異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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新しい計画艦のメークレンブルクが発表されましたが、ハウデン・リーウとどっちを先に作るか迷いますね…


342.蝙蝠の末路【2】

──中央歴1643年3月1日午前9時、自由フィシャヌス帝国デュロ──

 

パーパルディア皇国の頃から工業都市として名を馳せていたデュロであるが、それは国体が変わってからも同様であった。

しかし、戦火により破壊された街並みは大きく変わっている。

石畳が敷かれていた通りはアスファルトやコンクリートで舗装され、石材やレンガで作られていた建物はスレート波板や板金で作られた物が大多数を占めていた。

だが、それより目を引くのは通りを走る多数の"自動車"だろう。

この自動車は『2HP』と呼ばれるアズールレーン製の小型車だ。

2馬力を意味する名を持つ本車は元々はアイリスで大衆車として開発された極めて簡素な構造を持つ自動車であるため、アズールレーンによる技術支援プログラムに組み込まれ、対象国に本車の生産設備を建設する事で自動車の国産化を指導する謂わば"教材"として使われている。

そのかいもあってデュロでは部品を輸入し組み立てるノックダウン生産を経て、今では2HPの殆どを国産化するに至っていた。

 

──ブロロロロ…キッ

 

「ご苦労」

 

そんな国産2HPの後部座席から降りてきたのは、杖をついた初老の偉丈夫、旧皇軍時代からデュロ防衛の任を負ってきたブレム将軍である。

彼は先の戦争で艦砲射撃に巻き込まれ瀕死の重傷を負ったがアズールレーンの上陸部隊によって救助され、奇跡の回復を遂げた後は脚に後遺症が残りながらも軍務に復帰しているのだ。

 

「状況は?」

 

「はっ。先程リーム王国との国境に設置された対空魔信及び対空レーダーによりリーム王国首都ヒルキガ近郊よりワイバーン、飛行機械が離陸し我が国に飛来する経路を取っている事を探知しました」

 

「ふん、やはりグ帝の後ろ盾を得て領土欲を抑えられなくなったか。数は?」

 

「対空魔信によるとおよそ100…対空レーダーによれば120程度ですので100から150でしょう」

 

出迎えの兵士と言葉を交わしつつ防衛司令室へと足を踏み入れるブレム。

すると彼の姿を見た兵士達が作業の手を止めて敬礼しようとするが、ブレムはそれを手で制した。

 

「そのままで良い。迎撃状況は?」

 

その言葉に従い敬礼を中断した兵士達は司令室の中央に置かれたデュロ周辺を記した巨大な地図上に赤や青のブロックを配置する作業に戻る。

これはレーダー等が探知した敵機や、それを迎撃する為に出撃した味方機の動きをリアルタイムで表したものだ。

 

「現在は当直の迎撃隊が出撃し、直ぐにでも応援の迎撃隊が急行するそうです。同時並行でアズールレーンや周辺諸国にも援軍を求めている最中です」

 

「そうか。迎撃隊はリーム航空隊に勝てるか?」

 

「はっ。確かに敵の数は多いですが、リームのワイバーンはせいぜいワイバーンロード…そしてロデニウス連邦から提供された情報によりリームがグ帝から供与された飛行機械の性能は我が国に配備されている飛行機械よりも低性能です。もちろん油断は禁物ですが、少なくとも成す術もなく撃墜されるという事は無いでしょう」

 

「よし、ならば念の為に市民の避難をシャアダ市長に要請せよ」

 

「はっ!」

 

「さて…リームめ、我が国を侮った報いを受けて貰おうか」

 

司令室を見下ろす位置にある司令官席に座るブレム。

彼の目には確かな闘志が燃えていた。

 


 

──同日、デュロ近郊上空──

 

《防衛司令部より。敵航空隊は依然として南下を続けデュロに向かっている。相変わらずこちらからの呼び掛けには一切応えない》

 

「こちら当直迎撃隊のレクマイア、了解した。では規定通りに接近し敵航空隊の所属を確認、その後こちらの通信で呼び掛ける」

 

《こちら防衛司令部、了解。くれぐれも気を付けてくれ。もしかしたら接近した時点で攻撃される可能性がある。そうなった場合は…》

 

「交戦規定に基づき防衛戦闘を開始する…でよろしいか?」

 

《それで大丈夫だ。では幸運を》

 

