異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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そういえばレイフォルに残ってムー攻撃に割り当てられたグティマウンの存在がありましたね


368.バトル・オブ・ムー【1】

──中央歴1643年3月3日午前6時、ルクセリア──

 

──ブオォォォォォォン…

 

グ帝によるムー大陸統治の中枢となる予定の都市、ルクセリア。

林立する鉄筋コンクリート製の重厚な建物を背に、超重爆グティマウンが次々と離陸してゆく。

 

「各機、本作戦は不遜にも皇太子殿下を拉致し、劣悪な環境に置いている蛮族達への懲罰だ。我々の目的はただ一つ、蛮族達に我々の怒りと力を知らしめる事である。進路上の都市、集落、通りがかりの車列…全て焼き払え」

 

皇太子グラ・カバル拉致に対する報復としてムーを灰燼に帰すべく出撃したグティマウン、その数200機。

指揮するのは特殊殲滅作戦部副部長『ラッシル・バーリング』だ。

彼は昔から近衛兵団航空部の爆撃手として高く評価されており、帝国に歯向かう者は無差別に爆撃するという無慈悲な性格だ。

そんな彼が狙うのは彼自身が述べた通り、ムーへの無差別爆撃である。

具体的には手始めに国境の町アルーを爆撃した後、東へ300km程進んだ先にあるキールセキ、オロセンガ、マイカル…余力次第ではオタハイトも狙うつもりだ。

 

「副部長、ロデニウス攻撃を行っているアーリ部長との連絡はつきましたか?」

 

「いいや、まだだ。しかし、リーム王国まで1万km以上ある上に暗号通信をしているからな。途中で混線したり、地形や気象条件によっては届かない事も考えられる。だが、蛮族達が高度1万m以上を巡航するグティマウンを捉えられる訳がない。今頃ロデニウス大陸は火の海だろうな」

 

アーリによるロデニウス連邦攻撃の成功を疑っていないラッシルであるが、残念ながらロデニウス連邦攻撃は惨憺たる結果に終わり、司令官であるアーリも戦死してしまっている。

それを知らぬ彼らは、彼ら自身の働きが帝国の勝利に大きく貢献する筈だという根拠のない自身を胸に、ムーへと向かってゆく。

 

「さあ、蛮族達よ。帝国の象徴を奪った報いを受け、我々優等民族の世界支配の礎となるが良い」

 

歪みきった民族主義の炎を瞳に燃やすラッシルの脳内には、焼け落ちるムーの都市が浮かんでいた。

 


 

──同日、エヌビア基地──

 

キールセキに併設されたムー空軍のエヌビア基地。

そこではこの度、新たに創設された部隊の編成式が行われていた。

 

「諸君!私がこの度新設された『第46海軍陸上航空隊』の隊長を務めるクーガー・パンテル少佐だ!諸君らはムー初の超音速機部隊として恥じぬ戦いをしてもらいたい!」

 

「「「「ラジャー!」」」」

 

新たに設営された真新しい滑走路に並び、敬礼をする15名のパイロットと、駐機場に並んだ16機の無尾翼デルタ翼機の姿があった。

このクーガーが隊長を務める部隊こそ、ムー初の国産超音速戦闘機『イリュジオン』を主力とする部隊なのだ。

イリュジオンは1月終わり頃に超音速飛行試験を終えたばかりであり、それから1ヶ月程しか経っていない。

それだと言うのに16機を部隊配備しているというのはどういう事なのか?これには少々カラクリがある。

そもそもイリュジオンはミラージュⅢをベースとして更なる軽量化・簡素化を行って設計した為、基本的な試験は既に完了していた事が最も大きな要因であるが、イリュジオンの早期戦力化を求めたムー軍上層部は纏まった数の先行量産型を生産し、その最中に細かい欠点を洗い出し、後の量産型へとフィードバックするという手法をとったのだ。

これにより試作機が超音速飛行試験を行った頃には先行量産型16機が既に組み立て済みとなっており、現在は慣熟訓練中に指摘された改良点を反映した先行量産型第2ロットを生産中である。

 

──ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!

