異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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拙作、連載開始当時とはアズレンが色々変わってるからフルリメイクしたい欲があるんですよね


356.女帝の海【9】

──中央歴1643年3月5日午前10時、ムー南東沖──

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

ミリシアル艦隊へと迫るリゲル型雷撃機。

それらを迎撃すべく、ミリシアル艦隊が放った砲弾が空中で炸裂し、爆炎と共に無数の破片をクモの巣のように撒き散らし、それに絡め取られたリゲルは機体に無数の穴を作ってバランスを崩して海面へと叩き付けられた。

 

「砲撃を絶やすな!」

「魔光砲は低空に集中しろ!」

「主砲発射!」

 

──ドゴォォォォンッ!

 

小型艦の主砲や巡洋艦及び戦艦の副砲として使われる13cm魔導砲はもちろん、巡洋艦と戦艦の主砲まで動員した対空砲火はリゲルを無理矢理超低空に縫い留め、多数の25mm魔光砲が生み出すキルゾーンへと誘い込む。

この戦術はアズールレーンから提供されたグ帝雷撃機及び航空魚雷の性能予想によるものだ。

魚雷というものは爆弾と比べて様々な機器を内蔵していることから投下高度・速度が限られる。

そのため投下高度・速度の上限を知る事が出来ればそれに適した対空砲火により雷撃機を迎撃出来るが…これが見事にハマった。

ミリシアル艦隊はグ帝雷撃機の魚雷投下高度上限まで破片が届く高度に時限信管付き砲弾を次々と送り込み、破片による防壁を展開、それによりグ帝雷撃機は低空飛行を強いられ、魔光砲による弾幕を思うように回避出来ずに次々と撃墜されてしまっている。

しかし、それでも弾幕を掻い潜る強運と腕前の持ち主は居るもので…

 

「敵機、魚雷投下!目標は本艦と思われます!」

 

激しい弾幕を掻い潜ってきたリゲルが勢いに任せてコスモへと肉薄、500m程の距離で魚雷を投下した。

 

「慌てるな!回避運動をとりつつ"新兵器"を使え!」

 

「了解!『魔女の乳』を使え!」

 

右舷側前方から斜めに突進してくる魚雷を避ける為に艦首を右に振る。

こうすれば船体と魚雷の針路が平行となり、すれ違う形で回避出来るはずだ。

しかし、イレイザは念には念を入れて舷側に取り付けられた"新兵器"を使うように指示した。

 

──ブシュゥゥゥゥゥゥッ!

 

コスモの舷側に取り付けられた半球状の物体、その半球の頂点に取り付けられたバルブから緑色の液体が噴霧され、海面に撒き散らされた。

 

「回避、間に合いません!」

 

「ちっ!総員、衝撃に備え!」

 

コスモの巨体では小回りが利かず、回避が間に合わなかった。

海中を突き進む白い航跡がコスモの艦尾付近へと近づき…

 

──ドゴォォォォンッ!

 

艦尾に直撃…とはならなかった。

魚雷はコスモの艦尾から凡そ50m程離れた位置で炸裂、巨大な水柱を作っただけだった。

技術的な問題による早爆だろうか?否、これは正にミリシアル側の想定通りである。

 

「被害報告!」

 

「現状、被害報告はありません!」

 

「よし…司令、新兵器は上手く作動しましたな」

 

「あぁ。『キャンディー式水中防護薬』…失敗は成功の母とはよく言ったものだ」

 

ほっとした様子のイレイザと、感心したように何度も頷くタキオン。

そう、これこそミリシアルの新兵器『キャンディー式水中防護薬』だ。

これは高名な美容魔導師『キャンディー・イリスフィエレ』が肌の保水力を向上させる為に開発したものの過剰に水分を保持し、浮腫みを引き起こしてしまう美容薬を元にした対魚雷防御兵器である。

普段は圧力タンクに充填されているが、作動させると溜め込まれた圧力により海面へ薬剤が散布され、海水をゼリー状にして魚雷を受け止めるのだ。

これにより魚雷はそのままゼリー状の海水と共に海底に没するか早爆してしまう…謂わば瞬時に展開出来る魚雷防御網のようなものだ。

更にこの薬剤により固まった海水は逆位相の魔力を流す事で瞬時に溶けるため、他の艦の航行に影響を与えにくいという特性まである。

 

「やったぜ!流石世界最高の美容魔導師!」

「魔女の乳は伊達じゃないぜ!」

「キャンディー大魔導師万歳!」

 

因みに半球状のタンクにバルブが取り付けられたその形状から口の悪い水兵達が『魔女の乳』なる渾名を付けたのだが…まあそれは深掘りすべきではないだろう。

 

「空は我が方の手になった。さあイレイザ艦長、艦隊決戦だ」

 

「はっ!マグドラ群島、カルトアルパス、バルチスタ海…それらで飲まされた煮え湯の返礼をしてやりましょうぞ!」

 

激しくも一方的なものとなった航空戦を制したミリシアル艦隊。

彼らは"世界最強"の名に泥を塗った不遜なる帝国を罰するべく、敵艦隊へと突き進むのであった。

 


 

──同日、同海域──

 

「く、クウェーサが…」

 

同じく敵艦隊…即ちミリシアル艦隊へと向かって突き進むグ帝艦隊は驚愕に包まれていた。

というのも彼らの前には先行していたが故に真っ先にミリシアル艦隊から攻撃を受けた先遣艦隊の散々たる姿が辺り一面に広がっていたからである。

重油が広がった海面に浮かぶ物資や木製甲板の破片…土気色をした遺体に、辛うじて生き残った者が身を寄せ合うボート。

それらだけでも大きな衝撃だと言うのに、何よりも彼らを驚愕させたのは"融けた"クウェーサの姿だった。

艦上構造物は炎天下に置いた飴細工のように融け落ち、未だに赤熱したまま漂流している。

 

「……漂流者救助の為に駆逐艦を残せ」

 

「しかし、今となっては駆逐艦1隻すら貴重な戦力です」

 

ミレケネスの言葉にアウロネスがそう述べる。

しかし、それに対するミレケネスの言葉は何とも悲壮感に満ちたものだった。

 

「最早こうなっては我々は作戦を達成出来ない。クウェーサがああなった以上、このまま我々が戦い続けても無闇に損害を増やすだけ…ならば今救える将兵を可能な限り救助し、撤退する。我々は救助の時間を稼ぐ為に戦うのだ」

 

「……はっ」

 

アウロネスも他の艦隊幕僚も薄々察していた。

300隻以上の大艦隊は最早40隻程しか残っておらず、制空権も喪失、敵艦隊は無傷…このまま戦っても敗北は目に見えている。

となればミレケネスに残された道は戦力の温存、生き残った艦隊と将兵を可能な限り多く帰す事だ。

その為には誰かが殿にならなければならない。

 

「諸君、これより本艦は漂流者救助を行う為の時間稼ぎとして敵艦隊への突撃を行う!生きては帰れないだろう…しかし、我々が命を賭して救った将兵と艦艇が必ずや我々の無念を晴らし、帝国に勝利を齎してくれる筈だ!」

 

疲れ切った体と心に鞭打ち、ミレケネスは声を張り上げる。

そして拳を天に突き上げた。

 

「バルカス民ぞ…いや、黒服連中に倣う必要はない。帝国と、皇帝陛下の為に!」

 

悲壮な覚悟と共に突き進むミレケネス艦隊。

決着の時はすぐそこに迫っていた。




ロウリア戦〜パ皇戦にかけてテンペスタやら離島開発NPCが居たら色々面白い事出来そうですしね
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