いやもう今年来なかったら本当に10周年実装とかになるんじゃないですかね?
──中央歴1643年3月1日午後4時、ヒルキガ近海──
ヒルキガ近海に姿を現したアズールレーン艦隊。
空母とその護衛である駆逐艦を除いた全員がまるで誇示するように単横陣を組み、観艦式のような優雅さで回頭を始めた。
「同志たち、攻撃の割り振りについて最終確認を行います。チャパエフ、クイビシェフ、ヴォロシーロフは港湾部への攻撃。クロンシュタット、クルスク、タリンは市街地への攻撃。私とベラルーシア、カザンで市街地以遠の内陸部へ攻撃を行います。何か質問は?」
《ソユーズ、私からいいかしら?》
艦隊の中央に位置するソユーズがそう呼びかけると、さっそくチャパエフから質問が来た。
「かまいませんよ、チャパエフ」
《この攻撃はあの都市…リーム王国の首都であるヒルキガを徹底的に破壊するものらしいけど、おそらく多数の民間人が犠牲になる筈だわ。その犠牲は指揮官も織り込み済みなのかしら?》
「確かにチャパエフの言う通り、今回の作戦は多数の民間人犠牲者が出てもおかしくはありません。しかし、我々は本日午前5時に中立国であるマオ王国を通じてリーム王国へ本日正午に攻撃を行うと宣言しています。それから10時間以上経過…リーム王国の哨戒騎に我々が発見されてから3時間以上が経過しています。これほどの時間的猶予があれば市民の避難誘導は十分に行えている筈です。事実、リーム王国に置かれている第三国の大使館は我々の宣言を受け、既にマオ王国や自由フィシャヌス帝国といった隣国、または最低限でもリーム国内の別都市に避難しています。しかし…もし、リーム側がそういった避難誘導を行っていないとしたら、それは我々の責任ではありません」
《もしかしたら市民の数が多くて避難に手間取っているのかもしれないわ》
「ならば外交交渉により攻撃時刻の延長を要請するか、降伏すべきでした。しかし、リームはそう言った話し合いではなく、自由フィシャヌス帝国のデュロに対してグラ・バルカス帝国と合同で攻撃するという手段に出たのです。市民の安全より、グラ・バルカス帝国との連帯を優先するというのならば仕方がありません…そうは思いませんか?」
《……分かったわ》
「チャパエフ、心苦しいかもしれませんがこれも地域の安定の為です。同志指揮官からは今回の作戦に関わった者全てに特別休暇を与えるとの事ですし、戦況が落ち着いたら同志指揮官も休暇を合わせてくれるそうですよ」
《ふふっ、やっぱり指揮官は優しいわね。ならば指揮官の期待に応える為にも心を鬼にするわ》
吹っ切れたようなチャパエフからの言葉を受け、ソユーズは力強く頷く。
「では同志たち、これより攻撃を開始!目標、リーム王国首都ヒルキガ!」
ソユーズが備える巨砲、3基の40.6cm三連装砲がヒルキガに向けられる。
「撃てっ!」
──ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!
目の前に落雷があったかのような轟音と、火山が噴火したかのような爆炎が砲口から噴き出す。
無論、それはソユーズだけではない。
──ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!ドンッ!ドンッ!
ベラルーシア以下、艦隊の面々が一斉にヒルキガへの砲撃を開始した。
正に圧巻、副砲や高角砲まで動員した一斉砲撃は数えるのも馬鹿らしくなるほどの砲弾を打ち上げ、ヒルキガへ降り注ぐ。
──ドガァァァンッ!
最初に着弾したのはチャパエフ達軽巡の砲撃だった。
15cm級の砲弾は港に停泊していた帆船やグ帝製輸送船に着弾し炸裂、瞬く間に撃沈してしまう他、船着場や倉庫にも着弾しそれらを瓦礫の山と変える。
──ズガァァンッ!
