機格納筒は無事なように見えるからには対空砲火や艦載機による迎撃が行われる可能性もある。
最後まで気は抜けないだろう。
「機長、甲板に人が…あっ!機銃と格納庫に人が!」
「あくまでも戦うつもりか!対水上戦闘!副機長、操縦は任せた!」
そう言って副機長に操縦を任せたフィリッジは機長席から立つと、そのまま機首にあるガラス張りの観測席に滑り込んだ。
アルタラス王国はP-2Jを対潜哨戒機のみならず海賊対策の哨戒爆撃機としても運用しており、観測席にはボールマウントに設置された20mm機関砲を装備している。
フィリッジはその機関砲の薬室に弾薬を送り込むと、照準をアバンデスの甲板に向けた。
──ドドドドドドドッ!
20mm機関砲が火を吹き、アバンデスの甲板へ砲弾が降り注ぐ。
甲板上で機関砲の防水カバー類を外していた乗組員はそれに成すすべも無く薙ぎ払われ、血煙となるか或いはバラバラになって元が何だったか分からない物体と成り果てた。
「対潜ロケット!」
「はっ!対潜ロケット発射!」
フィリッジからの指示に従い副機長が主翼下に吊り下げていた5インチロケット弾6発を斉射する。
このロケット弾の弾頭は炸薬を充填していない所謂イナート弾であるが、これは潜水艦の外殻に穴を開けて潜降させないようにする為のものだ。
──ガゴンッ!ガゴンッ!ガゴンッ!
煙の尾を引いて飛翔したロケット弾は半数の3発がアバンデスの左舷に突き刺さった。
これでアバンデスはもう潜降出来ない…潜水艦としては死んだも同然だ。
「よし…あとは…」
──ドドドドドドドッ!
それを確認したフィリッジは格納筒に照準を向け、一直線に薙ぎ払う。
──ボンッ!ボンッ!
フィリッジの狙い通り、格納筒内部の艦載機、その燃料タンクのガソリンに引火して格納筒は小さく爆発炎上を始めた。
「これならどうだ?」
もう攻撃は十分だと判断したフィリッジは機関砲から弾薬を抜くと、アバンデスの動向を見守る。
すると機長席の通信機からノイズ混じりの音声が聴こえてきた。
《こ…らグ…・バルカス帝国…の衛兵団だ…降伏…る…撃たないでくれ》
その通信と共に、セイルのハッチから両手を挙げた乗組員が姿を現した。
「……司令部に救助船を寄越すように伝えてくれ。我々は敵潜水艦を降伏させる事に成功した、ともな」
グッとサムズアップしたフィリッジを見て、P-2Jの乗組員達は改めて喜びに沸いた。
その後、2時間程でアルタラス王国海軍の高速哨戒艇がアバンデスの乗組員を救助し、捕虜とした。
そしてアバンデスもその後に来た消防船によって火を完全に消し止められ、セコイア港へ曳航されたのであった。
今回の話書くのにP-2の資料を買いましたが、届く前に書き上がっちゃいましたね
まあ今後の話にP-2が出てこないって事はないと思うんで無駄ではないでしょうが
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい