異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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GWですが皆さんはどうお過ごしですか?
私は育児の手伝いで大変になりそうです


319.大要塞

──中央歴1643年2月15日午前7時、ルクセリア近衛兵団飛行場──

 

レイフォル内に建設された都市ルクセリア。

ムー大陸征服の暁には統治の中心地となる大河の畔の都市であるが、その実態は近衛兵団による歪んだ優生思想を体現したかのような都市であった。

定規で引いたような直線直角の街区に分かれた街並みにはこれまた直線直角が目立つコンクリート建築が立ち並び、通りにはゴミ1つ無い程に美化されている。

そして都市の中心地には近衛兵団のシンボルである太陽を掴んだ大鷲の像が屋上に鎮座する一際大きな建物…『民族の館』と名付けられた近衛兵団のムー統治本部があり、また都市の外周は多数の鋭角を持つ星型の分厚く高いコンクリート壁が取り囲み、鋭角の部分には多数の対空砲や野砲を備えたこれまた重厚なコンクリート製の砦が建っている。

さらに極めつけに付近を流れるムー大陸第二の大河『ヴォーラ川』から引いた水を用いた水堀まで作られており、最早"要塞都市"といった様相だ。

そんな要塞都市であるからにはもちろん飛行場も整備されており、2500mもの滑走路が4本もある大規模なものである。

もちろん、これらの建設に従事したのは現地住民であり、文字通り"死ぬまで"働かされた挙句に水を入れる前の水堀で焼かれたのであるが…

 

──ブゥゥゥゥゥゥゥン…キッ…キッ…

 

死者の怨嗟に満ちていてもおかしくはない都市の飛行場に降り立つ航空機。

滑走路の幅を超える程の翼幅に、滑走路をギリギリまで使ってようやく止まれる程の重量…これこそがグ帝の空の切り札である『グティマウン型爆撃機』である。

全長46m、翼幅63mもの巨体を空に舞い上がらせるのは6000馬力もの出力を誇る排気タービン・二重反転プロペラ搭載レシプロエンジン6基を推進式に搭載…その飛行能力は高度10000mにて780km/hもの速度を発揮し、実用上昇高度15000m、航続距離に至っては20000km近いという正にレシプロ重爆の頂点にあると言っても過言ではない性能だ。

それに留まらず防御機銃として最新型の見越し射撃機能を実装した照準器を装備した20mm機関砲を16門搭載し、爆撃機の肝である爆弾搭載量に至っては40トンにも及ぶ。

こんな爆撃機、いったい何に使うつもりだったのか?と問われれば、もちろん転移前のケイン神王国との最終決戦にて近衛兵団の手によって投入される予定だったのだ。

もし予定通りであれば軍がケイン神王国の軍勢と戦っている間に本機が同国本土へ大規模爆撃を行い、「近衛兵団の戦略爆撃によってケイン神王国は戦争遂行能力を失った」と喧伝する予定であった。

しかし、転移によってその機会は無くなり、異世界国家には使うまでもないとされていたのだが…今回、異世界国家の中でも特に帝国を侮辱する振る舞いをしているロデニウス連邦への攻撃に本機が使われる事となったのだ。

 

「おぉ…これがルクセリア。正にバルカス人の優秀さが形となったようではないか」

 

着陸したグティマウンから降りてきた『アーリ・トリガー』がルクセリアの街並みに感嘆する。

彼は近衛兵団航空隊の中にあるグティマウン運用部隊『特殊殲滅作戦部』の作戦部長であり、今回の対ロデニウス爆撃作戦の指揮を執る事となっている。

 

「アーリ君、長旅ご苦労!」

 

「アミズ長官!わざわざ出迎えて下さるとは…」

 

そんなアーリを高官用車で出迎えたのは、アミズであった。

 

「今回の懲罰攻撃の要は君達だからな。さあ、乗りたまえ。民族の館に行きながら話をしよう」

 

「失礼します」

 

後部座席に2人が乗り込むと、運転手が黒塗りの車をゆっくりと発進させる。

 

