時期的な大和はまず無いと思いますが、もし今年の周年イベントで大和が来るならば、その前日譚的な感じで矢矧が実装とか、雪風改が実装とか…
──中央歴1643年3月6日正午、ムー北方海域上空──
──ドゴォォォォンッ!
「うっ…!」
低空を飛ぶシリウス型爆撃機のコックピットでパイロットである『ペイロン・スカブテスト』は頭上で爆発炎上した同型機の轟音と熱を感じながらも、異世界国家軍の艦隊が居るであろう方向へと脇目も振らず飛んでいた。
「噂に聞いていた通り、異世界国家の航空機は凄まじい性能だな…!」
ペイロンは所謂ベテランパイロットであり、海軍航空隊のみならず水兵どころか陸軍にも友人が居る広い交友関係の持ち主だ。
そんな彼の元には様々な噂話…それこそ箝口令が敷かれているような情報すらも舞い込んでおり、彼はそれらの情報を元に独自の性能予測を叩き出して同じ部隊のパイロットや、親しいパイロットへ情報共有をしていた。
──ブゥゥゥゥゥンッ!ドパァァァンッ!
「うおっ!?」
被弾したリゲル型雷撃機がスピンしながら墜落し、海面に叩き付けられて大きな水柱を上げた。
ペイロン機はその水柱に思いっきり突っ込んでしまうが、運よく飛沫を浴びただけで飛行には問題無い。
「大丈夫…いや、居なかったな」
自身の背後に座る銃手に呼びかけかけたが、そこには誰も居なかった。
というのもペイロンは予測した敵機の性能を考えれば銃座は効果的とは言えず、ならば銃座と銃手を下ろして軽量化すべきだと判断したのである。
「それにしても栄えある帝国海軍がこうまでいいようにやられるとは…上は異世界国家を侮り過ぎだ!割を食うのはいつも我々のような現場の人間ではないか!」
ペイロンのような現場の人間でも人脈を駆使すれば敵機は1000km/hに及ぶ速度で飛行し、驚くほど高威力の兵装を装備していると推測出来る。
だと言うのにペイロン個人よりも大規模な情報収集が出来る筈の上層部はロクに対策も練らず、こうして貴重なパイロットを死地に送り込んでいるのだ。
その事に憤りつつも、ペイロンは水平線の彼方を目を皿のようにして見詰める。
敵機が飛来した方向に向かって飛んでいるため、本当にこの針路上に敵艦隊が存在するのかは分からないのだが…
「……あれか!?」
水平線上に影が見えた瞬間、スロットルを全開にして加速する。
──ヒュンッ…ヒュンッ…ヒュンッ…
敵艦もペイロン機の接近に気付いたようだ。
対空砲火の曳光弾が機体の脇を飛び去り、海面に小さな水柱がいくつも現れる。
「あれは…帝国海軍の駆逐艦とそう変わらないではないか!?やはり上層部は異世界国家の戦力予測を怠っていたな…!」
目に映る駆逐艦…ムー海軍の『ラ・メルスン』を前にしてペイロンは悪態をつくが、ここで話が違うからと逃げる事は出来ない。
「ふんっ!」
運良く被弾せずラ・メルスンに接近したペイロンは全力で操縦桿を引くと機体を急上昇させた。
帝国海軍航空隊の教本にある多数の対空砲を備えた要塞に対する攻撃法によるものだ。
急上昇した航空機を狙うためには対空砲に大きな仰角を取らせる必要があるが、仰角…つまり上方へ砲を向けるには重力に逆らう必要があるため、水平方向への指向よりも僅かながら時間がかかる。
「ぬぅぅぅぅ…!」
低空から一気に高度1500mまで急上昇した後に直ぐ様急降下へと移行する。
角度60°、エアブレーキを全開にして400km/hの速度でラ・メルスンへと照準を合わせた。
──キュィンッ!チュンッ!ヒュンッ…
対空機銃弾だ機体外板を掠める音、どこかしらに直撃を食らった音、離れた位置を飛翔する音…いつ致命的な攻撃を受けても不思議ではない中、不思議な程に冷静さを維持しているペイロンはラ・メルスンの未来位置に照準を合わせ…
──ガコンッ
高度500mで投弾レバーを引き、500kg爆弾を投下した。
──ヒュゥゥゥゥゥゥ……
風切り音と共に落下する爆弾の行く末を見届ける間もなく、ペイロンは低空での水平飛行に移るべく操縦桿を引くのだが…
──バガァンッ!
