目玉のURは建造がライオンで、報酬はトラファルガー…トラファルガー、駆逐艦にしては色々デカくないですか?
モガドールも色々デカいですけど、駆逐艦と言われれば見えなくはないですが…
あとクレオパトラのキャラデザは素晴らしいですよねぇ
──中央歴1643年2月23日正午、ヒルキガ大使館街──
「まだロデニウス大使館は落とせんか」
大使館街の端、速射砲陣地の側を中隊本部としたリバルは苛立ちを隠せない様子で参謀に問い掛けた。
「はっ。ロデニウス大使館はただの大使館というよりは要塞と言うべきでしょう。建物も塀も分厚く頑丈なコンクリートで造られており、窓の配置や塀の内側も侵入側を迎撃しやすい配置となっています。歩兵戦力だけで陥落させるのは難しいかと…戦闘機から爆撃すれば…」
「ならん。ロデニウス大使は生かして捕らえなければならんのだ。良いか?ロデニウス連邦は民主主義国家であり、民衆が作り出す世論に左右される脆弱な国家体制だ。そんな国家体制で捕らえられた自国民を見捨てるような真似をするば、政権は民衆からの支持を失う事となる。そこにつけ込み、大使を人質としてロデニウスとの交渉を優位に進めるのだ。グ帝はせっかく手に入れた捕虜を愚かにも処刑し利用価値を手放したが、我が国は違うのだよ。それに…」
「それに?」
「…いや、何でもない」
(ロデニウス大使館…蛮族ながら見事な造りだ。陥落の暁には我が邸宅としようではないか)
リバルが歩兵戦力による大使館占拠に固執するのはロデニウス大使を生け捕りにする為…でもあるが、リバルの私欲も大いに関わっていた。
というのもロデニウス大使館は政変によって規模を縮小し移転する事となった旧パーパルディア皇国大使館を取り壊し、新たに建造したものであるが、リバルは自身の邸宅より先進的な造りである事を妬んでいたのだ。
そういった事もありリバルは占拠の暁には作戦成功の褒美としてロデニウス大使館を貰い受ける算段であり、故に自身の邸宅となる予定の大使館を無闇に傷つけないように歩兵戦力による占拠に固執している。
「しかしリバル将軍。敵は中々に手強く、特に屋上の狙撃手が厄介です。ロデニウス大使は屋内に居るので、屋上へ速射砲で攻撃し狙撃手を排除した方が良いかと…」
「うむ、せっかく訓練した兵が消耗するのは頂けん。狙撃手を排除した後は塀への攻撃で突破口を開くのだ。建物への直撃は避けろ。大使が死んでは困る。……修理するのも大変だしな」
「はっ!速射砲用意!」
私欲に塗れた言葉を最後に小さく漏らしたリバルだったが、幸いな事に誰にも聴こえなかったらしい。
参謀が速射砲小隊に命令すると、それに応えて兵士達が速射砲に掛けられていたキャンバス地のカバーを剥ぎ取る。
姿を現したのは、グ帝との密約で供与された『37mm歩兵砲』だ。
グ帝では20年以上前に開発され、すでに旧式化した代物ではあるが、それでも最大で5kmもの射程を誇る本砲はリームにとっては最強の火砲である。
「良いか!屋上を狙うのだぞ!」
「はっ!発射!」
──ドンッ!
リバルの念押しに応え、装填と照準が完了した事を確認した小隊長が発射命令を下し、砲口が火を噴いた。
発射された砲弾は近距離という事もあってフラットな弾道を描き…
──ドゴォンッ!
