かつてのコラボキャラは愛があれば使えなくはない、ってぐらいだったのに…
──中央歴1643年3月3日午後2時、マルムッド山脈──
アルーとキールセキの間に横たわるマルムッド山脈、通称『空洞山脈』の西側の裾野に1機のグティマウンがその骸を晒していた。
「……うっ…うぅ…」
火災により発生した煙が充満する機内で1人の男、ラッシルが失神から目覚めた。
「おぉ…い…誰か…」
不時着の衝撃によりラッシルは全身を痛めてはいるがどうにか五体満足だった。
しかし、彼以外の乗組員は全員沈黙していた。
防御銃座についていた銃手は銃撃により全員が死亡しており、コックピットにいた操縦士、副操縦士は体を操縦桿や計器盤に叩き付けられ、機関士は復旧作業中に立ち上がっていたせいでコックピット内を跳ね回り、爆撃手は潰れた機首に挟まれ全員が即死、或いはそれに近い状態であった。
「クソ…劣等種共め…!この報いは必ず…!」
痛む体を引き摺るようにどうにか割れた窓から機外に這い出たラッシルは機体の影に身を潜めると、腰に差していた拳銃を抜いて薬室に弾薬を装填した。
「この特徴的な地形は空洞山脈とかいう山だった筈だ。ならば国境までは70km程…歩けない距離ではないな」
幸いな事に帝国の支配領域であるレイフォルまで絶望的に離れている訳ではなく、機内に残されているサバイバルキットを回収して鎮痛剤や浄水剤を駆使すれば徒歩で帰還する事が出来るだろう。
唯一気がかりなのは多数のグティマウンを撃墜された事に対する処罰だが、ラッシルは最後まで戦意を失わなかった事、そして敵パイロットを殺害した事をアピールすればいくらかの情状酌量を得られる筈だ。
「……よし。サバイバルキットの回収を最優先に…」
──ブロロロロロロロ…キッ
「っ!?」
今後の方針を定めたラッシルは今一度機内に戻る事を決意して幾ら落ち着いてきた痛む体を鞭打って立ち上がるが、さほど遠くない辺りから聴こえてきたエンジン音とブレーキ音に再びしゃがんで身を隠す。
「これがグ帝の爆撃機か…なんてデカいんだ」
「いったいどれだけの爆弾を積み込めるか想像出来ん」
「我が国ではとても作れそうにないな」
微かに聴こえる話声…おそらく不時着した1番機の調査に来た異世界国家軍だろう。
なんともタイミングが悪い。
しかし、ラッシルは内心誇らしくもあった。
(ふふん、そうだろうそうだろう。貴様らのような劣等種ではグティマウンのような兵器を作れはせん)
感心したような異世界国家軍の兵士の言葉に鼻高々なラッシルであるが、彼らが劣等種と蔑む異世界国家の兵器によって自慢のグティマウンがバタバタと叩き落とされた事は都合良く抜け落ちているらしい。
しかし、異世界国家軍兵士達の続く言葉によって高い鼻はへし折られる事となった。
「でもアレだな。演習の時に見たロデニウス連邦とかアズールレーンの爆撃機と対して変わらん大きさだな」
「トーパ王国もこのクラスの爆撃機を持ってるよな?」
「あぁ、アレだろ?あれはアズールレーンからの技術協力があったからだよ。我が国じゃ到底独力では作れないさ」
(なっ…なんだと!?グティマウンに匹敵する爆撃機を劣等種共が保有しているだと!?)
驚愕するラッシル、しかし彼は更に驚愕する事となる。
「それにしてもこんなに被弾して不時着したんじゃ乗組員は生きてないだろうな。機体を解析するにしても修復するので手一杯だ」
「いや、それは問題ないな。……これはまだ正式発表されてないがな、アズールレーンと我が国の合同部隊がリーム王国にあったグ帝の飛行場を占領してこの爆撃機を何機か鹵獲したらしい。今後はロデニウス連邦に回送して解析するみたいだ」
「へぇ〜、流石はアズールレーンだ。だったら我が国にも解析結果は共有されるだろうから安心だな」
(リームの飛行場が占領された!?ではまさかロデニウス攻撃部隊とアーリ部長はもう…?)
そこで漸く異世界国家の手によりグティマウンが撃墜されたという事実を思い出したラッシルは一つの可能性に行き当たる。
諜報活動により、ムーはロデニウス連邦及びアズールレーンから多大な支援を受けている事が判明していたが、もしムーの戦闘機がロデニウス連邦やアズールレーンからの支援の賜物なのだとしたら、ロデニウス連邦にはより高性能な戦闘機が大量配備されているかもしれない。
ムーでもこうなのだから、ロデニウス連邦の爆撃を意図したアーリの部隊はより壊滅的な被害を受けている可能性が高い。
(不味い…早くこの事実を伝え、対策を編み出さねば…!)
顔を青くしたラッシルはこの場を逃れ、帰還する為に思考を巡らせるが幾ら考えても見つからずに逃げる方法は思い付かない。
しかしこのまま留まっても状況が好転する事は無いだろう。
故にゆっくりと、気配を消して身を隠せる障害物が多そうな山脈側に向かおうとするが…
──ガラン!
「っ!!」
「なんだ!?」
辛うじて1本のリベットで吊り下げられていた機体の外板がリベットの破断により落下し、大きな音を響かせた。
「動くな!武器を捨てて大人しくしろ!」
「お前らは右から回り込め!我々は左から行く!」
「車載機銃を用意しとけ!」
「クソッ…劣等種共に捕まってたまるか…!」
もはや戦闘は避けられないと悟ったラッシルは素早く機内に戻ると、割れた窓から顔を覗かせた。
入り組んだ機内ならばあるか分からない野外の遮蔽物に頼るよりも確実である上に、運が良ければ防御銃座を使う事も出来る。
そう考えた彼はチラッと最も近いコックピット直後上面の銃座を確認する。
「来るな、劣等種め!」
──パンッ!パンッ!パンッ!
グ帝の制式採用拳銃は実戦で使うような物ではなく、あくまでも将校の象徴であり、命令違反を犯した兵士を銃殺するような物だ。
故に威力も射程も装弾数も心許なく、これ1丁ではどうにもならない。
本来ならば航空隊の規定として多発機には折り畳みストックを備えたライフルを搭載する筈なのだが、他民族を舐め腐っている近衛兵団は「我々が劣等種に撃墜される訳がない」という考えから当たり前のようにその規定は守られていないのだ。
「発砲された!本部、発砲された!」
「降伏の意思は見られない!制圧する!」
「殺すなよ!奴には情報を吐いてもらうんだからな!」
──ダンッ!ダンッ!ダンッ!
「うっ…!」
敵はラッシルの意図を察知しているらしく、防御銃座へ対して銃撃を加えている。
これでは銃座を使う事は出来ない。
「クソッ!クソッ!劣等種共がバルカス民族に逆らうなぞ!」
こんな状況に陥ってなお歪んだ民族主義を吐くラッシルの姿勢はある意味感心できるのかもしれない。
スイートバンの方も更新したいのですが、こちらの筆がノッてるので暫しお待ちを…