続いて市街地にクロンシュタット達の砲撃が着弾する。
30cmおよび20cm砲弾は石やレンガで作られた建物を容易く崩壊させ、石畳の通りに巨大なクレーターを作る。
──ゴォォォォン……
最後に着弾したのはソユーズ達の40.6cm砲弾だ。
市街地の周辺に築かれた古い城壁や櫓、街道を崩壊させ戦艦による艦砲射撃の威力と射程をまざまざと見せ付けているようだ。
「第二射、撃て!」
もちろんそれで終わる筈もない。
この攻撃は理不尽な資産凍結、大使館への襲撃、同盟国への攻撃といった事柄への報復であり、第三国人の避難も確認している。
ならば遠慮は要らない。
──ドガァァァンッ!ドガァァァンッ!
次々と放たれる砲撃は容赦なく、無慈悲にヒルキガを瓦礫に変える。
それは避難誘導もされず市街地に残っていた市民を巻き込み、破壊と死の連鎖は留まる事が無かった。
──同日、グラ・バルカス帝国軍前進基地地下司令所──
「な…なんだあれは…」
まるで視察スリットにしがみつくような姿となったムルノウは、アズールレーン艦隊による艦砲射撃の威力に愕然としていた。
帝国と異世界国家による戦争の主戦場はムー大陸周辺であり、スパイからの情報でアズールレーンもかなりの艦隊戦力をムー大陸方面に送り込んでいる事は把握している。
しかし、今まさにヒルキガ近海に展開しているアズールレーン艦隊は帝国海軍の一線級艦隊に匹敵…あるいは凌駕するような艦隊だ。
「アズールレーンはいったいどれほどの戦力を保有しているというのだ!これを上回る戦力がムー大陸の同胞に…帝国に向けられては…!」
ムルノウの脳裏に最悪の事態が過る。
アンタレス改を容易く振り切りながらも重爆撃機並の搭載力を持つ艦載機により地上部隊を焼き払われ、主要港湾を艦砲射撃で破壊されればムー大陸に展開している帝国軍や入植者は孤立し、異世界国家によってジワジワと追い詰められる事となるだろう。
そうなれば莫大な国家予算を投じて行われたムー大陸入植事業は水泡に帰し、帝国は多大な負債を負う事となって経済的に大打撃を受ける事となる。
その先に待っているのは経済崩壊…戦争どころではなくなってしまう。
「て、敵艦発砲!」
「衝撃に備えろ!」
──ヒュゥゥゥゥゥ…ドゴォォォォンッ!
「うわぁぁぁぁ!!」
天井から砂や小石がバラバラと落ち、壁面にヒビが走る。
どうやらかなり近い位置に着弾したらしい。
「マズい…破壊されたレーダーのせいで位置が露見したな…やむを得ん、総員撤退!戦艦の砲撃ではここも無事では済まん!」
より大きな山や地下深くに作られた構造物ならともかく、石切場を利用して作られたこの司令所では40cm級と思われる敵艦の砲撃に耐える事は出来ないだろう。
故にムルノウは撤退を決断したのだが、それは叶う事はなかった。
「ハッチが…ハッチが開きません!」
「なんだと!?」
司令所と外を繋ぐ頑丈な鋼鉄製のハッチが先程の着弾の衝撃により歪み、開かなくなっていたのだ。
兵士達が肩からタックルしたり、蹴ったりするがビクともしない。
「えぇい、ならば緊急脱出口だ!狭いがあれなら…」
──ドゴォォォォンッ!!
ムルノウが最後まで言葉を続ける事は出来なかった。
司令所がある岩山の頂上からほぼ垂直に突入した砲弾は柔らかな岩を貫通し、補強でしかなかったコンクリートの天井を崩壊させ炸裂、ムルノウ達は原型を留めぬ程に破壊されたのだった。
後に第三・第四文明圏の国々による連合部隊がリーム王国へと侵攻し、同国に対する治安維持作戦を開始するとリーム王国軍はすぐさま降伏し、その後は自由フィシャヌス帝国の委任統治領となって復興への歩みを進む事となった。
という訳で駆け足気味でしたがリーム王国はこれにて終了です
次回からは主戦場であるムー大陸に舞台を移しますので、乞うご期待!