司令部との交信を終えたレクマイアは間もなく訪れる接敵の瞬間に備え、コックピットから愛機に異常が無いかを今一度確認する。

コックピットの左右真横で高速回転するプロペラに、平たく何処からが胴体で何処からが翼かハッキリしない円盤状の機体…これこそがアズールレーンから自由フィシャヌス帝国防衛軍へ新たに供与された戦闘機『F5U フライングパンケーキ』だ。

正に"空飛ぶ円盤"と形容すべき本機だが、その悪ふざけのような外観に反して性能は非常に優れている。

2基の1500馬力エンジンと大径プロペラは高い速力を発揮し、円盤状の胴体は全てが揚力を生み出すため優れた短距離離着陸性能と運動性を与え、更には高い機体剛性と機首に集中配置された6門の12.7mm機銃によって優れた命中率を誇る。

強いて言うならプロペラのせいでロケット弾やガンポッドのような前方投射兵器を運用出来なかったりするのだが、防衛兵器として純粋な戦闘機を求めていた自由帝国にとっては些末な問題だ。

 

「…あれはリーム王国と…グラ・バルカス帝国か。間違いないな」

 

時速500kmもの速度で飛行していると敵飛行隊の姿を確認出来た。

高度3000m辺りを飛行する航空機の編隊と、やや遅れて着いて行くワイバーンロードの編隊…竜騎士として鍛え上げた自慢の視力を以て、レクマイアはそれらに描かれた国籍識別標を捉えた。

 

「こちら自由フィシャヌス帝国防衛空軍。リーム王国軍機、並びにグラ・バルカス帝国軍機に告ぐ…」

 

──ヒュッ…ヒュッ…

 

「っ!?」

 

無線機を使い呼び掛けようとするが、言い切る前に光弾が近くを掠めた。

 

「護衛機か!」

 

光弾が飛んできた方を睨みつつ機体をバンクさせて急旋回するレクマイア。

すると上空から敵機が射撃しながら急降下してきた。

あと一歩旋回が遅ければ直撃を受けていただろう。

 

「攻撃を受けた!交戦規定に基づき、防衛戦闘を開始する!」

 

《了解!》

 

列機に呼び掛け、その応答が返ってきたと同時にレクマイアはラダーペダルを蹴りつつ操縦桿を鋭く倒して再び急旋回する。

こんなにも急旋回を繰り返せば失速、最悪空中分解してしまうが、双発エンジンによるパワーと円盤機故の揚力と機体剛性のお陰で危なげはない。

それどころか急降下によって十分に速度が乗っている筈の敵機にも追い付ける程グングンと加速している。

 

「当たれーっ!」

 

──ダダダダダダダダッ!

 

レティクルに設定された翼幅マークと敵機の翼幅が重なった瞬間にトリガーを引く。

機首左右に3門ずつ装備された12.7mm機銃が火を噴き、曳光弾混じりの弾丸が飛翔するが…

 

「チッ…!」

 

しかし、敵機は射撃の瞬間にロールしながら上昇し、速度を落としてレクマイア機に追い抜かせて背後を取ろうとする。

だが、レクマイアとて黙って見ているわけではない。

 

「仕切り直しだ!」

 

スロットルを全開にし、操縦桿を引いて急上昇する

フライングパンケーキは双発機である上に前面投影面積が小さく、急上昇能力に優れる。

それを示すように敵機がレクマイア機を追い掛けようとするが、その距離はドンドン離れてしまった。

 

「よし。しかし敵もタダではやられてくれんな…」

 

危機を脱した事に安堵しつつも状況は膠着状態…いや、どちらかと言えばレクマイア達迎撃側は爆撃機がデュロに到達する前に撃墜、或いは攻撃を断念させなければならないのだ。

もたもたしていればデュロが再び火の海になってしまう。

 

《防衛司令部より迎撃隊へ。アズールレーンより迎撃に協力するとの申し出があった。ガハラ神国近海で訓練中の空母より艦載機を出撃させるとの事だ》

 

「本当か!?味方なら頼もしい相手だ。よし…援軍が来るまで奴らを足止めするんだ!無理に撃墜を狙わなくてもいい!」

 

僚機へと指示したレクマイアは護衛機に注意しながらも敵爆撃機へと接近するのであった。




おそらく明後日には最後の一人が発表される筈ですが、誰が来るのやら…
そろそろロイヤル艦が欲しいですね
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