果たしてロデニウス連邦は独力で本土を守る事が出来るのか…!
──中央歴1643年2月28日午前6時、リーム王国西部──
リーム王国の西部、山岳地帯を越えた僻地の荒野に建造されたグラ・バルカス帝国近衛兵団特殊殲滅作戦部の飛行場。
そこはリーム王国の領土ではあるがリーム人は一人も居らず、グ帝人のみが屯していた。
「やはりしくじったか。まあ劣等人種が帝国の高度な兵器を扱いきれる筈もない。ましてやロデニウスの兵器は"多少は"マシな代物らしいからな。劣等人種同士の戦いなら、兵器の性能が良い方が有利だな」
滑走路脇にある司令部施設の建物でアーリ・トリガーは朝食を摂りながらヒルキガ駐在員が作製したリーム王国によるロデニウス連邦大使館襲撃の報告書を片手に嘲笑していた。
「大方、大使の身柄と引き換えに軍事技術を手に入れる算段だったのでしょうが…帝国の技術と比べれば児戯も同然だと言うのに」
「しかし、このオートジャイロは厄介に見えるな。この機体規模で飛行し、更には武装まで可能とは…だが所詮はオートジャイロだ。帝国の戦闘機が制空権を確保すれば飛べなくなる。オートジャイロをここまで発展させたのは評価するがな」
副官の言葉に頷きつつ、駐在員が撮影した写真に目を落とすアーリ。
そこには大使館職員を収容するチヌークの姿が写し出されており、アーリはそれに少しばかり感心したようである。
「左様ですね。まったく…曲がりなりにもこんな物を作れるだけの技術があるのだから、マトモな戦闘機でも作れば良いものを…」
「君、それは酷だぞ。劣等種でも時には秀才が生まれるものだが、それを上手く扱えないからこそ劣等種なのだ。…まあ尤も、グティマウンを迎撃する事なぞ出来んがな」
オートジャイロとヘリコプターは全く異なる航空機であり、チヌークが搭載しているターボシャフトエンジンはグ帝の2000馬力級戦闘機用エンジンの半分以下の重量でありながら出力は倍以上…アーリと副官の考えは全くの的外れなのだ。
「作戦部長!全機出撃準備完了致しました!」
「よし、では行くか。今出撃すれば、昼ごろにはロデニウス大陸に到着する筈だ。せっかくならば劣等種の都市が焼けるのをこの目で見たい」
「同感であります、作戦部長」
自身の乗機の機関士からの呼び掛けに、アーリは副官を伴って司令部施設から出る。
滑走路と駐機場には200機もの世界最大級の巨人機であるグティマウン型爆撃機、全機がエンジンを作動させ、飛び立つのを今か今かと待ちわびているようだ。
「よし…目標、ロデニウス連邦首都クワ・トイネ及びニューマイハーク!奇数番機はクワ・トイネ、偶数番機はニューマイハークへ!全機出撃!」
──グゴァァァァァァァァ!
