異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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恒例のハロウィン、テンペスタイベントの告知がありましたね!
今回は海賊と言えば黒髭ことエドワード・ティーチの海賊船クイーン・アンズ・リベンジと黒髭の討伐に関わったパールとライム…ライムは周年生放送で姿だけ出てましたね

海賊船のビッグネームが出ましたし、いよいよ拙作のフルリメイク欲が強くなって参りました


357.女帝の海【10】

──中央歴1643年3月5日午前11時、ムー南東沖──

 

「敵艦隊接近!戦艦6、巡洋艦10との事です!」

 

コスモのCICにてレーダー手がパル・キマイラからデータリンクで送られた敵艦隊の情報を読み上げる。

 

「ほう…まだ戦艦が6隻も居るか。しかし駆逐艦とか言う小型艦が居ないようだ」

 

「どうやら我が方の攻撃により撃沈された艦の乗組員を救助している様です。加えて空母及び補給艦は順次後退し、海域より離脱を目論んでいると思われます」

 

タキオンの言葉にレーダー手がそう応えると、イレイザが提案する。

 

「司令、空母も補給艦も見逃す事はありません。ここはパル・キマイラに追撃を要請すべきでは?」

 

「ああ、ただし救助活動は妨害するな。…新興国が理性的な振る舞いをしているのだ。第一列強たる我々が小物のような振る舞いをしてはいかんだろう」

 

「はっ」

 

以前のミリシアルであれば救助活動中であろうとも敵であれば無慈悲に撃沈していただろう。

しかし、世界のニュースで放送されたロデニウス連邦内の捕虜収容所の在り方を目の当たりにして彼らも変わったようだ。

 

「敵艦隊、尚も接近中。距離40km」

 

「距離30kmより砲撃を開始せよ。砲撃準備」

 

イレイザの命令を受け、操舵手が操舵輪をゆっくりと回して艦を大きく旋回させる。

 

「敵艦隊、推定速度30ノット…敵戦艦、回頭を開始。敵巡洋艦、針路そのまま」

 

「同じ事を考えているか。よろしい、乗ってやろう。巡洋艦、小型艦に通達。敵巡洋艦を迎撃せよ」

 

「はっ。旗艦コスモより通達。巡洋艦及び小型艦は敵巡洋艦を迎撃せよ」

 

タキオンの命令を通信士が淀みなく伝達する。

敵巡洋艦10隻に対してミリシアル艦隊は此度の作戦では7隻の巡洋艦と16隻の小型艦を引き連れている。

後方の空母を護衛する為に巡洋艦1隻と小型艦4隻を残している為、敵巡洋艦を迎撃する為の戦力は巡洋艦6隻と小型艦12隻だ。

巡洋艦の数では劣るが、全体的な数は勝っている。

更に言えばミリシアル艦船の砲弾は砲弾の尻からガスを発生させ射程を伸ばす『ベースブリード弾』を採用しているため、小型艦の130mm砲であってもグ帝の軽巡洋艦が採用している155mm砲と同等の射程を誇る。

つまり実質的な戦力でもミリシアルが有利だ。

 

「戦力差は1対3か…最新鋭のオリハルコン級とは言え、果たして渡り合えるか」

 

額に冷や汗を浮かべつつタキオンがそう呟く。

冷静な彼だが、グレードアトラスター級を含む6隻の戦艦を相手にしなければならないというのは中々に苦しいものがある。

もう暫く耐えれば空母や陸上基地から航空隊が発進し、航空支援を行ってくれるだろうが…それまで耐えられる絶対の自信は無い。

しかし、そんなタキオンに並び立つイレイザは力強く頷きながらこう述べた。

 

「司令、ご安心下さい。我々はこの時の為に猛訓練を積んできたのです。必ずや神聖帝国に勝利をもたらしますとも」

 

「根拠の無い自信だな。だが…今はそれが心強い」

 

「目標、30km!」

 

レーダー手からの報告を受け、タキオンとイレイザは顔を見合わせて頷く。

 

「目標、識別名『KG級』!グレードアトラスター級はしぶとい、まずは頭数から減らすぞ!」

 

「ユニヴァへもKG級を優先して狙うよう通達せよ!2隻による集中攻撃で各個撃破だ!」

 

識別名KG級…オリオン級を狙う事をユニヴァへ伝える為、敵戦艦の反応の内最も小さな物をマーキングする。

レーダーとパル・キマイラからのデータリンクを照合した結果、敵戦艦の内訳はグレードアトラスター級1隻、識別名NG級ことヘラクレス級2隻、オリオン級3隻という事が判明していた。

これらグ帝戦艦の諸元はアズールレーンから酷似した戦艦…それぞれ大和型、長門型、金剛型から算出した物を提供されており、タキオンは数的不利を解消する為に、そして敵巡洋艦への援護を阻止する為にオリオン級を手早く撃沈する事を狙っているのだ。

 

「主砲発射用意完了!」

 

「1番砲塔発射!」

 

「1番砲塔、発射ぁ!」

 

砲術長からの報告を受け、イレイザは直ぐ様砲撃を命じた。

 

──ドドドォォォォォンッ!!

