皆様、取り逃がしはありませんか?
もしあったら第二弾と復刻を期待しましょう
──中央歴1643年1月16日午前9時30分、バルクルス基地上空──
「姉御、あれ!あれが滑走路ですよ!」
「うるさいよ、ニータ!見りゃ分かるっての!」
無線封鎖と高度制限が解除され、一番槍を務めるアマゾニアの中でも先頭を飛ぶオルカが直接指揮を執る『A小隊』の4機が高度100mを滑走路に向かって行く。
ほぼ最高速度である1010km/hという高速と、ジェットエンジン特有の轟音、何より未確認機が前触れもなく現れたという事で滑走路脇に集まっていたグ帝兵士達が蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑い、或いは対空兵器に飛びつこうとするが、それはあまりにも遅かった。
「侵入コースよし!爆弾倉開放!」
滑走路直上を飛び抜けるコースを取り、機体の胴体下面にある回転扉式爆弾倉を開放する。
そこにあったのは細長い、4発の爆弾であった。
「姉御!投下タイミング…3…2…1…投下っ!投下っ!投下っ!投下ぁぁぁっ!」
──ガコッ!ガコッ!ガコッ!ガコッ!
地形追従レーダーを食い入るように見ていたニータの合図に合わせ、連続投下モードにしていた爆弾投下ボタンを押しっぱなしにする。
すると凡そ0.5秒毎に爆弾が投下され、150〜200m間隔に爆弾がばら撒かれた。
しかし、それはおそらく滑走路を破壊するには至らないだろう。
というのも投下された爆弾は慣性の法則に従って1000km/h近い速度で暫くは滑空する為、そのまま滑走路を飛び越してしまいかねない。
更には投下高度が低いため十分な位置エネルギーを得られずコンクリートで舗装された滑走路に跳ね返されるか、或いは水切りのように路面で跳ねてあらぬ方向に飛んで行く可能性だってある。
だがそうはならなかった。
──バシュゥンッ!!
投下された爆弾が空中で炎を噴き出す。
信管の誤作動による早爆だろうか?
否、それは爆弾の後部から明らかな指向性を持って噴き出していた。
そうやって指向性を持つ炎は亜音速で滑空するはずだった爆弾の速度を一気に減速させ、後部の燃料が無くなった爆弾は重い弾頭を持つ先端を下に向け…
──バシュゥゥッ!ガンッ!…ドゴォォォォォォンッ!!
更に後部から炎を噴き出し急加速、鋭く尖った弾頭がコンクリートを穿ち深く食い込み、そして炸裂した。
それが4発分…いや、2本の滑走路でそれぞれ2機分、8発分炸裂する。
そう、これは滑走路破壊を任せられたA小隊機に搭載された新兵器『試作型滑走路破壊爆弾オリファン』だ。
アイリス系軍需企業『ブロック社』が開発した本爆弾は名称通り滑走路を破壊する為の物だが、本作戦のような低空侵攻による奇襲で用いる事を想定しており、投下直後にロケット噴射で急減速して投下母機が加害距離から離れる時間を稼ぎつつ、弾頭部が下方を向いた瞬間に加速用ロケットで急加速して滑走路面を貫徹した後に起爆するという設計となっている。
「命中!全弾命中!やりましたね、姉御!連中の滑走路、姉御が作ったパウンドケーキみたいに穴だらけですよ!」
「ニータ、あんた帰ったら覚えてな!」
1500m級の立派な舗装滑走路だったが、オリファンの威力を受け止める事は到底無理な話だ。
凡そ200m毎に直径10m程のクレーターが口を開けており、もはや離着陸出来るのは軽飛行機かオートジャイロぐらいなものであろう。
──ドンッ!ドンッ!
続いて滑走路以外でも次々と爆発が起きる。
A小隊以外、つまりB小隊とC小隊はそれぞれ1000ポンド爆弾を4発抱えており、B小隊は航空機格納庫と管制施設、C小隊はレーダーと周囲の対空兵器を爆撃する手筈となっていたがどうやら成功したらしい。
かまぼこ型の格納庫は爆弾が直撃した物は原型が分からない程に破壊されており、内部に置かれていた燃料が引火して隣接する他の格納庫や建物にも延焼している。
また、櫓を思わせるレーダーアンテナは基部を破壊された事でスパークを散らしながら倒れてしまった。
「任務完了!航空機運用施設破壊!」
《よくやった。引き続き作戦空域に留まり、後続機の援護を》
「了解、ボス。せいぜい逃げ回ってやるよ」
自分達に課せられた任務を達成した事を作戦本部に居る指揮官に伝えると、労いの言葉と共に友軍機の援護を要請される。
既に爆弾は使い切り、バッカニアは機銃も装備していないため何も出来ないが、それでも出来る事はある。
それはズバリ"囮"である。
彼女達はこの後に続くムー機が対空砲火に晒される確率を減らす為に低空を飛び回るのだ。
「さあて、ニータ!あんたもしっかり下を見ておきな!ちょっとでもおかしな事があったら言うんだよ!」
「りょーかい、姉御!」
──同日、バルクルス基地レーダー施設──
──……ゥゥゥゥゥゥ
「んがっ…?」
──……ゥゥゥゥゥゥウウウウウッ!
「あ…?あぁ!?」
酔い潰れていたボーグが意識を取り戻したのは、その赤くなった耳に飛び込んできたけたたましいサイレンのおかげであった。
彼の赤ら顔はすっかり青ざめ、酔いも覚めてしまう。
「て、敵襲!?」
レーダー画面を見てみれば、既に基地上空には50近い反応が出ている。
時間帯からしてその幾つはか皇太子専用機とその護衛機だろうが、半分以上は敵機だろう。
──ドゴォォォォォォンッ!!
「まさか…そんな筈は!」
決して遠く無い位置から鳴り響く地鳴りのような爆発音を聴いて、レーダー管制室から飛び出すボーグ。
自分が酔い潰れたせいで敵機を見過ごしてしまったのか…いや、あんなにも巨大なロケット弾や強力な砲を持つ戦車、高度な対空戦車を持つ異世界国家なら自分達より高性能な爆撃機を持っていても不思議ではない。
それを確かめるべく、空を見上げると…
──ゴォォォォォォォッ!
「うわっ!?」
暴風と共に頭上を駆け抜ける影。
その正体を確かめるべく、ボーグは目を細めて注視しようとするが…
──ドゴォォォォォォンッ!!
「ひゅ……」
鼓膜が破れる程の轟音と背中をハンマーで殴られたような衝撃。
彼が最期に見たのは、自らの手足が遥か前方へ飛んで行く光景であった。
そろそろやるであろう生放送が楽しみですね