皆さんも熱中症には気を付けて、今からでもエアコンが壊れていないか確認しておきましょう
──中央歴1643年3月1日午前6時、リーム王国西部──
「リロード!」
「カバーに入る!」
「グレネードを使う!3!2!1!投擲!」
奇襲による敵の迎撃態勢の不備、そして戦車とガンシップによる火力支援の効力もあってアズールレーン空挺部隊は電撃的速度を以て飛行場の司令部や格納庫が建ち並ぶ中枢部へと到達した。
敵…つまりグラ・バルカス帝国近衛兵団は迎撃を担当する警備大隊本部が砲撃により吹き飛ばされた事により指揮系統が混乱し、反撃も散発的だ。
「開けろ!そして武装を解除して投降しろ!」
そんな中、格納庫の一つのドアを空挺隊員がAKMのストックでガンガンと叩きながら呼びかける。
巨大な格納庫は爆撃機…グティマウンの格納庫であるが、そこに敵が逃げ込み、立て籠もっているのだ。
「大丈夫?助けが必要かしら?」
「ポルタヴァ殿!」
工兵か戦車を呼んで扉を吹き飛ばすしかない。
そう判断した空挺隊員はトランシーバーで支援を要請しようとするが、その寸前で紫色の長髪を靡かせたポルタヴァが駆け寄ってきた。
「実は敵が立て籠もっていまして…」
「降伏勧告は?」
「しましたが無視しているのか聴こえていないのか…」
「なら仕方ないわね…RPGを使うわ。皆、離れてちょうだい」
ポルタヴァの言葉に空挺隊員達は各々手近な遮蔽物に身を隠し、それを確認したポルタヴァは対戦車榴弾を装填したRPG-7を担ぐと、30mほど離れて扉に照準を合わせた。
「後方…よしっ。発射!」
──バシュウッ!
後方に味方や障害物が無い事を確認し、発射する。
発射薬により発射された弾頭は10mほど飛翔した所でロケットモーターを点火、若干の沈み込みを見せながらも一気に加速し…
──ドゴォンッ!
火災時の延焼を防ぐ為に作られた鋼鉄製の扉ではあるが、分厚い戦車の装甲を貫くべく生み出された成形炸薬の前ではあまりにも力不足だった。
着弾した瞬間に信管が作動し炸薬が爆発、そのエネルギーは弾頭内の漏斗型ライナーの中心に集中する事でメタルジェットを形成し、扉と木製の太い閂を貫いてみせた。
「ありがとうございます!突入しろ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
空挺隊員はポルタヴァに礼を言うと余波で蝶番から外れかかっている扉を蹴破り、格納庫内部に手榴弾を投げ込んだ後に炸裂を確認して部下と共に突入する。
格納庫内部からは銃声と怒号が聴こえるが、それも暫くすると収まり…
「目標制圧!数名の捕虜を確保したぞ!」
機体を出し入れするスライド式の大扉が開け放たれ、先程突入した空挺隊員達がAKMを掲げながら歓声を上げる。
それは何もここだけではない。
他の格納庫や宿舎、弾薬庫等も次々と制圧され始めている。
「ハッハーッ!どうだ民族主義共!これが人民による革命の力だ!」
制圧された建物の一つ、弾薬庫の屋根の上に登ったガングートがウオッカの瓶を振り回しながら勝利の雄たけびを上げ、もう片方の手に持ったAKMをまだ制圧されていない建物…司令部へと乱射し、声高らかに呼びかける。
「さあ同志諸君!悪逆非道なる民族主義をあと一歩で叩きのめせるぞ!」
「よーし、後はあの建物だけだ!目的は果たしたから思う存分やれ!」
ガングートに呼応するようにガイも呼びかけると、空挺隊員達を率いて司令部建屋に向かって突撃する。
「さあて、あと一息…私も頑張らないとね」
血気盛んに突撃して行く空挺隊員達を微笑ましそうに見ながらも、RPG-7を再装填したポルタヴァは照準を司令部建屋の上階に合わせるのであった。
──同日、司令部建屋──
「第1から第14格納庫が制圧されました!宿舎と弾薬庫も同様です!」
「高射砲陣地からの通信途絶!」
「敵部隊、接近してきます!」
次々と飛び込む絶望的な報告。
それを前にアーリは絶望ではなく、激しい怒りを覚えていた。
「おのれ劣等種共!優等種たる我々を…我々の技術の結晶を無為に破壊するとは……?」
彼の怒りは劣等種と蔑む異世界人によってバルカス人の命と、兵器を始めとする帝国製品が次々と破壊されている事に対するものだが、ふと違和感を覚えた。
敵の目標は飛行場を制圧し、グティマウンの出撃を防ぐ事だろう。
しかし、グティマウンの出撃を防ぐのであれば何も空挺部隊を投入しなければならないという事は無い。
それこそ空挺部隊や空挺戦車を運べる輸送機を作り、暗い内から敵地へ送り込めるのならば爆撃機により爆撃した方が楽だし、空挺部隊を投入するならその後でも良いだろう。
だが敵はこうやって空挺部隊と空挺戦車を投入し、格納庫等を一つ一つ制圧している…
「……っ!そ、そうか!」
ここでアーリは敵の狙いに気付いた。
「不味い!敵はグティマウンを鹵獲するつもりだ!いや…それだけじゃない!弾薬や燃料も鹵獲し、帝国の技術を解析するつもりだぞ!」
アーリの推測通り、アズールレーンの狙いはグティマウンを始めとした各種物資の鹵獲だ。
正直言ってアズールレーンからしてみればグ帝の軍事技術は一世代も二世代も遅れている。
しかし、それでも鹵獲に踏み切ったのはとどの詰まり"嫌がらせ"だ。
というのも機密の塊である兵器…特にグティマウンのような戦略的に重要な兵器を鹵獲されたとあれば、解析され対抗手段を編み出されてしまうだろう。
そうなれば対抗手段に対抗する為に新たな兵器を生み出す必要がある上に、下手をすればグティマウンを丸々コピーされて帝国への攻撃に使われる事になり、それに対抗する為の手段も必要となってくる。
そうすれば様々なリソースがそれらに吸われる事となり、結果として他の軍事作戦に影響を与えるだろう。
「帝国の戦略が破綻しかねない!グティマウンを破壊して鹵獲を防がなければ…」
顔を青くして生き残ったグティマウンが収容されている格納庫の状況を確認すべく窓を開けて顔を覗かせるが…
──シュッ…
「?」
顔の横を何かが熱風と共に通り抜けた。
その正体を確かめる為に振り向こうとした瞬間だった。
──ドゴォンッ!
「がっ……!」
凄まじい爆発音と衝撃を受け、アーリは背後から突き飛ばされるように窓から弾き飛ばされた。
「ぅぁ…」
5階の高さから真っ逆さまに頭から落ちたアーリは、頭部がスイカのように弾けてしまった。
これにより指揮系統が完全に崩壊した特殊殲滅作戦部は抵抗の意志を失い、同部隊の近衛兵団員は次々と降伏。
アズールレーン側は空挺隊員7名の戦死と20名程度の負傷者こそ出したが、損傷機含め11機のグティマウンと2機のアトリア戦闘機、それらのパイロット、整備士、補修部品、搭載兵器等を鹵獲する結果となった。
正に大戦果と言うべきだが、リーム王国におけるアズールレーンの作戦は漸く折り返し地点…後顧の憂いを断つ為の最後の一手が発動しているのである。
今回でリーム国内のグティマウン基地を巡る攻防は一区切りです!
そして次回からはリーム王国自体に対する軍事作戦…果たしてリームは生き残る事が出来るのか!?