訓練の賜物かはたまたビギナーズラックか…どちらにせよ砲弾は見事に屋上に命中し、爆煙が収まった後には狙撃手からの攻撃も止んだ。
「よーし、後は塀を攻撃しろ!歩兵を支援するのだ!」
「はっ!」
手を叩き歓喜するリバルは続いて塀への攻撃を命令し、速射砲小隊は塀への砲撃を開始した。
──同日、ロデニウス連邦大使館屋上──
「う……」
粉塵が舞う中、酷い目眩と痛みの中でユミエは目覚めた。
「生きてる…?」
自分の両手を見て、体をペタペタと触って自分が生きている事を確認する。
「ユミエ大使!ご無事です……っ!?」
起き上がったユミエに中腰で駆け寄って来た警備員は彼女が生きていた事に喜んでいたが、その顔は驚愕に染まる事になった。
「いっ…!くぅ…やられたな…」
粉塵で粉っぽくなった屋上に鮮血が滴る。
ユミエの左目にはコンクリートの破片が食い込み、そこから流血していたのだ。
「い、今すぐ治療を!」
「大丈夫です。この目はどうせ元々見えませんし、血は額を切ったから派手に出ているだけです。それより貴殿は?」
「は、はいっ!私は大丈夫です!」
屋上を直撃したように見えた砲撃だが、屋上の外周を取り囲むように聳え立つ胸壁に当たっていたのだ。
しかもリームが放った砲弾はグ帝の倉庫で眠っていた物…つまり"賞味期限切れ"の砲弾であり、炸薬が劣化して威力が低く、また信管も単純な着発式しか与えられていなかった為、胸壁の表面で炸裂したのである。
それによって被害は最も近くに居たユミエにコンクリートの破片が襲い掛かっただけで済んだ。
──ドゴォンッ!
「不味いな…壁を破ろうとしている。あの大砲をどうにかしないと」
「ですがライフルでは大砲を破壊出来ません。砲兵を狙撃したとて、大砲が無事なら…」
「私に考えがある」
そう言うとユミエは粉塵に塗れた64式を拾い上げると、血を拭ってスコープを覗き込んだ。
「距離は…500。この距離なら…!」
速射砲は塀に向かって砲撃を続けており、ユミエ達は既に息絶えたものだと思っているようだ。
そんな速射砲…その砲身の真下にある筒状の物体に照準を合わせ…
──パンッ!
放たれた弾丸は空を裂き、真っ直ぐ速射砲へ向かって飛翔する。
──同日、リーム王国銃士中隊本部──
──ドンッ!……ドンッ!……ドンッ!
「中々崩れんな」
十何発と砲撃が直撃したというのに塀は崩れる様子が無い。
だが、リバルは何処か余裕がありそうな態度だ。
「ふむ、だがこれだけ撃ち込めばロデニウスの連中も怖気付いたろう。おい、あと2〜3発撃ったら降伏勧告をせよ。今なら命は取らんと伝えよ」
「はっ!では後3発撃ちましょう!」
リバルの命令を受け、小隊長は部下に命令を伝達する。
──キンッ!
「……?」
小隊長は何か金属音を聴いたが、それが丁度速射砲から薬莢を引き抜くタイミングであったため、それに関わるものだと考えた。
「よしっ!発射!」
若干の違和感を覚えながらも発射命令を下す。
しかし、それが彼の最後であった。
──ドンッ!
砲弾が発射されると共に砲身の下部から液体が噴水のように飛び出し、速射砲自体が後方に吹き飛んだ。
というのも、小隊長が聴いた金属音…それはユミエが放った弾丸が速射砲の駐退機のシリンダーを穿った音なのである。
駐退機は大砲の反動を受け止める為に油圧シリンダーが使われているのだが、シリンダーに穴が開いた事で作動油が噴出、反動を抑えられずに射手と照準手、小隊長を巻き込んで後方に弾け飛んだのだ。
「なっ…お、おいっ!大丈夫か!?」
「小隊長!……小隊長、戦死されました!」
リバルが振り向き、小隊長達の安否を確認するが、100kgもの鉄の塊が直撃した小隊長は胸が大きく凹んでおり即死であった。
「速射砲は!?」
「駄目です!修理しなければ撃てません!」
「な…なんだとぉ!」
大使館なぞ包囲していくらか砲撃すれば簡単に占拠出来ると考えていたリバルは、速射砲を1門しか持ってきていなかった。
今から補充しようにも王城に戻らなければならないが、たかが大使館を占拠するのに何門もの大砲を使ったとあっては無能の烙印を押されかねない。
「……えぇい!総攻撃だ!何としても落とすのだ!」
速射砲を失ったとて200名近くの兵士による力押しがある。
多少の兵を失ったとて、ロデニウス大使の身柄を確保すれば十分お釣りが来る。
後に引けなくなったリバルは、総攻撃を命令するのであった。
作中に登場する速射砲ことグ帝の37mm歩兵砲は十一年式平射歩兵砲をモデルにしています