異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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テンペスタイベントお疲れ様でした!
あとはコラボと年末イベントが楽しみですねぇ


362.激闘の大陸【4】

──中央歴1643年3月4日午前10時、ムー国境北側──

 

──ドゴォォォォンッ!ドゴォォォォンッ!

 

「速く!もっと速く前進しろ!」

 

最早第8軍団に統率という概念は存在しなかった。

空襲と艦砲射撃から辛くも生き残った車両はもちろん、命からがら撃破された車両から脱出した兵士も武器を捨てて目の前に見えるムンダーラへと全力疾走している。

隊列も何もなく、その場にいる全員が生き残る為に走る…その途上で車両に撥ねられる者も続出したが、誰もそれを咎めようとはしなかった。

 

──ドゴンッ!

 

「ひぃぃぃぃ!」

 

「気にするな!とにかく走れ!」

 

指揮車の直前に敵爆撃機から放たれた砲弾が着弾し、土塊の雨の中を突っ切る事となったが、幸い直撃しなかったため指揮車は走り続ける。

しかしこの幸運がいつまで続くか分からない。

自分達を狙う爆撃機が居ないか、ガオグゲルは周辺確認の為に開けっ放しにしていたハッチから空を見上げた。

 

「何という事だ…!」

 

初めは16機ずつの戦闘機同士による航空戦だったが、両軍共に次々と増援を投入し、今では両軍合わせて200機以上の戦闘機が入り乱れる大空戦が繰り広げられている。

数の上では第8軍団航空隊、つまりグ帝側が150機程であり数的優位に立っているがそれでも異世界軍の戦闘機により次々と撃墜されている。

 

──ゴォォォォォォォッ!

 

「うおっ!?」

 

異世界軍の戦闘機が急降下し、地面に衝突する寸前で急上昇に転じて下方からアンタレスに射撃を加えて撃墜してしまった。

機体の後部からはバーナーのような炎を2本噴き出し、主翼は中程から上に反り上がり、尾翼は反対に下がっている…見たこともない機体設計な上にアンタレスと比べてかなり大型だが、それを感じさせない速度と運動性でアンタレスを圧倒している。

 

「不味い…このままでは航空隊が全滅してしまう!早く市街地に突入しなければ!」

 

数的には3倍近く存在する第8軍団航空隊の戦闘機であるが、異世界軍の戦闘機の圧倒的性能により蹂躙されている。

このままでは航空隊は全滅し、地上部隊はより激しい空襲に晒されるであろう。

そうならない為にも無理にでも市街地へ突入する必要があるのだが、ここで更に彼らを追い詰める事態が発生した。

 

──ズドンッ!

 

「なっ…!?」

 

──ガランガランガラン!

 

前を行くハウンドⅡが強烈な爆発に巻き込まれたかと思えば、まるで蹴り飛ばした空き缶のように転がりながら指揮車の真横を通り抜けて行った。

それは爆撃機からの攻撃や、艦砲射撃によるものではない。

まるで水平方向から強力な大砲で撃たれたような有様…ガオグゲルが猛烈に嫌な予感を覚えた瞬間だった。

 

「せ、先行車より入電!前方に敵戦車部隊を視認!とんでもなく巨大な砲を備えているようです!」

 

「バカな、敵戦車だと!?敵戦車はアルー方面に集結している筈だぞ!」

 

顔を青くするガオグゲル。

そんな彼を嘲笑うように、地平線から砂煙を纏った鋼の巨獣が複数姿を表したのだった。

 


 

──同日、ムー国境北側──

 

「行け、陸の王者達よ!友邦を踏み躙る侵略者共を叩きのめすのだ!」

 

アズールレーン陸軍総司令であるノウがその地位からは考えられない事に、戦車の砲塔から上半身を出し、味方を鼓舞するように声を張り上げていた。

 

「ノウ司令!危ないので車内に居て下さい!もうこれで5回目ですよ!次やったら司令部に帰りますからね!」

 

「おぉ、すまんすまん。今戻るのでな」

 

遥かに階級が上な筈のノウに怒鳴り散らす砲手の言葉に従い、彼は車内に戻ってハッチを閉める。

 

「それで、状況は?」

 

「18号車が敵戦車、識別名『TH』を撃破したようです。やはり徹甲弾を使うまでもなく、粘着榴弾で十分なようです」

 

「流石は120mm砲だ。連中の戦車ではどう当たっても一撃必殺であろうな」

 

通信士を兼任する装填手からの返答を受け、ノウは満足そうに頷く。

今回、この地に展開したアズールレーン陸軍戦車部隊が装備するのはロイヤル製重戦車『チーフテン』だ。

重砲並みの戦車砲である『55口径120mmライフル砲L11A5』を主砲とし、主砲同軸と砲塔上に7.62mm機関銃を装備している。

それだけでグ帝戦車からしてみれば何の冗談だと言いたい代物だが、最大装甲厚は200mm近く、一般的に戦車の弱点と言われる後面でも35mmであり、その高品質さも相まってグ帝戦車の中で最強の対戦車能力を持つハウンドⅡであっても500m近くまで接近する必要がある。

もちろん、正面は言うまでもなく接射しても貫徹不能だろう。

しかもそんな主砲と装甲を備えた戦車が750馬力のディーゼルエンジンによって時速50km近い速度で走るのだから、相対する相手からしてみれば正に悪夢だ。

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

そんな"走る要塞"のようなチーフテン180輛こそが、ノウが直接指揮する『第1重戦車連隊』である。

彼らは最新鋭の高性能照準装置を用いて1.5km先に見えるグ帝陸上部隊に対し、次々と必殺の一撃を放っている。

装填手の負担軽減の為に分離装薬となっているため連射速度こそ遅いが、それでも180輛も居れば十分な手数だ。

 

「ふははは!まさかグ帝の連中、我々がここに居るとは思わなかっただろう」

 

次々と撃破されるグ帝側の車両をペリスコープ越しに眺めながら満足そうにそう述べるノウ。

というのも異世界連合はグ帝の"裏をかいた"のだ。

グ帝側はダミーを使ってバルクルス基地に戦力を集めているように見せかけていたが、それは異世界連合…というよりアズールレーンには筒抜けだった。

赤外線センサーを用いた航空偵察によりグ帝の戦力がダミーだと見破ると、異世界連合は対抗してダミーや旧式化し余剰気味なM4中戦車と2線級部隊をアルー近郊に配備しグ帝の偵察を欺き、U-2による偵察で第8軍団が大回りしてムンダーラへ向かっている事を特定すると、主力部隊を急行させた上で偽装を施して待機させていたのである。

 

「司令、敵部隊が徐々に北側に偏ってきています。これは…」

 

「空襲により混乱させ、湖上からの艦砲射撃により退路を塞ぎ、機甲連隊により前進を止める…うむ、我々のシナリオ通りだ。このまま連中は森に逃げ込むであろうが…残念であったな。我々はそれも想定しておるわ」

 

そう述べたノウの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。




離島経営、やっぱり色々と調整不足感はありますね…
あれはあれで中々楽しいので安定してくれれば良いのですが…
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