果たして上手く書けるか…
──中央歴1643年2月18日午前8時、パガンダ泊地──
グラ・バルカス帝国の怒りを買い、全てを破壊された"元"パガンダ王国。
その地に新たに建設されたグラ・バルカス帝国海軍の泊地には大規模な艦隊が集結していた。
「ほう…これが…」
そんな中で一際目立つ巨艦の前では集結した艦隊の司令を任じられたカイザルが感嘆している。
「お待たせ致しました、カイザル長官」
「大丈夫だ、ラクスタル君。それにしても随分と様変わりしたな…」
空に聳える艦橋を見上げていたカイザルの元へタラップを早足で降りてきたラクスタルがやってくる。
「はい、近衛兵団の横槍が入らなかったお陰で本艦…グレードアトラスターは生まれ変わりました。同型艦とは一線を画す性能ですよ」
そう、ラクスタルが降りてきた事からも分かる通りにカイザルが見上げていたのはグラ・バルカス帝国が誇る超戦艦、グレードアトラスターである。
本艦はそもそも先進11ヶ国会議中の戦闘で予想外の損害を受け、本国にて修理と共に改修されていたのであるが、凡そ一ヶ月前にそれらが完了し、慣熟訓練を終えて今回の作戦に参加する事となったのだ。
「ほほう、どんな物が教えてもらえるかな?」
「はっ、まず司令も気になっておられる物を先に説明致しましょう」
そう言ってラクスタルはカイザルと共にタラップを上がり、重厚長大な砲身を持つ主砲塔の前に立つ。
「ほほぅ…これが最強最大の46cm砲を上回る51cm砲か…」
グレードアトラスター級の主兵装は46cm3連装砲3基9門であり、もちろんネームシップである同艦もそうだ。
しかし、現在のグレードアトラスターの主砲塔は連装砲となって、3基6門だ。
単純計算で火力は約3割減…投射量が重要な砲撃戦において門数3割減というのは手痛いハンデとなる。
だが、カイザルが言った通りグレードアトラスターの主砲は改修によって46cm砲を上回る51cm砲に換装されている。
本砲は本来グレードアトラスター級の後継として建造する予定がありながらも転移による情勢変化、近衛兵団による予算の見直しの影響で建造中止となった新型戦艦に搭載する為に先んじて開発された物であり、ちょうど連装砲3基分が完成していたのである。
これにより門数は減ったが一撃あたりの威力は格段に向上しており、46cm砲の徹甲弾重量が約1.4トンだったのに対して本砲の徹甲弾重量は2トンにも及び、その威力はグレードアトラスター級のバイタルパートを軽々と貫徹すると想定されている。
また、そんな一撃必殺の砲を命中させる為に測距儀はもちろん、照準用レーダーも新型に換装されており、これによって改修前と比べて命中率は30%向上を見込んでいるのだ。
「えぇ、これは凄まじい威力でした。本土近くの射爆場になっている島で試験しましたが、島の地形が変わってしまいましたよ」
「それは何とも心強い。しかし、異世界国家は手強い事が分かった。主砲威力だけではどうにもならないが?」
「それについてもご心配なく」
カイザルもラクスタルも実戦を通して異世界国家の航空戦力の手強さを身を以て味わっている。
しかし、それに関しては対策済みだ。
「15.5cm3連装副砲を撤去し、代替として対空レーダーとそのレーダーと連動した高射装置と直結した65口径長10cm連装高角砲を装備し、元々装備されていた12.7cm高角砲も同様の物に換装しています。……まあ副砲の代替とした物とは違って従来の形式ですが、高射装置は高速機に対応させています」
「それに加えて機銃も増しているな。あれはまさか新型の40mm機関砲か?それに舷側の機銃は…」
「あの機銃は旧式の…04型か05型アンタレスの翼内20mm機銃の銃身を07型の長銃身に換装した物です。何故か纏まった数が調達出来たので、13mm機銃の代わりに舷側や艦橋周囲に装備しました。高角砲と機関砲を突破してきた敵機への最終迎撃手段として有効かと…」
「ふむ…確かに君がカルトアルパスに連れて行った従軍記者が撮影した写真によると、アズールレーンの艦も同じように高角砲と大口径機関砲、機銃を装備していたな。まさか我々が今さら敵に学ぶとはな…」
「敵も馬鹿ではないという事です。……黒服はそれを認めませんがね」
声のトーンを落としてそう述べたラクスタルにカイザルは苦笑する。
「ああ、それと本艦の不備だった被弾時の脆弱性は解消されていますし、バルジによって対魚雷防御力も向上していますが…正直言って私は異世界国家に勝てるとは思いません」
「君もそう思うか…実は私もだ」
ラクスタルもカイザルも本音を吐露する。
