今回もゲーム内情報発表の他に各所イベントも盛り沢山…現地に行く指揮官諸兄は楽しんで下さい!
──中央歴1643年3月4日午前7時、ムー南東沖──
ミレケネス艦隊が先行させた潜水艦隊は手筈通り会敵予想海域に展開し、異世界国家艦隊を待ち伏せていた。
ユグドにおいて『不可視の死神』と恐れられた帝国海軍潜水艦隊は、潜水艦の存在を知らぬ異世界国家艦隊を一方的に攻撃し、ミレケネス艦隊到着前に撃滅するであろう。
と潜水艦隊の面々は誰もがそう思っていた。
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!
海原に高い水柱が上がり、後にはギラギラと虹色に光を反射する油膜が残った。
それを見下ろすのは数機の複葉機…ムー海軍の対潜型ソードフィッシュだ。
《こちら7小隊。海面に油膜を確認した。おそらく撃沈したものと思われる》
《こちら対潜司令部。他に撃沈を確認出来るような漂流物を発見するまで所定の観測要員を残し、他は引き続き対潜哨戒を続行せよ》
《7小隊、了解。ただ先程の攻撃で爆雷を使い切った。8小隊と交代するまで現在地で待機、交代後母艦に戻ろうと考えているがよろしいか?》
《それで構わない。引き継ぎは確実に行うように》
《7小隊、了解》
最早グ帝潜水艦の優位は崩れ去っていた。
サモアとの交流により対潜戦術を会得し、アズールレーン加入によって多くの先進的対潜機材を手に入れたムーは彼らの勤勉かつ貪欲な気質の影響もあり、一流と呼んでも差し支えない対潜技術を持つに至っているからだ。
サモアより輸入、あるいはライセンス生産により配備しているソードフィッシュは捜索係が装備した水上レーダーとソノブイを用いて水上航行、潜望鏡、潜水航行問わず潜水艦を探知し、攻撃係が爆雷やロケット弾、果ては導入したばかりの新兵器により攻撃するというハンター・キラー戦術を4機1小隊で行っており、この3日間でムー対潜艦隊の戦果は撃沈確実32隻、不確実9隻にも及んでいる。
如何にグ帝潜水艦がムーを侮っているとはいえ、驚異的な戦果と言っても良いだろう。
《こちら8小隊、遅れて済まない》
《こちら7小隊、許容範囲内だから心配するな。それが例の新型か》
引き継ぎの為に担当空域に現れた8小隊の攻撃係に搭載された新兵器を見て7小隊は感心したような、或いは羨ましそうな声を上げる。
8小隊の攻撃係2機の翼下にそれぞれ1発ずつ搭載されているのは円筒形の胴体の後端にスクリュープロペラを取り付けた寸詰りな印象を受ける魚雷…サモアにて開発された『Mk.44短魚雷』だ。
《そうだ。なんでも音で潜水艦を探知し、自動的に海中を泳いで追いかけるらしい。使い方はいつもの爆雷と大して変わらん》
《そりゃいいな。爆雷じゃ何発も投下しないといけなかったが、それなら1発でいいって訳か》
《まあ、規定ではより確実に撃沈する為に時間をおいて2発撃てとあるがな。そちらも母艦に帰ったらコイツを搭載する筈だ》
《ほう…それは楽しみだな。搭載したらすぐにでも再出撃したいところだが…》
《ちゃんと休息は取れよ。疲労が溜まってる状態じゃ見つけられる物も見つからん》
《ははっ、分かってるよ。それじゃあ後は頼んだ》
《任せろ》
そんなやり取りを交わした後、7小隊は最後に油膜の上空を旋回すると、北東へと針路を向けた。
ゆったりと飛ぶソードフィッシュは鈍足であるが、操縦に気を使う必要は無く、長時間の哨戒飛行を終えた後も搭乗者の負担は少ない。
まるで遊覧飛行のような速度で暫く飛んでいると、間もなくして海に1隻の空母が浮いているのが見えた。
全長は150m少し、全幅は21m程度と空母としてはかなり小柄であり、右舷艦首よりに建てられた艦橋は最上部が露天の小さなものだ。
空母としては何とも見窄らしい…戦力としては心細い代物だが、このちっぽけな空母こそがムーの対潜能力向上の立役者なのである。
