異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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雨が続くせいか肌寒くなってきましたね
もうそろそろ梅雨入りかと思うと憂鬱です…


333.超空の巨星【3】

──中央歴1643年2月28日午後3時、ロデニウス大陸北部沖上空──

 

──ドゴォンッ!

 

「うおわぁぁぁぁ!!」

 

「今ので何機目だ!?」

「分かりません!少なくとも30機は…」

「ひぃぃぃぃっ!」

 

先程まで彼らは圧倒的高みから敵を嬲り殺し、楽をして勝利の立役者となる事を確信していたのだが、今では五体満足で帰る事を祈りながら震える事しか出来ない。

 

「いったい何が…何がグティマウンを攻撃しているのだ!?」

 

半狂乱になりながら辺りを見回すアーリ。

敵機の姿を見たのは一度だけ…後は何の前触れもなく1機が撃墜され、それを皮切りに次々と味方が撃墜されて行った。

 

──ドゴォンッ!

 

「うっ…不味い!」

 

前方を飛んでいた機が不可視の攻撃によって穴だらけとなり、長大な主翼が根元からポッキリと折れて墜落してゆく。

それを見た操縦士は操縦桿を引き、機体を上昇させた。

そうでなければ、被撃墜機の破片やオイルが自機に襲いかかる可能性があるためだ。

 

「さ、作戦部長!このままでは危険です!爆弾を捨てて撤退すべきです!」

 

「なんだとぉ!?」

 

傾いた機内でバランスを取りながら進言する副官にアーリは声を荒げる。

 

「この私に…帝国の技術の結晶たるグティマウンの力を振るえぬまま逃げ出せというのか!」

 

「しかしこのままでは全滅です!」

 

「いいや、このまま進撃だ!敵がどんな兵器を使っているかは知らんが、無限に使えるという事は無いはずだ!まだグティマウンは100機以上残っている…ここで我々が撤退すれば、敵に補給の時間を与えてしまうのだぞ!そして何より…優等種たるバルカス民族が劣等種相手に逃げ出したとなれば、私も貴様もどうなるか分からんぞ!」

 

一方的に撃墜されているというのにこの期に及んで相手を劣等種扱いというのは何とも滑稽であるが、アーリも撤退出来ない事情がある。

というのもグ帝…とりわけ近衛兵団内ではどんなに不利な状況となっても最後まで奮戦する事が美徳であり、模範的バルカス民族だという風潮が蔓延しているのだ。

故にここで撤退を選べばアーリ達は戦力があるにも関わらず撤退した臆病者というレッテルを貼られ、良くて近衛兵団追放、悪ければ懲罰部隊送りであろう。

もしこれが軍との合同作戦であれば軍が起こした不手際のせいと弁明も出来たが、あいにく本作戦は近衛兵団単独だ。

どう足掻いても言い逃れは出来ない。

 

「し、しかし…」

 

「作戦部長、前方より敵機接近!」

 

「ほら見た事か!おそらく長距離攻撃手段が尽きたのだ!目視出来るのなら条件は五分だ…迎撃しろ!グティマウンがただの爆撃機ではない事を思い知らせてやれ!」

 

「はっ!」

 

操縦士の報告通り、前方から凄まじい速度で敵機が迫ってくる。

それを見てアーリはほくそ笑む。

グティマウンは20mm連装機銃を8基装備しており、攻撃する為に肉薄する敵機を返り討ちにする事は容易い。

しかもまだグティマウンは100機以上が健在だ。

互いが互いの死角をカバーするような射撃を行えば如何に敵機が高速とは言え近付く事は難しく、無理に接近すれば圧倒的弾幕によって蜂の巣になるだろう。

 

「劣等種ごときがよくもやってくれたなぁ…!」

 

グティマウンは1機あたりアンタレス200機分のコストがかけられており、それを操る乗組員も様々なテストを潜り抜けたエリート揃いだ。

それが少なくとも50は失われたのだから、この損失は計り知れない。

同じだけ…いや、受けた損害の100倍の被害をロデニウスに齎さなくては気が済まない。

そんな復讐の炎を燃やすアーリは前方から迫りくる敵機を睨みつけるが… 

 

──ゴォォォォォォォ!