2人は海軍でも指折りの高官である為、独自の情報網を持っているのだが、そうやって得られた情報は大なり小なり彼らに帝国の敗戦を予見させていた。
正直言ってどうにかして講和した方が被害は少ないだろう。
「ですが、最早帝国を…近衛兵団を抑えられる者は居ません。陛下ですら…」
「……あぁ」
ラクスタルは知らないだろうが、カイザルは近衛兵団による陰謀の噂を耳にしていた。
義兄から齎された近衛兵団による政変…皇帝から権威を簒奪し、近衛兵団による独裁を目論む陰謀だ。
まだ確定ではない。
しかし、近衛兵団の振る舞いを見ればあながちただの噂ともいい切れない。
故にカイザルは軍の戦力の多くが本土を離れる事となる本作戦を危険視していた。
「カイザル司令…勝ちましょう。必ず」
「そうだな。全力を尽くさねば」
だが、それでも退く事は出来ない。
例え勝率が那由多の彼方にあろうが、彼らは戦うしかないのだから。
──中央歴1643年2月22日午前7時、アズールレーン第二文明圏派遣軍総司令部──
「それは本当ですか、大統領」
『はい、指揮官殿。外交ルートを通じて正式に通達されました』
朝食を取っている中、ロデニウス連邦からのホットラインに呼び出された指揮官はロデニウス連邦大統領であるカナタとビデオ通話をしていた。
「だろうとは思っていましたが、まさかこんな直接的な行動をするとは…」
『私も正直驚いています。まさかリーム王国が国内に存在する我が国の資産を凍結し、入出国を禁止するとは…』
早朝、リーム王国はロデニウス連邦に対して国内に存在するロデニウス連邦の資産を凍結し、ロデニウス連邦国籍者の入出国を禁止したのである。
これに対し在リーム大使は即時撤回を要求したものの、リーム側はこれを国防上必要な措置として拒否し、それ以上は内政干渉だとして追い返してしまったのだ。
「やはり連中がグ帝の輸送船を使っていると分かった時に行動しておくべきでしたか…」
『いえ、それこそ主権国家が持つ自由貿易の権利を侵害してしまいます。もし我々がリーム王国の輸送船を臨検すれば、彼の国はそれを大義名分として大々的に我が国を非難したでしょう』
実を言うと3〜4ヶ月程前からリーム王国旗を掲げた機械動力船がムー大陸南部からフィルアデス大陸東部の海域にて頻繁に目撃されるようになっていた。
無論、ロデニウス連邦もムーもリーム王国に対して船舶を輸出した事はなく、ましてやリーム王国が独力で建造出来る訳がない。
そうなれば自ずと消去法でグラ・バルカス帝国の関与が疑われたのだが、リーム側は自国製と言い張っていたのだ。
しかし、明らかにグラ・バルカス帝国から輸入か譲渡された輸送船に自国旗を掲げている事に違いない。
「諜報機関は?」
『はい、先日になってようやく発見しましたよ。2000mを超える滑走路が複数とコンクリート製の弾薬庫らしき構造物…そしてリーム王国の識別マークを描いたグ帝のアンタレス型戦闘機…奥地にあったとはいえ、あんなに分かりやすい物の発見にこんなに時間がかかるとは我が国の諜報機関もまだまだです』
「事が起こる前に見つけられただけ上出来ですよ。……そちらに戦力を回した方が?」
『いえ、問題ありません。飛行場の規模から予測される敵戦力を鑑みるに、我々と周辺諸国、そしてトーパ王国に駐留している北方連合の方々で対処可能です』
「そうですか…まあ、いい経験になるでしょう。しかしグ帝が戦闘機まで与えているとは…それにその規模の飛行場となれば大型爆撃機も投入する予定でしょうね。もちろん、小癪な手を使って…」
既にU-2による偵察でグ帝の大型爆撃機ことグティマウンの存在は把握しているが、おそらくグ帝はグティマウンにリームの識別マークを描いて回送し、リームにて爆弾の搭載や識別マークの描き換えを行うはずだ。
『おそらくは…しかし、我々も手を打っています。リーム王国から飛来した航空機が許可無く我が国の領空に侵入した際には攻撃を幇助したとみなし、リーム王国に対して攻撃を行うと通達しました。そして、リーム王国内に取り残された邦人に関しては救助作戦を立案しております。幸いな事にリーム王国内の民間邦人は少なく、全員が大使館に避難していますので救助には都合が良い』
「ならばそちらは任せましょう。……1週間以内には攻撃が始まるでしょう。グ帝の艦隊が泊地より出撃し、大型爆撃機の動きも活発になっています。今のうちから出来る限りの準備を」
『ええ、そちらもご武運をお祈りします』
そんなカナタの言葉で、ビデオ通話は締め括られた。
原作でもグティマウンってリームを経由しましたが、燃料とか弾薬はどうやって運んだんでしょう?