異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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意外と時間があったので普段より少し短いですが書き上げました


361.激闘の大陸【3】

──中央歴1643年3月4日午前9時、ムー国境北側──

 

──ボンッ!…ゴォォォォォ…ドゴンッ!

 

「うおぉっ!?」

 

撃墜されたアンタレスが火達磨となり、指揮車の近くに落ちて爆発した。

幸い直撃こそしなかったが、視察スリットから侵入した熱波と閃光が頬を撫でた事でガオグゲルは目を丸くして怖気づいてしまう。

帝国が誇る世界最高の戦闘機アンタレスが同数を相手にして圧倒され、次々と撃墜されてゆくのは彼を恐怖させるに十分過ぎた。

 

──ドゴンッ!

 

「くっ…マズい…どうにかしなければ!」

 

加えて彼らはムーの爆撃機により現在進行系で攻撃を受けており、次々と主力である戦車を破壊されている。

このままではムンダーラ攻略に支障が出るだろう。

 

「…前だ!前に進め!全速力でムンダーラへ突撃しろ!」

 

ガオグゲルは撤退ではなく進撃を選択した。

というのもガオグゲル達第8軍団は南には東西に伸びるムンダル湖とムンダル川、北側には鬱蒼とした森が広がる緩やかな丘陵地帯となっているため南北に散る事は難しく、西側…つまり来た道を戻るとなれば180°転回する必要があるため混乱が起きて悲惨な撤退戦となる事は確実だろう。

ならば残された道は前進だ。

幸い国境からムンダーラへと伸びる街道はよく整備され道幅も広く、加えてムンダーラ市街へ圧力を加えれば敵に揺さぶりをかける事も出来るし、上手く市街地へ突入出来れば空襲を受ける危険性も減る。

故の選択だったのだが、それは更なる地獄へと足を踏み入れる選択でしかなかった。

 

──ドォォォンッ……

 

「な、なんだ…?」

 

全力疾走する指揮車の中、ガオグゲルは遠くから響く轟音を聴いた。

まるで遠雷のようだが、遠くの空を見ても雷雲らしき雲は見当たらない。

重砲かとも思ったが、事前の航空偵察で周辺に重砲が展開している事は確認出来なかったし、ムー側にそのような重砲が配備されているという情報も無い。

しかし無性に嫌な予感がする。

そんなガオグゲルの予感を肯定するように車列の後続で致命的な破壊が巻き起こった。

 

──ドゴォォォォンッ!

 

「なっ…!?なんだ!?」

 

地面が噴火したかと思うような高い土柱と紙くずのように宙を舞う車両や人…大型爆弾の直撃でも受けたかのような被害だが、上空にそのような爆撃機の姿は無い。

 

──ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

立て続けに巻き起こる破壊の轟音。

それらはトラックも、装甲車も、戦車でさえも容易く空へ突き上げてしまった。

 

「まさか…!」

 

野性的な勘を発揮しムンダル湖の方向に目を向けるガオグゲル。

内陸の湖らしい波一つ無い鏡のような湖面…そこに巨大な黒い影の姿がいくつか見えた。

 

「そ、そんなバカな!?」

 

──ボォォォォォォッ……

 

戦場に鳴り響く汽笛と自分達に向けられた太く長い砲身を目にしたガオグゲルは、まるで自分が悪夢の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えたのだった。

 


 

──同日、ムンダル湖上──

 

「着弾確認、仰角そのままよ」

 

ムンダル湖の水面に浮かぶ黒鉄の船体…それは巨大な連装砲を1基のみ備えた小型の軍艦、ロイヤルの砲艦『エレバス』であった。

その他にも彼女の姉妹艦である『テラー』と後継艦の『アバークロンビー』の姿もある。

彼女達は全長は駆逐艦と同等ながらも幅は20m以上という特異な船体と、1基のみ装備した38cm連装砲という正直言って非常にアンバランスな艦であるため艦隊戦には全くと言っていい程向いていない。

しかし、彼女達は"ある目的"の為に作られたのである。

 

《大丈夫、姉さん。陸上への艦砲射撃なら目を瞑っても出来るから…》

 

《イヒヒ、ちょっと過装薬にしちゃおっかな〜》

 

エレバスの指示にテラーとアバークロンビーが応える。

そう、彼女達は戦艦主砲の射程と破壊力を以て陸上への艦砲射撃を行う事が役目なのだ。

それ故彼女達はアズールレーン海兵隊に所属し上陸作戦時の火力支援を担当していたが、現在は対ムー支援の為に浮砲台としてムンダル川流域の防衛を行っている。

 

「テラーは私と同じ座標を。アバークロンビーは敵部隊の最後尾をお願い」

 

《うん、分かった!》

 

《今日は打ち放題で楽しいな〜♪あっ、エレバス〜。せっかくだから新しい信管使ってい〜い?》

 

「新しい信管…そうね、あの信管の方が効果的かもしれないわ。テラー、アバークロンビー。信管、近接信管。誤射には気を付けて」

 

巨大な砲塔が旋回し、狙いを定める。

仰角は合わせてあるため、後は水平方向を定めるのみだ。

 

「暗黒に灯る、無数の星々よ…安らぎを!」

 

《…沈め…》

 

《撃たれ滅びよ!》

 

──ドゴォォォォンッ!!!

 

計3基6門の38cm砲が火を噴き、グ帝部隊へと砲弾が襲い掛かる。

 

──ズドォォンッ!!

 

着弾した砲弾は着発信管により炸裂するが、その爆発は先程のものよりも大きく、高く昇っていた筈の土柱はあまり発生していない。

これこそが対地攻撃用に作られた主砲弾用近接信管の力だ。

近接信管と言えば対空砲弾等に使われる物だと思われがちだが、航空機を地面に置き換えてみればその効力が分かるだろう。

砲弾が空中炸裂する事により本来地面に食い込むはずの破片はそのまま鋼鉄の豪雨となって敵部隊に降り注ぎ、戦艦主砲弾が炸裂した事により発生した大粒かつ高速の破片群は歩兵やトラックといった非装甲目標はもちろん、装甲車や戦車といった野砲弾の破片にある程度は耐えられる筈の装甲目標すら容易く切り裂き、果ては分厚い鋼鉄で作られている野砲の砲身や砲尾すら貫通してしまった。

 

「まだ行くわよ。信管、近接信管のまま敵部隊後続への攻撃を続行」

 

──ドゴォォォォンッ!!

 

再び砲弾が放たれ、破片の豪雨がグ帝将兵へと襲い掛かる。

砲弾が炸裂する度に100単位の命が刈り取られ、方々から掻き集めた車両がスクラップとなり、近衛兵団に嫌味を言われながら頭を下げて手に入れた燃料が煙と煤となって消える。

グ帝側からしてみれば卒倒するような被害だが、こうでもしないとこの世界に住まう人々の生命と財産が根こそぎ奪われる事となるだろう。

故に彼女達は彼らの退路を断つべく、部隊後方への無慈悲な砲撃を繰り返すのであった。

 

 




感想では鉄血・北連KAN-SENの装甲獣形態が出てくると予想されてた方がいらっしゃいましたが…残念、モニター艦達です
そういえばアバークロンビーの姉はいつ実装されるんでしょうか?
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