しかしアレですね、私未入手のヒューストンⅡ以外のKAN-SENは全員スキルレベルMAXにしたんで新KAN-SENが来たお陰で戦術教室を久しぶりに使えましたが…スキル強化キャンペーンでまたすぐに使わなくなりそうですねぇ…
──中央歴1643年1月17日午前11時、神聖ミリシアル帝国アルビオン城──
一悶着こそあったが、会議は何事も無かったかのように続けられた。
「して、対ムー支援の戦力はどうなっておるか」
「その件に関しては私が」
ミリシアル8世からの問い掛けに応えたのは、軍務大臣シュミールパオだ。
「まず本来、我が国は対ムー支援として昨年の9月には部隊を派遣する予定でした。しかし準備に手間取り10月まで延期されたのですが…そこで発生したのがパル・キマイラの轟沈です」
バルチスタ海海戦においてパル・キマイラが撃墜された事はミリシアル軍関係者に大きな衝撃を与え、軍内にはグ帝に対するある種の畏怖が芽生え、暫くはムーへ積極的に派兵してグ帝をムー大陸から先に進ませないようにすべきという派閥と、ムーへの派兵は取りやめてミリシエント大陸の防御を固めるべきという派閥に分かれてしまっていた。
しかしながら対ムー感情の大幅な改善の力は絶大だったらしく、年末にはムー支援の方針が固まったのだ。
「あれから軍内の混乱は?」
「はっ。魔帝対策省とも協議いたしましたが、あれは奇跡的な確率と不運が重なった結果であり、適切な運用を行えば今後起こり得ない事態であるとの確認が取れて以降は混乱も治まりました」
「ならば良い。して、本題は」
「はっ。まずはムー派遣部隊は我が国にとっては久方ぶりの大規模大陸外遠征となるため、陸海空の指揮系統を一本化した統合軍として編成。総司令官は今回新たに編成された『混成魔導艦隊デス・バール』の艦隊司令『タキオン・プライマル』大将を任命致しました」
「タキオンか…あやつは能力は確かであるが、少々高慢な気質がある。ムーとの無用な軋轢を生みかねないぞ」
「それについてはご心配には及びません。タキオン司令ですが、何度か見学したアズールレーンとロデニウス連邦の軍事演習の影響を受け、以後は貪欲に古今東西の戦術を学んでいます。現在の彼ならば科学文明相手にも無礼な態度をとる事は無いでしょう」
ミリシアル8世が懸念を口にするが、シュミールパオはそれを否定する。
確かに以前のタキオンはミリシアルこそが一流国家であり、他国…特に科学文明国は二流三流という価値観であった。
しかし、第四文明圏にて定期的に行われている軍事演習を見学した彼は、アズールレーンやロデニウス連邦…果てはアルタラス王国やトーパ王国ですら自国を上回る軍事技術を保有している事に衝撃を受け、今となっては科学文明の戦術を自身の専門である海戦のみならず陸戦や空戦までも学んでいる。
故に統合軍の総司令官に選出されたのであろう。
「ほう…あやつも変わるものだな。ならば余が言う事はない。して、統合軍の戦力は如何ほどか」
「はっ。まず艦隊戦力ですがオリハルコン級魔導戦艦の一番艦コスモ、そして先日就役したばかりの二番艦『ユニヴァ』を中核とした巡洋艦8隻、空母5隻、小型艦20隻…こちらが混成魔導艦隊デス・バールとなっております。オリハルコン級は両艦共に誘導魔光弾の充足率100%となっており、巡洋艦も半数は改シルバー級…誘導魔光弾を搭載した改良型となっておりますし、小型艦も防空・対潜水艦装備を施した改修が施されております」
バルチスタ海海戦にて鳴り物入りで投入されたがパル・キマイラ轟沈の衝撃でろくに戦闘もせずに撤退したコスモを始めとしたミリシアル艦隊なのだが、それが却って戦力の不要な損耗を防いでくれたお陰でミリシアルは一定数の艦船を改修する余裕が生まれたのだ。
ただし当時の艦隊司令であったレッタルは更迭されたのだが…
「ほう、それは中々だが…次こそは力を示してもらわねば困るぞ?」