レシプロエンジンの極致と言っても過言ではない排気タービン付き28気筒4連星型空冷エンジンが6000馬力もの出力を絞り出し、推進式に取り付けられた二重反転プロペラが強烈な旋風を発生させて巨大な機体に揚力を与える。
──ゴォォォォォォォ……
暴風を巻き起こしながらグティマウンが次々と離陸してゆく。
それを一足先に離陸した1番機の機長席から眺めつつ、アーリは無線に呼び掛けた。
「高度12000まで上昇し、リーム領内で編隊を組むぞ。ロデニウス上空に到達するまでは…コーヒーでも飲んでいてくれたまえ」
最高で15000mを飛ぶ事が出来るグティマウンは乗員が快適に長距離飛行を行う為に与圧キャビンとなっており、機内に備えられた電熱器によって温かい飲み物や糧食を用意する事が出来る。
「作戦部長、コーヒーをどうぞ」
「うむ、ご苦労」
副官が用意してくれたコーヒーを受け取り、香りを楽しみながら眼下に流れる雲を見下ろすアーリ。
200機もの大編隊により焼き尽くされるロデニウスの都市を想像しほくそ笑む彼は、やや酸味が強いコーヒーに舌鼓を打つのであった。
──同日、ロデニウス連邦首都クワ・トイネ──
ロデニウス連邦の首都クワ・トイネは規模こそニューマイハークには劣るが、各省庁が集まっており、連邦政府の中心地である。
そんな中でも連邦政府の中枢である大統領府では緊急会議が開催されていた。
「皆さん、集まって頂き感謝致します。早速本題に入りましょう」
大会議室に集まった閣僚を見渡し、大統領のカナタが会議の開始を宣言し、それと同時に目配せされた防衛大臣パタジンが起立する
「では私から…本日午前7時頃、本邦の同盟国であるアワン王国に置かれているレーダーサイトがリーム王国上空10000m付近を飛行する物体を捉えました。速度は時速400km前後、数は200…進路は本邦と推測されます」
「高度10000を時速400km…」
「ワイバーン…ではありませんね」
「リームが運用しているグ帝の戦闘機とも考えにくい…」
閣僚達は既に察しているらしい。
ざわめきが落ち着くのも待たずに、パタジンは大判写真を高く掲げた。
「十中八九、グ帝がリームに回送した爆撃機でしょう。おそらくは皇太子拉致の報復として本邦を爆撃するつもりだと…」
諜報員によって撮影されたリーム奥地のグ帝飛行場と、そこでタキシングする爆撃機ことグティマウンの大判写真をヒラヒラと強調するように振りながらそう述べるパタジン。
それを聞いて副首相のハークが問い掛ける。
「パタジンよ…いや、パタジン大臣。迎撃は可能か?」
かつての王と将軍という関係がまだ抜けきれなかったのかハークは以前と同じようにパタジンを呼びかけたが、パタジンはそれに苦笑しつつ応えた。
「はい、陛下。問題はありません」
「パタジン…」
戯けるように応えたパタジンと、気不味そうなハークに微かな笑いが起きるが、パタジンは肩を竦めながら言葉を続ける。
「それはともかくとして、まず敵爆撃機…識別名『GB』は本邦の防空識別圏に入った瞬間に大多数が撃墜されます」
「随分な自信だな。具体的には?」
言い切ったパタジンに感心しながらもハークは再び問い掛ける。
それに対するパタジンの答えはなんとも単純明快だった。
「具体的にも何も…はっきり言って本邦の戦闘機の性能ならば容易い事です」
そう言って会議室に備え付けられた大型モニターへ歩み寄り、自身のノートパソコンを繋げ、少しばかり操作するパタジン。
すると大型モニターに3機の戦闘機の写真が映し出された。
「まず本邦の空軍は3機種の戦闘機を採用しています。これは戦闘機という物は本土防空の柱であり、万が一機体の不良等により機種ごと飛行停止となった際、防空体制に穴が開く事を防ぐ為の措置です。そして現在採用されている戦闘機全てが超音速機かつ、15000mまで上昇可能、2機種はレーダーを用いた視程外空対空ミサイルの運用が可能です。
そしてGBはその外見から上昇可能高度は12000m程度であり、速度は最大でも時速700km程度だと予想されます。なので本邦の戦闘機で確実に捕捉、撃墜出来るでしょう」
「それは頼もしい。大統領、どうやら問題は無いようですな」
「えぇ、ハーク副首相。まだ借り物の技術ですが…我が国に降り掛かった火の粉を振り払えるぐらいには成長したとサモアにお披露目致しましょう。パタジン大臣、全軍に臨戦態勢を発令。我が国に向けられるあらゆる武力を撃滅して下さい」
「はっ!」
カナタからの命令を受けたパタジンの力強い返答と共に会議は閉会した。
ところで皆さん、イベントはどうですか?
私は恙無く全員揃えました