私は新KAN-SEN全員揃えましたので旧式重火砲集めの為にイベント周回中です
あと以前から書きたかった本作『異世界の航路に祝福を』のフルリメイク作品の連載を開始いたしました
本作とは色々と変更点を盛り込んでおりますので、比較してみるのもいいかもしれませんね
──中央歴1643年3月5日正午、ムー南東沖──
「『トーベスタ』、撃沈!くそ…『ヘルメン』に続いて…!」
見張りが絶望的な報告を叫び、それを聴いた者は一様に顔を青くする。
確かに撃沈されたトーベスタとヘルメンは世間では旧型戦艦と呼ばれているオリオン級ではあるが、それでも無力な訳ではない。
帝国海軍の近代戦艦のマスターピースであり、度重なる改修によって十分に第一線で戦えるだけの能力であり、性能的にも数的にも帝国海軍戦艦戦力の一翼を担うと言っても過言ではないのだ。
そんなオリオン級戦艦が短時間の内に2隻も…しかも砲戦によって撃沈されたというのは衝撃的と言う他ない。
「怯むな、敵は2隻のみ!今は上手く躱しているが、いずれは立ち行かなくなる!」
絶望のニオイが滲む中、ミレケネスは全員を─それこそ自分自身も─鼓舞するように堂々と告げる。
しかし、そんな時だった。
「対空レーダーに反応!敵機、来ます!」
その言葉にミレケネス達、艦隊幕僚は反射的に狭い視察窓から空を見上げる。
青い空に見える無数の小さな黒い粒…それは徐々に大きくなり、プロペラを持たないミリシアル機の姿がハッキリと見えるようになった。
「対空戦闘!」
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!
パーラシュからの命令を受け、高角砲が対空射撃を開始する。
帝国海軍の標準的高角砲、12.7cm高角砲は高い初速により高い命中率を誇る上にレーダーと連動した照準システム、そして目標に接近しただけで炸裂する近接信管を装備している為、ユグドでは"必中砲"とまで言われていた。
事実、双発重戦闘機が主力であったケイン神王国の航空戦力を容易く叩き落したものだ。
しかし、此度の相手は鈍重かつ速度もアンタレスに僅かに及ばない双発重戦闘機ではなく、より速く小回りが利くジェット戦闘爆撃機エピクロス…無力とまではいかないが、些か心許ないと言わざるを得ない。
──ダダダダダダダッ!ダダダッ!
「くっ…もう高角砲を突破したのか!?」
空に咲いた爆炎の花に何機かのエピクロスが絡め取られカラフルな炎と煙を吐きながら墜落して行くが、それでも大部分は対空砲火を突破してきた。
そうなれば近接防御用の25mm機銃の出番であるが、それは空振りに終わってしまう。
──バシュゥゥゥゥゥッ…ドゴォンッ!
「きゃっ…!」
「被弾した!被害報告!」
対空砲火を突破したエピクロスが急降下し、ロケット弾を斉射して直ぐ様離脱する。
ミリシアルはアズールレーンから航空機用大型ロケット弾タイニー・ティムと127mmロケット弾HVARを多数購入しており、今回の空襲ではこれらを用いて"絶妙な距離"から攻撃している。
というのもグ帝艦船は先述した通り対空兵装として12.7cm高角砲と25mm機銃を装備しているのだが、この装備形態には弱点がある。
それこそが高角砲と機銃の中間、中距離対空兵装が無いのだ。
このため、高角砲では狙いにくく機銃では届かない絶妙な距離に潜り込んだ敵機に対しグ帝艦船は弱く、ミリシアル側はロケット弾によりその絶妙な距離を保って攻撃出来るというわけだ。
──ドゴォンッ!ズガァァァァンッ!!
「れ、『レイメーク』が!」
腹の底から響く轟音。
その方向に目を向ければ、オリオン級戦艦のレイメークが艦後部3番砲塔から勢い良く炎を噴き出しているのが見えた。
──ゴォォォォォンッ!!
「レイメーク轟沈!な、なんたる事だ!」
3番砲塔から巨大な爆発が発生し、レイメークは真っ二つに折れてあっという間に沈んでしまう。
おそらくはミリシアル側から放たれた砲弾が砲塔天蓋に直撃、貫通して弾薬庫が誘爆したのだろう。
それを目の当たりにして顔を真っ青にしたデルンシャは立つのもやっとというように手摺に寄りかかっているが、それは他の者も同じである。
──ドゴォンッ!ドゴォンッ!
