異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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気づけばもう12月も半ば…早いですねぇ


304.Operation: Golden Fleece Ⅶ

──中央歴1643年1月16日午前9時30分、バルクルス基地上空──

 

時間を少し巻き戻し、アマゾニアによる航空機運用施設破壊が完了しつつある頃、ムー空軍第32戦術戦闘攻撃隊もバルクルス基地上空に突入した。

 

《黄色小隊、目標確認。誘導爆弾投下》

 

──ヒュゥゥゥゥゥゥ…ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

高度制限解除と同時に一気に1000mまで高度を上げたアクアホーク。

その中でも誘導爆弾ウォールアイを装備した4機が、基地に点在する80mm級高射砲を備えた陣地へ攻撃を始めた。

370kgの高性能爆薬を詰め込んだ総重量500kgにもなる弾体はシーカーで捉えた高射砲陣地へ向かって細かく軌道を変え、大慌てで発砲しようとする兵士ごと高射砲を吹き飛ばす。

 

──ババババババババッ!ドゴォォォォォォンッ!!

 

続いて高射砲陣地の周囲や建物で小さな爆発が幾つも起き、集積されていた弾薬や燃料に誘爆して大規模な爆発が起きた。

別の4機のアクアホークには1発あたり250発もの小型成形炸薬弾を内蔵したクラスター爆弾を3発搭載しており、3000発もの子弾がバルクルス基地に雨霰と襲いかかったのである。

弾薬は掩体壕に、燃料はコンクリートブロックを積み上げた小屋や地下タンクにあったのだが、どれも戦車を撃破しうる成形炸薬弾を相手するには不足だったようだ。

 

「すごいな…奇襲とはいえ一方的じゃないか」

 

第32戦術戦闘攻撃隊の中でも後の方に突入した8機の内の1機、緑の2番を駆るテレボはあちこちから立ち上る黒煙に舌を巻いた。

もう既に勝敗は決したと言っても良いが、所詮はこの場だけの勝利だ。

今後の…それこそグ帝をムー大陸から蹴り出す為の反攻作戦を成功に導く為には、バルクルス基地の戦力を可能な限り削る必要がある。

 

「よし、集中!集中!」

 

掌底でヘルメットのこめかみをガンガンと叩き気を引き締めたテレボは、基地外縁を周回するように旋回し始めた。

80mm級の高射砲は全て破壊されたが、40〜20mm級の対空機関砲の類は移動や隠蔽がしやすく、事前の偵察では見つける事が困難だ。

故にそれらを炙り出す為に様子見をするように基地上空を飛んでいるのである。

 

「……そこか!」

 

旋回しつつ地上を観察していた彼の双眸は、カーキ色のカバーを剥がされ、射撃準備を始めた対空機関砲を発見した。

それはおそらく三連装の20mm級だろう。

今後実行されるであろうバルクルス基地への地上侵攻の際には近接航空支援の脅威となる事はもちろん、水平射撃をされれば歩兵はもとより装甲車や場合によっては戦車であっても撃破されかねない。

故にこういった対空機関砲は出来る限り破壊する必要があるのだ。

 

「こちら緑の2番、北11の東5に対空機関砲を発見。対処する」

 

飛行服の太ももに貼り付けられている地図で座標を確認し、他機へ自身が攻撃する事を告げる。

そして了解の意を確認すると、機体を鋭く旋回させ、目標に機首を向けた。

 

──バシュッ!バシュッ!バシュッ!バシュッ!

 

照準器は本来機銃の照準を合わせる為のものだが、本機は本来攻撃機だ。

自由落下爆弾やロケット弾の照準も行えるように工夫が成されている。

マリンで爆撃する際は感覚に頼らざるを得なかったが、それに比べればオマケ的機能でもあるのと無いのとでは大違いである。

発射された4発の70mmロケット弾はほぼ照準通りに目標へ向かい…

 

──ドンッ!ドンッ!