その名も『ラ・ホルグ級対潜空母』だ。
本級は既に10隻以上が就役しているのだが、如何にムーが大国かつ本級が空母としては小型とは言えど1万トンにも及ぶ船舶をポンポン量産出来る訳では無い。
しかしそれでも現に纏った数を実戦投入しているカラクリこそ、ロデニウス連邦との貿易によるものだ。
ロデニウスとの貿易が始まった当初、ムーは積荷はもちろん、積荷を運んできた輸送船自体も買い取っており、この輸送船こそがラ・ホルグ級の元なのである。
そもそもロデニウスの輸送船こと『パラベラム型輸送船』は船首と船尾が一段高くなっており、凹型の断面形状を持つ。
この構造のお陰でパラベラム型は様々な積荷に対応出来るのだが、船首と船尾を橋渡しするように飛行甲板を設け、右舷に航空機管制に割り切ったアイランド型艦橋、そして舷側に配置したクレーン用油圧ユニットを利用したエレベーターやカタパルトを飛行甲板に取り付ければ短期間で空母に改造出来るという特筆すべき特徴がある。
これによりムーは一ヶ月にも満たない間に複数の対潜空母を就役させる事に成功したのだ。
──ブゥゥゥゥゥン…キッ…
失速速度が非常に遅いソードフィッシュは着艦も非常に容易い。
ふわりと鳥が舞い降りるような優雅さで着艦すると、タキシングして飛行甲板上に設定された待機スペースでエンジンを止めた。
「夜間飛行お疲れです。朝食とシャワーを用意してありますのでごゆっくり」
「ありがとう。この艦の周囲はどうだ?」
「はい、ソナーにも直掩機にも反応はありません。そこまで気を張らずとも大丈夫ですよ」
パイロットの言葉に甲板作業員がそう応える。
ラ・ホルグ級は速度上昇と燃料向上の為に装備されたバルバスバウに対潜ソナーを、舷側には40mm・20mm機関砲と共に『ヘッジホッグ対潜爆雷』、艦載機として対潜作戦の要であるソードフィッシュを4個小隊20機に加え、グ帝潜水艦が搭載する水上機への備えとして武装を削減する等して軽量化したコルセアを1個小隊4機搭載している。
この事からも分かる通り、艦載機から艦そのものに至るまで本級は対潜の中でもとりわけ"対グ帝潜水艦"に全振りしているのだ。
これほどまでに対策しているムーに挑むグ帝潜水艦は最早哀れですらあるだろう。
「敵主力艦隊は?」
「追跡中のアズールレーン潜水艦から特段の連絡はありませんから変わらず当海域に3月6日から7日に現れるという予想通りの動きをしているのでしょう」
「もしかしたらアズールレーンの潜水艦はグ帝に撃沈され、連絡を寄越せないのかもしれないぞ」
「ははっ、まさかぁ。訓練で彼ら…もとい彼女達の手強さは嫌という程分からされてるではありませんか。本艦も訓練で撃沈判定を食らったのは1度や2度ではありませんから」
「確かにな。明日の夜まで作戦をして、その後は離脱しよう。やれと言われればソードフィッシュで雷撃してやるが、我々では敵主力艦隊と殴り合っても瞬殺だ」
「そうですね。艦長にそう進言すべきでしょう。おそらくは艦長も司令部も同意見でしょうし」
ラ・ホルグ級と対潜司令部が置かれているラ・トウエンを中心とした対潜艦隊は対潜作戦が主任務であるため、艦隊戦に投入するには心許ない。
一応は対水上艦魚雷も用意はされているが、有力な戦闘機と対空砲がひしめく敵艦隊にソードフィッシュで突撃したくないというのが本音だ。
「よし、それじゃあ艦長と話して飯食ってシャワー浴びて寝るか。整備と武装搭載を頼む」
「了解です。短魚雷を搭載するので出撃前にレクチャーを受けて下さい」
「分かった。また後でな」
そう言ってパイロットは作業員と別れて艦長室へ向かうのだった。
その後、3月6日午前2時まで行われたムーの対潜作戦は最終的に撃沈確実46隻、不確実15隻、航行不能による降伏2隻となりグ帝潜水艦隊は未曾有の損害を受ける事となり、それはミレケネスの戦略が瓦解した事を意味するのであった。
ちょっとムー強すぎと思いました?
私も思います