まさかAⅡが元ネタのフリッツ・ルメイが実装されるとは…
──中央歴1643年1月16日午前10時30分、バルクルス基地上空──
──ブゥゥッ!ブゥゥッ!
「くっ…やはりジェット機、しかも機銃だけでは歩兵を蹴散らすのは厳しいな…!」
撃墜されたムー空軍機の上空、ガンポッドをバースト射撃して地上を薙ぎ払うF-4Kのコックピットでエンタープライズは歯噛みする。
要塞やトーチカ、塹壕に潜んでいた敵歩兵が撃墜機のパイロットを捕らえる為に地形や爆弾の着弾跡を利用してジリジリと迫ってくるのに対し、エンタープライズ達は機銃掃射で阻止しているのである。
しかし、それもかなり厳しい。
というのもジェット機は速度が強みであるが、それに伴って失速速度も速い…F-4Kは艦載機であるため失速速度は比較的遅いが、これまでの直線翼レシプロ機よりも遥かに高速である。
更にF-4Kの現時点での武装であるガンポッドは20mmガトリング砲こと『M61 バルカン』を内蔵しているのだが、このバルカン砲が難物だ。
というのもバルカン砲は毎分6000発もの発射速度を持つ。
この発射速度はジェット機の高速飛行による短い会敵時間でも多数の弾丸を発射できるという点では優れているのだが、その分弾切れが速い。
一応は1〜2秒区切りで発射するバースト射撃をして攻撃可能時間を増やしてはいるが、それでも5〜6回のバースト射撃で弾切れとなってしまう。
《グレイゴースト、こちらの機は弾切れですわ!そちらは!》
「こちらも心許ないな…」
どうやら赤城が操っている小隊機は弾切れらしい。
低空を高速で飛行させて威嚇してはいるが、弾切れを悟られればそれも効かなくなる。
「赤城、ゼロは出せないのか?」
《出せるならとっくの昔にやっているわ。ジェット機を使うのは大変なのよ》
こんな時こそKAN-SENの力の使い所、艤装を展開してレシプロ機を呼び出せば良いが、それも難しい。
というのも赤城はエンタープライズと違いⅡ型艤装への改装をしないままジェット機を運用しているのだ。
もちろん細やかな改造こそ施されているが、それでもレシプロ機の運用が前提である空母でマッハ2級のジェット機を運用するのは至難の業…ジェット機運用に集中しなければならない為、レシプロ機の運用に切り替えるには少なく無い時間が必要なのだ。
「やっぱりか…」
《それより貴女はどうなの?貴女はジェット機運用が前提の艤装なのでしょう?》
「こちらもそう簡単には行かないんだ。赤城ほどじゃないが私も艦載機の切り替えには時間がかかる」
対してⅡ型艤装かつジェット機運用が前提のエンタープライズならどうか?
これもまた一筋縄ではいかないようだ。
というのもジェット機はレシプロ機よりも遥かに高度な武器システムを備えており、出撃可能とするにはそれなりの時間がかかる。
艦船そのものを呼び出せばその時間はかなり短縮出来るが、ここは内陸部の上空…それは無理な話だ。
「友軍機は…無理か」
コンソールに表示されている心許ない残弾カウンターと燃料計を一瞥し、チラッと周囲を飛んでいる友軍機を確認するが、彼らも現状を打破する事は出来ないであろう。
まずロデニウス空軍のアマゾニアだが、彼女達が装備するバッカニアはそもそも機銃を装備していない上に爆弾は全て使い果たしているため論外。
ではムー空軍の第32戦術戦闘攻撃隊はどうかと言われれば、これもまた難しい。
というのも彼らは対空兵器排除の為に機体を少しでも身軽にすべく、機関砲を外す、または最低限の弾薬しか装填していなかったのである。
しかも外部兵装も使い切ったり、あるいは要救助者の近くで使うには威力が高過ぎて二次被害が予想される等、敵兵を追い払うのは難しい状況なのだ。
「不味いな…敵がそろそろこちらの弾切れに勘付いてもおかしくない」
加えて状況は時間を経る毎に悪化している。
見るからに攻撃の密度が薄くなっている事は地上からでも分かるらしく、敵兵がジリジリと迫るペースを上げているようだ。
《仕方ありませんわ…こうなれば白兵戦で…!》
「ダメだ、赤城!私達が直接戦うと相手も何を持ち出してくるか分からない!迫撃砲をめった打ちにされれば、私達は無事でも要救助者に被害が及ぶ!」
《くっ…!》
ならば最終手段であるエンタープライズと赤城が地上に降り立ち、KAN-SENとしての身体能力を活かした白兵戦で立ち向かうか?