 

「っ!…違う!?」

 

編隊を飛び越す敵機の姿は先程の機体とは違っていた。

先程の機体よりも全体的に小柄で華奢な印象を受ける。

しかし、それでも主翼にはロデニウス連邦の識別マークが描かれている以上、敵機なのは間違いない。

 

「まあいい、敵ならば撃ち落とすまでだ!」

 

──ドドドドドドドッ!ドドドドドドドッ!

 

高空に銃声が鳴り響き、曳光弾の軌跡が描かれる。

この高度10000m超の世界は空気が薄く、エンジン出力が下がる事はもちろん、揚力も低下するため急激な機動をしようものならたちまち揚力を失い重力に引かれて一気に高度を落とす事となるだろう。

故に防御銃座からの銃撃は何も直撃させる必要は無い。

敵機に回避を強制させれば攻撃の機会を奪う事が出来る。

 

──ドゴォンッ!

 

「なっ…何だあの動きは!?」

 

しかし、そんな思惑も虚しく敵機は弾幕をヒラヒラと掻い潜ると急降下、そのまま上方から1機のグティマウンに射撃、被弾した機は主翼を撃ち抜かれてしまい燃料に引火、爆発して燃え盛りながら墜落していった。

確かに敵機は思惑通り銃撃を回避したのだが、揚力を失って落下する事もなく高度を保ち、意図的な急降下をした後は機首をほぼ真上に向けて急上昇したのだ。

こんな高高度でそんな芸当が出来るという事は強力なエンジンとそれをフルに活かせる機体設計を行える技術があるという事である。

 

──ドドドドドドドッ!…ドゴォンッ!

 

「ぐっ…!」

 

真横の機が被弾し、燃料に引火して爆発した。

その閃光が網膜を焼き、熱が頬を舐める。

もうこうなればいつ自分達が撃墜されてもおかしくはない…死の恐怖を間近に感じたアーリ達の顔色は既に死人も同然だ。

 

──ガコッ…ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ…

 

「お、おいっ!何をしている!?」

 

コックピット後方から機械音の後に微かな風切り音が聴こえ、機体が上下に揺れる。

まさかとは思いアーリは操縦士に問い掛けた。

 

「もう無理です!撤退しなければ殺される!」

 

「貴様っ…!」

 

そう、アーリの予想通り半狂乱となった操縦士は独断で爆弾を投棄したのだ。

現状グティマウンは航続距離を確保すべく最大搭載量の半分である20トンの爆弾を抱えていたが、それを捨てた事で最高速度の時速780kmを発揮出来るようになったのだが…

 

──ヒュウゥゥゥゥゥゥ…ヒュウゥゥゥゥゥゥ…

 

「やめろ!爆弾を捨てるんじゃない!」

 

通信士からマイクをひったくり、他機に呼び掛けるアーリ。

1番機が爆弾を投棄した事で撤退すると思ったのか、他機も爆弾を投棄し始めたからだ。

しかし、他機の乗員もパニックになっていたのか、アーリの命令も虚しく爆弾は何もない海へと落下していった。

 

「……終わりだ」

 

まるで覇気を無くしたように機長席に力なく座り込むアーリ。

爆撃機の力はズバリ搭載した爆弾であり、それを失ってしまえば爆撃機はただの巨大航空機だ。

一応防御銃座で機銃掃射する事は出来るが、爆弾に比べれば雀の涙でしかなく、何より機銃掃射出来る程に低空飛行をすれば敵の迎撃網に絡め取られるのが関の山である。

つまり爆撃隊は目標の達成が不可能な状態…ミッションキルされたのだ。

 

──ドゴォンッ!

 

「殺される…殺される…!なんで俺達が!俺達はっ!優等民族なんだろ!世界の支配者に相応しいって!」

 

次々と撃墜される味方に、発狂する乗組員。

そんな中、アーリは精神が崩壊したように虚空を見つめるだけだった。

 




ミサイルって白煙を出しながら飛ぶイメージですけど、実際は煙が出るのは発射してしばらくだけなんですよね
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