「くっ…被害は!?」
「右舷側高角砲及び機銃群に集中攻撃を受けています!右舷側、対空砲火が機能しません!」
パーラシュの問い掛けに応急修理班班長が悲鳴のように応えた。
ロケット弾による戦艦に対する攻撃は殆ど撃沈に繋がるようなものは無い。
しかし、強固な装甲に覆われていない対空兵装やレーダー類の破壊、そして人員を殺傷されてしまえば戦闘力を大幅に失う事になる。
現在のパルサー、そして生き残ったヘルクレス級戦艦『ヤヴェルス』『ナプレス』は正にそれだ。
大挙して押し寄せたミリシアル機による一方的とも言えるロケット弾攻撃により多くの高角砲及び機銃を破壊され、艦上はそれらの残骸と乗組員達の遺体が無残に転がっている。
──ゴォォォォォンッ!!
「ナプレス、被弾!」
パルサーの前方を航行していたナプレスの艦尾に砲弾が直撃し、轟音と共に爆炎が上がり、急激に減速しながら左に回頭した。
この時、ナプレスは被弾により艦尾左舷の艦底に近い部分が外側にめくり上がり、それが強烈な抵抗となって急激な減速と左回頭を発生させたのである。
それに面食らったのはパルサーの乗組員だ。
「マズい…衝突するぞ!」
パーラシュが目を見開きながら泡を食って命令する。
敵艦と敵機からの攻撃を避けている間にいつの間にかパルサーとナプレスの距離は必要以上に縮まっており、減速も回頭も間に合わない。
「総員、衝撃に備えろ!司令、何かに掴まって下さい!」
「あ、あぁ!」
パーラシュの言葉を受け、ミレケネス達は手近にある手摺やしっかり固定されている機材を摑む。
──ゴガァァァァァァンッ!!
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
ナプレスの艦左舷中央にパルサーが艦首から突っ込んだ。
──ギギィ…ギィィィィィィィィッ!
鋼鉄同士が擦れる音が響き、横っ腹から突っ込まれたナプレスは徐々に傾斜してゆく。
ナプレスは排水量にしてパルサーより3万トン程軽く、その質量差はそのまま強力な衝撃となり、ナプレスはくの字型に曲がってしまったのだ。
「な…なんて事!?」
7万トンを優に超えるパルサーの巨体は先程まで30ノットで航行していた事もあり、強い慣性力が働いていた。
そのためナプレスに衝突した後も前進を続け、最終的にはナプレスの甲板を押し潰し、半ば乗り上げるような形になってしまった。
しかし、ミレケネス達の不運はこれで終わりではない。
──ドゴォォォォンッ!
「っ!?」
唯一、戦闘可能状態にあったヤヴェルスの艦尾で巨大な水柱が上がり、ヤヴェルスは後方に傾斜した状態で止まってしまった。
敵からの砲撃…いや、砲撃でああはならない。
「まっ…まさか、潜水艦!?敵の潜水艦が潜んでいたというの!?」
ミレケネスの予想通りだ。
彼女達が出港した直後から追尾していたアズールレーンの潜水艦ノーチラスは時折潜望鏡により戦況を見守っていたが、パルサーとナプレスの衝突により雌雄は決したと判断し、最後の一押しとして装備していた北方連合製誘導魚雷『SET-65』を2本発射し、ヤヴェルスの艦尾を完全破壊せしめたのである。
《こちら神聖ミリシアル帝国海軍である。貴艦隊の抵抗にこれ以上の意味は無い、投降せよ。貴艦隊の巡洋艦は既に我が方によって撃滅され、撤退途上であった空母と補給艦は空中戦艦に恐れをなして投降した。投降したとて我々は貴国のように捕虜を殺害するつもりはない。繰り返す……》
ここでミリシアル側からの降伏勧告が発せられた。
確かに両戦艦の間で繰り広げられていた激しい海戦はグ帝側の敗北に終わっており、緊急回線からは投降した空母や補給艦の艦長からの謝罪が次々と舞い込んでいる。
「……そうか…これで終わりか」
ミレケネスの言葉にデルンシャとパーラシュ…他にもその場に居合わせた者は一様に啜り泣くか、崩れ落ちて落胆するかだ。
敗北の悔しさとこれからどうなるかの不安…それらが渦巻くなか、ミレケネス自身は不思議と達観した様子で無線機のマイクを取った。
「私はグラ・バルカス帝国海軍提督ミレケネスである。我々は貴殿からの降伏勧告を受け入れ、現時点を以て全ての戦闘行為を停止する」
中央歴1643年3月5日、ミリシアル艦隊はムー南東沖にてグレードアトラスター級戦艦2隻を含む400隻にも及ぶグラ・バルカス帝国艦隊を撃滅、グレードアトラスター級戦艦を含む多数のグ帝艦船を鹵獲したと後に大々的に報じられたのであった。
ミリシアル艦隊vsミレケネス艦隊の話がかなり長くなりましたので駆け足気味ですがこれで一区切りです
海戦が続いたので次回からは陸の方にスポットを当てていきたいと思います