「さて、君達の戦力はどうだったかな?」

 

「はっ。今回の作戦にて投入するグティマウンは400機となっております」

 

「400機?あと100機ある筈ではないか?」

 

グティマウンは500機が生産されており、400機を作戦に投入するとなれば100機も余ってしまう。

予備機として十数機を待機させておくのなら理解出来るが、100機というのは予備機にしては多すぎる。

 

「400機もあれば蛮族の都市を焼き尽くすには十分過ぎるでしょう。それに…ミリシアルの空中戦艦とやらの存在があります」

 

「あぁ、例の…」

 

「はい。バルチスタ海にてグレードアトラスター級の砲撃により撃沈された事から空中戦艦には同程度の威力を発揮出来る高高度からの爆撃が効果的であり、撃沈可能だと分析しました。ですので…」

 

「なるほど、ミリシアルが空中戦艦による強襲を行った場合の防衛戦力とするのだな」

 

「仰る通りです。加えて参加する機の振り分けですが、ムーとロデニウス連邦へ半分ずつと考えております」

 

「つまり200機ずつか…何故そのような振り分けに?」

 

アミズの問い掛けに、アーリは肩を竦めて応えた。

 

「密約を交わしたリーム王国ですが、グティマウン受け入れの為の設備が完全ではないのです。無理をして200機…まったく、滑走路や弾薬庫すら作れないとは劣等種はこれだから困ります」

 

「まあまあ、200機を受け入れられるほどの設備を整えられたのだから大したものではないか。猿が絵を描いたようなものだよ」

 

「ハッハッハ!確かにそうですな」

 

流石のグティマウンも爆弾を満載してロデニウス連邦まで飛んで戻って来る事は出来無い。

故に周辺諸国からのイメージが悪く、浮いていたリーム王国と帝国は密約を交わし、リーム王国はロデニウス連邦攻撃の為の拠点を作る事、その見返りとして帝国はリーム王国へ中古兵器を譲渡する事としたのである。

 

「まあ、グティマウンの200機編隊による爆撃ならば連中の国土を灰に出来るだろう。それで不足なら反復攻撃をすればいい。連中には高度10000m以上を飛ぶグティマウンを撃墜する事なぞ出来んのだからな」

 

アミズの言葉にも一理ある。

一般的に高度が高くなれば空気が薄くなり、それだけエンジンは出力を発揮しにくくなる。

それを防ぐ為に航空機用エンジンには動力を一部抽出して作動する空気圧縮機、いわゆるスーパーチャージャーと呼ばれる機械式過給器が取り付けられているのだが、この過給器はエンジン動力の一部を使う為に効率が下がってしまう。

しかし、グティマウンに装備されているターボチャージャーこと排気タービン式過給器はエンジンからの排気を利用してタービンを回し、その力で過給器を動かすためエンジンのパワーロスが殆ど無いのだ。

故にグティマウンはその強力なエンジン出力を高高度でも維持出来、先述した通り高度10000mで780km/h、実用上昇高度である15000m付近においても600km/h後半の速度を叩き出せるのだ。

10000mもの高さでは並みの航空機では到達する事も困難な上に追い付く事は不可能…高度15000mまで上昇すれば敵機は手も足も出ないだろう。

そのため、アミズもアーリも今回の作戦において撃墜されるグティマウンは居らず、必要となれば補給して複数回出撃する事も可能だと確信していた。

 

「ええ、まったくです。それに軍の航空隊も出撃させれば、劣等種共が愚昧な軍に構っている間に目標を吟味出来ます。馬鹿揃いの軍は我々の露払いがお似合いです」

 

「その通りだ、アーリ君。カバル殿下拉致を許した軍の無能共に民族の模範たる我々の活躍をみせてやろうではないか」

 

下衆な笑いを浮かべた2人を乗せた車はやがて都市の中心に到着し、民族の館へ2人を送り届けたのであった。

 




やっぱりグティマウンの性能、ヤバくないですか?
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