 

《緊急通達!緊急通達!先程、哨戒飛行中の早期警戒機よりレイフォル内陸部より多数の大型機が東へ向かっているとの報告!機種は識別名GB、目的は本邦に対する攻撃と推測される!出撃可能なジェット機は至急出撃の準備を!》

 

クーガーによる訓示が終わった頃、基地のサイレンが鳴り響き、スピーカーからそんなアナウンスが聴こえてきた。

 

「おーおー、なんてタイミングだ。イリュジオンの実戦デビューって訳か。よし第46海軍陸上航空隊、出撃準備を!」

 

「「「「ラジャー!」」」」

 

クーガーの命令を受け、パイロット達がそれぞれの機に駆け寄る。

それは何もクーガー達だけではない。

ムー空軍及び海軍陸上航空隊のアクアホークパイロットはもちろん、現在のエヌビア基地はアズールレーン空軍やムー支援の為に集まった各国空軍が集結し、多国籍軍の様相を呈している。

 

「行くぞ!無辜の民を護る事こそ武士の本懐…それは遠く離れた異国とて変わらん!」

 

脇差を天に掲げ、高らかに告げるのはフェン王国空軍のアインだ。

フェン王国はムー支援の為に少ない空軍戦力の中から1個小隊を捻出しており、彼らは虎の子である『G.91Y』を装備している。

本機はサディア帝国の軍需企業『オート・テルニ』で開発された軽戦闘爆撃機『G.91』の拡大発展型であり、ロデニウス連邦の輸出型軽戦闘機F-5と同じエンジンを搭載しながらも取得・運用コストが安い亜音速機である事から、F-5は高いがジェット機は欲しいという国々で徐々に広まっているのだ。

 

「ムーの御仁!」

 

「貴官は…」

 

「申し遅れた。私はガハラ神国のスサノウと申す。貴国に力添えすべく馳せ参じたが、グ帝の飛行機械は風竜では及ばぬ高さを飛ぶとの事…今回の迎撃には参加出来ないが、貴殿らの留守は命に代えても護ってみせる」

 

風竜に乗ってクーガーの側までやって来たのはガハラ神国の風竜隊隊長のスサノウであった。

風竜はワイバーン種を遥かに上回る飛行能力を持つが、高度1万m以上を飛ぶ超重爆に対しては力不足と言わざるを得ないだろう。

風竜でなくてもまだまだ数的主力であるレシプロ機も同様だが、彼らにもジェット機が出払った基地を護るという立派な役目があるのだから揶揄する事は出来ない。

 

「あの高名な風竜が護衛ならば地上も安心だろうな。心強い」

 

「ならば我々も期待に応えねばな。ご武運を」

 

クーガーはそんな言葉を交わして離れるスサノウを見送ると、主翼下で兵装搭載をしている作業員へと目を向けた。

 

「もういいか?」

 

「もう少し…はい、完了です!」

 

作業員が兵装の安全ピンに結び付けられた赤いタグを見せ、兵装が作動可能状態である事を示した。

イリュジオンには5つのハードポイントが設けられているが、今回搭載されたのは2種類の兵装だ。

先ず1種目は胴体下と主翼内側に懸架された細長い増槽だ。

この増槽は前半部分が12連装70mm空対空ロケット弾ポッドを2段重ねた物となっており、3基搭載すれば72発ものロケット弾を搭載しつつ、ある程度の戦闘行動範囲を確保出来るのである。

 

「よし…さて、コイツがどれだけ使えるか…試してみないとな」

 

しかし、クーガー達が期待しているのは主翼外側に懸架されたロケット弾状の兵装…『AIM-9F』、通称サイドワインダーだ。

これまで生産されていたサイドワインダーよりもシーカーの感度を高めた為、排気温度が低いレシプロ機であっても追尾出来るようになった為、アズールレーンから提供された物を今回の迎撃戦闘で急遽搭載する事としたのである。

 

《早期警戒機に管制を引き継ぎます。各機、離陸を》

 

「了解、第46海軍陸上航空隊出撃するぞ!」

 

──ヒィィィィィィィン!ゴォォォォォッ!

 

甲高いタービンと暴風のような排気の轟音と共に飛び立つイリュジオン。

その後を追い、他のイリュジオンを始めとしたジェット機が飛び立った。

 




ぶっちゃけ、以前書いた対グティマウンの焼き増しみたいな話になりそう感があります
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