いやー、すっごい懐かしいメンツですね
皆さんはどうですか?私はとりあえず全員揃いました
──中央歴1643年1月4日午前9時、アズールレーン第二文明圏派遣軍総司令部──
食堂としても使われる大広間。
そこにはプロジェクターが設置され、スクリーンにムー大陸の空撮写真が映し出されていた。
「作戦を説明する」
スクリーンの端に立った指揮官がそう述べると、大広間に集まっていた人々の騒めきが一転し、静寂となった。
「今回の作戦は諜報部が入手したグラ・バルカス帝国皇太子の対ムー戦線視察に乗じ、当該人物の拉致を目的としたものである。現在、皇太子の乗機はレイフォリア付近の飛行場にあり、明日からレイフォル各地に点在する軍事基地を視察し、15日の昼にバルクルス基地…つまり対ムー戦線の前線基地に到着するとの事だ」
そう概要を説明しながらプロジェクターを操作する指揮官。
するとスクリーンに映し出されたムー大陸、その西岸にあるレイフォリアに旅客機のシルエットが表示され、レイフォル各地を経由するラインが描かれた。
「大まかな流れとしては皇太子乗機の到着直前に少数機による低空侵攻によってバルクルス基地への空襲を行い、滑走路、管制施設、航空機を破壊。迎撃能力を奪った後に攻撃隊による対空火器を排除、それと並行して戦闘機隊による皇太子乗機への接近と敵護衛戦闘機を排除し、皇太子乗機をムー領内へ誘導し強制着陸させる。ざっとこんなもんだが…何か質問は?」
再びプロジェクターを操作するとバルクルス基地がクローズアップされ、滑走路と周辺の建物に矢印が向き、現状確認出来る対空兵器に丸が描かれた。
暫く参加者達は配られた資料とスクリーンを見比べたり、近くに座った者と意見交換をしていたが、数名が手を挙げた。
「……アルデバラン大将、どうぞ」
誰を当てようか逡巡していた指揮官だったが、手始めに身内からと言う事でアズールレーン空軍司令官のアルデバランを指名した。
「資料にある参加予定部隊ですが、予備戦力として電子戦部隊が配備されていますね?グ帝がレーダーによる索敵を行っている以上は、攻撃前に電子戦機によるジャミングで敵レーダーと通信を封じるべきではありませんか?そうすればリスクがある低空侵攻を行わずに済みます」
アルデバランの言う通り、資料には参加部隊が列記されている。
アズールレーン海軍戦闘飛行隊『VF-92』、ロデニウス連邦空軍『アマゾニア』、ムー空軍『第32戦術戦闘攻撃飛行隊』といった本作戦の主役である部隊はもちろん、早期警戒管制を行うムー空軍『第77電波戦闘部隊』、戦果評定を担当するアルタラス王国空軍『第1偵察飛行騎士団』、万が一の備えとして撃墜機のパイロット救助を専門とするアズールレーン空軍『パラレスキュー』と彼らを支援するロデニウス連邦陸軍『第45空中機動騎兵』等、様々な部隊が参加予定だが、その中には予備部隊としてアズールレーン海軍『VAQ-136』の名がある。
アズールレーン海軍におけるVAQとは電子戦飛行隊、つまり電子戦機を運用し電波妨害を行って、敵レーダー・通信を阻害或いは破壊する部隊である。
そんな現代戦における序盤の定石とも言える部隊が実行部隊ではなく、予備戦力として遊ばせておくのはどうにも腑に落ちない。
故にアルデバランはそう問い掛けた。
「アルデバラン大将が仰る通り、本来なら電子戦機による電波妨害で敵の目と口と耳を塞ぐべきでしょう。しかし、本作戦は敵国要人の拉致を戦略目標としており、例え敵基地を焼け野原にしたとしても戦略目標を達成できなければ、戦術的勝利に留まってしまいます。そして戦略目標達成の為には標的が敵基地上空まで飛来する事が最低条件…もし、基地との交信が不可能になっていたら、標的は基地上空まで来るでしょうか?」
「なるほど…確かに通信が通じなければ標的は万が一に備えて引き返す必要がありますね。電波妨害は確かに強力ですが、行えば大規模攻勢の合図と取られてしまいます」
指揮官からの返答にアルデバランは納得する。
グ帝は現状、電子戦という概念が無く、電波妨害もこの惑星特有の磁気嵐だと決め付けている。
だが指揮官を始めとした異世界連合軍の面々はそんなグ帝の内情を知らないため、あくまでもグ帝にも電子戦の概念があるという前提で話を進めていた。
「その通りです。ただし必要となればいつでも電波妨害を行えるように作戦空域近くで待機させますが。…他には?」
先程のアルデバランと同じ質問をしようとしていた者が複数居たらしく、挙手数は半分程になったが、それでも複数名が挙手していた。
「……ホクゴウ中将、どうぞ」
次に指揮官が指名したのはムー陸軍キールセキ駐屯地司令のホクゴウであった。
本作戦ではキールセキ駐屯地に新たに作られた合同飛行場を使用する事となっており、彼もブリーフィングに参加しているのだ。