 

コスモの艦前部艦首側の砲塔から生えた長い砲身より青白い爆炎が噴き出し、轟音が響く。

ミリシアルの威信を懸けて開発したオリハルコン級用55口径40cm三連装砲だ。

長い砲身から放たれた1トンを超える砲弾は青白いガスの尾を引きながら飛翔し…

 

──ゴォォォォン……

 

「着弾、遠い!仰角下げ!」

 

目標とするオリオン級を飛び越え、海面に巨大な3本の水柱を作るに終わった。

しかしこれで落胆する事は無い。

 

「2番砲塔、撃て!」

 

「2番砲塔発射ぁ!」

 

続けて艦前部艦橋側の砲塔が発砲された。

同じように飛翔した砲弾は今度は目標より手前に落ちたが、その距離はかなり近い。

夾叉と言っても差し支え無いだろう。

 

「着弾、近い!されど夾叉に近し、仰角このまま!」

 

「敵艦発砲!」

 

このまま撃っていけば当たるだろう。

しかし、敵も撃たれるばかりではない。

 

「装甲強化術式発動!面舵いっぱい!」

 

観測手からの報告を受け、イレイザは素早く指示を出す。

 

「敵弾、レーダーにて捉えました!弾道計算中…ユニヴァを狙ったようです!」

 

「ユニヴァは!?」

 

「ユニヴァ、着弾予測地点に在らず!」

 

──ドゴォォォォンッ!!

 

海面に巨大な水柱が立ち昇り、腹の底から轟音が響く。

 

「これは…」

 

「えぇ、グレードアトラスター級ですな」

 

目を瞠るタキオンに応えるようにイレイザが袖で額の冷や汗を拭いながら述べた。

オリハルコン級には砲弾を捉えるレーダーと弾道計算機が搭載されており、これによって高精度の着弾予測が可能だ。

これを用いれば回避は容易いが、敵の数が多ければいずれは回避運動が飽和して直撃を食らうだろう。

そうならない為にも一刻も早く敵戦艦の数を減らさねばならない。

 

「ユニヴァ発砲!……夾叉!射撃諸元、データリンクにて送信されました!」

 

「よし、諸元入力。次は頼むぞ…一斉射だ!撃て!」

 

「全砲塔発射ぁ!」

 

──ドドドォォォォォンッ!

 

敵艦隊に舷側を向け、3基の砲塔から一斉に砲弾を放つ。

それと同時にユニヴァも一斉射を行った為、1隻のオリオン級に18発もの40cm砲弾が殺到する事となった。

 

──ゴォォォォン…ゴォォォォン!

 

いくつも立ち昇る水柱…しかし、その中に赤黒い爆炎が瞬き、水柱が収まった頃には紅蓮の炎と黒煙に包まれたオリオン級の姿があった。

 

「命中!目標へは少なくとも4発が直撃したようです!」

 

「よし!」

 

観測手からの報告にタキオンは思わず歓喜する。

しかし、タキオンを歓喜させた報告以上の事が起こっていた。

というのも目標となったオリオン級には4発が命中したのだが、その内2発が艦橋付近に直撃し甲板を貫通、艦橋の根元で炸裂した事によって艦橋が倒壊し、艦長以下艦首脳部が全滅。

また直撃しなかった砲弾も3発が右舷の極至近に着弾し水中爆発した事によって右舷に3つの巨大な破孔が発生、大量の海水が流入し、急激に右舷側に傾いていた。

 

「目標、急速に傾斜…あっ!転覆!転覆しました!」

 

「喜ぶのは後にしよう!新たなKG級を目標に設定!」

 

赤い艦底を晒したオリオン級に喜ぶ間も無く、砲弾が降りしきる中、回避運動を続けるコスモのCICでタキオンは檄を飛ばす。

とりあえず1隻片付けたが、まだまだ敵戦艦は5隻居る。

 

「新目標は先ほどの目標と近い、諸元そのまま!主砲は!?」

 

「装填完了!何時でもいけます!」

 

イレイザからの問い掛けに砲術長が拳を突き上げながら応える。

ミリシアルの艦はマグドラ群島海戦で見られたように装甲が薄く、基本的に魔法を用いた装甲強化に頼っている。

しかし、ミリシアルとて無意味に装甲を薄くしている訳ではない。

というのもミリシアル艦は誘導魔光弾の実用化までの繋ぎとして、砲の精度・射程・連射力を追求していたのだ。

そのため高性能スタビライザーの搭載や発射薬量増加に対応した砲尾、自動装填装置といった嵩張る機器を搭載しながらも砲塔旋回速度維持の為に装甲を削っている。

確かに装甲が薄いのは致命的だが、致命的な弱点と引き換えに他の性能は正に一級品と言っても良いだろう。

 

「主砲一斉射!装填次第撃て!」

 

「はっ!主砲一斉射ぁ!」

 

──ドドドォォォォォンッ!

 

僅か2隻の戦艦ながらも5隻の戦艦を上回る投射量…"世界最強"を侮った報いをグ帝はその身で味わう事となったのだ。

 

 




ミレケネス艦隊vsミリシアルの下り、めちゃくちゃ長くなってますね…
あんまり長々とするのもダレるのでちょっと駆け足気味で行きます
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