否、それは悪手だ。
確かに彼女達KAN-SENはライフルで撃たれたとて無傷であるが、それを目の当たりにした敵兵はパニックとなり、パイロットの確保という目的も忘れて迫撃砲のような重火器で彼女達を殺傷しようとするだろう。
もちろんそれでもKAN-SENを傷付ける事は出来ないだろうが、パイロットは別だ。
攻撃に巻き込まれて重傷を負い、そのまま死亡しても不思議ではない。
──ブォォォンッ!カチッ…カチッ…
「……弾切れだ。ヘリはまだなのか!?」
最後のバースト射撃を終えても敵兵は物陰から次々と現れる。
もはや絶体絶命…あとはパイロットに幸運の女神が微笑む事を祈るしかない。
──同日、同地──
「っ〜…うぐぅぅぅぅ…!」
射出座席により脱出し、パラシュートで地上に降り立ったテレボだが、無事とは言い難い状況であった。
どうやら着地の仕方を間違ったらしく、盛大に足を挫いて歩く事が困難になっている。
もしかしたら骨折しているかもしれない。
それでもパラシュートパックからサバイバルキットを引っ張り出し、手近なクレーターに飛び込めたのは、流石と言うべきだろう。
しかし、だからと言って状況が好転する訳ではない。
「ふぅっ…ふぅっ…はぁーっ…はぁーっ…」
あえて荒く呼吸をして痛みを紛らわせながら、サバイバルキットから武器を取り出す。
「銃なんて訓練でちょっと撃っただけだぞ…!」
サバイバルキットに入っていたのは、ムー空軍にて基地警備用として配備されている『M1カービン』、その中でもパイロット向けサバイバルガンとして配備されている折り畳みストックモデルだ。
フルサイズライフルよりも軽量コンパクトかつ、サブマシンガンや拳銃よりも遥かに威力と射程がある心強い武器だが、敵基地のど真ん中ではその心強さも霞んでしまう。
「えぇっ…と…ボルトを引いて…あぁっ!」
発射準備をするが焦りと痛みのせいで手元が狂い、ボルトを2回引いてしまい、弾薬が1発飛び出してしまった。
「くそっ…落ち着け…落ち着け…」
1発無駄になったが、とりあえず発砲出来るようにはなった。
教本通りの伏射姿勢をとり、安全装置を外す。
──タンッ!
中腰になって此方に駆け寄ってくる敵兵に狙いを定めて発砲する。
当たりはしなかったが、まさか反撃されると思っていなかった敵兵はその場に伏せ、ゴロゴロと転がって後ろに下がった。
しかし、反撃されると分かればそれなりに強引な手段は取られてしまうもので…
──タンッ!タンッ!
「うわっ!」
敵兵も発砲し、テレボの反撃を制圧する。
数の上でも、銃の性能も敵の方が上だ。
こうなってはテレボはもう伏せたままで居るしかない。
(不味い…このままじゃ捕まる…奴らに捕まったら何をされるか…)
グ帝は捕虜や現地民を虐殺するような国だ。
そんな国の皇太子拉致に関わったパイロットとなればどんな扱いを受けるか…良くて処刑、悪くて拷問の後に処刑だろう。
「………」
拷問に屈する気は無いが、それでもいつか心が折れて情報を吐いてしまうかもしれない。
そうすれば戦友の足を引っ張り、祖国を踏み躙られてしまうかもしれない。
そうならない為には…サバイバルキットの奥底、頑丈な金属ケースに入ったカプセルを取り出す。
このカプセルに入っているのは青酸カリ、猛毒だ。
撃墜され助かる見込みが無い、あるいは敵対勢力が捕虜に対して理性的な扱いをしないと予想される際に服用するものだが…あいにく今回は後者に該当する。
「抵抗するな!大人しくすれば危害は加えない!」
「動いたら撃つぞ!」
「武器を捨て、投降しろ!」
敵兵の呼びかけがすぐ近くで聴こえる…もう時間は無い。
「ふぅー…ラ・ムー陛下、万歳」
ムー軍人として恥ずかしくない最期を迎えるべく、静かに国王を讃える言葉を告げ、カプセルを口に放り込んだ瞬間だった。
──バタバタバタバタ…
「な、なんだ…?」
「あれは…なんだ?」
「新手か!?」
遠くから響く布団を叩くような音、そして近くで聴こえる慌てふためく敵兵の声。
飲み込みかけていたカプセルを吐き出し、東の空を見ると…
──バタバタバタバタバタバタ!
巨大なプロペラを回して飛ぶ異形の航空機、ヘリコプターが3機、此方に向かって飛んでくるのが見えた。
「あれは…ロデニウス連邦のヘリコプター!来てくれたのか!」
軽快な動きで自身の上空を旋回し始めたヘリの姿を見たテレボは痛みも忘れ、ヘリが着陸するであろう地点へと素早く這って行くのであった。
出来ればグ帝との大海戦に大和出したいのですが…どうにか8周年まで引き延ばせるか…
そもそも8周年で大和出るのか問題もありますけどね