異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

335 / 391
いよいよ今日からイベントですね!
資金もキューブもバッチリ…まあ最悪天井叩けばいいでしょう


330.大使館の長い1日【5】

──中央歴1643年2月23日午後1時、ヒルキガ大使館街──

 

「せ、戦艦が空を飛んでいる…!」

 

先程までの威勢は何処へやら…リバルは空を見あげ、あんぐりと口を開けて呆然としている。

しかし、数の暴力によって塀を乗り越え、建物へ侵入し、大使の確保も時間の問題という勝ったも同然な状況があっさりと覆ったのだから、そうなるのも無理はない。

飛来したACH-47の力は正に圧倒的…それこそリバルの口から溢れた『空飛ぶ戦艦』と呼ぶに相応しい。

胴体長約15m、胴体幅約4mもの巨体が轟音と共に強烈な旋風を巻き起こしながら空中を自由自在に機動し、上空から銃砲撃を降らせ、多少の被弾をものともしないACH-47の姿にリーム兵の士気は崩壊し、最早大使館占拠なぞ出来る状況ではない。

 

「リバル将軍、ロデニウス大使が飛行機械に乗り込みました!」

 

「っ!こ、こうなれば仕方ない!こちらも飛行機械を出せ!ロデニウス大使は"生きている"という事にすれば良い!」

 

「はっ!」

 

参謀が通信士へリバルの命令を伝達した。

もしここでメカキを逃がせば、リームはただ損害を受けただけとなる。

しかし、チヌークを撃墜すれば身柄を確保出来る可能性があり、万が一死んでしまってもロデニウス側に黙っていれば生きているという事に出来る。

幸い、ヒルキガの南側にある小高い丘の裏にはワイバーン基地を改修した飛行場があり、そこにはグ帝から供与されたアンタレスが20機程配備されている。

今から出撃させれば十分間に合うだろう。

 

「おのれ〜…ロデニウス連邦…!新興蛮族のクセに私の経歴に泥を塗りおって…!」

 

喉元過ぎれば熱さを忘れる、とはよく言ったもの…徐々に遠くになるチヌークの姿を見てリバルに目覚めたのは怒りであった。

精鋭の銃士中隊は僅かに生き残っただけであり、自身の邸宅にする予定だったロデニウス大使館は20mm砲弾や40mm擲弾によって外壁はもちろん、室内まで大きな損傷がある。

ここまで目論見を阻止されてしまえば、最早リバルに残された道は無い。

 

──ブウゥゥゥゥゥゥゥン!

 

「いけ!蛮族に我が国の力を知らしめてやれ!」

 

緊急発進したリーム空軍のアンタレス04型16機が南の空から飛来する。

本機はグ帝においては旧式化して久しく、耐用飛行時間も上限ギリギリ、地方基地の予備役兵器倉庫にあった代物であり、しかも翼内20mm機銃を外されてしまっているのだが、それでもワイバーンオーバーロードを上回る速度と運動性、更には火炎弾より射程と連射性が優れる7.7mm機銃を2丁装備しているリーム最強の航空戦力だ。

 

──ゴォォォォォォォッ!

 

「なっ…!?」

 

そんな"リーム最強"へ、獲物を見付けた猛禽のように轟音と共に高空から急降下して襲い掛かる白い陰…ナヒーモフから発艦し、彼女が遠隔操作するF-8だ。

高高度で待機していたF-8は出撃したリーム機を探知すると高度を維持したまま南へと向い反転、そのまま急降下してリーム機の後方から襲い掛かったのである。

 

──ヴヴヴヴヴッ!

 

「あぁ!!」

 

リームのアンタレスは先程も言った通り耐用飛行時間上限に達しそうな程の老朽機である上、グ帝の軍事顧問は単純な戦闘機動しか教えていないため、急激な回避運動を行う事が出来ない。

 

──バギィンッ!ボンッ!ボンッ!  

 

アンタレス04型は運動性と火力こそ評価された機体であったが、その分防御力が低く、それを解決するには06型まで待たなければいけなかった。

そんな防御軽視の軽戦闘機が20mm弾を複数被弾して無事な訳がない。

4機のF-8が放ったバルカン砲による銃撃でリーム機は紙切れが引き裂かれるようにして瞬く間に3機が撃墜され、ヒルキガの街中へ火達磨となって落ちた。

 

「なっ…なんだあの飛行機械は!?速すぎる…あれがロデニウスの戦闘飛行機械だと言うのか!?」

 

驚愕するリバルだが、単純な速度性能だけで見てもアンタレスの最高速度でさえF-8の巡航速度には敵わない。

更に言えばF-8はナヒーモフ…つまりKAN-SENの圧倒的な演算能力を用いて遠隔操作されている為、1機1機が熟練パイロットに匹敵する戦闘力を誇る。

付け焼き刃の空戦技能で操られる旧式機なぞ標的機のようなものだ。

リーム機はどうにか引き離そうとスロットルを全開にして速度を上げるがF-8は容易く追い付き、銃撃を浴びせて撃墜する。

中には飲み込みが早く、捻りを加えた宙返りで逆に背後を取ろうとするリーム機も居たが、ジェットエンジンによる大推力を存分に活かした鋭い機動によってピタリと背後に付かれ、それに恐怖しながら撃墜された。

 

「ば…馬鹿な…こんな事が…ま、まさか…!」

 

リームがグ帝との密約を結ぶ際、リバルは大将軍という立場から意見を求められた際「グ帝の生産能力はロデニウス連邦を凌駕しており、多少兵器の性能差があろうとも物量で圧倒出来る」と意見し、密約を後押しした経緯がある。

しかしグ帝とロデニウス、それぞれの兵器の性能差はリバルが想定するより遥かに開いていた。

例えるなら農民一揆と重装騎兵…いや、小鳥と風龍程の差がある。

これほどの性能差があれば物量なぞ意味を成さないだろう。

 

「私は…間違ったのか…?」

 

リバルの脳裏に浮かぶのは蹂躙される祖国の姿であった。

F-8があらゆる航空戦力を叩き落とし、その後は我が物顔でチヌークが飛び回り、地上を制圧する…そんな未来をありありと想像出来てしまう。

降伏すればロデニウスはパ皇にしたように政権交代と軍の駐留で許してくれるかもしれないが、国内には既にグ帝爆撃機の基地がある。

ロデニウスに降伏したと知られれば、あらゆる都市が爆撃される…

 

「リバル将軍!リバル将軍!」

 

「なんだ!?」

 

降伏か隷属か…どちらがマシなのかを思案していたリバルの肩を参謀が揺さぶる。

 

「早く逃げませんと撃墜機が…」

 

「撃墜機?」

 

参謀が指差す方を見上げる。

するとそこには巨大な火の玉…被弾し、炎上するアンタレスがこちらに向かって墜落してくるのが見えた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

それを見るや一目散に逃げ出すリバルと参謀達。

しかし、それはあまりにも遅すぎた。

 

──ボンッ!!

 

撃墜機が地面に衝突し、爆発すると同時に燃え盛るガソリンが周囲に飛び散る。

それを全身に浴びたリバル達は燃え盛る松明のようになり、炎の中で息絶えた。

 

この一連の戦いは後に『ヒルキガの戦い』と呼ばれ、ロデニウス側は負傷者若干名だったのに対しリーム側は戦死者160名、負傷者20名、被撃墜機16機、被撃墜機による民間への被害複数というリーム王国の惨敗という形で幕を閉じた。

 

 




というわけで大使館を巡るあれこれは一区切りです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。