原作キャラ魔改造第三弾
──中央暦1638年10月6日午前9時、サモア沖合い演習海域──
時は遡り、2ヶ月前。
ロデニウス連邦が正式に発足してから2ヶ月後、演習海域にて数名のKAN-SENが演習…というよりは基礎訓練を行っていた。
「そう、その調子…です。」
メカニカルな耳にクリーム色の長い髪をポニーテールにした『綾波』
「大丈夫、艤装があれば沈まない。多分。」
癖のある銀髪をウサギ耳型の髪止めでツインテールにした『ラフィー』
「おぉ~っ!初めてにしては、いい感じですよ!」
小さな王冠が乗った紫色の髪を後頭部で纏めた『ジャベリン』
「いいですか?基礎を疎かにしていては、上を目指せませんよ。」
色の薄い金髪を肩口で切り揃えベレー帽を被った『ニーミ』こと『Z23』
ジャベリンが後進しながら先導し、ニーミが後ろから付いて行き、綾波とラフィーが手を引く。
四人に囲まれるようにして海面を、よたよたと航行するKAN-SEN…いや、正確にはKAN-SENではない。
「な……なんだか…変な感じです。地面とは違った……キャッ!」
跳ねた波飛沫に思わず小さな悲鳴を洩らす少女。
その背には軍艦を分解し、新たな形に組み上げたかのような黒鉄…艤装を背負っている。見た目はブラック・プリンスの物に似ているかもしれない。
そんな彼女の艤装に取り付けられた通信機から声が響いた。
《殿下、ご無事ですか!?》
「大丈夫よ、リルセイド。少し波が跳ねただけ。」
彼女こそ、アルタラス王国王女であるルミエスである。
アルタラス王国が第四文明圏構想に参加した際に、近年のパーパルディア皇国による拡大政策が自国に及ぶ事を危惧した国王ターラ14世が一人娘である彼女と、幾名かの武官を留学という名目で避難させていたのだ。
彼女自身、外交官としても活動していた為パーパルディア皇国による侵略の危機は重々承知していた。しかし、まるで国民を見捨てて脱出するような行いには難色を示していた。
だが、アルタラス王国に来訪したロデニウス連邦の特使が連れてきた医師による留学候補者の健康診断の結果、ルミエスにKAN-SEN適性…つまり、艤装を動かせる才能がある事が判明した。
自ら武器を持ち、戦場に立てる力がある…それを知ったルミエスは一転して留学を熱望し、逆にターラ14世は留学に反対するという逆転現象が発生した。
《もし、殿下にもしもの事があれば私は……》
「心配し過ぎよ、こうやって皆さんも一緒に居て下さるのに…ね?」
「大丈夫…ルミエス、友達。ラフィー、友達、大事。」
「ルミエスを狙う人は綾波がやっつける…です。」
「リルセイドさんも安心して下さいね~。ちゃんと私達が見てますから。」
「ご安心下さい、リルセイドさん。他のKAN-SENの皆も、ロデニウス連邦沿岸警備隊も哨戒してますから。」
サモアに来てから新たに出来た友人四人の言葉を頼もしく思う。
結局、ターラ14世はルミエスの熱意に負けて留学を許可した。
民を愛し、王国の為に身を捧げる覚悟を抱いていたルミエスにとっては祖国を危機から救える機会を逃す手は無かった。
「基礎訓練のあとはロイヤルメイド隊の皆からの砲撃訓練、そのあと伊勢さんと日向さんからの水上機運用訓練…です。」
綾波がそっとルミエスの手を離す。
「えっ!?ちょっ…ちょっと、綾波ちゃん!?」
「ルミエス、大丈夫。上手い。」
慌てるルミエスからラフィーまでもが手を離す。
「えっ……ちょっ…あぁ~!」
バランスを崩し、両腕をバタバタと慌ただしく動かして立て直そうとするも…
──バシャーン!