 

2発が至近弾となり2発は外れてしまった。

どうやら横風を考慮していなかった為、ロケット弾が流されてしまったらしい。

しかし、至近弾の爆風と破片によって運用員が死傷してしまったらしく、周囲に動く人影は一人も居ない。

 

(…機関砲自体も破壊しないとな)

 

兵士を殺傷する事も重要だが、兵器を破壊しなければ補充の兵士によって使われてしまう。

故にテレボは再攻撃すべく、照準を目標に合わせた。

 

「っ!?」

 

操縦桿のトリガーを引こうとした瞬間、敵機関砲の側で人影が動くのが見えた。

その瞬間、テレボは迷う。

 

(仕留め損なった!?回避…いや攻撃が早いか?)

 

出撃前の軽いブリーフィングでは、敵から狙われたら回避に徹し、僚機に攻撃を任せろとなっていた。

それに当て嵌めればこの時テレボは攻撃を諦めるべきだったし、彼自身も戦果の為に無茶をするような性格ではない。

しかし、それでも攻撃するという選択をしたのはひとえに彼が受けたストレスのせいだった。

無線封鎖と厳しい高度制限を設けた低空侵攻は彼に思いがけない精神負荷を与えており、無意識の内に「早く作戦を終わらせて帰りたい」という思いが発露していたのである。

そして、その迷いは致命傷となった。

 

──ガァァァンッ!!

 

「がぁぁぁっ!?」

 

左側から強い衝撃を受け、操縦桿から手が離れてヘルメットがキャノピーの内側に当たる。

その衝撃にテレボは視界がグルグルと回るような感覚に…いや、計器盤のコンパスや水平器がデタラメに動いているのを見るにどうやらフラットスピンを起こしてしまったらしい。

頭の痛みに耐えつつ操縦桿を掴み、ペダルを踏んでどうにかスピンから回復しようとするが、どうもおかしい。

操縦桿もペダルも手応えが無く、効いているようには思えない。

 

「な、何が……ひっ…!」

 

何が原因か、それを探る為に首を左右に振って機体の状態を確認する。

すると、原因はすぐに分かった。

 

「主翼が…無い!?」

 

衝撃を感じた左側、その左主翼が無かった。

性格には特徴的なダブルデルタの後退角が緩やかな側の前縁が巨大な獣に噛み千切られたようになっており翼端や後縁は残っているが、この状態では主翼としての役割は果たさないだろう。

 

「クソ…ロケットに誘爆したか…」

 

テレボの推測は当たっていた。

ロケット弾が至近距離に着弾した事により機関砲を発砲しようとしていたグ帝兵士達は爆風や破片を浴びて致命傷を負ったのだが、ただ一人、射手は瀕死ながらも意識を保っており、最後の力を振り絞って発砲したのである。

そうやって放たれた25mm弾は運良く…テレボからすれば運悪く、テレボ機が装備しているロケット弾ポッドに命中、そのまま誘爆させて主翼に致命的なダメージを与えたのだった。

 

「くっ…メーデー!メーデー!こちら緑の2番!被弾した!操縦不能!繰り返す!緑の2番、被弾により操縦不能!脱出する!」

 

このままでは機体ごと墜落死だ。

可能な限りムー領内へ飛ばす事も出来ない今、出来る事は脱出だけ…そう判断するとテレボは自身の状況を伝達し、シートから生えた脱出レバーを力一杯引いた。

 

──バァンッ!バシュッ!

 

爆薬コードによりキャノピーが吹き飛ばされ、座席に取り付けられた小型ロケットが燃焼して座席に座ったままテレボをコックピットから飛び上がらせた。

 

──シュルルルルル……バッ!

 

ロケットの燃焼が終わる頃には機体とは十分な距離を取れており、それに伴って座席背面のパラシュートが引き出されて展開された。

 

「はぁ…はぁ…頼む…撃たないでくれよ…」

 

パラシュート降下中は殆ど身動きが取れない。

この状況で狙われればひとたまりもない為、テレボは一生分の祈りを捧げながら地上までゆっくりと降下するのであった。

 




16日はアズレン生放送!
年末イベントは鉄血のようですが…誰が来るのか全く想像出来ませんね
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