「!?」
凄まじい爆音と共に大きく揺れる機体、視界がめちゃくちゃに揺れ、上下左右前後も分からない程にコックピット内でかき混ぜられたペイロンが最後に見たのは、爆炎を上げるラ・メルスンの姿であった。
──同日、ムー艦隊旗艦ラ・エンタープライズ──
「ラ・メルスン被弾!被害甚大な模様!」
「駆逐艦は消耗品だ!艦に拘らず乗組員は脱出せよ!」
「敵機、尚も飛来中!直掩機の対処能力が限界に達しています!」
「狼狽えるな!ラ・メルスンの乗組員には申し訳ないが、戦闘が一段落するまでボートや救命胴衣で漂流してもらうしかない!敵機の対処は迎撃機を逐次投入せよ!」
ムー艦隊旗艦ラ・エンタープライズの司令室でレイダーは飛び込んできたラ・メルスン被弾の情報を受けて命令を下していた。
「やはりラ・メルスンは下がらせておくべきだったか…しかし、対空火力は少しでも欲しい場面だ」
苦々しく呟くレイダー。
ラ・メルスンはムーで建造されたロデニウス連邦海軍のピカイア級駆逐艦の準姉妹艦であり、必要十分な対空兵器を装備しているため敵機迎撃の為に艦隊の前方に展開していたのだ。
しかし、ラ・メルスンは元々スペシャリスト・フリート構想で編成された水上打撃艦隊に所属する筈だった駆逐艦であり、その乗組員達も対艦攻撃を主とした訓練を行っていた。
もちろん、対空戦闘訓練も行ってはいたが、それでも対空戦闘艦隊には及ばない…今回のラ・メルスンが受けた被害は改革の過渡期にあるムー海軍の弱みを突かれた形なのかもしれない。
「ラ・カサミ及びラ・ツマサ、ミサイル発射!直掩機及び迎撃機は注意せよ!」
通信士の言葉と共にラ・エンタープライズの前方に位置するラ・カサミとラ・ツマサから白煙と共にターターミサイルが次々と発射される。
発射されたターターミサイルは高度6000m付近を跳んで向かってくる敵編隊へと突っ込み、次々と敵機を撃墜させる様はなんとも心強い。
彼女達はターターミサイルを80発ずつ装備しているため、単純計算で160機もの敵機を撃墜可能であり、ラ・ツマサは更にシースパローミサイルを64発装備している。
つまり彼女達だけで艦隊中枢に敵機が到達するまでに200機以上の敵機を撃墜可能だが、如何せん敵機の数があまりにも多い。
「敵機の数は!?」
「今なおレーダー表示を埋め尽くしています!少なくとも500以上!」
ムー艦隊に配備されている対空ミサイルは間違いなく使い尽くすだろうし、アズールレーンとロデニウス艦隊のミサイルも危ういかもしれない。
そうなれば対空砲と対空機銃、そして戦闘機による迎撃に頼るしかないが、迎撃率はミサイルよりも低いものとなるだろう。
「……全艦へ、ダメージコントロール班に厳戒態勢を取らせるように通達。これより先、被弾を覚悟せよ」
「はっ…!」
レイダーの言葉により司令室、そして艦隊にこれまでとは違う緊張感が走るのだった。
まだ本格的な艦隊決戦になってないのにもう7話…あと何話必要になるのやら…