「へぶっ!」
王族として…そもそも、年頃の少女として出してはならない声をあげながら、水飛沫を立てて顔面から倒れた。
《殿下ぁー!》
通信機からリルセイドの悲鳴が聴こえる。
新米KAN-SEN、航空巡洋艦ルミエス…前途多難な第一歩であった。
──同日、サモア基地秘匿ラボ──
「おぉ~、ちゃんと適合してるじゃ~ん。流石、私の自信作ぅ!」
薄暗い室内、無数のモニターの前でケラケラ笑う少女。そのモニターには、顔面を海面に叩き付けるルミエスの姿が映し出されていた。
紫がかった白髪は椅子に座っているとはいえ毛先が床を這い、病的に青白い肌と相まってモニターの光を反射している。
そして、その爛々と輝く黄色い瞳…明らかに人間ではない。だが、KAN-SENでもない。
──ブシューッ!キュルキュルキュルキュル…
ふと、少女の背後にある潜水艦のハッチのような分厚い気密扉が開いた。
赤い非常灯が背後から人影を照らす…大柄な男性のようだ。
その男性は、腰の辺りに手をやり何かを引き抜く動作をすると…
──バンッ!バンッ!
少女が座る椅子の足元に向かって拳銃を発砲した。
「おわっ!おわっ!なっ…にすんのさぁー!」
いきなり撃たれた少女が抗議の声を上げる。
そんな少女なぞお構い無しに、ずかずかと部屋に足を踏み入れると少女が見ていたモニターをまじまじと見る。
「……本当に何もしてないだろうな?」
「ねぇ、なんで撃った!?なんで撃ったの!?」
少女の狂人でも見るような目を軽く受け流すと、再び問いかけた。
「本当に何もしてないだろうな?」
「いや!それより、なんで撃っ…」
「答えろ。」
少女の額に銃口が押し付けられる。
それに少女は両手を挙げて、ガタガタと体を震わせる。
「してない、してない!本当だって!そもそも、こんな物着けられちゃしたくても出来ないっての!」
そう言う少女の首には、鈍い銀色の重厚な首輪のような物が嵌められている。
「お前たちは油断ならんからな。今は使えるから生かしてやってるが、もしなんかあれば……お前の首が月までブッ飛ぶぞ。」
「分かってる!わーかってるってばぁ!……まったく、やり口がテロリストのそれだよ…」
「なんか言ったか?」
「ナニモイッテマセンヨ。」
そう、彼女は人間でもKAN-SENでもない。
『セイレーン』、かつて世界の海を蹂躙し尽くした人類の敵。
それが何故、アズールレーンの基地であるサモアに居るのか?
それは簡単な話だ。
セイレーンの脅威を駆逐したとされる『第二次セイレーン大戦』、その際に何故かほぼ無傷で機能停止していた個体…通称ピュリファイアーをサンプルとして持ち帰り、サモア基地の秘匿ラボにて保管していたのだ。
だが、転移してから凡そ一年…後に『ロデニウス統一戦争』と呼ばれる対ロウリア戦の直前、何の前触れもなく再起動した。
当初は厳戒態勢が敷かれ、秘匿ラボが存在する小島ごと砲爆撃にて消し去ろうとしたのだが、江風や瑞鶴等が以前に特殊海域にて出会った記憶喪失のセイレーン…『ピュリっち』と呼ばれる人格を持っており此方にも協力的であるため、一先ずは秘匿ラボからの出入りを禁止したうえで、明石と夕張が製作した首輪爆弾を装着するという条件で様子を見る事となったのだ。
「死にたくなけりゃ、せいぜい役に立て。」
「分かってますよぉー。」
ピュリファイアーこと、ピュリっちはどうやら特殊な兵器や艤装を作る事が出来る技術を持っているらしく、ルミエスの艤装を製作したのも彼女だ。
もちろん明石や夕張、ビスマルクによる念入りな調査を行った後にルミエスに与えている訳だが。
「それで…あれは使えるようになりそうか?」
「私一人じゃ時間かかるって~…まあ、7割位は出来たかな?」
そう言って秘匿ラボの窓から外…秘匿地下ドックを見下ろす二人。
そこで静かに眠る異形の艦……
「せっかく、重桜から引っ張ってきたんだ。何かの役に立ってもらわんとな。……なぁ、『オロチ』?」
航空巡洋艦ルミエス(SR)
スキル1(青)・麗しき王女
自身が受けるダメージを20%減少
15秒毎に自身の正面にシールド展開
スキル2(赤)・三次元戦法!
自身の航空攻撃時、瑞雲による特殊航空攻撃を展開する
スキル3(黄)・王国の守り手
自身の航空攻撃時、所属艦隊の耐久値を10%回復する