「タキオン司令ならば心配には及ばないかと…次に航空戦力ですが、空母艦載機として新型艦上戦闘機エピクロスを350機、陸上航空戦力としても同機を200機、合計550機を予定しております」
エピクロスは既存機の生産ラインを流用出来るように量産性を重視しているとはいえ、新型機を半年と少しの期間で国外に500機以上も派遣する余裕がある辺り、ミリシアルの底力が見て取れる。
しかし、それは良いのだがシュミールパオの言葉を聞いたミリシアル8世は疑問を覚えた。
「シュミールパオよ。爆撃機や攻撃機はどうした」
そう、シュミールパオが述べた派遣航空戦力は戦闘機ばかり…爆撃機や攻撃機の名前が挙がっていない。
戦闘機は名前に"戦闘"と付いてはいるが、実を言うと防御的な兵器だ。
というのも戦闘機の本来の任務は敵の爆撃機や攻撃機、偵察機を撃墜して地上部隊や艦隊を護る事である。
もちろん機銃掃射や爆装によってある程度は爆撃機や攻撃機の真似後をする事は出来るが、本職には劣るのが現実だ。
故に戦闘機ばかりを派遣するというのは航空戦力に不安が残るのだが…
「ご安心下さい、陛下。実を言うとエピクロスですが最終試験中に飛行能力を損なう事無く、主翼を強化する事で3000kgもの兵装を搭載可能だと判明したのです。そこで生産型には強化型主翼を採用し、戦闘爆撃機として採用いたしました。更にアズールレーンからの技術協力によって開発した空中給油装置を搭載した事により、発艦時にも最大限の爆装が可能となっております」
空母というものは強力な洋上戦力であるが、その戦闘力の源である艦載機の搭載数は限られる。
そんな限られた搭載数の中で戦闘機や爆撃機、攻撃機の比率をやりくりしなければならない上に、それらの補修部品だって搭載せねばならない。
故に空母艦載機は可能な限り役割を兼任させ、機種を少なくした方が効率的だ。
しかし、改良によって3000kgもの積載量を持つエピクロスならば戦闘機としてはもちろん、爆撃機としても十分に通用するであろう。
そして何よりミリシアルにとって革新的だったのは、空中給油の実用化だ。
空中給油はただ単純に航続距離を伸ばすだけではなく、燃料を減らして浮いた重量を活かして武装を増やした状態で発艦し、空中給油をすれば航続距離を犠牲にする事無く最大限の武装を施した艦載機を飛ばす事が出来るのである。
しかもエピクロス用に開発された空中給油用の燃料タンク、通称バディポッドを搭載すれば本機自体も空中給油機となれるのだ。
「左様か。ならば余の懸念は無用なものであったか。それで陸上戦力は」
「はっ。歩兵6万人を中核に、魔導砲8000門を擁する砲兵…それに加えて新たに編成された装甲歩兵スパルタクスを主力とする『装甲歩兵師団』を3個師団、スパルタクス900機を派遣する事となっております」
スパルタクス…つまりはミリシアル版アーマードトルーパーである。
流石に本格的な戦車と真正面から殴り合うには心許ないが、優れた機動性と豊富な武装によって柔軟な運用が可能であり、戦術次第では陸戦の主力と成り得る可能性を秘めた存在だ。
「ほう…もう900機も実戦投入出来るか」
「はい。生産性が良く、製造ノウハウが十分蓄積出来た為でしょう。新たな生産ラインが構築出来れば月産200機から300機も可能との事です」
「それは頼もしい事だ。それで、いつごろに派遣出来る」
ミリシアル8世の言葉にシュミールパオは背後に控えていた補佐官から羊皮紙を受け取ると、立ち上がって玉座の側までキビキビとした動きで歩み寄る。
「後は陛下のご承認があれば1週間以内に第一陣が出港出来ます」
「左様か」
シュミールパオから差し出された羊皮紙…ムー派遣軍の出発を許可する書面にミリシアル8世は指先に魔力を集中させ、自らの名を刻み込んだ。
本当に子育てって大変です