異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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短いですが、キリの良いところまで書けたのでとりあえず更新です


300.Operation: Golden Fleece Ⅲ

──中央歴1643年1月16日午前9時、ムー国境付近上空──

 

──ゴォォォォォォォォ…

 

「目標空域100km手前。姉御、高度100m以下に」  

 

「あいよ!」

 

後席に座るニータからの指示を受け、オルカは乗機の高度を下げる。

現在高度50m、速度800km/h…立木の葉一枚一枚が見えそうな程の低空を高速で飛行するのは危険極まりないが、ECM支援を行わずに敵レーダー探知を潜り抜けるにはこれしかない。

しかし、彼女達が駆るバッカニアは低空侵攻の為に開発されただけあって不安感は殆ど無い。

翼面荷重が高い主翼は低空特有の突風に吹かれたとしてもしっかりと踏ん張ってくれ、機首に搭載された地形追従レーダーは衝突の危険があればすぐに知らせてくれる。

その上で後席の航法士も計器に目を配ってくれるのだから、本機の操縦は存外気が楽だ。

 

「逆探にも反応はありませんから、連中のレーダーを上手くぐり抜けているみたいですよ。いや〜、昔を思い出しますねぇ。真夜中に月明かりだけで暗礁をすり抜けて、パ皇の船を襲ったのを」

 

「ニータ、アタシらはもう海賊じゃないんだよ。昔の栄光に縋るのはよしな」

 

「へーい」

 

そんな軽口を叩き合いながらもオルカは後方確認ミラーで後に続く僚機を確認する。

オルカ機と同じバッカニアを駆るアマゾニア各機は安定した飛行を続けており、その後に続くF-4KはKAN-SENの中でも指折りの実力者であるエンタープライズと赤城が操っている事もあり、バッカニアより低い高度30mを這うように飛んでいる。

しかし、その後に続くムー空軍のアクアホークにはやや不安を覚える。

確かに彼らはムー空軍有数の腕利きではあるが、彼らが積んできた主な訓練は空対空及び対艦爆撃だ。

低空飛行訓練も行ってはいるが、専門であるアマゾニアやそもそも生物としてスペックが違うKAN-SENと比べるのは酷かもしれないが、高度90m付近を飛んでいるのは少々不安を覚える。

 

「……高いね」

 

「規定高度以下ではありますよ〜。それにあまり無理をさせちゃ今後が大変ですよ」

 

「そうだな」

 

チラッと時計を確認するオルカ。

やや早い…速度を落として時間を調整しなければならないだろう。

そう考えた彼女は編隊灯を3度長く点滅させ、僚機へ速度を落とすように伝えた。

 

 

──同日、同空域──

 

「低い…本当にアレに乗っているのは50近いご婦人か?」

 

ムー空軍第32戦術戦闘攻撃隊所属の『緑の2番』機を駆る『テレボ・ハウス』は自分達より半分の高度を飛ぶバッカニアの姿に舌を巻いていた。

 

「ましてや彼女達はついこの前まで航空戦力と言えばワイバーンだったはず…ここまでの飛行技術を身に付けるには想像を絶する努力を積んだに違いない」

 

テレボは元々海軍航空隊の訓練生であったが、ちょうど初等訓練を終えた頃にアクアホークパイロットの募集が始まったため、教官からの推薦で空軍に一時編入となった経緯を持つ。

まだ20歳になったばかりの彼は周囲からは、若いから新しい物に慣れるのも早いだろうと持て囃されていたが、実際はそんな簡単な話ではなかった。

何せ練習機型マリンの最高速度はアクアホークの着陸速度よりやや早い程度…最高速度ともなればマリンの3倍もの速度を発揮する、彼らにとっては正に桁違いのモンスターマシンなのだ。

乗り始めた頃はその圧倒的スピードとパワーに振り回され、操縦を誤って危うく墜落しかけたのも一度や二度ではない。

今でこそこうして自らの手足のように扱えるが、それでも高度100m以下の超低空を飛ぶのはかなりの度胸が必要だ。

 

「ふぅ…あぁ、くそっ。集中力が…」

 

低空は地形の影響で複雑な風が吹く。

それに任せていてはあらぬ方向に流されたり、最悪の場合には操縦不能に陥って墜落してもおかしくはない。

故に風によって煽られた分、細かな修正を行うのだが、これが凄まじく神経をすり減らす。

加えて高度100m以下を維持し、電波航法支援も無く、簡易的な対地レーダーを地形追従レーダー代わりに使いながら各種計機をチェックする…訓練を積んでいなければパニックになって墜落していた事だろう。

 

「やっぱり鈍重になっても複座か、アズールレーン仕様の方がいいな。帰ったら意見具申しよう…うん、そうしよう」

 

第32戦術戦闘攻撃隊は実戦部隊であると同時に評価試験部隊でもある。

ムーにとって初めてのジェット機、それをどう使うか、どのように改良すれば良いかを評価するのも彼らの任務だ。

 

──ビーッ!

 

「っ!?」

 

無線機から鳴り響くブザー。

それは無線封鎖解除の合図だ。

 

「…あれか!」

 

地平線にぼんやりと見える建物。

こちらから建物が見えるということは、建物からもこちらが見えているという事だ。

故にこれ以上の無線封鎖も、レーダーを避ける為の低空飛行も必要無い。

 

《各機、こちら『黄の1番』。無線封鎖ならびに高度制限解除!我々の任務は敵対空兵器の排除及び、"海賊"達の取り零しの追撃だ!空からの攻撃は気にするな、対空兵器からの返り討ちにだけ気を付けろ!》

 

隊長のスードリからの通信を受け、テレボは呪縛から解き放たれたかのように高度を上げる。

 

「よーし、息苦しい飛び方からはおさらばだ!」

 

テレボ機は70mmロケット弾を19発装備したポッドを2基装備しており、これで多連装機関砲のような比較的小型の対空兵器を狙う事となっている。

 

「覚悟しろ!グ帝共!」




ついに300話…これ完結出来るんか?
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