「上級大将もご存知かもしれませんが、本作戦の攻撃目標であるバルクルス基地は我が国の歴史的な友邦…ヒノマワリ王国の領域に存在します。同基地は市街地からは離れていますが、基地内ではヒノマワリの民が何らかの労役を課されて滞在している可能性があります。もしそうれば、我々は古くからの友人に刃を向ける事となり、それは我が国の世論にも影響します。それについてはどうお考えですか?」
ムー側の最大の懸念はヒノマワリ王国に関するものだ。
確かに戦争に勝つ事は言うまでもないが、その勝利が友人の命を踏み躙って得たものではありたくない。
それがムー上層部の考えだ。
「その件については我々も手を尽くして情報収集を行いました。その結果、グ帝は軍事基地の建設等には現地住民を徴用する事は極稀だという事が分かりました。おそらくは彼の国の本土の場所すら明かさない秘密主義によるものでしょう。ましてやバルクルス基地は対ムー戦の最前線です。機密保持の為に身内だけで建設と維持を行っている事は、ほぼ間違い……」
本作戦の戦略的価値からどうにか実行に移すべく、ホクゴウを始めとしたムー側を納得させるべく敢えて曖昧な部分を残しながら彼らの懸念を払拭させようと説明するが、そんな指揮官へ人影が近付いてきた。
「貴方様、お伝えしたい事が…」
ロイヤルメイド隊の『ニューカッスル』が指揮官に耳打ちする。
「どうした」
「対外情報局第6課からの情報がございます。例のアルタラス沖の…」
対外情報局第6課…ロイヤルが誇る諜報機関からの情報なら信頼出来る。
指揮官はニューカッスルの言葉を一字一句聴き逃すまいと耳に全神経を集中させた。
「……ご苦労。下がってくれ」
「また報告がありましたらお伝えします」
優雅に一礼してその場を後にするニューカッスルを一瞥した指揮官は、今一度参加者達を見渡す。
「ホクゴウ中将、良いニュースと悪いニュースがあります」
「……良いニュースからお願いします」
「では…良いニュースは、バルクルス基地にはヒノマワリ王国民を始めとした現地住民は存在しません。あの基地にはグ帝の軍人と、近衛兵団とか言う黒服連中だけです」
指揮官の言葉を聞いてムー側から安堵の声が上がる。
これなら基地攻撃に全力を向ける事が出来るが…
「では悪いニュースは?」
「バルクルス基地建設にはヒノマワリ王国民が徴用されたようです」
「……まさか!?」
基地にはヒノマワリ王国民は居ない、しかし基地建設には使われた。
そしてグ帝の病的なまでの秘密主義を考えれば、導かれる答えは一つしかない。
「……基地完成直後、ヒノマワリ王国民は口封じの為に処刑されたようです。これはアルタラス王国付近で撃破したグ帝潜水艦の艦長から得られた情報です」
バルクルス基地は陸軍基地だが、陸軍を目の敵にしている近衛兵団は詳細な図面はもちろん、用いた作業員名簿や作業員達の処遇を嫌がらせも兼ねて詳しく報告させていた。
その中で件の潜水艦艦長であったロッズは作業員として用いていた現地住民…つまりヒノマワリ王国民は機密保持の為に全員銃殺したという報告を覚えていたのだった。
そしてそれを聞いたムー側は…
「なんて連中だ…!」
「奴らこそ蛮族と呼ぶに相応しい!」
「奴らをムー大陸から蹴り飛ばせ!」
旧友を身勝手な理由で殺された彼らの怒りは、正に凄まじいものだった。
そのまま放置すれば、作戦に関係なく出撃してしまいそうだが、ここは堪えてもらわねばならない。
「静粛に!……皆の怒りも分かる。しかし、ここで先走れば無用な被害が出てしまう。だからこそ、本作戦を成功させなければならない」
味方に向かっては滅多に声を荒げない指揮官の叱責に全員が口を噤む。
「作戦決行予定日時は15日の11時から13時、場合によっては前後する可能性がある。いつ出撃しても良いように各自準備をしておくように。他に質問は……」
「貴方様」
なんの前触れもなく挙手したのはニューカッスルだ。
他に挙手する者も居らず、指揮官は彼女を指名した。
「どうした?」
「本作戦の作戦名を決めてはいかがでしょう?こういった大きな作戦は往々にして歴史に残るもの…皆様も子孫に誇れる歴史に残るような作戦が無名のままでは味気ないと思われるのではありませんか?」
確かに彼女の言う通りかもしれない。
兵士というものは名誉の為に戦う…名誉の為に戦った作戦に名前が無いというのは、下手をすれば士気にも関わる可能性もある。
「確かにな。ん〜…そうだな…」
暫く考える指揮官。
その間、参加者達はどこかワクワクした様子で見守っていた。
「……グ帝にとって皇太子ってのは絶対に渡したくないお宝だろうな。そんなお宝を俺達は何十人もの勇者を連れて奪いに行く。神話に語られる『金の羊毛』を巡る伝説そっくりだ。だからこの作戦は…『ゴールデン・フリース作戦』だ」
コラボの後は年末イベントを視野に入れないと…
年末は…ロイヤルでURジブラルタル級と見た!(節穴)